今日の一貫

農業への企業参入条件緩和の効果と課題 NHKニュースアップ

NHKニュースアップ、朝7時20分から。
明日、29日のテーマは、「法改正から1年、農業への企業参入条件緩和の効果と課題」

内容は、まー今のところはいいことづくめ。なぜなら、参入場所は、耕作者が不在になるような中山間地に限られ、また行政との連携下で対応しているから。
だがこれがこのままであるはずもないが、しかし、実際企業にとって農業参入はそれほどメリットがあるわけではない、というのが一般的な考え。

それはともあれ、以下ニュースアップの内容
06年8月29日(火)(午前7時20~27分30秒・約7分半)

去年9月1日、改正農業経営基盤強化法が施行され、これまで特区でしか認められていなかった、農地を借りて民間企業が農業参入することが出来るようになりました。これは、企業が市町村と農業に取り組む協定を結ぶことで農地が借りられる仕組みです。これにより04年10月には71だった参入法人数は、今年3月には156まで増え、中には、建設業者が公共事業の減少により農業に参入したケースや、NPO法人が野菜作りに取り組んでいるケースも出始めています。
農業経営基盤強化法改正から1年、企業が農業に参入しやすくなったことの効果と今後の課題について、宮城大学大学院の大泉一貫(おおいずみ かずぬき)教授に伺います。

Q1:法改正から1年、農業分野への参入企業が増加するなどの動きが見られている。農業に企業が参入しやすくなったことの意味とは何か(法改正の意図とは何か)?

まず日本農業が弱体化したと言うことですね。その農業ですが、農業の耕作者・担い手は我が国では農家に限定されています。これは農地法という法律に定められています。しかし、農家は近年、兼業化などで、農業を営む人が圧倒的に減少し、また高齢化しています。そのため、耕作しない農地が増加したり、食糧自給率も低下するという状況を呈しているんですね。。
その一方で、国民的には農業に興味を持つ人が大変多くなっています。例えば、農業に自分の生き甲斐やゆとりの時間を見いだし、市民農園で農業を経験したり、定年後に農業に従事したり、さらにはもっと本格的に、農業に産業としての可能性を見いだす会社も見られるようになってきました。
つまりここには、一方に農業から撤退する人がいて、他方に新たに参入したい人がいるという、ミスマッチがどうも生じているんですね。やりたい人と撤退したい人の入れ替えが自由にできないと言う状況にあったわけです。
そこでそれを解消しようとして、農業をしたい人の参入を、様々な条件付きではありますが認めようと、昨年、「農業経営基盤強化促進法」という法律の改正が行われたわけです。

Q2:農業分野に企業が参入することで、どんな効果が生まれるのか?

A2:実際に参入している企業を見ますとね、建設業や食品業関係の企業が目立っています。
建設会社は、ある種の人材派遣業で、人員配置をうまく処理するノウハウを持っています。
土地を使った農業は、実は、大規模化すればするほど労働力の調達は困難を極めるんですね。そこに工程管理や人員配置を得意とする建設業者のノウハウが生きています。
また、土地利用型の農業に限らず、蘭栽培や、焼酎の原料供給など、より付加価値の高い農業を展開している事例もあります。
また、消費者のニーズへ対応することや、顧客を満足させるとなれば、食品産業、特に外食産業の方が上手なのでしょうね。彼らは、国産野菜や有機野菜にニースがあることを良く知っています。プロダクトアウト(生産だけすればいいと)の発想しかなく、ニーズに対応しきれないこれまでの農業にやはりマーケットイン(売れるものを中心にといった)のノウハウを提供していると言えます。お客を意識し、消費ニーズに基づいた生産という考えを農村に注入しています。

企業参入のメリットは、新たな知識アイディアの創造ができ、そのための人材を農家に限ることなく、広く社会に問うことができるということといっていいと思います。それはそれなりの成果も見えつつある。


Q3:一方で、企業参入によって、作物価格が不安定になったり、農地が乱開発されたり、地域社会が崩壊するなどの不安感を持つ農家もいるかと思うが、農家や地域にとってデメリットはないのか?
A3:考えられる幾つか問題点をあげてみますと、まず、①農地の投機的取得のおそれや、②面的な利用が担保されなくなるといった懸念があります。さらには、③産業廃棄物の投棄場所として利用されるのではないか、とか、④兼業農家が農業から排除され、農業者の集団的地域活動が破壊されてしまうのではないかといった不安をあげる人もいます。さらには、⑤農協などには、自分たちのビジネスチャンスが奪われてしまうのではないかという不安もあります。企業は、地域との折り合いをうまくやてくれるのかという不安や、「よそ者にかき回されたくない」という漠然とした気持ちも底流にはある様に思います。

しかし、昨年改正した法律では、新規参入企業は、行政へ届け出をして、といったような厳格な監視体制にあることから、こうした懸念は顕在化していません。また経済のパイを農村で奪い合うのではなく、新たな知識によって新たなパイを作るという行為となっているため、専業農家のやる気も触発されたり、地域での農業産出額が増加したり、地域との親和性もけっして悪くはなく、プラスの要素の方が、今のところは多いようですね。

Q4:この1年で見えてきた課題とは何か?
A4:企業の農業参入といっても、今のところ、耕作者が不在となるような中山間地に限定されたり、といったぐあいで、まだまだ参入のハードルは高いんですね。そうなると、企業にとってもさほどメリットを感じないと言うことも見えてきたようです。
今後、日本農業の発展のためには、平場などにも進出していく必要があるのでしょう。ただ、平場の水田農業では、集落で話し合い、農家世帯が中心となって経営を行う集落営農という仕組みを、政策や農協が、今必死になって推進しようとしています。したがいまして、やがては、こうした仕組みと企業の規模拡大とがいずれ衝突することもあり得るわけで、先に挙げた懸念が健在化する可能性もでてきます。


Q5:今後この取り組みを進めていくにあたって、重要な視点(視座)とは何か?
・(日本農業の将来のあり方を踏まえて、何を考えておくべきか、ご指摘をお願いいたします

A5:日本農業の発展のためには、何が最も重要かと視点を失わないことだと思います。
それは農地資源を有効に利用市、付加価値の高い農業を実現することだと思いますが、そのためには人材が必要なこと、もっと言えばノウハウや、新たなビジネスモデルが必要とされているということです。それを提供できるのは誰か、やはり農業を「やりたい」と積極的に思ってる人なのだということですね。それが、農家の人であれ、企業の人であれ、やはり今後ともやる気のある人たちの農業への参入を考えていかなければならないという事でしょうね。

コメント一覧

ikkann
企業の参入
企業の農業参入に関して、どうもよくないイメージを持っている消費者の方もいるようです。良い国産農産物を手に入れるためにも必要なことと思うのですが。ただ、企業にとって参入が割の合うものか否かは、考えどころですね。
LUCKY
農業の資本主義化が進むかどうかですね
今までは、国の保護という傘の下で大部分の農家が事業を営んできたわけですが、これからは、顧客本位で市場が成り立つような農業の構造改革をのぞみたいです。

そのためには、優秀な企業にはもっと農業参入への門戸を開くような開放政策を期待します。
LUCKY
農業の資本主義化が進むかどうかですね
今までは、国の保護という傘の下で大部分の農家が事業を営んできたわけですが、これからは、顧客本位で市場が成り立つような農業の構造改革をのぞみたいです。

そのためには、優秀な企業にはもっと農業参入への門戸を開くような開放政策を期待します。
ikkann
集落営農の失敗のあとに本物がやってくるということですね
西部劇。悪徳兄弟が、街のみんなを暴力でしたがえ、街の資産を私物化し、食いつぶしてしまい荒涼としているところに、流れ者のガンマンがやってきて悪徳兄弟一味を退治し、再び新たなまちづくりをみんなで始めるといった西部劇のストーリーが思い浮かびます。
小林 肇
JAが一生懸命作り上げる集落営農組織が成り立たなくなったら、成功した大規模農家や企業が参入していくといった順序ではないでしょうか・・

今のままでは、まとまった農地を手に入れるのが大変でしたからね。



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