2日の東京市場では、11月30日付日本経済新聞朝刊に掲載された植田和男日銀総裁のインタビューが12月利上げへの「地ならし」と受け止められ、円金利は各ゾーンで上昇した。中でも利上げの影響を最も受ける2年債は0.625%と約16年ぶりの高水準を記録した。利上げを嫌気した株価の下落が懸念されたが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用利回り引き上げ案が2日の厚生労働省・社会保障審議会資金運用部会で提示され、日経平均株価は前週末比300円超の水準まで買い戻された。
マーケットは日銀が12月の金融政策決定会合で利上げを実施しても、7月の利上げ後のように「サプライズ」を理由に大幅な変動を見せる可能性は大幅に低下したとみていいだろう。仮に日銀が12月利上げを決断した場合、内外のメディアは「円滑だった市場との対話」と評価するのではないか。日銀が利上げを決断するなら、市場の次の関心は来年の日銀の政策スタンスに移る。現状の市場の見方はまちまちで、日銀の本音を探る道が、19日の日銀総裁会見から始まると予想する。
<オントラックに言及した植田総裁>
日経とのインタビューで植田総裁は、追加利上げの時期に関し「データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では、近づいていると言える」と発言。関連して「基調的な物価上昇率が2%に向けて着実に上がっていく確度が高まれば、適宜のタイミングで金融緩和度合いを調整する」と述べた。
同時に「25年の春季労働交渉がどういうモメンタムになるか。それはみたい」「米国の経済政策の先行きがどうなるのか、大きなクエスチョンマークがある」とも指摘し、市場が過度に利上げを織り込むことへのけん制的な発言も加えていた。
<長期金利が1.075%、2年債は16年ぶり高水準>
このインタビューを受けたマーケット反応の多数派の意見は「12月利上げに向けた地ならしの意味合いが強い」(国内銀関係者)というイメージに集約されている、と筆者は指摘したい。「丁寧な市場との対話を意識したと見える」(別の国内銀関係者)という見方は、前回の7月利上げ時の市場の織り込みが足りなかったことへの日銀の「学習効果」があるという一部の観測とも共通する。
実際、日銀の金融政策の影響を最も受ける2年債は、0.625%と2008年10月以来の高水準をつけ、10年債(長期金利)は前週末比0.25ベーシスポイント(bp)高い1.075%まで上昇した。
<円金利スワップの織り込みは16bpで変わらず>
ただ、円金利スワップ市場での12月利上げの織り込みは、16bpと前週末の水準と変わらずの64%だった。市場の一部には、来年の春闘や米経済のリスクを確認するには、12月では早いとの声が存在するほか、2025年度予算案におけるいわゆる「103万円の壁」の問題の決着次第では、25年度の国債発行計画が大幅に上振れする余地もあり、市場の一部にはその点を確認しない段階での日銀利上げはない、と予想する声もある。
利上げの織り込みは、来年1月が22bp、来年3月に25bpとなっており、上記で触れた見方の影響が相応に出ているとも言える。
<日経平均、GPIFの運用利回り引き上げ方針で上昇>
一方、7月利上げ後は株価の下落が一時的に大きくなる局面があったが、2日の日経平均株価は前週末比304円99銭(0.80%)高の3万8513円02銭で取引を終了した。GPIFが運用利回りを引き上げるとのニュースに市場の注目が集まり、日銀利上げへの懸念が吸収されたかたちだ。
2日に開催された厚労省の社会保障審議会資金運用部会では、25年度からの運用計画で実質的な運用利回りの目標を1.7%ら1.9%に引き上げる案が提示された。市場では国内株式の運用比率が引き上げられ、外国債券などの比率が下がるとの思惑が浮上。日経平均株価の押し上げにつながった。
総じてみると、円金利は全般的に2-3bp押し上げられる一方、日経平均株価も上記の理由で上昇。ドル/円は、12月に入って11月末までのようなドル売りが一巡してドル買いが先行し、150円台に戻して取引されている。
<利上げ決定直後に始まる日銀と市場の次のフェーズ>
冒頭で言及したように、もし、日銀が12月18-19日の金融政策決定会合で利上げを決めた場合、2日の東京市場での値動きは大きな節目になったとみられるのではないか。
ただ、マーケットに組み込まれた機能として、利上げが決まった瞬間にその次の利上げの可能性を探ることになる。19日の会見で植田総裁が先々の金融政策運営に関し、どのようなメッセージを発信するのかに関心が集中するだろう。
筆者は、利上げ後の政策金利の水準を実質ベースで見た場合の利上げ余地について、植田総裁がどのような見解を示すのか、来年の春闘の動向とその根底にある日本国内の人手不足の問題をどのように捉えているのか、という点に注目したい。
現実に12月利上げを決断するのかどうかとは別に、今回の日経インタビューにおける植田総裁のコメントは示唆に富んでいたと言えるだろう。