つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

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「家族はつらいよ2」

2017-06-30 19:49:11 | goo映画レビュー
●ベッチー的映画三昧日記
ごく普通の一家の日常が、悲喜劇となる巨匠の手腕はさすが「家族はつらいよ2」


 渥美清亡き後の山田洋次監督が掘り当てた家族喜劇の鉱脈が本作「家族はつらいよ」だ。観る側からすると、小津「東京物語」原点の「東京家族」とその後に続く「家族はつらいよ」の役回りや職業、キャラクターがごっちゃになってしまう。それだけ、「東京家族」で出会った主演8人がしっくりしているということだ。この平田家4組の夫婦の設定は、年金暮らし夫婦(橋爪功、吉行和子)、サラリーマンと専業主婦(西村まさ彦、夏川結衣)、女性弁護士と主夫(中嶋朋子、林家正蔵)共稼ぎ夫婦(妻夫木聡、蒼井優)と見事にほぼ全類型的な日本の夫婦をすべて表している。

 このごく普通の彼らが醸し出す日常が、悲喜劇となって観る側に提示され、我々は自分のことのように画面共有しながら、笑いのツボにはまっていくことになる。
 前作は中高年離婚がテーマだったが、本作で取り上げるのは、高齢ドライバーの免許返上と無縁社会の二つだ。先に述べたように誰にも当てはまるタイムリーな問題を笑いにしているが、その実、かなり辛辣に社会の矛盾を描いている。

 敢えて言えば、老境に入った山田監督の目線が少し気になった。山田監督は若いころから反体制思想でありながらどこかブルジュワリーなところが見えたが、本作でも橋爪功の高校時代の友人小林捻侍が就いている職業に対して、あまりも卑下した見方をしているように感じた。また、彼が生活保護を受けることを良しとせずに、死んでいったことを社会全体が悪いと主人公に大上段に語らせるくだりは、還暦を過ぎている私にも説教じみていて少々鼻についた。
 とはいっても、喜劇と悲劇は表裏一体とばかり、死をテーマにここまで笑わせてくれるのは、さすが山田監督のなせる技だ。特に家族だんらんの場での橋爪の振る舞いはまさに”寅さん”そのままで大笑いしてしまった。
 「男はつらいよ」みたいにずっと続いてもらいたいシリーズだが、気掛かりなのは、本作でも出番を少なくして対応していた吉行和子の健康状態だ。この作品は、4組の夫婦、誰が欠けても成立しないような気がするからだ。だから、なるべく早く第3弾を作ってほしい。
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