今日の一貫

農地集積加速化事業は,既ステークホルダーへの補助金として機能している

1,反民主のキャンペーンか?

民主党が廃止を主張しているおよそ3千億円弱の「農地集積加速化事業」。
これに対し、「廃止は混乱を助長する」といったキャンペーンを農業団体が展開している。
FTAにつぐ、アンチ民主キャンペーンなのか?

不思議に思ったのは、今更農協が、、なぜといったもの。
農協の機関誌、日本農業新聞の1面を使った大キャンペーンだ。

そこで再度この事業、調べてみたところ、
どうも既存ステークホルダー向けの補助金として機能しているようなのだ。
既存ステークホルダーとは、農協と、農業委員会。


2,補助金を詳細に見れば、、既ステークホルダーへ補助金がいく

①(政策目標)は、「担い手が経営する農地のうち、面的に集積される割合を平成27年に7割程度を実現する」
というのだが、現実に担い手への集積率は4割弱、その7割が対象というのだから、、、面積は推して知るべし。

3000億円がどの程度の額か、、考えてみると、
10アール1万5千円の支給だから、単純に割ると200万ha。
ちなみに我が国の水田面積は260万ha。
5年間だと、40万ha、4年間だと、50万haの面的集積をねらっていることになる。
3千億円とはそのぐらい膨大な金額。
ところが、これまで30年間で、膨大な予算をかけても17年時点での利用権設定面積は、12万haに過ぎない。
それを一気に3ないし4倍にしようというのがこの「農地集積加速化事業」。

これは現実離れした予算というほかないのでは?

②それではこの金、どこへ行くのだろうか?
ひとつは兼業農家へ行くのだろう。
この政策の趣旨が下記のように示されている。、

(農地の面的集積を促進)
土地利用型の農業等について、担い手農家が規模拡大を行いつつ効率的な経営を実現するためには、小規模農家や高齢農家等から委ねられる農地を、面的にまとめ、担い手農家に貸し付ける取組(面的集積)を進める必要があります。

もう一つは、コーディネート機能を果たす農業委員会や農協へ行くのだろう。
次のように書かれている

農地集積の調整活動の支援
市町村段階に農地の利用集積等を実現する推進員を設置する場合に、その設置費用を支援することにより、農業委員会をはじめとする関係者による農地集積の調整に必要な活動を促進


3,「農地集積加速化事業」の性格は集落営農支援・農協支援補助金か?

①非現実的な農地流動化面積の設定、
②補助金受け取り者としての、兼業農家、農協、農業委員会、、、

となると、なるほどこの補助金の性格が見えてくる。

要は集落営農補助金か?
集落営農は赤字がほとんど。
というのも品目横断の補助金目的。
しかし5年後には法人化を目指さなければならない。
もし法人化できない場合には、補助金の返納もあり得ると脅しが入っている。
そこにこの補正予算だ。
これをプールしておけば、補助金返納への対応も可能。

したがって、3千億円は、担い手育成などという目的(担い手農家が規模拡大を行いつつ効率的な経営を実現するため)を横目にしながら、結局は農業経営者ではなく、兼業農家や農協、さらには集落営農への救済策として機能している。

農協がこの補助金廃止に、反対キャンペーンをしているのも納得がいく。

果たして、この補助金当初からこうした意図があったかどうかは不明だが(むしろなかったといった方が良いのだろうが)、実際には、今まで同様どこかに消えていく性格の金だ。

無駄金といえば無駄金。
民主党がこれに目をつけたのは卓見。
だが、はたして、廃止を貫けるのか?
FTAの時のように腰砕けになるのか、、
ここは見物だ。


4,あるべき農地集積加速化事業のスキームは?

元々、担い手を育成するため、小規模農家や高齢農家が安心して農地を委ねる政策なら、
50haの農家をいくつ作るとか、
30haの農家を如何に50haにし、さらに50haの農家のうち何経営を100haにする、といった計画、必要面積を割り出して予算化するのがまっとうな事業計画ではと思うのだが、、。

そのためには、農業経営者への予算措置をし、彼らの地代負担力を高め、農業経営者が地代を支払う仕組みにするのが、経済法則にも則った政策として展望されるのではないか、、。
その様な補助金ならいくら使っても私は良いと思うのだが、、

5,特に気になるのは、農地コーディネーター。

コーディネーターとは、事業では「農地集積の調整活動の支援」といわれている。

①大規模農家をいくつ作るかといった、上記のスキームに従えば、農業経営者の規模拡大をアシストするのが調整者になる。
だが、現行の「農地集積加速化事業」補助金のそれは違っている。
おもに小規模農家や高齢農家対応で、農業経営者の顔が見えていない。

②しかも、コーディネート機能を担うのは、「農業委員会をはじめとする関係者による農地集積の調整に必要な活動」と書かれており、実質的に、農協など旧来からのステークホルダーに限られている。

旧来からの人達となれば、ますます、兼業小規模農家の対極にある農業経営者は「集落営農」になってしまう。ここからも、結局は集落営農支援措置になるのだろう。

このコーディネート機能の担い手は、改正農地法でも変わっていない。
これは、171国会で成立した改正農地法(これ自体は評価に値するものだが、、)の欠点として何度か指摘したもの。つまり仏作って魂を入れない事になる可能性がある。

そのため、農地法改正の趣旨である、優良農地の確保、所有から利用への転換がなされない最大の理由になってしまう可能性をはらんでいる。
法律が変わったから、今までできなかった人々でもできる様になる、、とするのが農水省の考えなのだろうが、いままでできなかった人々に任せては、いくら法律が変わってもできない、と考えるのが通常の考えではないか。
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