先生は,こんな本を読んでいます

読み聞かせを15年間毎日続けているちばちゃん(先生)が
読んできた本の紹介をします

24.藤原正範『少年事件に取り組む』岩波新書2006年

2006年03月21日 | Weblog
▼ 副題が「家裁調査官の現場から」です。
  家裁調査官とは、詳しくは家庭裁判所調査官のことです。
  どのようなお仕事なのか、『大辞林』で調べてみました。
 
    家庭裁判所に置かれ、裁判事務を補助する職員。家
    庭事件の審判および調停につき事実の調査をし、少
    年審判事件につき少年の観護・観察などを行う。

▼ ここで「少年」という言葉が出てきますが、みなさんは「少年」
 が何歳以下を指すのがご存知でしょうか?
  「少年法第2条第1項」では、以下のように定めています。

    ●20歳に満たない者
    つまり、0歳から20歳の誕生日前日までの人のことです。

  児童福祉法では、18歳未満が「児童」と呼ばれています。
  しかし、選挙権は20歳、喫煙・飲酒が許されるのも20歳です
 ので、少年は20歳と定義されているのでしょう。

▼ さて、この本は少年の「非行」について書かれた本ですが、筆者
 は非行の起きるメカニズムとして、次のように書いています。
 
    28年間の家裁調査官生活から来る率直な感想であ
    るが、非行の起きるメカニズムとして、「性格」と
    「環境」に加え、「偶発的要因」という項目を加え
    たい。

  この「偶発的要因」の話は、納得させられました。

  ある高校生男子Aの話が出ていました。運動部で活躍しており毎
 日電車で着いた後、約30分間自転車で登下校している子の話です。
 彼の自転車は、駅の自転車置き場に保管するようにしていました。
  ある朝、自分の自転車の鍵が壊されて、自転車が無くなっている
 ことに気づきました。その日は、試合直前の大事な練習のある日で
 した。
  ふと目をやると、鍵のかけていない自転車があります。
  「今日1日だけ借りて、後で返そう。」
 と思い、自転車を無断で載っていきました。そして、帰りの自転車
 置き場で窃盗として捕まったということです。

▼ このようなケースが「偶発的要因」のケースだそうです。
  この家裁調査官の方は、次のようにいいます。

    Aの性格に非行を起こしやすい傾向があるとは思え
    ず、普通以上に真面目な高校生と言っていいくらい
    であった。それでもこういうことはあるわけだ。こ
    の事例のように、1人の盗みが次々ほかの者の盗み
    に連鎖する現象にはよく出会う。

  私もこういう事例はだれにでも起こりえるものだと思っています。
  だからこそ、こういう事例を、普段の生活の中で子どもたちに語
 る必要があるのだと思います。
  そして、もし起こってしまったとしても、2度と起こさないよう
 に、私たちは努めなければなりません。
  「常習犯罪者」を出さないためにも。

     常習犯罪者の問題が解決できることなのかどうか
    私にはわからない。盗みの常習者1人が一生涯で生
    み出す損害額、暴力の常習者1人が一生涯で手に掛
    ける被害者数、性犯罪の常習者1人が一生涯で毒牙
    に掛ける被害者数、薬物の常習者が引き起こす犯罪
    の数々、それは恐ろしいほどである。常習者の1人
    を救い出すことによって多数の被害者を生み出さな
    いで済むのである。
     非行に立ち向かう専門職はそのことを考えながら
    仕事をしなければならない。
私のHP「すぐできる読み聞かせ・ゲーム・心の話」もご覧に
 なって下さい。