BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

囚われの愛 1

2024年04月17日 | 天上の愛地上の恋 オメガバースパラレル二次創作小説「囚われの愛」
「天上の愛 地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。


2020年、アメリカ・NY。

世界中で謎のウィルスが猛威をふるい、ロックダウンされた地区で暮しているアルフレート=フェリックスは、忙しなくパソコンのキーボードを叩きながら、ある小説を仕上げようとしていた。
それは、自分の高祖父にあたる同姓同名の司祭―厳密に言えば元司祭だが―が、第一次世界大戦後、身寄りのない孤児達にその生涯を捧げた彼の足跡と功績を描いたものであった。
「ふぅ・・」
アルフレートはブルーライトカットの眼鏡を外して溜息を吐いた後、すっかり冷めてしまったコーヒーを流しに捨てた。
空腹を覚えた彼は、冷蔵庫の中からパンとチーズを取り出して簡単なサンドイッチを作ると、それを一口齧った。
数日前に近くのスーパーで買い物を済ませたばかりだというのに、冷蔵庫の中にはワインとパン、そしてチーズしか残っていない。
この僅かな食糧でこのロックダウン期間中を乗り切る事が出来るのか―アルフレートがそんな事を考えていた時、誰かがアパートの呼び鈴を鳴らした。
「どちら様ですか?」
自衛の為に所持している拳銃をデスクの引き出しから取り出したアルフレートは、恐る恐る拳銃を構えながらドアチェーンを解除した。
「わたしだ、アルフレート。」
「ルドルフ様・・」
恋人の顔を見た途端、安堵の表情を浮かべた。
「物騒なものを下ろせ。」
「すいません・・」
「最近、連絡が来ないから、心配してみたが・・元気そうで安心した。」
「ルドルフ様、どうしてこちらへ?」
「そろそろ、抑制剤が切れる頃だと思ってな。」
ルドルフはそう言うと、アルフレートに抑制剤が入った袋を手渡した。
「ありがとうございます。」
「今、何をしていたんだ?」
「高祖父の生涯を題材に小説を書いていたんです。」
「そうか。」
ルドルフは、アルフレートの為に持って来た食糧を冷蔵庫に入れていると、ワインボトルが一本入っている事に気づいた。
「これ、空けていいか?」
「いいですよ。今夜は、飲みたい気分なんです。」
アルフレートは小説の執筆を中断すると、ルドルフと共に軽い夕食を取った。
「その本は?」
「これは、高祖父の日記です。」
古い革張りの日記帳をアルフレートから受け取ったルドルフは、日記帳の内表紙に一枚の写真が貼られている事に気づいた。
その写真には、司祭服姿のアルフレートの高祖父と、軍服姿の自分の高祖父の姿が写っていた。
「これは・・」
「高祖父がかつて勤務していたアウグスティーナ教会で見つけました。まさか、隣に写っておられるのがルドルフ様の高祖父様だったなんて、驚きました。」
「わたしもだ。」
ルドルフは、そう言うと写真に写っている自分の高祖父―ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=オーストリア、オーストリア=ハンガリー帝国皇太子を見た。
「アルフレート、明日付き合って欲しい所があるんだが、いいか?」
「はい。」
翌日、アルフレートがルドルフと共に向かったのは、ルドルフの自宅にある書斎だった。
「高祖父の書斎に、こんな本があった。」
「“Ω迫害の歴史”・・ルドルフ様の高祖父様は、αだったのですか?」
「あぁ。それに、お前の高祖父とわたしの高祖父は、恋人同士だったのかもしれないな。」
「何故、それがわかったのですか?」
「高祖父が南米で農園を経営していた事は知っているだろう?その頃の写真に、君の高祖父と写っている写真が多いし、それに、ペアリングが見つかった。」
ルドルフがアルフレートに見せたペアリングは、互いの誕生石が嵌め込まれ、“from R to A”と裏に彫られていた。
「アルフレート、わたしの高祖父とお前の高祖父との関係を軸に書いてみたらどうだ?」
「面白そうですね。」
ルドルフの助言を受け、アルフレートはルドルフの書斎を時折借りながら、小説の執筆に励んだ。
だが―
「わからない・・」
「何が、わからないんだ?」
「何故、あなたの高祖父が、身分を捨て、わたしの高祖父と暮らしたのだろうと・・」
「そこが最大のミステリーだな。少し休め、根詰めると疲れるぞ。」
「わかりました。」
アルフレートは、暫く小説の執筆を休み、ルドルフと共に高祖父達の故郷であるウィーンで休暇を取る事にした。
「何だか、この街は100年以上経っても変わらないな。」
「ええ・・」

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