つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

映画検定1級のベッチーのベッチーによるベッチーのための映画館鑑賞記録gooブログ。
コンテンツ:ベッチーの映画三昧日記

「0.5ミリ」

2015-01-25 10:27:19 | goo映画レビュー
●ベッチー的映画三昧日記
「恐るべき奥田瑛二ファミリーの0.5ミリ」


 賞レースの時期になり何かと話題になっている作品だが、本作は奥田瑛二ファミリーのクリエイティブな力を見せつける作品となっている。父の奥田瑛二がエグゼクティブ・プロデュサーを務め、長女の安藤桃子の原作を基に彼女が脚本、監督をし、妹の安藤サクラが主演、母の安藤和津がフードスタイリストとしてサポートをした。

 まず「0・5ミリ」というタイトルが意味深だ。他人と他人が寄り添って生きて行かなければならない社会においてそれがだんだん失われているのが現実の社会。その距離を埋めて行く一歩が0・5ミリということなのか。本作が介護を題材に笑いの中に提示したメッセージは、超高齢社会を背景に時代を投影した新鮮な映画となった。

 介護ヘルパーとして派遣先の老人の世話をしていたサワ(安藤サクラ)は、家主からある依頼を受けてしまったことから事件に巻き込まれ、仕事も家もお金もなくしてしまう。生きていくため、サワはいわくありげな年寄りを見つけては押しかけヘルパーとして、彼らの人生の中に踏み行っていく。孤独な年寄りたちは、ある意味純真なサワとの生活の中で、生きることの意味を問い返して行く…といった物語。

 彼女が電車に全財産を置き忘れて一文無しになるくだりは、話の持っていきかたが少し強引すぎるが、最初のエピソードが3つの話を経てラストにひとつのメッセージとして結実していく本作りは巧い。
 最近の映画界で、この手の物語で3時間20分というのは長い。しかし、4つのエピソード(正確には5つ)の話の面白さと中心をなす超熟練俳優たちの演技の巧さと安藤サクラの自然体の演技が化学反応を生んで、各エピソードの完成度が極めて高いので、飽きさせないで全く長さを感じなかった。
まさに安藤サクラという女優の生きざまが役に投影していて傑作になった感じがする。近年美人ではない女優で、これだけ多くの作品でタイトルロール(主役)を張れる女優がいただろうか。彼女の演技が上手いかどうかは別にして、スクリーン上の彼女の存在感は凄いと言わざるを得ない。

 女の子は父親似になるという逆境を逆手に取り、他の美人女優と一味違う存在感を示す安藤サクラの活動は注目せざるを得ない。
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「96時間 レクイエム」

2015-01-18 09:00:44 | goo映画レビュー
●ベッチー的映画三昧日記
「守る対象が一減で本当に最終章となるのか?96時間」

 元CIAの超優秀エージェントで、シークレットサービスや傭兵をしているリーアム・ニーソン演じるブライアンがただ、家族を守るために大活躍する「96時間」シリーズの第3弾だ。

 1作目でヨーロッパ旅行中にアルバニアの人身売買組織に拉致された大学生の娘を、獅子奮迅の活躍で救出し、犯人たちを全滅させたブライアン。
2作目で全滅した人身売買組織の犯人たちの父親から息子の復讐とばかり、ブライアンをはじめ、彼の妻と娘が標的となる。家族を守るため、イスタンブールを舞台に壮烈な戦いを繰り広げた。

 そして、邦題にレクイエムと付いているように、今回は、シリーズ最終章と銘打っている。妻と娘を守るためには、国家権力とも真向から闘うというスーパーお父さんの姿を描くのが本シリーズの醍醐味だ。しかし、第1作製作から8年。ストーリー上はそこまで時間は経っていないが、確かにスクリーンの中のリーアム・ニーソンも回を重ねるごとに老けた。本作でのニーソンは体も重たそうで、アクションのキレがいまひとつない。アップの顔の表情も昔の精悍さはなく、これ以上シリーズを続けるのはつらい気もした。
 そんな点を配慮したかどうかはわからないが、今回は、今までのヨーロッパやトルコなど異国情緒あふれる所ではなくアメリカ、ロサンゼルスを舞台とした。その分、ブライアン異国で一人で敵に立ち向かうのではなく、今までチョイ役だった昔の仲間たちの活躍の場が増え、ブライアンを全面的にバックアップしている。

 単純に誰が敵なのか明らかにしないで、妻殺しの汚名を受けて警察からも追われるという設定を加えた。八方から追われる展開は「24」のバック・パウワーと同じような感じ。  
でも、ニ―ソンを追う敏腕刑事フォレスト・ウィテカーが久々に良い存在感を出していて十分楽しめるストーリーとなっている。 

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「ビフォア・サンライズ~ビフォア・サンセット~ビフォア・ミッドナイト」

2015-01-12 10:04:30 | goo映画レビュー
●ベッチー的映画三昧日記

「ビフォア・サンライズ~ビフォア・サンセット~ビフォア・ミッドナイト」
 3作を一挙に観て、あらためて「なるほど」と気づいたこと


◎「恋人までの距離(ディスタンス)」(原題:ビフォア・サンライズ)
  リアルな恋愛劇の見本となった作品

 リチャード・リンクレイター監督が当時自身3作目の長編映画として作った「恋人までの距離(ディスタンス)」。ヨーロッパ旅行中のアメリカ青年(イーサン・ホーク)とフランス人の学生(ジュリー・デルピー)が列車の中で知り合い、ウィーンで途中下車し一晩を一緒ぬ過ごす。その中でお互いに次第に惹かれ合う過程を描いた恋愛映画だった。

 全編二人の会話で展開される舞台劇のようだが、ウィーンの街を歩きながら語られる様々な人生や恋の話がリアルで、まるでドキュメンタリーのような作りだと感じたものだった。
 今、観直してみても、その思いは変わっていない。
 その後、続編が作られるとは思わなかったが、原題「ビフォア・サンライズ」のタイトルは今考えると秀逸の出来。




◎「ビフォア・サンセット」
  誰もが感情移入してしまう作りはさすが。

 1995年に制作されたリアルな恋愛映画「恋人までの距離〈ディスタンス〉」から9年後に作られた続編。
 かつてウィーンで一夜だけ共にし、9年後に再会した男女の恋の行方を描いたラヴ・ストーリーだ。やがて3部作となる本シリーズは監督・脚本・原案とも「恋人までの距離」のリチャード・リンクレイターと二人の主演俳優、イーサン・ホークとジュリー・デルピーの3人の共同作業で作り上げたと言っても過言でない。

 本作は81分と短尺だが、これは9年後に出会った二人の2時間しか一緒にいられない状況をリアルに描くために、同時進行の話としたかったからに違いない(「24」のはしりだ)
 
 ウィーンでの一夜から9年。アメリカ青年のジェシー(イーサン・ホーク)はあのときの事を描き、有名作家となっている。キャンペーンで訪れたブックストアで、セリーヌ(ジュリー・デルピー)と再会する。しかし、二人にはジェシーが飛行機搭乗までの2時間あまりの時間しかなかった。前作最後で二人が交わした半年後のウィーンでの再会の約束はどうなったのか?とか、その後の二人の9年間の歩みが、本作でも二人のほぼ会話の形で語られていく。どのセリフもすべて前の話、次の展開につながっており、一瞬でも見逃すと話の核心の部分がわからなくなってしまうので、つい画面に集中してしまう。

 81分があっという間に過ぎてしまうが、本作のラストほど、「えっ、この後どうなったの?」と思った終わり方はない。映画の中のセリフにもあったが、物語の展開は、それぞれの人の思い方次第で変わってくる、というのを地でいった形でエンドとなる。このときは、まさかそれから10年後に、第3作が作られるとは考えてもいなかったから、結構長い間、この二人がどうなったのか思いを巡らせたものだった。




◎「ビフォア・ミッドナイト」
  1995年から始まった男女の軌跡が大終焉

 WOWOWの洒落た企画で本シリーズ3作、5時間余をまとめて観ることが出来た。一挙に見たことで、本シリーズが18年間の一組の男女の人生の軌跡を通じて普遍的な人間の人生を見事に描いているかが解った。

 おそらく1作目を作ったときは、その後二人の18年後まで描く計画はなかったと思う。しかし2作目、3作目になるに従いリチャード・リンクレイター監督だけでなく、主演の二人(イーサン・ホークとジュリー・デルピー)が企画にかかわる度合いが高くなっていったのが伺える。それほど、見事に映画の二人が、まるで実在の人物で、彼らの人生を観客が傍観者として眺めているような作りになってきた。
  
 知り合いの夫婦のなり染めから、倦怠期にさしかかった20年を見させてもらった思いで、いつしか、わが身に照らし合わせて、隣で観ている妻の様子に恐れおののきながら「うん、うん」とうなずいている自分がいた。

※「ビフォア・ミッドナイト」については、別に単独でコメントを掲載済みですので、その頁をご参照ください。
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「天才スピヴェット」

2015-01-02 11:13:21 | goo映画レビュー
●ベッチ的映画三昧日記
「フランス人のジュネ監督が描く広大なアメリカと天才少年の表情が見事に融合したファンタジー、ロード・ムービー」


 「アメリ」、「デリカテッセン」のフランス人のジャン=ピエール・ジュネ監督が広大なアメリカを舞台に10歳の少年の冒険と成長を描くロード・ムービーを撮った。

 モンタナ大平原の農場に住む10歳の天才少年スピヴェットは、科学実験に明け暮れる毎日をおくっていた。ところが周りの大人たちは、彼が考えていることをなかなか理解してくれない。ある日1本の電話がかかってくる。それはワシントンDCのスミソニアン博物館からで、スピヴェットの科学論文が権威ある賞を受賞したというものだった。論文を書いたのが10歳の自分だと信じてもらえないと思った彼は最初、授賞式に出席出来ないと答える。しかし、彼はある思いを秘めて、ワシントンでの授賞式に向け一人でアメリカを横断する決心をする。貨物列車に乗り、広大なアメリカ大陸を旅する途中に様々な人に出会っていく。

 映画は冒頭モンタナの豊かな自然の中で二人の子どもたちが遊んでいるシーンから始まり、彼らの家族がテンポ良く紹介されていく。1000年遅れてきたとスピヴィッドに言われるカウボーイの父親、昆虫の研究に没頭する科学者の母親、アイドルを夢見る姉。双子の兄弟は仲良しだったが性格は全く違っていた。科学実験好きのスピヴェットに対し、弟は狩り好き活動的。スピヴェットは父親似の弟の方が父親に愛されていると感じていた。そんな弟が亡くなり、家族はどこかバラバラになっていた。そのような時にスピヴィッドに科学賞の知らせが届くという設定となっている。

 本作はまずフランス人のジュネ監督がメガホンを撮ったのが最大のポイント。彼ならではの独創性に富んだ映像表現で広大なアメリカ大陸が描かれており、絵画のような美しいアメリカの風景を観ているだけでも感動する。それに少年の成長談が加わっているのだから余計に胸を打つ。天才ではあるがスピヴェットの心は10歳の少年のものであり、その純粋さは周りの大人たちの思惑の中で際立って美しく見える。

 スピヴェットを演じるカイル・キャトレットは本作がデビュー。しかしその演技力の高さ、時に悲しげな、時に天真爛漫な表情には目を見張る。彼の存在がジュネのイマジネーションの世界と広大なアメリカ大自然の風景と相まって見事に融合、単なるロード・ムービーにならず、本作を極上のファンタジーに仕上げたようだ。
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