つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

映画検定1級のベッチーのベッチーによるベッチーのための映画館鑑賞記録gooブログ。
コンテンツ:ベッチーの映画三昧日記

『塀の中のジュリアス・シーザー』 75点

2013-03-02 00:11:05 | goo映画レビュー

塀の中のジュリアス・シーザー

2012年/イタリア

どこまでが作為でどこからがドキュメンタリーなのか?

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★★☆80点

●ベッチー的映画三昧日記
「塀の中のジュリアス・シーザー」

 イタリアのパオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督が、ローマ郊外の刑務所を舞台に、実在の受刑者たちが教育プログラムの一環として演劇「ジュリアス・シーザー」を演じる6か月間を追った異色作だ。昨年のベルリン国際映画祭金熊賞グランプリ受賞した作品。

 長期刑の重犯罪の囚人たちにとっては、実習として取り組む演劇が生きていることを実感でき、外界との接点となるただひとつのものだから、劇にかける集中力の度合いとか意気込みが半端でない。このことは、出演者を選ぶオーデションで、人間の感情の基本である喜怒哀楽から“哀しみ”と“怒り”を演じさせのだが、それに臨んだ彼らの表情を観ていてすぐわかる。

 そして役が決まり、稽古をする彼らをカメラが追うが、次第に熱を帯びる稽古は、彼らの監房、廊下、屋外休憩場と日常の至る場面で繰り広げられていくのだ。それに従い、囚人である彼らが劇を演じる囚人を演じ、その劇の登場人物をまた演じるとことで、虚構と現実の狭間がなくなってくる。

 一番始めに思ったのが、本作はどこまでが作為でどこからがドキュメンタリーなのか?ということ。作品に登場する恐持ての人たちは重い罪を犯した受刑者だと言われればそう見えるし、昔の東映のピラニア軍団のような大部屋俳優さんだと言われればそのようにも見えるのだ。また、手ブレのないシャープな映像は手持ちカメラではなく固定のカメラ映像のもので、一度のシーンを複数のカメラが追っている事を考えるとしっかりした撮影や演出プランに基づいているように思える。

 パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督が実際には彼らにどれくらい演技を要求したのか、そのあたりのメーキングが一番観たい感じがした。


『東ベルリンから来た女』 75点

2013-03-02 00:07:23 | goo映画レビュー

東ベルリンから来た女

2012年/ドイツ

主演の女医を演じるニーナ・ホスは不思議な雰囲気を持つ女優さんだ

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★★☆80点

●ベッチー的映画三昧日記
「東ベルリンから来た女」

 ドイツが東西に分裂していた1980年代初めの東ドイツを舞台に、自由主義国の西ドイツへ国外脱出したい女性医師の仕事や恋に揺れ動く心の葛藤を描く。

 本作を観て、あの頃とくに東西に分離されたベルリンでは結構東ドイツから西ドイツへ壁を脱出する人たちがいて、失敗し銃撃を受けるなどの悲惨な光景がニュースで流れていたことを思い出した。

 ベルリンの壁崩壊が1989年。あれから25年近く経ち、おそらく今の若者にはヨーロッパの主要国であるドイツが今の朝鮮半島のような状態だった事を理解することは難しいだろう。同時代を生きてきた私なども、はるか昔の出来事のように思っているくらいだから。
 
 だからこそ、近年なって、大戦以後の東西分裂時代のドイツを描く「善き人のためのソナタ」や本作のように、自分の国にこのような過去があったことを、今生きる人々に歴史認識してもらうことはドイツ国内にとっては内政上も必要なことなのだろう。

 でも、私が本作を観たいと思ったのはそんな高尚な目的ではなかった。ただ自転車に乗ったスレンダーな美女の映ったポスターに惹かれたからだ。

 したがって、観終わって一番印象に残ったのが主演女優のニーナ・ホスだ。主演の女医ベルバラを演じるニーナ・ホスは本当に不思議な雰囲気を持つ女優さんだ。ポスターでは騙されたが決して若くはない。ところがママチャリと変わらないような自転車なのに、彼女が自転車で緑陰の中や田舎道を駆け抜ける姿の格好良いこと。 時々非常に若いような表情を見せる。背丈の割に顔がとても小さく、大きめの口が動物でいうとフォックスのようだ。そこが知的らしさと自我を持った毅然とした雰囲気を醸し出している。

 彼女が演じるバルバラという女医は恋人のいる西側への脱出を試みたため、エリートコースから外され、東ベルリンの大病院から片田舎の病院へ人民警察の監視付きで移ってきたという設定だ。ナチス時代を彷彿させるような東ドイツ人民警察の必要な監視と捜査活動に人としての感情を忘れたバルバラは病院内の誰にも心を開かず孤立無援の生き方を選ぶ。とはいうものの人間ひとりでは生きていけないもの。何かと親身になって助けてくれる先輩医師アンドレに次第に心を開いていく。彼女が彼に一度だけ見せる笑顔が非常に印象的だ。

 最後に彼女が選択したのが自分の自由より医者としての使命感というところが当たり前すぎると思いつつも、このエンディングにほっとした感じ。