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一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

中東停戦でも上値重い日本株、戦闘再開リスクや難航する対米関税交渉が足かせに

2025-06-24 12:26:55 | 経済

 トランプ米大統領は米東部時間24日午前1時(日本時間24日午後2時)過ぎ、イスラエルとイランの戦闘をめぐり停戦が発効したとSNSに投稿した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は24日のアジア取引時間に一時、1バレル=64ドル台まで急落し、日経平均株価も大幅に上昇した。

 ただ、トランプ大統領が「どうか違反しないでくれ」とコメントしたように、マーケットでは双方が攻撃を停止し停戦が実現するかは予断を許さないとの見方が出ているほか、日本株に関しては対米関税交渉の決着が見えず、関税問題の解決なしに3万9000円台を回復するのは難しいという観測が広がり出している。

 

 <停戦めぐるトランプ氏の投稿、危い合意に市場の懸念広がる>

 トランプ大統領は米東部時間23日午後6時(日本時間24日午前7時)過ぎに、イスラエルとイランが「完全な停戦で合意した」と投稿。市場は急転直下の「停戦合意」というニュースに反応し、原油先物価格が74ドル台から急落するとともに、ドル/円も148円台から145円台へとドル安・円高が急速に進んだ。

 日経平均株価も一時、前日比で600円を超す上昇となったものの、3万9000円台を前に上値が重くなった。大きな要因は2つあった。

 1つ目は、イスラエル軍が24日早朝、イランから複数回のミサイル攻撃があったと明らかにし、イスラエルのニュース局「チャンネル12」は、同国内へのミサイル攻撃で3人が死亡したと伝え、本当に停戦が実現するのか懐疑的な見方が市場の一部で浮上したことがある。

 トランプ大統領のSNSへの投稿によると、日本時間24日午後1時にイスラエルとイラン両軍の「最後の任務が終了」し、その時点でイランが戦闘を停止し、それから12時間が経過したところでイスラエルが戦闘を停止するという枠組みになっているという。

 ただ、過去の中東での停戦交渉では、しばしば決められた枠組みを無視して戦闘が再開されるケースも多く、トランプ大統領が「どうか違反しないでくれ」と投稿したのも、この停戦合意がぜい弱であることを示したと言える。

 日本時間25日午後1時にならないと、イスラエルが本当に戦闘を停止したのか確認できない、との見方がくすぶっており、全面的なリスクオン相場になり切れなかった面があった。

 

 <日本株にトランプ関税の重し>

 2つ目は、仮にイスラエルと米国、イランとの間に停戦が成立し、ホルムズ海峡の封鎖という最悪の事態は回避されたとしても、日本経済にとってはトランプ大統領に課せられた自動車や鉄鋼・アルミ関税に加え、上乗せ関税が停止中の相互関税の問題が決着しなければ、大きな負担が解消されないという問題だ。

 日米関税交渉をめぐって日本側の交渉責任者である赤沢亮正・経済再生相が「五里霧中」と繰り返しているように、7月9日の相互関税上乗せ凍結の期限までに日米間での合意が成立するか全く先行きが読めない状況になっている。

 赤沢経済再生相は24日の閣議後会見で、次回閣僚級協議は「現在調整中というのが申し上げられる最大限」と語り、交渉日程も固まっていない状況を吐露している。

 

 <7月9日以降、相互関税24%・自動車関税50%なら日本株は急落へ>

 日米交渉の今後の展開について、1)7月9日までに劇的に交渉が妥結する、2)自動車関税などの個別分野の税率は25%で維持され、相互関税の上乗せ部分の凍結期間は3カ月程度延長されて交渉を継続する、3)相互関税は24%に引き上がった上で交渉が継続される、4)自動車関税は50%、相互関税は24%に引き上げられ交渉を継続する──の4つのパターンが想定される。

 日本側としては、日本の主張も大幅に取り入れて1)のパターンに持ち込むのがベストシナリオだが、筆者は2)のケースでも合格点ではないか、と考える。3)や4)のケースになれば、今回の交渉が日本側の大幅な譲歩で決着することを暗示する展開になると予想する。

 マーケットの反応も3)や4)の展開なら、せっかくの中東和平によるリスクオンシナリオが日本にとっては「帳消し」になるような悪夢と映り、日経平均株価が大幅に下落する展開となるだろう。

 筆者は2)の可能性が最も高いとみているが、その場合でも中東和平を受けて米株が大幅に上昇する中、日経平均株価は3万9000円が壁になり、日本株の上値の重さが意識される可能性があると予想する。

 

 <参院選で与党過半数割れなら、消費減税・国債増発による格下げリスク増大も>

 さらに日本株にとってマイナス材料となっているのが、6月22日投開票の東京都議選で自民党が大敗したことだ。一部の海外勢はこの結果が7月20日投開票の参院選に連動し、自民、公明の連立与党が参院でも過半数割れとなり、石破茂首相が退陣して次の政権の枠組みが決まるまでに時間がかかり、日本の政局不安が世界の市場関係者の注目を集めるというシナリオを構築しているようだ。

 その際に海外勢が注目しているのは、消費税率の引き下げを主張する政党が衆参両院で多数派となり、財源の手当てなしに税率引き下げを実行に移し、短期間という名目で赤字国債を発行するという展開だ。

 そのケースでは、主要な格付け機関が日本国債の格下げを検討し、それがきっかけとなって円建て資産のトリプル安が発生する可能性が高まるとみているようだ。

 筆者は、参院選での与党過半数割れは改選125議席(東京選挙区の任期3年の1議席を含む)のうち、自公の獲得議席が49議席以下にならないと実現しないため、一部のメディアが指摘するほど可能性は高くないとみている。

 ただ、石破首相や自民党幹部が参院選に向けて国民の注目を集めるような改革を打ち出せない場合、この1カ月間で情勢が次第に悪化していく可能性もゼロではないと予想する。

 消費税率引き下げと赤字国債の発行の問題は、これから日本国債の格下げリスクとリンクしながら市場の注目を集める可能性が出てきたと言えそうだ。


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