先生は,こんな本を読んでいます

読み聞かせを15年間毎日続けているちばちゃん(先生)が
読んできた本の紹介をします

4.森本昌宏『痛いの痛いの飛んでけ~111の痛みの話』 産経新聞社2005年

2006年01月31日 | Weblog
▼ ここ3冊は、教育に関わる真面目な本が続きましたが、いつも
 このような本を読んでいるわけではありません。
  逆に、教育以外の本をたくさん読んでいると思います。

  最近(この1週間)の中で面白かったのが、タイトルの本です。
  近畿大学医学部の麻酔科の助教授の方が書いています。
  様々な痛みについての話なのです。(現役のお医者さんです)

▼ 私ごとで恐縮なのですが、昨年12月中頃に、尿管結石になり
 ました。尿管結石は、七転八倒の痛みだといいますが、本当に体
 験したことのないような激痛でした。
  「陣痛とどっちが痛い?」と聞いた人がいましたが、わかるは
 ずありません。

▼ この本を読んで、痛みに「単位」のあることがわかりました。
  標準化単位認定評議会というところで、痛みの単位が決められ
 たそうです。堅そうな会議で決められたにもかかわらず、この単
 位は、次のものでした。

    ●hanage(はなげ)

  何と「鼻毛」が単位なのです。「鼻の粘膜の感受性は人体の中
 で最も個人差が小さい」という理由で決められたそうです。
  そして、「1ハナゲ」というのは・・・

    ●長さ1㎝の鼻毛を鉛直方向に1ニュートンの力
     で引っ張り、抜いた時に感じる痛み。

 と定義されました。
  何だか、本当だがうそだかわからない話です。そもそも、鼻毛
 を「鉛直方向」に引っ張るのなんて、絶対無理です。
  ちなみに

    ●足の小指を椅子の角にぶつけた痛みは2~3ハ
     ナゲ

    ●出産の痛みは2.5~3.2メガハナゲ

 だそうです。やはり、出産に勝る痛みはないのでしょう。

▼ 余談ですが、この評議会によれば、次のような単位も提唱して
 いるということです。

    ●おやじギャグがひとつ滑った時の静けさ
     を表す単位

  何とこの単位は、「かえれ(帰れ!)」だそうです。
  「あんたのギャグは5カエレ!」なんて言われたら、面白いけ
 ど、何だがばかばかしいですよね。

▼ 次の部分は、本ではなく、標準化単位認定評議会の議事録から
 のものですが、

    ●10カエレで強制退場

    ●快楽の単位は「アハン」

 などという、「本当に真面目にやっているの?」と聞きたくなる
 ような議事録なのです。

▼ とまあ、このお医者さんは、こういう雑談を交えながら、病気
 の話をしてくれるのです。
  結構、楽しく読めました。
  ちなみに、私は「尿管結石」と「痛風」の部分をコピーしまし
 た。

私のHP「すぐできる読み聞かせ・ゲーム・心の話」もご覧に
 なって下さい。

3.野田俊作・荻昌子著『クラスはよみがえる』 創元社1989年

2006年01月30日 | Weblog
▼ 1989年に出た本ですが、今の時代だからこそ大切な本だと思いま
 す。5年ほど前にこの本を購入したのですが、「ああ、もっと早く
 この本に出会えたらよかった。」と心から思いました。
  小学校高学年や中学校を担当する教師、そして思春期を迎える保
 護者にも、ぜひ読んでもらいたい本です。

▼ 筆者は、子どもの「問題行動」は次のように作戦を立てて進行し
 ていくといっています。
  
    作戦1 賞賛を求める:いい子でいてほめられよう
    作戦2 注目を引く:なんとしてもめだとう
    作戦3 権力闘争:勝とう、すくなくとも負けない
        でいよう
    作戦4 復讐:相手にできるだけダメージを与えよ
        う
    作戦5 無能力の誇示:見捨ててもらおう

  確かに、問題行動のある子どもたちは、上記のような過程を通っ
 ていくのだと思います。
  通常のクラスは作戦1と2をとる子どもたちから出発するのだそ
 うです。作戦3なら、何とか担任の決意と努力で改善できる可能性
 があるようですが、作戦4を行う子どもたちが出てくると、担任の
 力だけでは無理なようです。俗に言う「学級崩壊」という状況でし
 ょうか。
  家庭での子どもたちも、上記のような問題行動の過程を通るので
 はないのでしょうか。さて、どのように子どもたちに対処すればよ
 いのでしょうか?

▼ 著者は、大きく2点を主張しています。

    ●問題児個人に対応するより先に、まずクラス全体
     の構造を変革する。
    ●競争原理から協力原理に基づくクラスに変革する。

  問題が起きると、個人に対応します。個人に悪いと悟らせ、個人
 の変革をはかるのが一般的な指導ではないのでしょうか?
  しかし、これはクラス全体の構造によって、問題が起きているの
 で、1人が問題行動をやめても、やがて次々に別の子どもたちが問
 題行動を起こすようになります。
  そのために「協力原理」のクラスを作るのが大切なのです。

▼ この本には、子どもへのアプローチの7つのうちの1つに次のよ
 うなことが書いてあります。

    ●子どもを「ほめない」「叱らない」

  これを見て、「何だこれは!ほめない?おかしいんじゃないのか
 ?」と思われた方もいるでしょう。
  しかし、思春期に近い子どもたちほど、大切なのです。かわりに
 何をするのかというと、「勇気づける」のです。

▼ 例を1つあげましょう。
  ある子どもが廊下でゴミを拾ったとします。それを担任が見かけ
 ました。
  通常は、「ゴミを拾ってえらい!」となるでしょう。低学年なら
 いいと思いますが、高学年になると、「ほめられるためにやったの
 ではない。自発的にやったのに・・・。」という子もいるのです。
  特に全体の前で「○○さんは、廊下でゴミを拾っていた。とても
 すばらしい!」と言うと、「目立っちゃった。もう目立たないよう
 にしょーっと。」という子どもが少なからずいるのです。もう2度
 とゴミを拾わなくなります。私も経験があります。
  中には「ほめられるために行う。」という子もいます。こういう
 子どもは、人の見ている前でしか、ゴミを拾わないようになります。

▼ では、見て何も言わないのかというと、そうではありません。何
 も言わないのは、教育者としてはいけないと思います。
  「勇気づけ」でいくと、次のようになります。
 
    ●○○さん、ありがとう。
    ●先生は、とってもうれしいよ。

  ほめるということは、教師→子どもという「縦の関係」ですが、
 「ありがとう」「うれしい」は、対等の「横の関係」なのです。

▼ また、全体へは次のように言います。

    ●ある人(名前は絶対に出さない)が廊下のゴミを
     拾ってくれました。先生はそれを見て、とても暖
     かい気持ちになりました。でも、この人だけでは
     なく、このクラスの他の人もゴミを拾ってくれて
     いる人がいるのだと思います。だから、そういう
     人たち全員に「ありがとう」を言います。いつも
     学校を清潔に保っておくのに協力してくれてあり
     がとう。

  「何をまわりくどい言い方をして・・・」と思うかも知れませんが
  このように言うと、陰でもコツコツと行動する子どもが出てき
  ます。
   そして、この「勇気づけ」は高学年ほど有効なのです。

▼  この本を書いたのは、教師でもなければ、教育学の専門家で
  もありません。
   ひとりは思春期の子どもたちを主に治療している精神科医で
  あり、もうひとりは教育相談を専門にしている心理臨床家なの
  です。
   「学校教育」とはまた違った見地から子どもを見ることがで
  きます。
私のHP「すぐできる読み聞かせ・ゲーム・心の話」もご覧に
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2.高尾五郎著『ゼームス坂物語』 新流出版2004年

2006年01月29日 | Weblog
▼ この本は、タイトルは忘れてしまいましたが、元刑務官の方の本に
 「心が洗われたくなったら、この本をよむといい。」というようなこ
 とが書いてあったのを見て、購入した本です。
  この刑務官の方の本がとても面白く(一気に読みました)、「この
 方のすすめる本ならば・・・」ということで購入しました。

▼ 『ゼームス坂物語』は、ゼームス塾塾長・多川長太の塾の子どもた
 ちや保護者とのふれあいを描いた作品です。
  こんな簡単な説明では、この本の良いところは伝わらないのでしょ
 うね。そこで、ある読者が書いた感想を載せます。

    いま日本人がいちばん読まなければならないのは、ハ
    リー・ポッターではなく、『ゼームス坂物語』です。

  この本は一気に読みました。「心が洗われた」というか、私は教師
 なので、色々と考えさせられました。

▼ 不治の病にたおれた母に、「通知表がオール3になったら、家に戻
 るんだね。」という約束を大介という男の子がします。オール1の成
 績の子が必死になって勉強をします。ゼームス塾塾長も両親も驚く程
 のがんばりを見せ、大介君も「これは、ひょっとすると・・・」と思い
 はじめます。
  さあ、通知表をもらう日です。その子の通知表は・・・。
  現実は、今まで変わりなく、ほぼ全てが1でした。大介君は、愕然
 として「何だ、こんなもの!」と通知表を破ってしまいます。

▼ さあ、学校から父親が呼び出しを受けます。学校側は一方的に男の
 子の悪いことだけを並べ立てます。普段の素行の悪さから、その子の
 未来までをも否定してしまいます。
  父親と同席した塾長は激怒し、新しく書き直した通知表を再び破い
 てしまいます。そして、こう言います。

    もう一度、大介の通知表を書き直してくれますか。も
    っと大介という子に身を寄せた通知表を。点数をよく
    してくれというんじゃありませんよ。そんなことを言
    っているんじゃなくて、もっとちがった方法で大介を
    見て下さいということですよ。あなたはおそらく、よ
    くできる子供たちからすべてが出発しているにちがい
    ない。

▼ この言葉は、私たちにとって、重い言葉です。

 ●事実だけを見るのではなく、その裏側に隠されたものをきちんと読
  みとっているのか?

 ●言葉の重み、数字の重みを感じて、ペンをとっているのか?

  こんな思いを自分に問いかけながら読んでいきました。第1巻だけ
 で9つの話が入っています。どれも、子どもたちの純粋な素直な気持
 ちが伝わってきます。
  正直、思わず泣けてしまう話もあります。これが、「心が洗われる」
 ということなのでしょう。

▼ 最後に引用をします。あとがきです。

    私がいまいちばん望むことは、この本を教師を志す青年
    たちに読んでもらいたいと思うのだ。彼らは教員採用試
    験を通るためにたくさんの本を読む。子供たちを指導し
    ていく力をつくるために、また、たくさんの教育技術の
    本も読まなければならない。そのとき、ぜひ、この『ゼ
    ームス坂物語』を読んでもらいたいのだ。それはこの物
    語が教師として子供たちの前に立つための、もっとも大
    切な、もっとも本質的な、教師の魂をつくるための物語
    だからだ。教師の魂をつくるのは知識でもなければ教育
    技術でもない。一人一人の魂のなかに突き刺さっていく
    魂の物語が必要なのだ。もし、この作品が教師を志すす
    べての青年たちに読まれるようになると、日本の教育は
    確実に変わっていくだろう。

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1.三浦綾子著『わが青春に出会った本』その1 新潮社

2006年01月29日 | Weblog
▼ どんな人間・どんな本と出会ったのか

    私たちの幸せは、どんな人間と知り合ったか、どん
    な本と出会ったかということと、深いかかわりがあ
    ると思う。

  この言葉は、三浦綾子さんの言葉の中で、私が1番好きな言葉で
 す。人との出会いというのは、人生において大きなウエイトをしめ
 るということはみなさんも同感だと思いますが、三浦綾子さんは
 「本との出会い」もまた大切なものだと述べています。

▼ 三浦文学の原点は読み聞かせだった

  この本を読み、三浦文学の原点が綾子さんの祖母の読み聞かせで
 あったことを知り、うれしくなりました。
  綾子さんは、「私の読書好きの芽を育ててくれたのは祖母である」
 とおっしゃっています。

    ・・・・・なぜ、私は読書好きになったのだろう。その最
    初の芽を育ててくれたのは、祖母だと私は信じてい
    る。母の母であるこの祖母は、母のお産の度にわが
    家に来ていたし、暇さえあれば忙しい母を助けるた
    めに、何丁か離れた所からかけつけてくれた。この
    祖母は、十年程前、九十六歳で死んだが、私はこの
    祖母の怒った声や顔を、全くといってよい程知らな
    い。祖母は、たくさんの民話や、おとぎ話を知って
    いて、私の背をなでながら、眠りにつくまで、話を
    聞かせてくれたものだ。

  私が読み聞かせを始めたのは、新卒2年目のことです。当時、ク
 ラスの子どもたちは騒がしく、私の話を聞かない状態でした。
  そんな中、子どもたちは「こわい話を読んで!」と言います。私
 は、自宅にあった古い『世界のこわい話』という本を読みました。
  すると、あれほど騒がしかった教室が「シーン・・・。」となりまし
 た。真剣にしかも楽しそうに私の話を聞いているのです。
  この子どもたちの姿には大きな衝撃を受けました。
  「読み聞かせって、すごいんだな。」そう実感してはじめた読み
 聞かせも、もう15年目になりました。

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