The Society of Hormesis ホルミシス学会

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血圧新基準「147」/血液検査キットで家庭内検査が便利で安価

2015-06-10 16:53:03 | 規制改革

健康診断で、健康かどうかの目安にされている高血圧や中性脂肪。日本人間ドック学会が発表したその「新基準」が大きな波紋を広げている。基準値が大幅に緩和され、専門学会が猛反発するなど大論争になっているのだ。基準値が緩和されると“病気予備軍”は減ることになり、高血圧などと診断された側にとっては朗報といえそうだが、専門家は「数値だけを頼りにしていると危ない」と警告する。どういうことなのか。

 今までの基準は一体、何だったのか-。

 健康診断の結果が出るたびに一喜一憂していた人は、いまこんな心境かもしれない。日本人間ドック学会が先月4日に公表した「新基準値」のことだ。

 「学会が人間ドック検診受診者約150万人から超健康人約1万~1万5000人を対象に調査し、導き出した新たな健康基準で、研究対象は尿酸値など27項目。なかでも『生活習慣病』の主要因といわれる血圧、LDLコレステロール、中性脂肪の基準が緩くなったことが注目を集めている」(都内の医療関係者)

 高血圧症は致死率の高い脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などの重大疾病を招く危険性が高い。そのため、自分の血圧に注意をはらっている人は多いが、公表された新基準は従来の認識を覆すものだった。

 

「これまでは上(収縮期血圧)が140以上、下(拡張期血圧)が90以上で高血圧とされてきた。ところが、新基準では上は147まで、下は94まで正常値とされた。医師に『病気予備軍』と診断されてきた人の多くが対象から外れることになる」(同)

 脂質異常症から動脈硬化を引き起こす危険因子、中性脂肪の値もグンと緩和された。男女とも150以上が“危険域”だったが、新基準では男性が「39~198」で、女性は「32~134」。男性は従来の上限値を大きく上回った。

 別名「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールも同様だ。一律140以上で脂質異常症と診断されてきたが、新基準は男女別に分かれ、男性は「72~178」、女性は30歳から80歳まで3段階に細分され、例えば45~64歳は「73~183」の範囲が正常値とされた。

 ただ、この新基準を歓迎しない人たちもいる。

 高血圧には「日本高血圧学会」、中性脂肪とLDLコレステロールには「日本動脈硬化学会」の専門学会があり、従来の基準値はそれぞれの学会が決めてきた。今回の調査はその“常識”を突き崩すものだったため、反対の声は少なくない。

医療現場も賛否で割れている。

 首都圏の大規模病院心臓血管外科医は「時間の経過とともに基準も見直すべきだ。時代に即した新基準を打ち出すことは必要」とし、関西の大規模病院消化器外科医は「従来の基準が厳しすぎた」。「軽度の高血圧や脂質代謝異常の人の薬への依存が緩和されることはいいこと」(首都圏の民間病院消化器外科医)との声もある。

 だが、関東の大学病院循環器内科医は「今回の基準は“断面調査”であり、調査対象となった人たちが20年後にどうなっているかをみた“前向き調査”ではない」と話し、首都圏の大学病院脳神経外科医は「厳しい基準で取り組んできたからこそ、日本人の脳出血患者は激減できた」と断言する。

 「従来の基準は確かに厳しかったが、今回の新基準は、国民のためというよりは『医療費削減』を狙う思惑が強く感じられる」(関西の開業医)という意見もある。

 2000年度に30・1兆円だった医療費は、11年度には38・5兆円にまで増大した。5年連続で過去最高を更新するなど国の財政を逼迫(ひっぱく)させているため、行政側の思惑を指摘する関係者は確かにいる。

近畿大学講師で医師の榎木英介氏も「基準緩和で患者が減ると、当然医療費も減る。それに対して、医師と製薬業界は患者がいないと商売にならない。患者を減らしたい行政と権益を死守したい医療業界とのせめぎ合いになっている側面がある」と解説する。

 厚生労働省によると、高血圧症の患者数は11年に906万7000人に達し、高脂血症も188万6000人を記録した。製薬会社にとっては、高血圧症に処方される降圧剤や高脂血症薬はドル箱。業界が、利益を失う可能性のある新基準を脅威に感じても不思議ではない。

 物議を醸す新基準。ただ、われわれサラリーマンにとって最も気になるのは、諸業界の事情ではなく、この新基準を受けて、高血圧や中性脂肪などを抑制する薬を止めたり、摂生していた生活習慣を元に戻したりしてもいいのかという点だ。

医療ジャーナリストの長田昭二氏は「今回の新基準は、あくまで健康な人を対象にした調査であって、すでに血管や脂質代謝に異常を持つ患者は対象外。それを認識せず、いま基礎疾患を持っている人が『血圧147未満だから健康なんだ』と勘違いする事態は避けなければいけない。降圧剤を処方されている人が自分の判断で突然やめたりするのは危ない。健康への意識を高く持って、常日頃から摂生に努める姿勢を怠らないことが大事だ」と話す。

http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/140531/lif14053108000008-n1.html

 

 


アマゾンの一人勝ちへ、既得権益死守の薬剤師はTPPで不要

2015-06-10 16:35:38 | 規制改革

薬局などで処方薬を受け取る際に投薬情報を管理する「お薬手帳」について、「手帳の発行を断れば薬局の支払いが20円安くなる」との情報がインターネットで広がった。賛否両論さまざまな意見が飛び交ったが、折しも今月には一般用医薬品(市販薬)のネット販売が解禁。店頭に行かなくても、大半の市販薬を手に入れることができるようになった。そんな今こそ、患者自身が「薬」との正しい付き合い方を考えてみるよい機会ではないか。

■「断れば安くなる」との指摘めぐり応酬

 お薬手帳は他の医療機関で出された薬との飲み合わせや過去の処方薬の確認をするため、医療機関で処方された薬の名前や処方量などをシールで貼るなどして記録、管理する手帳だ。

 そんなお薬手帳の“不要論”のきっかけを作ったのは、今年4月の診療報酬改定だ。

 診療報酬とは患者が医療機関に支払う医療の値段のことで、厚生労働相の諮問機関である「中央社会保険医療協議会(中医協)」が決め、2年に1度見直しをしている。患者は高齢者などの一部を除き、3割を自己負担する。

 従来、お薬手帳への記載などで薬局が得られる「薬剤服用歴管理指導料」は410円だったが、4月の診療報酬改定で手帳が不要な人への指導料が340円に減額された。3割負担だと、自己負担額は20円安くなる計算だ。

これを受けて、ネットの短文投稿サイト「ツイッター」などでは、「手帳を断れば20円安くなる」との情報が拡散。「薬局がしつこくお薬手帳を勧めてきた。もうけるためじゃないか」「毎回持って行くのは面倒だった。安くなるならもう持って行かない」といった意見が出た。

 こうした声に対して「お薬手法は自分の健康を守るもの。20円のために健康を危険にさらすのか」「安くするために断るという考え方はなじまない」などの反論も続出。「きちんと手帳を持って行くまじめな患者が不利になるのはおかしい」という制度への不満や、「電子化してネットで全て管理するようにできないのか」といった提案もあった。

 東日本大震災では、カルテが流されて診療記録や処方薬が分からなくなった患者がお薬手帳を持参したことで、適切な処方や診察時間の短縮につながった。ある薬剤師は「お薬手帳の有用性がようやく認知されてきたと思っていたので、診療報酬が下げられるとは寝耳に水だった」と話す。

 しかし、医療費削減に取り組む厚労省は「薬局側には、患者に手帳のメリットを実感させる努力が必要」との立場だ。これを受け、薬局は薬の飲み合わせによる副作用事例などをまとめた冊子を作成したり、手帳の役割を知らせるポスターやチラシを用意したりと、有用性アピールに取り組む。

 ある大手薬局は「手帳が不要な場合は安くなることも伝えている。その上で患者さんに選んでもらうことが必要だ」と語る。「20円問題」が患者本位の医療につながれば、診療報酬を改定した意味もあったというものだ。

■ネットと店舗、どちらが有利?

 お薬手帳をきっかけに巻き起こった議論は、患者が薬とどう付き合うかという根本的な問題を突きつけている。

 同時期、同じ問題を考えさせられる大きな変革があった。薬事法改正により今月12日、市販薬のネット販売が解禁されたのだ。発売から日が浅く、安全性が確立されていない「要指導医薬品」を除くほとんどの薬がネットで買えるようになるとあって、解禁初日時点で、ネット販売を扱う店舗は1000店を超えた。

 一方で、販売には厳しいルールが課された。販売サイトを開設するには、薬局やドラッグストアとして自治体の許可を得ていることが必要だ。オークション形式での販売や、市販薬の効能に口コミやコメントなどをつけることは認められていない。

 偽造薬による健康被害を防ぐため、厚労省は届け出があったサイトを厚労省のサイトで公開している。一般的な情報サイトとは違って、価格の安いものや口コミの良いものから業者を並べ替えて表示してくれるような機能はないが、正規のサイトかどうかは最低限、確認できる。

 ただ、ネット販売が解禁された現状の状況に、ネット販売業者自身が満足しているかというと、必ずしもそうではない。市販薬のネット販売を求めてきた医薬品のネット販売業者「ケンコーコム」(東京)は、要指導医薬品として市販後間もない薬が薬局などの店頭販売では認められたのに、ネットでだけ禁止されたことに反発。「ネットより店頭販売が優れている根拠はない」として、すべての市販薬を解禁するよう求めている。

 一方の薬局側も、ネット販売を契機に、販売方法がこれまで以上に厳しくなった。要指導医薬品を売る際は、購入者が実際に薬を使用する人かどうかを薬剤師が確認し、使用者でない人が買いに来た場合は、災害時などを除いて売ることができない。

 大手薬局の薬剤師は「購入者に薬の飲み方や副作用の注意を説明をしようとすると、不機嫌になるお客さんは多い。その点、ネット販売は注意画面の表示やメールのやりとりで済むことが多く、有利だと思う」と、対面販売ならではの難しさを語る。

■「薬」について深く考えよう

 ネット販売解禁に向けた厚労省の検討会でも、ネット販売業者と薬局・薬剤師側の意見対立はたびたび起きた。店頭とネットのどちらが優れているかをめぐり、相手の“非”を批判し合う場面もあった。

 薬剤師側が「薬には副作用のリスクがあり、対面で販売して説明する必要がある」と主張しても、ネット販売業者側は「実際に店舗に買いに行っても、そんな説明を受けたことはない」と反論。議論が白熱する中、日本薬剤師会の幹部は沈痛な面持ちで言った。

 「私たちの仕事が、これほどまで世の中に理解されていないとは、思ってもいませんでした」

 実際には、100%安全な薬などない。処方薬も市販薬も副作用のリスクがあるし、他の薬との飲み合わせで予期せぬ副作用が現れることもある。人によっては、薬の成分にアレルギー反応を起こす可能性もある。そうした事態を防ぐための専門職が薬剤師であり、その拠点が薬局であるはずなのだが、十分に責任が果たされているとも、理解が得られているとも言い難い。

ツイッターに「お薬手帳不要論」が駆け回っていたころ、ある女性薬剤師は取材にこう答えた。

 「飲み合わせで健康被害が出ても、手帳を断ったのだから薬局に責任はありません、ということで良いのでしょうか。患者の健康を守るのが私たちの仕事。薬剤師の存在そのものを否定された気がします」

 「お薬手帳」や「ネット販売」をめぐる議論の中心は、詰まるところ「これによって患者の安全は守れるのか」というところにある。その観点でいえば、一部で始まっているお薬手帳の電子化や、ネット販売の実効性あるルール改正など、今後も薬をより安全に使いやすくする工夫が必要だろう。副作用の情報を適切に提供し、再発防止を防ぐことも重要だ。

 健康を守るのは自分自身であることは言うまでもないが、それをサポートするのがお薬手帳であり、薬剤師だ。法律や診療報酬だけにとらわれず、皆が知恵を出し合って、プロの意見も取り入れながら、薬との正しい付き合い方を考えていくべきだ。

http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/140621/lif14062120370021-n1.html


薬局の病院敷地内併設許可

2015-06-10 16:32:51 | 規制改革

 厚生労働省は9日、病院の敷地内に薬局を併設することを認める方針を固めた。これまで同省は「医薬分業」の一環として、病院と薬局を同じ建物や敷地内に併設することを認めない参入規制を省令で定めていたが、患者の利便性を考慮して、薬局の経営の独立性確保を前提に、敷地内に併設する「門内薬局」を認める方針に転じた。

 厚労省は薬の過剰投与といった薬漬けを防ぐため、病院の窓口で薬を受け取る「院内処方」より、医師の処方箋を受けて薬局の薬剤師が調剤する「院外処方」を推進してきた。構造的にも病院と薬局間に道路やフェンスの設置などを定めている。

 これに対し、政府の規制改革会議は病院で処方箋を受け取り、薬をもらうのに道を挟んだりした薬局まで行くのは不便で、高齢者や体の不自由な人の負担が大きいとの観点から見直しを求めていた。

 当初は反発していた厚労省も「高齢者らへの対応は配慮したい」と歩み寄り、「嫌がらせのような規制は見直す」(幹部)として、フェンス設置などの形式的な規制をなくし、利便性を改善する方向に傾いた。ただ、病院の建物内に薬局を併設するのは「母屋と店子(たなこ)の関係になり、薬局の独立性が保てるか疑問」と難色を示しており、敷地内の併設にとどめる見通しだ。

 同省は医療費を抑制するため、複数の病院の処方箋を受け付け、薬の重複投与を防いだり、薬の飲み合わせを確認したりする服薬指導や24時間対応などに取り組む患者本位の「かかりつけ薬局」の普及を促している。

 このため、平成28年度の診療報酬改定で、特定の病院からの処方箋が集中しがちな門内薬局の調剤報酬を低く設定する。一方、服薬指導などに取り組むかかりつけ薬局への調剤報酬を積み増し、5万7千の各地の薬局再編を後押しする。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150610-00000075-san-soci

 患者負担は、薬局が受け取る報酬の原則3割。かかりつけ薬局では患者負担が増えるが、世代や症状によって患者が自由に薬局を選択できるようになる。


原発の独自規制によってガラパゴス化

2013-07-09 11:33:31 | 規制改革
 「安全文化、安全対策は真摯(しんし)に改善していきたい」。大飯、高浜の3、4号機の安全審査を申請した関西電力常務の森中郁雄(56)は8日、記者団に語った。原子力規制委員会は電力会社の安全意識を問題視。「世界一厳しい」という新規制基準は電力会社の安全への意識を変える“荒療治”の側面も持つ。

 東京電力福島第1原発事故前の規制は、あってないようなものだった。民間事故調査委員会は、日本が海外の知見を取り入れない独自の規制を続けたことを、大陸から隔絶し独自の進化を遂げたガラパゴス諸島になぞらえ「ガラパゴス化」と評した。

 その代表例が「B5b」と呼ばれるテロ対策だ。B5bは米原子力規制委員会(NRC)が2001(平成13)年の米中枢同時テロを機に策定、全電源喪失を想定した機材の備えと訓練を、米国の全原発に義務づけた。平成20年に保安院職員がNRCで説明を受けたが、電力会社へ指示をすることはなかった。

 「B5bが日本で導入されていれば、福島第1原発事故は防げた可能性があった。規制機関の不作為は致命的だった」(政府関係者)。新基準はテロ対策についても規定、規制委は「世界最高レベルの規制」を目指したと自賛する。だが異論もある。

 ◆「運転中保全」認めず

 新基準骨子案がまとまった後の今年2月、北海道大学大学院教授(原子炉工学)の奈良林直(ただし)(61)は海外調査でワシントンDCにいた。米原子力エネルギー協会を訪れた際、協会幹部に声をかけられた。

 「日本は原子力の安全文化が遅れている。オンラインメンテナンス(運転中保全)を認めていない。運転中に緊張感を持って点検する必要がある」

 複数ある非常用発電機などの検査は運転中でも可能で、運転中保全は検査期間短縮や作業員の効率運営にもつながる。原発主要国では運転しながら検査するのが常識で、全てを止めて検査するのは日本だけだ。

 「日本には『動かさなければ安全』という意識が根底にある。福島の事故もそうだったが、運転中にバルブを開閉したりするような実際に即した点検、訓練でないと非常時に適切な行動が起こせない」と奈良林は指摘する。

 奈良林は帰国後、規制委の新基準に関する意見公募で運転中保全の必要性を訴えた。だが、新基準で盛り込まれることはなかった。

 時の首相、菅直人(66)の政治判断で運転停止が命じられた中部電力浜岡原発(静岡県)を除き、国内で停止中の原発は全て定期検査で止まっている。

 ◆国民・業界から孤立

 世界最高の規制機関とされるNRCは良い規制の5原則を定めている。重要度順に独立性▽開放性▽効率性▽明瞭性▽信頼性-だ。日本の規制は「効率性」や「柔軟性」に乏しいといわれる。

 最新の科学的知見を反映させるバックフィット制も、日本は新基準の大半の対策について審査を通るまで稼働させない。むやみに稼働を止めず、リスクと費用対効果で安全を判断するNRCとは対照的だ。電力会社との接触を極度に避ける規制委は「孤立」していると指摘される。

 「国民や業界とのコミュニケーションがあって初めて効果的な規制ができる」。昨年12月、規制委の国際アドバイザーで英原子力規制機関の機関長、マイケル・ウェイトマン(64)は記者会見で、規制の在り方をこう説明した。

 だが、新基準の意見公募も2回実施され、計約6400件の意見が寄せられたものの、大多数は文言の微修正だけで終わった。

 「安全神話」で海外の知見を取り入れずガラパゴス化したこれまでの規制。新規制も、国内外の意見を十分に聞いたとはいえない。再びガラパゴス化の道をたどるか。それは規制委が柔軟に審査し「動かさないための規制」から脱却できるかにかかっている。(敬称略)

 【用語解説】ガラパゴス化

 世界標準からかけ離れ、日本独自の発展を遂げている状態のものを揶揄(やゆ)した新語。大陸と隔絶し生態系が独自に進化した南米エクアドルのガラパゴス諸島からつけられた。平成20年ごろ、世界標準と異なる日本の携帯電話の通信方式や端末を自虐的にいう「ガラパゴス携帯(ガラケー)」とともに広がった。


「米国における原子力規制と連邦議会による監視機能」

2013年5月29日
 日本の原子力規制委員会のあり方が様々な視点から注目を集めているが、原子力の利活用と適切な規制を目指して体制整備を進めてきた米国においては、どのような議論が行われ、基準が策定されているのか。福島事故後の規制方針、一部の原子炉に対する「フィルターベント設置要求」などをめぐる動きなどを振り返りながら、米国の原子力規制の状況を報告する。
□独立性と強い権限を持つNRCにも連邦議会による監視システムが機能
 我が国では2012年9月、原子力規制委員会が「独立性の確保」を主たる目的として発足した。その有効な参考例とされたのが米国原子力規制委員会(NRC)といえる。ただし、NRCはその独立性と強い権限が確保されているが、一方でNRCが独走に陥ってしまわないように連邦議会による監視システムが整えられていることを見過ごせない。監視権限を持つのは、上院の環境公共事業委員会と下院のエネルギー商業委員会である。
 NRCは、連邦議会が監視機能を果たせるよう、十分に情報提供することを要求されており、半年に一度は上院と下院の歳出委員会に活動報告書を提出しなければならない。さらに、連邦議会は必要に応じて供述書の提出をNRCに要求するとともに、NRC委員や上級スタッフを呼んで公聴会を開き、状況説明を行わせている。
□フィルター付きベントの規制要求をめぐる議論の紛糾
 NRCは2012年3月、福島事故を踏まえて①仮設配備機器等の強化②使用済み燃料プールの監視計器強化③沸騰水型原子炉(BWR)のマークⅠ・Ⅱ型格納容器のベント強化――の3点を発令した。このうち、BWRマークⅠ・Ⅱ型格納容器のベント強化とは、耐圧や構造上の強化を意味する内容であるが、さらに放射性物質の放出を抑制する「フィルター付きベント」を規制要求に盛り込むかが検討課題とされた。
 ベント系統にフィルターを設置すると、万一の事故の際に放射性物質の放出が抑制される。ただし、重要な隔離機能を持つ原子炉格納容器に穴を開ける大がかりな工事が必要でもあり、設置費用は1600万ドル(約16億円)を超えるといわれている(産業界は30億~45億円かかるとしている)。フィルターベントは高額な費用に見合う効果があるか疑問視する声が多いとともに、もしこれが規制要求された場合、追加投資に耐えられずに廃炉前倒しを余儀なくされる原子炉が出てくるという懸念も出された。
 NRCスタッフは、フィルターベントを規制要求するか否かについて当初2012年7月までに提案する予定だったが、議論が紛糾したため延期。検討の結果、NRCスタッフは2012年11月に「BWRマークⅠ・Ⅱ型格納容器にフィルターベント設置の指令を発令する」という案をNRC委員へ提案した。これに対して、産業界は他にも放射性物質の放出を防ぐ対策はあるため、フィルターベント設置を規制要求するよりも、総合的に放射性物質を抑える対策(注)を施す方が効果的である、と従来から主張しており、NRCの原子炉安全諮問委員会も2012年11月、フィルターベントを直接規制要求するよりも放射性物質放出を抑制する総合的な性能規定アプローチ(仕様ではなく性能を規定する方法)要求する方が効果的だとする見解を示した。
(注:フィルターベント以外の放射性物質放出抑制対策としては、排気を原子炉底部の水槽に通して放射性物質を除去する方法、格納容器内での水の噴霧により放射性物質を水に捕捉する方法、格納容器を冠水させて冷却とともに放射性物質を水に捕捉する方法などがある。)
□重みある連邦議会からNRCへの書簡
 このような議論の紛糾を背景に、NRCを監視する下院エネルギー商業委員会のアプトン委員長ら21人の議員はNRCによる過度な規制変更を懸念し、2013年1月15日付でマクファーレン・NRC委員長宛に書簡を送った。また、上院環境公共委員会の議員7人も同様な書簡を2月4日に送っている。書簡の内容の概要は次のようなものである。

(書簡の概要)
 ▽ 我々の懸念は、NRCが厳密な技術的評価や費用対効果分析を怠っていることを起因に生じている。NRCはこれまで実施してきた安全対策や、これから実施しようとしている安全対策の複合的な効果を考慮していないのではないか。ある安全対策を単独の効果で考えるような断片的な検討は、予期せぬ結果を招くという深刻なリスクがあることを無視してはならない。また、NRCは原子炉の安全は各発電所の違いを踏まえた性能規制アプローチにより守られてきたという歴史的事実を放棄しようとしているのではないか。
 ▽ 米国の規制要求は日本と違うことは疑いない。福島事故が米国で起きるかどうか判断するためには、福島第一原子力発電所にどのような防御機能があり、どのような防御機能が欠如していたかを知り、最も重要なのは米国にその防御機能の欠如が存在するかどうか明確にすることである。健全な規制変更のためには、米国と日本の規制要求事項の比較評価が不可欠な情報となる。このような国際的な原子力規制の比較なしでは、健全な規制変更はあり得ず、NRCの信頼をも低下させる。原子力は国家のエネルギーセキュリティ確保に多大な貢献をしており、原子力基本法では「原子力エネルギーは、社会の幸福へ最大限貢献すべきである」とうたわれている。この目的のために議会は「公衆の健康と安全」と「原子力による利益」のバランスを保つように努めてきた。立法者としての議会のゴールと規制者としてのNRCのゴールは、バランスが保たれるべきである。
 ▽ スリー・マイル・アイランド(TMI)事故後評価では、膨大な数の安全対策が提案され、実施された。しかし、NRCがとった対策の中には、実質的に役立たないと分かったものもあり、それらの対策は削除された。規制当局は規制要求を出す役目を担っているが、規制要求事項の増加で必ずしも安全性が増すわけではなく、単なる追加となることもある。NRCが実施する規制変更前の徹底的な技術的検討と費用対効果分析は、「安全上重要な規制変更」と「不必要な規制負荷」とを見分けるのに役立ってきた。規制当局の手腕は、拙速な規制厳格化ではない熟慮を伴った体制立てたアプローチで試される。NRCスタッフは、他の対策も合わせた放射性物質放出抑制の性能要求とせずに、多大な初期投資が必要なフィルターベントの設置を要求することを提案している。これは費用対効果分析の法令要求を満たしていない可能性があり、訴訟対象にもなり得る。また、(原子力規制の大きなよりどころとなっている概念である)「適切な防護」のレベルを間接的に(適切な検討の手順を踏まずに)再定義するような新たな前例ともなりかねない。NRC原子炉安全諮問委員会は、「フィルターベント設置要求は、リスク情報を活用した費用対効果分析により正当化されていない」と指摘している。産業界も「フィルターベントという単一の対策だけで放射性物質放出の抑制に成功しない」とし、冷却水の注入、格納容器スプレイ、格納容器圧力を調整しながらの排気などを組み合わせた方法を考慮すべきだとしている。歴史的に守られてきた原則である、規制変更前の技術評価と費用対効果分析を徹底的に行うことを求める。このプロセスがなければ、安全上重要な対策と「単に良さそうに見える対策」を見分けることはできない。
 ▽ NRCの「良い規制の原則」には「規制活動は、規制が達成できるリスク低減の程度に見合うものでなければならない。複数の効果的な代替案がある場合、リソース投入が最も少ない方法を適用すべきである」とある。原子力による発電は、他の例に漏れず市場原理の中にある経済活動であり、コスト的な課題は深刻な影響をもたらす。NRCはその決定によっては、多大な社会的な影響がもたらされることを踏まえ、いかなる規制変更をする場合でも、綿密な費用対効果分析をする責務を負っていることを認識しなければならない。市場原理の力はNRCが負う責任を免除してくれることはない。
 ▽ 本委員会が、前回議会で環境保護庁の環境規制による石炭火力発電への影響を危惧していたように、我々は今、福島事故後の原子力規制変更が米国の原子力発電に与える影響を懸念している。規制当局が直面している問題は、相反する視点が混在する複雑な問題であることは理解している。しかしフィルターベント問題を、他の対策とは独立させて断片的に検討するアプローチは、「適切な防護」の概念を蝕む結果にもなり、我々は適切でないと判断する。また、我々は、NRCが総合的な性能規定アプローチの原則に従い、必要な時間をとって十分に検討を行うことを要求する。


□仕様規定よりも実効的な安全向上につながる性能要求重視の姿勢
 こうした議会からの提言もあり、慎重な審議を重ねてきたNRC委員は投票を行い、2013年3月19日に最終的な決定を下した。NRC委員はNRCスタッフに対して①フィルターベント設置の指令は即時に出さず、他の対策も含めた総合的な規則制定に向けた検討を行う②2012年3月に出したベント強化の指令をシビアアクシデント(過酷事象)にも耐え得る内容に改定する―という2つの指示を出した。今回の決定は事業者の廃炉計画にも大きく影響し得ると懸念されていたが、長い議論の末に出されたNRC委員の決定はフィルターベントを即時に規制要求とするものでなく、大きな混乱を招く結果は避けられた。
議論の背景には、経済性が絡んだ意見の他に、仕様規定なのか性能規定なのか、という規制の方向性の論争も含まれていたと考えられる。最近のNRC委員の発言では、設備等の仕様を規定する仕様規定を「あれやこれやと定める規定」とも表現し、必ずしも安全向上に効果的な方法ではなく、実効的な性能を要求する性能規定を重視すべきだ、というコメントが頻繁に聞かれていた。このような議論を経た今回の決定は、仕様規定よりも性能規定をより重視していくというNRC委員の姿勢を象徴しているかのようにも映る。
日本でもいわゆる「活断層問題」への原子力規制委員会の対応や7月に施行される新たな規制基準などをめぐって、規制や独立性のあり方、議論の展開方法に注目が集まっている。独立性が確保されながらも、連邦議会による監視システムが機能している米国の事例を参考にしながら、実効の上がる安全規制を確立し、原子力の利活用につながるシステム構築が求められているのではないだろうか。



実用原子力発電所における安全規制に対する国際比較
http://www.nsr.go.jp/archive/nisa/shingikai/118/002/no2-2-1.pdf

諸外国における原子力発電所の安全規制に係る法制度
http://www.jeli.gr.jp/report/jeli-R-127@2013_01_NuclearSafetyRegulation.pdf
福島第一原子力発電所事故の影響 - Wikipedia
ja.wikipedia.org/wiki/福島第一原子力発電所事故の影響‎

原子力発電所の安全規制高度化の議論に向けて - JAIF 日本原子力産業 ...
www.jaif.or.jp/ja/news/2011/hattori_anzen-kisei110208.pdf‎



医学部入学資格を金本位制から仁本位制へ規制改革せよ

2013-04-28 15:53:32 | 規制改革
もし、私が精神科医だったら、どーんな人でも精神疾患患者にすることが出来ます。で、もし「私は精神疾患なんかじゃない。お前の診断は間違っている」というなら、「精神疾患患者は自分の状態を的確に分からない故に、精神疾患なんだ」と言ってその診断を正当化します。

市民の人権擁護の会 日本支部20130425より引用
http://www.facebook.com/CCHR.Psychbusterjp