アキ・カウリスマキ監督の映画はまだ二本しか見ていません。始めて見た『過去のない男』がとても良かったので、出来ればカウリスマキ作品を追いかけたかったのに、最寄りのレンタルショップには他の作品が置かれていない。いつまで待っても全然入荷されない。仕方無い、DVD買うかなぁ…とか思いつつ、ついつい買い食いだの鹿革の手袋30%OFF!だのなんだので、細かい浪費を着々と積み重ねてしまう日々。そしてやっとこのたび新作『街のあかり』が入荷され、7泊8日の旧作になる前に、半額レンタル期間を待たずにお借り上げという贅沢である(いや、そこまで言うほど貧乏では無い。クリスマスにはローストチキンも食べた)。
カウリスマキの映画の面白さを言葉で説明するのは難しいです。
『過去のない男』はものすごく悲惨な始まり方なのに、これが全然悲惨じゃない。ものすごくおかしい。
この映画の主人公は、夜の街でいきなり暴漢に襲われる。いったん医師に臨終宣告されるが、そのあとなぜか生き返る。このときの包帯まみれの姿が笑える。生き返ったのは良いが過去の記憶を失ってしまった男は、港の近くにたどり着きそこに住みつく。そして近所の人たちと穏やかに交流しながら徐々に徐々に自分の居場所を作って行くのである。
その過程でバンドのプロデュースをしたり、救世軍の女性と恋をしたり。その他面白いエピソードがいろいろあるけれど、カウリスマキ独特の面白さは、小説で言えば話の筋よりもむしろ文体と行間にあるの。だからお願い。見てちょうだい。とぼけていて暖かくて芯のある味わい深い映画です。
それからフィンランドの人たちの面構えの面白さ。どういうんだろ。男がみんな苦み走ってる。みんな眉間に深い縦ジワがある。カウリスマキがそんな顔の人を選んでるのかも知れないけれど、みんな土から生えたみたいな、根っこのある顔してる。きちんと物を考えている人の顔ですね。好きやわぁ、この手の顔。
『街のあかり』は『過去のない男』に比べて、私には少し物足りなかったなぁ。
カウリスマキ自身の弁によると、この映画のテーマは「孤独」。確かに主人公は孤独な男。なんだか知らないけどいつもどこでもつまはじきになってしまう。でも妙にめげない男でもある。人物造形がちょっと極端過ぎるかなぁ…。好きなシーンもたくさんあるけれど。すすめたいのはやっぱり『過去のない男』ですね。こちらは文句無し。あと味の良い映画です。
と、カウリスマキの映画について考えているとき、いつもセットで思い出しては不可解な気分になるのが邦画『かもめ食堂』。なんというか、今どきはやりのナチュラル系、そこそこおしゃれでお値段手頃のリネン雑貨的な映画。で、カウリスマキフレーバー粉末系という、このむず痒さ。
そもそもなぜこの『かもめ食堂』を見る気になったかというと、その昔雑誌『an・an』で仕事をしていたスタイリスト、堀越絹衣がスタイリングをしていると知ったから。少女っぽいコーディネートが得意だったと思う。『an・an』に載った、赤と生成のアイテムだけを使ってスタイリングされた特集記事はとても素敵で、切り抜いてスクラップしたことを憶えています。かれこれふた昔も前の話です。…げー。自分で言ってて、えづきそう。
この映画が「おしゃれ感」をかもし出すことに重点のおかれた、昔でいう「オリーブ少女」目当ての映画だということは、見る前から見当がついてました。配役からしていやな予感がするもんね。スパイシーなところを持って来たようでいて、実は変哲も無いカレー味だろ、それ、っていう。若い子が「これ好き、可愛い」というのは仕方無い。容れ物や盛りつけがおしゃれだと、実際以上に美味しく感じられたりすることもあるもんね。舌が肥えていなければ。私も若いころなら多分騙されてたと思う。
この映画の何がイヤかって、作り手側の「今、みんな、この辺が好きなんでしょ」っていう意識がスケスケのところ。ひー、しらける。そんで舞台がフィンランドだからって、ちょいとカウリスマキ風味にしてみたんだろ?違う??違わんだろ???しかも『過去のない男』で主演して、カウリスマキ映画の常連のマルック・ペルトラまで出してさ。出るなよ、お前も。カウリスマキはふりかけじゃないよ。もっと尊敬しろ。こんなコマーシャリズム指向の映画。思惑通りにウケてよかったな!この映画の監督はやとわれママか?映画作りについて個人的動機なんか持っていないに違い無い。「超熟」のCMがちょうどいいくらいの薄いヤツなのさ! こわー。 この口の悪い人、誰ぇ?
しかしこうなったら『めがね』も見たろうかしら。また悪口を言うために。
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追記:カウリスマキは音楽のセンスも良いです。『過去のない男』では、クレージーケンバンドの「ハワイの夜」という曲が使われています。このシーンもおかしい。私はマルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ(映画にも出てくるバンド)の曲が聴きたくてCDを買いました。
「過去のない男」見てみたいです。フィンランドの人ってどんなん?みんな苦みばしっているの?寒いからなのかなあ。
「かもめ食堂」の悪口いいね~(私はみていないけれど)
>今この辺好きでしょ
あ~そういう感じで来られるといやかも。でも多いよね、最近。歌でも何でも。
赤の生成りの組み合わせ、大好き!
その、切り抜き見てみたいです~。
>寒いからなのかなあ。
あー、そうかも。みんな味わいのある面白い顔つきしてる。あまり若い人が出ていないので、そのせいもあるかも知れないね。
>>今この辺好きでしょ
あ~そういう感じで来られるといやかも。でも多いよね、最近。歌でも何でも。
でしょ。ナメんなよ。って思うよね。
切り抜き探したらあったよ。でも2ページしか無かった。もっとあったように思うんだけど…。少し変えればけっこう今でもいけそうなコーディネートだったよ。モデルの顔(髪型・化粧)はさすがに古くさい。
たぶん何を演じてもかな(^▽^;)
私は今、半額レンタルのメール待ちです。
お店も年末年始は強気ですね。
でももういいでしょ、早くメール下さい(〃^∇^)
『過去のない男』は面白いストーリーですね。
あればぜひ観たいな^^
世間での評価はそうでもないようなのですが、私は小林聡美は美人だと思います。きちんとした顔立ちだと思います。
今日レンタルショップからメールが来てましたが、ジョニデがどうのこうのって、そんなのいいから半額クーポン早くよこしたらどうだ、って思いましたよ。
『過去のない男』是非!見終わったあとに幸福感ありますよ。
でもうちは家ではレンタルする癖がないです。
わんにゃんに邪魔されてゆっくり見られないから。
でも、見たいなぁ。フィンランド、寒いだろうな。
「堀越絹衣」なつかしいね。あの頃の「an・an」はよく読んでた。ちょっと背伸びしたような、男の子の目は関係なくて女の子が好きなものが並んでた気がする。
「おしゃれ感」「オリーブ少女」を狙った感じ・・・本当にたくさんあるよね。狙いが丸見えだよってよく思うよ。そんなのにはひっかからん。でもちょっと可愛いなって思っちゃうこともある。
じゃうちで上映会する?
お餅猫さわらせてくれる?
>でもちょっと可愛いなって思っちゃうこともある。
服とかインテリアとか食べ物とか、可愛いことは可愛かったよ。でもそれだけ。
この映画見て良いと思った人が何をするかというと、結局消費に走るだけなんじゃないか?っていう気がするわけ(笑)。カタログみたいなもんよ。
ははは、それは良いですね!
その言葉に嬉しくなってしまいました。
ぜひ『過去のない男』とセットで見てください!
この作品に限らず作りて側の「マスターベーション」の多いこの頃!。一番身近なのがTVのくだらない番組で、スタッフの笑い声が聞こえる。文化レベルの低さよ。と言っても、ディレクターがアメリカへ行って・観て・ぱくって・・。余談だけど僕は観てないから何ともホントは言えないけど、知人の映画超マニアはジョージ・クルーニーが大嫌い。「オレってうまいでしょー、カッコいいでしょー」がミエミエらしい。分かりませ~ん。