小栗判官祭り（その１）

　石野真琴がこの小栗判官祭りと言う祭りの事を知ったのは、もう１年以上も前の事であったと思う。
　実は小栗判官と小栗上野介を完全に誤解していた。
　そう小栗上野介といえば幕末の幕府側の俊英として知られた人物であり、最後の勘定奉行でもあった。その結果、赤城山の麓にこの小栗上野介が埋めたとされるのが徳川埋蔵金である。
　しかしこの幕末、小栗上野介が勘定奉行となる以前から、徳川家の金蔵はもう空であった。つまり、小栗上野介が勘定奉行となった時、もう金蔵はからであったのである。
　江戸幕府を開いた徳川家康という人は、富が一カ所に偏在していないと戦が起こると言う事を知っていたらしい。つまり、鎌倉時代以降荘園制度は完全に崩れ去り、その結果、地方の武士が富を握った。その代わり、それまで富を集めていた天皇家や公家は、貧乏のどん底となったのである。
　鎌倉、室町と言った幕府がしっかりしていた時代は良かったが、室町時代の末期、幕府が崩壊した戦国時代となると、武士はさらなる富を求めて戦いを始めたのである。
　そして天下を統した家康は、旗下の大名たちに金を使わせ、徳川家の戦力の中心となる譜代の小名、旗本、御家人を優遇してきた。そう大名たちに過酷な工事を請け負わせ、参勤交代で金を使わせたのである。そのかわり譜代の小名、旗本、御家人にはそのような工事を免除してきた。
　家康の構想通りならば、天下の財宝は徳川家とその旗下に全て集まり、富は一カ所に偏在するはずであったのだ。