Sweet*Studio

あなたと過ごす、この瞬間は忘れない。

袋小路

2009-01-20 | 2009年
そこは、アキバと呼ばれる街とよく似た雰囲気を持った「通り」だった。
駅前の広場のようでもあり、交差点が目の前にあり、信号待ちをしているのか、単にたむろしているのか、人が溢れていた。
わたしはその中にとけ込むように、やはり横断歩道を歩いて行くつもりなのか、それともずっとこの広場のような歩道のような空間に、周囲の人々と漂っていたいのか、わからないけど、そこに、いた。
なんとなく、周囲の人々と共感しているようで、それは心地よく、ずっとそうしていたいような気持ちで、いた。
ところが、突然、空気が変わる。
一角にいた数人が、持ってはいけない「くすり」を持っていたようで、つかまったのだ。
そして、その動揺はあっと言う間に広がり、動揺は空間にいる、すべての人のものとなった。
あっちも、向こうも、行き止まり。警官隊に塞がれてしまった。
残るひとつの方向、わたしが元来たほうへ、仕方なく、そっと足を向けた。
誰にも気づかれませんように...。


角を曲がると、そこは細い路地のようになっている。
そこに、クラスメイトが二人、いた。
一人は、明るくかわいく、だけど少し強引なところのある彼女だ。
もう一人は、その彼女の「しもべ」のような存在。いざとなれば、彼女の手足となって動くのだ。
すれ違うのは、かなりきつい。彼女に気づかれないように、などはとても無理。
彼女の身体に触れずに行くことすら難しい。
近づいてみると、彼女は、ある友人を待っているらしい。ところがなかなか来なくていらいらしている。その友人が来たら締め上げてやろう、などと考えているらしいことが、彼女の甘い声の調子の中に潜んでいる。
どう無理をしてでも、ここはくぐり抜けなくてはならない。なるべく刺激しないようにしよう。
媚びるような笑顔を浮かべて、わたしは彼女の前を通り過ぎた。
と、ふと、彼女は私の存在に意識を向けた。
ああ。友人へのいらだちを間違っても、わたしに向けることがありませんように。。。
・・・しかし、そのせつない祈りは叶わず、彼女はわたしに刃を向けることにした。
いやあ!わたしが何をしたというの?
彼女はのどかな甘い声で、わたしに話しかける。
わたしは、気づかぬ振りをしながら、目の前のはしごを登る。
ここを乗り切れば、助かる。走って逃げる事が出来る。
なのに。あと一歩、なのに。

彼女は、容赦ない。
わたしの片足を掴んだ。
いやぁあ!
わたしは手にしていたペンケースを彼女の頭に振りかざす。
弱い音がして、彼女は、そのペンケースからシャープペンシルを取り出して、手にした。
彼女が、そのシャープペンシルのペン先をわたしのふくらはぎに突き立てようとする。刺されたら、このはしごから落ちて、すべてはおしまいかもしれない。
いやぁああ!
わたしは、ひじの下あたりにある彼女の顔をめがけて・・・・・





あまりの怖さに、目が覚めた。
汗だくになっている。

そうだ。これは、父の思いかもしれない。
病魔というたちの悪いものに捕まって、袋小路に入ってしまった、父だ。

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