The Society of Hormesis ホルミシス学会

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楽観的な脳

2015-08-15 19:06:30 | 健康

楽観的であること。それが成功の秘訣。しかし、楽観、悲観の性格はなぜ形づくられるのだろうか。オックスフォード感情神経科学センターを率いるエレーヌ・フォックス教授が2009年に発表した論文は、「セロトニン運搬遺伝子」の型が楽観・悲観を決めるのではと示唆するものだった。しかし、だとすれば、性格は生まれながらの遺伝子の型で決まってしまうのだろうか。
ここで意外な人物が、自らの遺伝子を調べてほしいと教授に申し出ることになる。マイケル・J・フォックス。成功の絶頂でパーキンソン病にかかっていることがわかり、再起不能か、と言われるなか、見事にカムバックをはたした「楽観主義」の持ち主だった。フォックス教授によるNHKEテレの「心と脳の白熱教室」のポイントをわかりやすく伝える予習シリーズ最終回は「あなたの性格は変えられるか」。(第4回の放送は、NHK Eテレで、8月14日(金)23時からの予定)

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 私は、脳内で感情や気分を安定させるはたらきをしているセロトニンという物質に着目しました。このセロトニンのレベルを保つ「セロトニン運搬遺伝子」は、人によって三つのタイプがあり、それが、楽観、悲観の性格を決めているのではないかという仮説をもって、このタイプと、その人が楽観的か悲観的かわかる認知バイアスとの関係を調べたのです。

■ 楽しい画像と怖い画像、最初に注視するのは? 

 認知バイアスというのは、画像をみせた時に、楽しげな楽観的な画像か、怖い悲観的な画像か、どちらに最初に注意を払うかによってわかります。

 その結果は、セロトニンという物質がより多く出るLL型を持っている人はポジティブな画像に引き寄せられ、発現量の低いSS型、SL型の人はネガティブな画像に引き寄せられるというものでした。

 やはり、セロトニン運搬遺伝子は「楽観性を生む遺伝子」と言えるのではないか。

 この研究結果は大いに人々の話題になり、マスコミにも取り上げられました。何しろ、性格を決める遺伝子があったかもしれないというのですから。

 この研究結果に、ある楽観主義の人物が興味を持って、私に連絡してきてくれました。

■ 悲観的な遺伝子の型が驚きの変化を見せる? 

 それは、俳優のマイケル・J・フォックス。彼はまさに不屈の楽天主義者です。ご存じの通り、マイケルは1980年代に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで人気絶頂を極めていました。ところが、わずか28歳でパーキンソン病を発症し、人生のどん底へ突き落されたのです。

 しかし、彼は決してあきらめませんでした。粘り強く病気に相対し、苦境を逆手にとってパーキンソン病を抱える役柄で俳優復帰すると、今では自身の名を冠したTVシリーズに主演するほどの活躍を見せています。

 そんな彼が、自身の『救いがたき楽天家』というドキュメンタリーの制作にあたり、私にコンタクトしてきたというわけです。そして、マイケルの調査は、私の研究に思いもよらぬ進展をもたらしたのです。

 さて、私はマイケルに会い、彼の遺伝子を検査しました。そして、楽観的・悲観的、どちらの写真に注意をひきつけられるかをコンピュータ上で調べる「注意プローブテスト」で、彼の認知バイアスも計測しました。

 そこでの検査結果は意外なものでした。マイケルの遺伝子型は、悲観的なタイプに分類されるものだったのです。

 この矛盾をどう解釈したらいいのか。

 マイケルの遺伝子の型がきっかけになって、研究の見直しが進みました。すると悲観的と思われていた遺伝子の型は、実は外界の影響をうけやすい型にすぎないことがわかったのです。

 彼ら彼女らは、ネガティブな経験をすると確かに悲観的になるのですが、ポジティブな経験をすれば、より高い幸福を感じられます。逆境に打ちのめされやすい一方で、よいことからは最大の利益を引き出せるタイプだったのです。

マイケルは幼少時、ちょっと変わり者だと思われていました。しかし、彼の祖母はとても広い心で「マイケルは将来有名になるよ」と言って、マイケルを常に励ましてくれたのです。そのポジティブな環境に彼のセロトニン運搬遺伝子の型はよく反応したのではないか・・・つまり、遺伝子の型によって楽観・悲観は決まっているわけではない。性格は環境によって変えられるということです。

 私の研究室では、こうした環境を人工的につくり、性格を楽観的に変えていく方法を探っています。

■ 性格を楽観的に変える訓練とは

 ひとつの方法として、冒頭で説明をした画像をどんどんみせていく「注意プローブテスト」で意識的に、ポジティブな画像を見るように訓練をするというものがあります。そうすると、悲観的な人が楽観的にかわっていくという実験結果が得られました。

 デューク大学の研究では、心に浮かんだ考えや映像に「ラベルづけ」するだけで、脳の前頭前野を活性化させ、悲観脳の中枢である「扁桃体(へんとうたい)」を鎮められることがわかりました。脳スキャナーの中で被験者は、サメ、クモ、ヘビ、銃、ナイフ、爆発といった恐ろしい画像を見せられます。通常ならそれは恐怖の反応を呼び起こし、扁桃体が活性化します。

 しかし、それが人工のものか自然のものかを冷静に解釈するように求められていれば、扁桃体の活動は収まったのです。

 脳科学が日々明らかにしているこれらの知見は、わたしたちの日常にさまざまな示唆をあたえます。失敗したときのことを考えて、すべてがうまくいかないという人は、まず具体的に計画をたてることで、「ラベルづけ」と同様に、自分の挑戦をより客観的に見られるようになります。すると主観で悲観的にしか見えなかったものを、しだいに落ち着いて見ることができるようになります。

 さらに、本当の楽観主義の回でお話しましたように、「継続すること」は楽観主義を維持するためにとても大事なプロセスです。

 そうした「努力」をくりかえしながら、よい未来をつとめて思い描くことで、少しずつ性格もかわり、物事もうまくいくようになる。そう今日の脳科学は教えているのです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150814-00080033-toyo-soci&p=1


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