ヘチマカス

「泣いてみようとしたが泣けなかった…」「笑ってみようとしたが笑えなかった…」そんな心の不感症カモンが送る無意欲文章群。

喧嘩屋嫌煙家

2006-05-27 | Weblog

その男は、"喧嘩屋嫌煙家"と呼ばれた

恐れられてはいなかったが、邪魔者扱いはされていた。

病院・駅のホーム・ショッピングモールや百貨店
ガラス張りの喫煙ルームの前に現れては、

「上野のパンダみたいだな、もくもくと葉っぱ食ってら」
と眉を細めて

「あんなものぁ にんげん様の吸うもんじゃぁねぇ」と、
リンリンと警鈴を鳴らして走って逃げる。

喫煙者たちは、けむたい奴来たなと、
『リンリンと鈴を鳴らすべからず』と
張り紙をして抵抗する。

翌日それを見た男は
「しゃらくさい」と
カンカンとフライパンをオタマで打ち鳴らしては、走って逃げる。

次に男が現れたときは
『カンカンと鐘を鳴らすべからず』と
紙が貼られてる。

「冗談じゃねぇ、たばこで家を焼かれ、肺をやられ、家族を奪われた男の気持ちがわかってたまるか」と
ホアンホアンとサイレンを轟かせて、走って逃げる。

『ホアンホアンとサイレンを轟かすべからず』と貼られてる。

「あたまきた、あたーきた、
百害あって一利ないやつに、こんな言われる筋合いはねぇ」と
ガラスをトントン叩いて逃げる。

『このガラス叩くべからず』

そして男はついにキレた。
喧嘩屋嫌煙家の本領発揮。本性発起。

「ユウユウとした口ぶりが気に入らねぇ!このイカレパンダたちをひとり残らずとっちめてやる!
出て来い!ガラスん中入ってないで、出て来い!この野郎!」

男は叫び、わめき散らした。


喫煙者たちは、やはり落ち着いた様子で

「それでは私たちを、このガラスの向こうにおびき寄せてください」と
男を煙に巻いては

一休み一休みと、

またたばこに火をつけたそうな