今日の一貫

先物上場不認可の農水省審議会

3月29日の、食料・農業・農村審議会の内容は、議事録でやがて出てくるが、その前に、業界紙が、およそ発言に沿った記事を載せているので転載しよう。

これは米麦日報紙の岡野氏が書いたもの。


◎食糧部会コメ先物論議に終了宣言、ガス抜さと戦勝報告に終始
    農水省「将来」にコメントせず、JA交渉力ード枯渇の指摘も


 東京穀物商品取引所と関西商品取引所によるコメ先物試験上場申請に対して中川昭一農相が不認可の方向で判断したことを明らかにした翌29日、食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会食糧部会(部会長=八木宏典東大大学院教授)が開かれた。メイン議題である基本指針(米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針)をはじめとした政策課席(前半)と、コメ先物(後半)とに分けて論議。
本紙本号では、あえて先物のみをとりあげる。

 前半の論議では農林水産省側の説明者を総合食料局食糧部の高橋洋計画課長が務めたが、後半の論議では総合食料局の岡島正明局長自身が務めた。食糧部会の先物論議ではこれまで、生産側委員の否定的な発言を受けて、その他の委員が消極的な賛成論を展開するのが通例だったが、この日は逆転、「第三者委員を中心とした珍しく鋭い口調の〃苦言〃の後で、生産側委員の〃戦勝報告”がなされた」(ある識者)。一通り委員の発言が終わった後で、岡島局長による短いコメントを最後に、八木部会長は「食糧部会におけるコメ先物論議の終了」を宣言。結果的に「第三者委員の発言は、単なるガス抜きに終わった」(同)とされる。

 岡島局長の最初の説明は、「大臣が不認可の方向で判断することを決断した」ことを前提に始まった。それによると、①試験上場の認可要件は、「先物取引を公正かつ円滑にするために十分な取引量が見込まれること」と「生産及び流通に著しい支障を及ぼし、又は及ぼす恐れがないこと」(ともに商品取引所法第155条第3項2のロ)の2つ。このうち前者についてはクリアしている。②後者は「生産・流通・価格政策と整合的であるかどうか」と「十分でなくとも一定程度当業者の利用の意向があるかどうか」によって判断。③当業者の利用の意向はクリアできているが、政策との整合性はとれていない
との主張。特に最後の政策との整合性については、「現行政策は、生産調整の非参加者を参加へ誘導する基調にある。先物は、この方向性を減ずるもの」とした。

 これに対する第三者委員の声は、いずれも「大臣の判断だからやむをえないが」との〃枕詞”がつく。〃苦言〃は、例えば以下の通り。

「挙証責任は役所にある。『著しい支障』が要件なら真正面から立証しなければ誠実と言えない」、「米政策改革スタート時なら無理すべきでなかったと言えるが、今になって『あるべき姿』に到達していないからと言われても…。であるなら、最初から真面目に議論などしなかった」、「法律からするとスレスレ。相撲で言えば徳俵に足を置いているようなもの。政策判断は分かるが、いつまでも続けていては不透明にすぎる。なるべく早く土俵の真ん中に立てるよう努力すべき」(いずれも竹内克伸委員=㈱証券保管振替機構社長)、

「『著しい支障』の説明になっていない。現物市場を活性化させるためにも、引き続き先物の勉強が必要」(立花宏委員=(社)日本経団連常務)、

「食糧部会論議は(判断の)どこに織り込まれたのか」、「産地側のリスクを生産者に負わせているままでいいのか」、「『あるべき姿』に到達するのか不安。シグナルを伝えるなら現物より先物のほうが効果が大きいのではないか」、「『あるべき姿』に到達しなかったらどうなるのか。先物はいつまでも入れないとういことか」(いずれも大泉一貫委員=宮城大事業構想学部長)、

「『著しい支障』が『政策との整合性』にどうつながるのか分からない」(岩田三代委員=日本経済新聞社編集委員)

第三者委員のうち、唯一の例外と言っていい発言が、中村隆司委員(製粉協会理事)によるもの。「実は、今日が最後の論議であれば、もう少し(申請の認可を)延ばすべきと言おうと考えていた。他の先物は、世界中ならプレイヤーが集まるが、日本の米は単品に近く、へツジになるかどうか分からない。得をする人がいるからには損をする人もいる。相当なプレイヤーが必要だが理解が得られない分、参加が望めそうもない。研究会でも作って、日本の米が先物でリスクへツジできるものかどうか検証してはどうか。〃未来永劫”でなく、様々な勉強をして、必要であるなら早く入れるべき」。

同様に藤尾益也委員(全米販副理事長)も「売り手にも買い手にも勉強会の必要がある。これには行政の協力をお願いしたい」としている。


 一方、生産者側委員の声は、「生産者の一人として不認可と聞いてほっとしている」(今井延子委員=全国女性農業経営者会議会長)との発言に代表されるが、「勉強会はやるべき。引き続き整合性ある政策を進めてほしい」(大蔵浜恵委員=JA全国女性協会長)との声も。

また藤岡茂憲委員((社)日本農業法人協会理事)の発言は「これで終わりではなく、近い将来、生産・流通双方にメリットがあるなら、良いタイミングで入れるべき」との慎重な言い回しにとどまった。

〃戦勝報告”と評されたのは、何より山田俊男委員(全中専務)の発言。農水省の不認可判断に賛意を表した上で、改めて先物に対する否定的な見解を展開。その上で、「先物を入れるための条件」として、①経営感覚に優れた担い手が相当数いる、②コメ以外の作物も含め計画生産がよりスムーズに進む環境、③品目横断も含めた経営安定対策が確立されている、④成熟した現物市場としてのセンター運営--をあげた。最後に岡島局長は「本日頂戴した意見をどう活かすか岨噂していく。

現時点においては東京・関西両取引所の申請に対して不認可の判断を下したということ。〃将来”に対するコメントは差し控えさせていただく」としている。
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