今日の一貫

食料安保会議で、「真の食料安全保障政策の確立を急げ」を提言、記者会見 

この間、何度か会合を持って提言書をまとめてきた。
水産卸もそうだが、食糧安保もそのひとつ。

この会議正式名称は、「食料安全保障会議」というもの。
エネルギー問題や環境問題をテーマにさまざまな提言活動をしている「地球を考える会」(2002年2月立ち上げ)の有馬朗人会長(元・東大総長)の呼びかけで立ち上げられたもの。

メンバーは、
阿南久 全国消費者団体連絡会事務局長、
大泉一貫 宮城大学副学長
桑原道夫 丸紅副社長
澤浦彰治 グリーンリーフ代表
木勇樹 元農水事務次官、元農林漁業金融公庫総裁
中村靖彦 東京農業大学客員教授、元NHK解説委員
早房長治 地球市民ジャーナリスト工房代表
堀口健治 早稲田大学副総長
三輪睿太郎 農林水産技術会議議長
村田泰夫 明治大学客員教授、元朝日新聞編集委員
 議長は高木勇樹氏。

政権交代と関係なく作業を続けてきたもの。
また、抜本的な民主党農政が打ち出される前のタイミングで緊急提言しようとしたもの。
17日に菅副代表に提出。
19日には、山田副大臣に提出予定も、国会本会議が深夜に及ぶことになったため来週以降にづれこむことに。

しかし、民主党の政府に入ってる人々の頭は、どうも何重にも回転しっぱなしでじっくり考えてる時間はなさそうだ。

当提言の中身は、
①総合的な穀物戦略の構築
②生産調整に対する考え方、
③直接支払制度の実施によるセーフティネット
④総合的経営政策
⑤WTO交渉方針

民主党とちがいがあるのか?
あるいは違わないのか、?

以下提言内容

真の食料安全保障政策の確立を急げ(食料安全保障会議)

○基本認識
1)わが国の食料安全保障は、国内生産を基本としながらも安定輸入と備蓄を組み合わせて達成することになっている。しかし農地、人、経営体に関するいずれの指標1をみても、国民の求めている「国内生産」が大きく揺らいでいる。とくにわが国農業の基幹である水田農業はその4割が生産調整の対象2となる異常な状況にある。

2) 世界の食料とくに穀物の需給と価格の動向は、世界人口の増加のほかバイオ燃料などの新規需要拡大、BRICsなど新興工業国の経済発展に伴う食料需要の増大で予断を許さない状況にある。2008年の穀物価格の高騰時には禁輸措置を講じる国が出るなど食料とくに穀物の需給逼迫が与える政治的、社会的な影響は極めて大きい。
一方、世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンドは、改革の継続3をめざしている。またわが国はEPA、FTAも国策として推進すべきもの4としている。

3) 水田は連作障害がなく温暖多雨のわが国にもっとも適した農業生産手段であり、かつ優れた地域資源である。地域活力の源泉であるとともに伝統文化継承の起点である水田農業は、食料の供給という基本的な役割のほか環境を保全するかけがえのないシステムであり、総合的・戦略的な政策が求められる。

4) 穀物は人類の生存にとって最もカロリー効率の高い食料のひとつで、いずれの国も、粉食、粒食の別はあっても、穀物を食生活の基本としている。また穀物は家畜の飼料としても重要である。わが国の穀物自給率は、主食用の米と麦の一部を除き穀物生産をおろそかにしてきたことから、3割を切る水準5にある。水田農業の現状から、このまま推移すればさらに低下の一途をたどるおそれがある。主食用に偏った現行の米づくり政策を改め、大胆な発想転換により国としての総合的穀物戦略を樹立し、真の食料安全保障政策を確立することが喫緊の課題である。

  以上の基本認識から、以下提言する。

Ⅰ国としての穀物戦略を樹立し、展望なき主食用米の生産調整から脱却する

1) 5年後を目標に、延べ作付面積500万ha・耕地利用率110%をめざし、品目・用途ごとの穀物(含大豆、エコフィード)について総合戦略を定める。現在27%の穀物自給率を35%に引き上げる⁶。
 
2) 主食用米(含輸出向け)だけでなく、加工用米、米粉用米、飼料用米、機能性米などの米づくり7を経営体の判断で選択できるようにし、現行の国主導の生産調整は廃止する。あわせて品目・用途ごとの生産、流通、加工、販売体制の構築を支援するとともに、非食用米を食用米に流用することのない措置を講じる。この需要に見合った米作りにより水田農業を活性化させる。
輸入トウモロコシや輸入小麦の代替になる「穀物生産200万tプロジェクト」を推進する。

3) これまで「捨てづくり」になりがちだった麦、大豆、野菜などの転作作物を水田輪作体系の中に組み込むなどして「本作化」する。耕作放棄地の復旧にも本格的に取り組み、当面20万haの農地を確保する「本作化・耕作放棄地活用プロジェクト」を推進する。

4) わが国の水田農業は百数十万戸の農家に担われているが、平均規模は1ha余りと小さく、稲作所得で生計を営む主業農家は少ないのが実態9である。当面、所有から利用に転換した改正農地法を徹底活用することで、経営的に意味のある面的集積を実現するプログラムを策定する。
中山間地域などこれが困難な地域では、中山間地域等直接支払制度の検証を通じ、農地の徹底活用を含めた新たな地域政策を構築する。

5) 農地は食料生産という公共の福祉のために存在するのだから、農地制度については、わが国の食料安全保障を確実なものにするためにも、「公共財」であるとの観点をより明確にした法体系10に改めるべきである。

6) WTO農業交渉では、とくに重要な米については、ウルグアイ・ラウンドでの特例措置の導入と、その後自主的に関税措置へ切り換えた経験に学ぶべきである。すなわち、特例措置の代償としてミニマム・アクセス(MA)米を大量に輸入せざるを得なくなったことにより、
①国内産米が国内の加工用米市場を失ったこと11、
②MA米を大量に輸入しながら国内産米の生産調整を強化する矛盾が激化したことである。ドーハ・ラウンドでは、MA米の大量上積みを招くような誤った選択をしないように、政府は徹底した情報開示のもとに国民的論議を巻き起こし、真の食料安全保障政策の確立に資する選択12をすべきである。


Ⅱ農業経営体を支える直接支払制度と農業経営総合支援制度を構築する

1) 2年後をめどに現行の生産調整にかかわる補助金・交付金などを廃止し、その財源を水田における選択的米作りのための透明性ある生産、加工、流通、販売体制の構築と、本作化・耕作放棄地活用プロジェクトの支援対策費とする。
とくに飼料用米・加工用米については国家的戦略作物として位置づけ、3年以内に品種の改良、栽培技術の改善、圃場の大規模化などインフラ整備の成果をあげ得るよう計画的に短期集中投資13を実施し、大幅な増収とコスト削減をはかる。
農産物価格は需給と品質で決まることを基本とし、そのため透明性のある健全な市場を緊急に整備する。

2) 農業経営体のやる気を支え国内農業生産を維持するため、直接支払制度を導入する。穀物については選択的米づくりのセーフティネットとして用途別直接支払額を明示する。財源としては廃止する生産調整がらみの補助金・交付金を充てるほか、国民の理解を得ながら所要財源14を確保する。また輸入穀物に新たな財源を求める仕組みも模索15する。

3) 改正農地法の徹底活用と実効確保のため、また農地を利用したい農業経営体や新規参入者に使い勝手のよい仕組みとするため、現行の農地制度の運用体制を見直し民の活用を含め開かれた透明性の高いシステムを導入する。

4) すべての持続する農業経営体を対象に、農地・人・技術・経営ノウハウなどの経営資源を自由に活用できるよう、農業経営を多面的に支援する「農業経営総合支援制度」を構築する。その対象にはみずから農業経営を行えるようになった農協も含める。補助金など間接的に支援するこれまでの方式から、今後は経営体を直接支援する政策手法・政策ルートに転換する。

5) 担い手の育成に当たっては、規模の大小で選別するのではなく持続的経営体であるか否か、すなわち経営力をみることとする16。

6) これらの提言を実行するに当たって、5年程度の明確でわかりやすい工程表を作成する。また農地集積、インフラ整備、経営体の存在など一定の要件をみたすモデル地域を対象に、提言を先行実施することとする17。


Ⅲ消費者が利益を実感し、環境保全にも資する農政改革を断行する

1) 消費者負担型の価格政策から財政負担型の所得政策に軸足を移す農政改革を断行することによって合理的な価格形成を実現し、消費者・国民が改革の利益を実感できるようにする。改革論議においては透明性を確保し、国民の納得を得ながら進めていく仕組みを構築する。

2) 農産物の安全を確保するとともに、生産履歴や品質を適正に表示し、消費者が安心・納得して商品を選択できる体制を整備する。

3) 低炭素社会の実現が国民的課題になっているなか、農業や森林の果たす環境保全機能は重要である。環境保全型農業に取り組む持続可能な農業経営体18を支援する仕組みを、国民の理解を得ながら構築する。
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