聖書はこうして現代まで伝わってきた Ⅲ
どの翻訳を読むべきか
多くの言語では,幾種類もの聖書翻訳があります。難解な古語による訳もあれば,正確さよりも読みやすさを求めて意訳したり言い換えたりしている訳もあります。また,逐語訳に近い字義訳もあります。
エホバの証人の発行した「新世界訳聖書」の英語版は,匿名の委員会によって,原語から直接に訳されました。次いで,おもにこの訳に基づいて他の60ほどの言語にも翻訳されました。
その際,原語の本文との比較も広範囲にわたって行なわれました。「新世界訳」は,原語の本文の意味を正しく伝えられる限り,字義どおりに訳すことを目指しています。
翻訳者たちは,原本が聖書時代の読者にとって分かりやすかったのと同じほど,聖書が現代の読者にとって分かりやすいものになるように努めます。
ある言語学者たちは,「新世界訳」を含め現代の翻訳聖書に関して,不正確さや偏った見方がないかを調べました。米国のノーザン・アリゾナ大学の宗教学准教授,ジェイスン・デービッド・ベドゥーンはその一人です。
ベドゥーン教授は2003年に,「英語圏で最も広く読まれている聖書」のうちの9冊に関して,200ページにわたる研究論文を発表しました。
同教授は,論議の的になっている幾つかの聖句を調べました。それらの聖句では,「偏った見方が翻訳に悪影響を及ぼす可能性が特に高い」からです。
同教授は,それぞれの聖句についてギリシャ語本文と英訳聖書の訳を比較し,偏った見方ゆえに意味を変えようとしていないかどうか調べました。結果はどうだったでしょうか。
ベドゥーン教授は,一般の人々や多くの聖書学者が「新世界訳」に見られる相違点を翻訳者たちの宗教的に偏った見方によるものと思い込んでいる,と指摘してこう述べています。
「相違点が見られるのは,ほとんどの場合,新世界訳が……逐語的に厳正かつ保守的に訳していて,ずっと正確だからである」。
同教授は,「新世界訳」の一部の訳語については異論を唱えているものの,この訳は「比較した聖書翻訳の中では,最も正確であった」と述べており,「新世界訳」を「非常に良い」翻訳と呼んでいます。
イスラエルのヘブライ語学者であるベンジャミン・ケダル博士も,「新世界訳」に関して同様の意見を述べています。
1989年にこう語りました。『この訳は本文のできる限り正確な理解を得ようとする誠実な努力を反映しています。新世界訳には,本文に含まれていない事柄を読み取ろうとする偏った意図のうかがえるような箇所は見つかったためしがありません』。
こう自問してみてください。
『わたしは何のために聖書を読むのだろうか。あまり正確でなくても読みやすい聖書であればよいのだろうか。それとも,霊感のもとに書かれた原文の考えをできるだけ正確に伝える聖書を読みたいと思っているだろうか』。
「すでにご存じの通り,聖書の預言はどれも個人的な解釈に基づいてはいません。どの預言も,人間の考えによって語られたのではありませんa。人が聖なる力に導かれて,神からの言葉を語ったのです」。
(ペテロ第二 1:20,21)
どの翻訳を選ぶかは,聖書をどんな目的で読むかによって決まるでしょう。
*調査の対象になった,「新世界訳」以外の英訳聖書は,「アンプリファイド新約聖書」,「リビングバイブル」,「新アメリカ聖書 新約聖書改訂」,「新アメリカ標準訳聖書」,
「聖書 ― 新国際訳」,「新改訂標準訳」,「聖書 ― 今日の英語訳」,および「ジェームズ王欽定訳」です。
*このようなことのために私はひとつの翻訳聖書だけでなく複数の聖書の聖句を時々、比較できるように記載しています。
私が用いる聖句は,新世界訳,新共同訳,新改訳,口語訳,回復訳(新約聖書のみ)