飄評踉踉

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火車の今日は我が門を遣り過ぎて・・・

2007-01-19 16:01:34 | 
哀れ何処へ巡りゆくらむ

 先週末に『火車』を新潮文庫版で読破しました。
 本作は、高山文彦監督が「『パトレイバー2』は・・・『火車』的な処理が施されている」と言っていたのをだいぶ前に読んでから、ずっと読んでおきたいと思っていた作品です。
 結局、高山監督が『パトレイバー2』のどこを『火車』的と言っているのかはよく分からなかったのですが、なんとなく雰囲気が似ているのは分かりました。それは、両作とも「高度情報化社会」の急所をついているからだと思います。
 そこで、今日は、『火車』をこの観点から検討してみます(ネタバレ注意!)。

1.本作の真犯人である新城喬子は他人の戸籍をのっとるという手段をとっています。
この手段が本作でほぼ成功してしまっているのは、戸籍を始めとした公共機関の情報管理が文書主義でなされているからです。そして、情報化社会では扱われる情報が多いのでチェックを完璧にすることはほとんど無理です。だから、こうした文書の運用は、「たぶん正しいことが書いてあるだろう」という根拠なき信頼をベースになされることになります。とすれば、公共機関に偽の個人情報を積み上げることは可能ですし、それによって虚構の個人を公的に作り出すことは可能になるわけですね。
 『パトレイバー2』で用いられている手法もこれと似ています。『パトレイバー2』でとられていたのは、語情報を流しまくることで虚構の戦争を作り出すというものでした。
 両作とも「人々は高度情報化社会に生きているにもかかわらず情報を信頼しすぎる」ということを指摘しているので、この点については『パトレイバー2』は『火車』的ともいえそうです。もっとも、宮部みゆきさんは押井守監督ほど説教臭くはないですが(笑)。
このように、人々が信頼ベースで情報を扱ってしまうのは、高度情報化社会においては、扱われる情報が多すぎるとともに、情報の送り手と受け手の距離が大きくなりすぎて相互の顔を想像できなくなっている点にもあるとも考えられます。

2.また、新城喬子は戸籍をのっとる対象を選ぶのに通販のアンケートで集めたデータベースを用いています。先の手段は「情報の受け手にとって送り手が遠い存在であること」を利用したものといえますが、この手段は「情報の送り手にとって受け手が遠い存在であること」を利用したものといえそうです。
私は、不謹慎にも、この手段は情報をより一極集中させやすくなった現在の「グーグル・アマゾン化する社会」においてこそ使えそうだと思いました。それだけに、小説中においてもリアリティのない新城喬子が私にはやけにリアルな存在に感じられます。「新城喬子」は意外と我々の近くにいるかもしれません。

3.何にせよ、パソコンさえ普及していなかった時代にこれだけ情報の本質を見抜いていた宮部さんの感性は素晴らしいと思います。その一方で、私は、「IT社会は『何処へ巡りゆくらむ』」という気持ちを禁じえなくなりました。




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1 コメント

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na (na)
2007-01-19 16:36:33
新宿ルミネスト7Fに夜景がかなりイケてるカフェ&ラウンジがありますよ~!
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