The Tsinghua Way !! (中国MBA報告)

中国北京の清華大学で06年9月より奮闘した知られざる中国MBAの体験記。08年7月に卒業しました!

コーポレートガバナンスが技術開発に与える影響

2007-12-14 | 経済管理学院
レクチャー参加メモを揃えるため立て続けにレクチャーに出席しているが、今日は非常に学術的なワークショップに出席した。英Sheffield UniversityのProfessor Andrew Tylecoteによる「Fatal Flaws? Corporate Governance and Finance in Chinese Technological Development」(コーポレートガバナンスが企業の技術開発に与える影響)というワークショップで、ちょうどSTEP(Stanford Tsinghua Exchange Program)の担当教授である高旭東教授が清華大学側で主管となっていた。このワークショップでは企業が技術開発を行うためにはコーポレートガバナンスとファイナンスの制度が整っていることが必要不可欠であるという前提に立ち、中国企業の分析結果を発表している。

まず中国企業を大きく国有企業と民営企業に分けて、国有企業には技術開発の点で様々な問題点があることを指摘している。中国国有企業のマネジメントは業界をほとんど知らない政府の役人で、数年たてばローテーションで他の役所か他の国有企業に転籍する。このようなマネジメントは自身の在職中に目に見える結果を出そうとするため技術を自主開発するよりも海外からパッケージの形で導入する傾向にあると分析。さらに財務政策にも一貫性がなく、企業の長期的な技術開発体制のためのリスク資金を戦略的に調達できていないと指摘。またマネジメントは従業員や株主といったステークホルダーの方を向かず、どうやって政府と関係を強固にするかという点に腐心しているという。

この点中国の民営企業はこのような問題はなく、海外からパッケージで技術導入を行うのではなく、うまく海外の技術と組み合わせながら比較優位のある技術を自主開発しようとする傾向にあるという。自動車業界で国有企業の上海汽車(SAIC)と民営企業の奇瑞(Chery)を取り上げ、両社の取り巻くコーポレートガバナンスとファイナンスの環境が技術開発にどういう影響を与えるかという分析を行っていたことは非常に興味深かった。

ワークショップの最後では、中国国有企業でも技術開発力を底上げできる「中国的方法」があるとして、貴州省の貴州タイヤが国有企業ながらも独自技術でラジアルタイヤを開発したケースを取り上げていた。ワークショップを通じて中国人学生の中にあった雰囲気は、中国がここまで経済大国になったにも関わらず中国を代表する技術やブランドが企業の中に育っていないという危機感であった。


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