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自作アライメントゲージについて(ちょっと改訂版)

2009-09-30 | 自作アライメントゲージ

※2023年12月更新※

なんと14年ぶりに、新しい自作アライメントゲージを作っています。カテゴリ「自作アライメントゲージ」に記事を書いていきますので良かったらそちらも参照ください。

「自作アライメントゲージ」のブログ記事一覧-HRDworld


このブログをご覧になって下さる方の中には、「アライメントゲージ 自作」などの検索ワードでここに来られた方も多いみたいです。
アライメントゲージを自作しようという方にとってはちょっと情報が少ないと思いますので、もう少し書いてみようと思います。

自分のアライメントゲージについてのまとめ的なページにしようと思いますが、全体的に書きかけです。写真や実際の作業などなど、随時追記して行く予定です。

とりあえず、

  • HRD式ゲージの構成
  • キャンバ測定
  • トー測定
  • クルマを水平にするには
  • どんな値に調整するか?

ってな感じでまとめてみます。
ではでは、いってみましょう。



1.HRD式ゲージの構成

まずはクルマに取り付けるゲージの構成です。
①ゲージ本体
②プレート
③貫通ロングナット(写真では見えてません)
④ゲージ用カラー及びゲージ取り付けボルト
⑤プレート用カラー及びプレート取り付けボルト

まず車両のホイールナット2つを貫通ロングナットに変えます。貫通なので、これで外からボルト止めができるようになります。この貫通ナットに円盤状のプレートをボルト止めします。次に、ゲージ本体をスペーサを使って装着します。


ゲージ本体には釣り糸を引っ掛ける部分と、スケールが付けてあります。
写真はトー測定の様子です。前後に張った糸を基準線として、スケールの値を読みます。

ゲージ本体の材料はアルミ(A6063)のアングル(30×30,t3)、フラットバー(30,t3)です。ホームセンターでよく売っている材料です。プレートの円板はA5052ですが、これはオークションで購入した端材です(φ140,t4)。




2.キャンバ測定

クルマを正面から見て、ホイールが鉛直方向となす角度がキャンバです。
おもりをつけた糸を垂らした線が鉛直方向ですから、クルマを水平にしてホイールとの角度を測ればキャンバの測定ができるわけです。HRD方式でもこれを利用します。ゲージ本体を立てて固定し、上側からおもりをつけた糸を吊るします。この糸とゲージの角度を測ればいいのですが、角度を測るというのは案外難しいものです。
そこで便利な三角関数を利用するわけです。

ゲージ上側中央の吊るす点、下側中央の点、糸と下側ゲージが交わる点の三点を頂点とする直角三角形を考えます。斜辺(糸の辺)の長さをL、短い辺の長さをa、もうひとつの辺の長さをb、キャンバ角をθとすると、θを求めるには、

となります。
つまり、aとbの長さがわかればキャンバ角が求められることになります。
aはゲージの寸法ですからもちろんわかります。一方bはゲージに取り付けたスケールから読みとります。

HRD式ゲージではbの寸法は450mmです。
この寸法が大きいほど、同じ角度でもaの寸法が大きくなるので読み取りやすくなりますが、ゲージ自体が大きくなることでかさばりますし、そもそもタイヤ径より大きくなると測定できない、また誤差も拡大しますのでこんなもんかなあ、と思っています。ちなみにZ32純正だと銘柄にもよると思いますがタイヤ径は630-640mmくらいというところです。

…久しぶりに三角関数に再会した方も多いんじゃないですか?もしわからない方は数学の教科書を引っ張り出してみましょう!え?捨てちゃった?じゃあこのへんを。



3.トー測定

クルマを上から見て、クルマの中心線と各タイヤのなす角度がトーです。
三角関数を使って角度を測る方法は先述のとおりで、トー測定でも利用します。
基準線からの距離を測って…とやりたいのですが、トーの場合この基準線をどうするかが問題になります。
トーの基準はクルマの中心線ということになりますが、クルマの中心線というのは目に見えません。そもそも中心線なんて存在するんでしょうか。
ということで、タイヤの位置を基準に基準線を引くことを考えます。

トー測定時はゲージを水平にして使います。
前後のハブ面から外側に一定の距離だけ離れたの点を結べば、左右に平行な線を引くことができ、これを基準としてトーを測定できる、という考え方です。
ゲージを水平にし、前後ゲージの中心間に糸を張れば、それが基準線になるというわけです。
無論、前後のトレッドに差がある場合はハブ面からの距離(カラーの厚さ)で補正をします。また、前後キャンバに著しく差をつけている場合、ハブセンターの位置でのトレッドが変化している場合もありますが、そういう場合もゲージとプレートの間のカラーで補正できます。


右の写真はトー測定の例です。
スケールの読みは0.8mmというところでしょうか。
理科の授業で「最小目盛りの1/10まで読む」と習った気がしますが、なかなか難しいですね…一応、1mmを5段階くらい(0.0、0.25、0.5、0.75、1.0)なら見分けがつきます。あとは…カンです(笑) このへんは作業者によって読みの値が変わってくるかもしれませんが、細かい絶対値を求めるものでも無いと思うので自分の目を信じましょう(`・ω・´)

ゲージを読んだら先述のキャンバ測定と同じく三角関数を使って角度に換算します。
キャンバ測定ではb寸法は450mmでしたが、トー測定ではゲージ中央から糸を張りますのでここでのb寸法は半分の225mmとなります。
ということで
tan-1(0.8/225)=約0.2°
となります。

Excelを使って換算する場合(私もそうしています)、角度はラジアン表記になるので
(180/π)を掛けて度数表示にします。ですから式としては
=ATAN(a/b)*180/PI()
となります。


…で、これは片側の数値です。
トーを左右独立に測れること、このタイプのゲージの最大の(というか唯一の?)ポイントがここにあります。
クルマの進む向きに大きく影響するスラスト角というのはリヤトーの左右差によって決まりますし、ステアリングのセンターはフロントトーの左右差によって決まります。ですから、トータルトーしか測れないトーゲージ(ヤフオクに大量に出品されている商品など)や、サイドスリップテスターだけでトー調整をするというのは逆に難しいと思います。
というかサイドスリップだけでハンドルのセンターを合わせたりするディーラーのメカニックって案外すごい!?ような気もします。

「ホイールのリムに塩ビパイプ当てて車体に糸を張って…」といった方法でも左右差は測定できますが、前後トレッド差の補正などがやりにくいです。



3.クルマを水平にするには

アライメント、特にキャンバを測定・調整する際にはクルマが水平である必要があります。(トーに関しては、少しの傾斜であればそれほど影響がないことが多いです。)
そこで私はブロック16個と600mm×400mm程度のベニヤの薄板(3㎜,5mm)をたくさん用意して水準器を使いながら四つのタイヤの位置でのレベル調整をしています。

まず測定車両のホイールベース・トレッドに合わせてブロックを置き、角材を渡して水準器で測定しながらベニヤを重ねていきます。地面にマーキングして枚数をメモっておけば、次回からは測定しなくてもOKです。

車両をブロックに乗せるのは、1G状態での調整を可能にするためです。トーやキャンバはサスペンションのストロークに従って変わる値ですので、1G状態で、常に測定しながら調整するのが良いと思います。調整の度にジャッキアップして…というやり方だと希望の値を出すのに相当骨が折れると思います。
合法程度の低車高車であればブロック1つの高さで潜れると思います(メカニックの体型次第?!)。
ただ、ブロックを16個運んだり並べたりするのが面倒なので、いつか専用の台をつくりたいなあと画策中です。



4.どんな値に調整するか?
測定ができたらお次は調整ですが、さて、どんな値に調整しよう?となるわけです。断っておきますが、よくわかっていません(笑)それこそ車両によっても、用途によっても、好みによってもばらばらだと思います。基本は純正の基準値にあわせて、と思いますが、たとえばZ32に限って言えば整備要領書に記載の基準値は結構範囲が広いですし、車高を変更している場合は純正値に入らない場合も多いです。
ですから今のところこんな感じかな?という感じで書きます。
ちなみに私は街乗り+高速や近所のワインディングというごく普通の乗り方です。

フロント
・キャンバ
-1°程度でもコーナリングで体感できました(L250ミラ)。
私のZ32は現状は成り行きで2°程度付いていますが、タイヤを見ているともう少し立ててもいいかなと思っています。
なので-1~-1.5°程度が適当?

・トー
左右差がある場合は直進時ステアリングが傾きます。
フロントトーはゼロが良いと書かれていることが多いですが、ローダウン(+ネガキャン)だからか多少トーインの方がしっかり感というか、中立の定まり感があってフィーリングが良いように思います。
自分のクルマは最近は0.05°程度のトーインを狙って調整しています。
自分以外のクルマを調整することもありますが0.0~0.1°程度のトーインで好評です(今のところ)。

リヤ
・キャンバ
Z32の純正の調整範囲は広くないので左右差をなくすように調整している感じです。
左右差があると車が左右に流れます。
数値は-2.2~-2.5°程度です(車高による)。
このくらいだと多少片ベリはします。絶対値を大きく動かしたことがないのでわからず。調整式のアームでやってみたいですね。

・トー
0.1°~0.2°程度のトーインというのが妥当でしょうか?
これも左右差があるとクルマがまっすぐ走りませんので左右差をなくすのが大事です。
現在、試しに0.5°にしています。リヤの安定性というか踏ん張り感は強く感じます。セオリーどおりアンダー傾向でいつもより舵角をちょっと増やしている感じです。ちょっとやり過ぎかも。→戻しました。現在は0.2°くらいにしています。
ただ、トーインが強い場合外側が片減りするようなので、そういう意味ではネガキャンとも組み合わせは良いかもしれません。→トーインが強いと外側が減る、とサイトなどに書いてありますが、まあ普通の?トーではあまり起きません。キャンバによる内べりのがずっと大きいです。

とこんな感じです。
ご覧になっている方で、「自分はこんな値にしててこんな感じだぜ!」みたいな情報があればぜひ教えてほしいです。



5.その他
・タイヤの下にポリ袋を敷く
ステアリングのセンターを出す際には据え切り状態で微調整することになりますが、タイヤと地面との摩擦が大きいとタイヤ(その他ステアリング系のゴムブシュなども?)がよれてうまく調整できないことがありました。これを防ぐ目的でポリ袋をタイヤの下に敷いてみたらいい感じ。エンジンを掛けなくても楽に据え切りできます。

また、ジャッキアップ状態から下ろしていくと車高が通常状態まで下がらないことがあります。これはストロークに伴うトレッド変化があるために、タイヤの摩擦で引っかかりが起きているのも原因のひとつです。これもポリ袋を敷いて摩擦を減らしてあげることで軽減できます。



と、こんな感じでDIYアライメントを楽しんでいます。
これだけじゃわからん!と言われるかもしれませんが参考程度に…。
私自身、実際に作業してみてわかったことなどがいろいろあります。
そのあたりも、随時書いていこうと思います。ではではとりあえずこの辺で。
(最終更新 2010.09.20)






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10 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (OGT)
2009-10-17 21:44:58
初めまして。
個人で買えるアライメントゲージの情報を探していて、ここを見つけました。

HRDさんの自作ゲージ・・・めちゃくちゃ良いと思います! 個人で使うレベルでここまで出来たら100点満点ですよ~
その工作レベルには脱帽です。

実は、僕は仕事で最新世代の光学式アライメントテスターを使ってました。1台何百万もするやつです。
あれ、確かに凄いんですが、あれ使って何十台も調整してると、色々疑問が無いわけでもないんですよねぇ。(^^; ココじゃ言えませんけど。

そんな中で、光学式のテスターとは別に、アナログなテスターを個人で手に入れようと思って、色々探してました。

ヤフオクなどでよく見かけるタイプのモノは、HRDさんも仰るとおり、あれは4輪アライメントがとれるようなもんではありません。

個人的には、Pro-Autoのが一番良いんですが、あれも個人で買える値段ではなく。(100万からしますので)

それで、今のところの最有力候補がイケヤフォーミュラだったんですが、あれは僕にとって一番の問題点があるんですよね~
それはPCD120,112,130に対応してない点です。つまりはドイツ車ですね。

それで、ドイツ車に対応してるイケヤタイプのテスターは無いかなぁ~って探してたら、HRDさんの所に辿り着いたというわけです。

自作とはおみそれしました。(^^;
これならPCDもどれだけでも合わせられますね。

残念ながら、精度が命のアライメントテスターで、僕にこんなのもを自作できる工作レベルは皆無なので、これを参考に自分が作るというわけにはいかないのですが、技術的好奇心の一つとして、ブログの続きを楽しみにしております。(笑)
返信する
Unknown (HRD)
2009-10-23 02:51:16
OGTさん、こんにちは。
プロの方?に褒めていただきうれしいです。高価なアライメントテスターの疑問?ちょっと気になります。

pro-autoはそんなに高いんですね!サイトに値段書いてなかったので知りませんでした。ただ、長いアルミ材があるみたいでかさるのであんまりかなと思っています。

自分としてはイケヤのは高いことだけがネックかなと思っていたんですが、確かに輸入車だといろんなピッチがあって使えないですね。自作はそのへん自由です。輸入車対応のを売り出したら、需要ありますかね?(笑)

アライメントについてはまだわからないことも多いので、ぼちぼち試行錯誤していきます。ではでは。
返信する
Unknown (NAG)
2011-03-24 15:44:13
はじめまして。
アライメントテスターを自作しようといろいろ検索していてたどりつきました。個人レベルであれば完璧ですね。。。
僕も同じタイプで考えていたのですが、どうしてもロングナットが探せずにいます。
もし情報などあれば教えて頂けるとうれしいです。
またブログの更新楽しみにしていますね。
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Unknown (HRD)
2011-04-03 12:26:55
NAGさん
はじめまして、お返事おそくなりました…。
この方式のゲージも完璧というほどではないのですが、そこそこ使えます。
私の使っている貫通ロングナットはちまたでは「レーシングナット」などの名前で売られているごく一般的なものです。
自作ゲージが完成したら画像など見せていたけたらうれしいです。ではでは。
返信する
Unknown (きいとん)
2011-05-28 01:51:08
はじめまして、きいとんと言います。
今回、自分の車もDIYでアライメント調整を
行おうということでHRDさんのHPを
大いに参考にさせていただき
無事にアライメントが取れました!

どうもありがとうございました!
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Unknown (HRD)
2011-05-29 13:59:39
きいとんさん
はじめまして。メッセージもありがとうございました。アライメントを自分でやると楽しいですし、タイヤも長持ちして経済的です。思ったとおりにならず悩むこともしばしばですが…

ブログも拝見しました。レーザーを使う方法も興味深いです。あまりこの種の建築用?レーザー機器の知識がないので、よかったらレーザーの種類や使い方などについて、教えていただけませんか?
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Unknown (きいとん)
2011-05-31 23:54:17
返信が遅くなり申し訳ありません
レーザーについては、マキタやタジマというメーカーがそれなりに有名どころです。カタログのアドレスを貼っておきますのでご覧ください。自分は縦+横のレーザーですが、高級機になれば直下のポイントも出せたりします。そうなるとまさに鬼に金棒ですね。
ただし、お値段が張ります。自分は安価な中古のものをヤフオクで購入しました
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Unknown (HRD)
2011-06-01 21:20:43
きいとんさん
レーザーの情報ありがとうございます。一台あるといろんなことに使えそうですね。
自分にとっては今のところ糸張りがコストも含めいろんな意味で良いかなと思っているのですが、レーザーを使うというのも興味があるので少しずつ勉強してみたいと思います。
返信する
Unknown (ロゴ夫)
2011-07-28 23:33:45
はじめまして。
アライメントを自分でやってみようといろいろ徘徊していたらHRDさんのページにたどり着きました。
とてもわかりやすい解説で早速この盆休みにでも挑戦してみようと思います!

その他のチューニング・メンテナンスも丁寧に写真が添えられていて私のブログとは大違いです。

ブログを通じて情報交換が出来たらいいですね。
これからも更新楽しみにしています♪
返信する
Unknown (HRD)
2011-07-31 00:46:32
ロゴ夫さん
はじめまして。
アライメントはなかなか面白いですので是非やってみてください。私もお盆休みはアライメント…かな(笑)
ブログ拝見しました。謙遜されてますがとでも話題が豊富(かつマニアック)で面白いですね。今後の展開が楽しみです。
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