ヘチマカス

「泣いてみようとしたが泣けなかった…」「笑ってみようとしたが笑えなかった…」そんな心の不感症カモンが送る無意欲文章群。

トサツバ

2007-05-01 | Weblog
ある晴れた日。
 
場~トサツバ:家畜などのケモノを殺す所~に向かう途中のトラックには満杯の牛。

そこから一頭の牛逃げ出し、息荒く走り回り、町中大パニックに。

やがて商店街に迷い込み、一直線に猛突進して、商店街の店主たちは、それを食い止めようと、立ちはだかるが、怖じ気づき

「ここはプロの出番」と、肉屋にこの問題押し付ける。

肉屋、戸惑いのうちに、魚屋が肉屋の背中を押したその瞬間。

肉屋、牛に轢かれ、帰らぬ人に。

その肉屋の葬式での、未亡人・光子(52)の喪主のあいさつ。










光子『みなさん、生前主人がたいへんお世話になりました。
主人はこんなに大勢の方々に見送られて、本当に幸せだったと思います。

トラックから牛が逃げ出し、商店街に来ているお客さんを安全な場所に誘導し避難させるために、主人は外に飛び出していきました。それは、ほかの店舗のみなさんも、同じだったと思います。

そこで、たぶん魚屋だったと思うんですが・・・いろいろやりとりのあと、おまえが食いとめろとかなんとか、あとで聞いた話ですが「おまえ牛のプロだろ」と背中を押すカタチで、主人を牛の走る道路の真ん中に追いやったんです。

いいえ、私は、決して魚屋を責める気はございません。きっと、あそこにハゼの大群が泳いで来たら、うちの主人もきっと魚屋を押し出したことでしょう。魚屋だけじゃありません。もし、でっかいホッチキスが襲って来てたら、文房具屋を盾に文房具屋は噛み殺されていたでしょうし、もしあそこにいい物件が転がりこんできたら、きっと不動産屋が住まわれたことでしょう。

不動産屋だけじゃありません、豹柄が町を染めればクリーニング屋に委ねたでしょうし、

ダンシング・ヒーローが流れれば、荻野目ちゃんが踊りだしましょう。



靴屋も床屋も、自転車屋もみんなそうです。

友達と自転車を交換すればそのサドルに違和感を感じ、

「やればできる」と、一人娘を励まし続ければ、ヤッたらデキちゃって、シングルマザーでしょう。


いつの時代だって、キャプテンが風邪をひけば、マネージャーが看病するんです。

風が吹けば桶屋が儲かるんです。


岩をも砕けば小石屋なんです。


今回は、たまたまウシだったというだけで、どのお店も、いつそういう危機的な状況に晒されるかということを、わかったうえで、これからも、商売に励んでください、と、そういうことです。
元気があれば何でもできる、と、そういうことです。


それでは皆さん、ご唱和ください。


泣かしたこともある 冷たくしてもなお、

ハンバーグに目がないワンパクがいる限り、7:3で挽いた肉もある。

まさかそんな肉屋がひかれるなんて、ひにくか、ひにくか、ひにくなのかー。

そんな主人が今日焼かれます。直火に丸焼き、油は敷かず、噴き出す肉汁、涙に染まる。

それではみんなでむかいましょう、肉屋で、火葬場。


ありがとうごいましたー。』





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