The Tsinghua Way !! (中国MBA報告)

中国北京の清華大学で06年9月より奮闘した知られざる中国MBAの体験記。08年7月に卒業しました!

Leland O'brien Rubinstein (LOR)

2007-12-19 | クラス
金融工学(Principle of Financial Engineering)のケーススタディLeland O'brien Rubinstein (LOR) Associates Incorporatedのプレゼンテーション準備にここ数日追われていたが、そのプレゼンテーションが本日行われた。プレゼンテーション資料はクラスの6チームが全て準備しなければならないが、実際教壇でプレゼンテーションを行う人はランダムに選ばれるという気の抜けない方式がとられた。

このLORのLelandは、1973年に発表されたブラックショールズ方程式のオプション評価モデルを元に、株価が下がってもリターンが出せるPortfolio Insuranceを1974年に開発した。当時まだUC Berkley校の研究室にいたLelandはプットオプションの合成商品を「大学発ベンチャー」を設立して売っていた。プットオプションとは決められた価格で将来売ることが出来る権利で、市場価格が下がるほど受け取れる額が増える。Portfolio Insuranceとはプットオプションを一定額持っていることで、市場下落時の保険になるという考え方である。

このPortfolio Insuranceに感銘を受けたウォール街出身のJohn O'brienはLelandとRubinsteinと共に1981年LORを設立し、年金基金など機関投資家に積極的にマーケティングを始めた。始めは機関投資家もこの商品や理論に懐疑心を持っていたことやまだ先物市場がなく取引コストが高かったことから、1981年当時LORはまだ3千万ドルしか運用していなかった。しかしその後1982年にシカゴ商品取引所に先物市場が開設され、ダイナミックヘッジテクニックに先物を利用することで取引コストが大幅に下がった。さらにこの取引を自動化するプログラムを開発されたことで、1985年にはLOR自ら運用する金額が15億ドルに達したのみならず、LORからプログラムのライセンスを受けて運用される金額も135億ドルに達した。

LORの運用する金額は益々膨れ上がり、1987年にはLOR自らは50億ドル、LORからプログラムのライセンスを受けて運用される金額は450億ドルに達したが、転機となるのが1987年10月19日のブラックマンデーである。ダウ平均株価指数はこの日1日で22.6%も大暴落し、市場は機能を停止した。LORは流動性リスクを見落としていたことから、市場でプットオプションが売れない自体が発生した。この日株式インデックス先物の売りが大量に出たことから、不幸なことにブラックマンデーの原因としてLORそのものが槍玉に挙げられた。

プレゼンテーションはこのストーリーをまさにブラックショールズ方程式を用いて解説していく内容で、朱英姿(Zhu Yingzi)副教授から非常に厳しい質問が要所要所で浴びせられた。その質問に四苦八苦しながらも学生は何とか答えていたが、やはりブラックショールズ方程式を応用する上で数学に長けている修士課程の学生やエンジニア学科から聴講しに来ている学生の方がMBAの学生よりも有利だったように思う。かなりボリュームのある内容だったが、研究室で生み出された金融工学が実際に市場で検証されたストーリーそのものにやはり米国の金融のダイナミズムを感じるとともに、その内容をすごい勢いで吸収する清華大学の学生の姿に驚いた。

※写真はプレゼンテーションで準備した資料


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