先日、知人からインド料理店での飲み会の誘いがありました。
幹事によると、種類豊富なインドカレーと窯焼きチーズナンが絶品のおススメ店だそうです。食べ放題を予約したので空腹で来場するよう案内を受けました。
これは楽しみです。
夕方、早めに仕事を片付けて指定された店に向かいました。
虎ノ門のサラリーマン向けの飲食店がひしめく一角です。
店の場所は「食べログ」に掲載されていた地図をチェックしていたので、頭に入っています。
ところが、です。
集合時間の15分ほど前に店の場所と思しき小道に入ったものの、店の看板が見当たりません。どうやら通り過ぎたようです。
踵を返し、注意深く探しながらゆっくり歩きます。
しかし、やはり見当たりません。
地図を見間違えたのでしょうか?
いや、そんなはずはありません。
僕は外国でさえ苦もなく街歩きができるぐらい地図を読むのが得意で、虎ノ門の地理にも自信があります。
ひょっとしたら入口が反対側の道にあるのかもしれないと思い、回り込んでみました。
しかし、やはり見当たりません。
なぜでしょうか。
加齢に伴って地理感覚を失い、ポンコツになってしまったのでしょうか。
集合時間が迫ってきます。
スマホを取り出し、店名から住所を検索し、確認してみます。
すると、当初見当を付けていた場所で間違いありません。Aビルの2階です。
しかし、看板には、案内を受けた「インドカレー ××」ではなく、「個室居酒屋 肉バル △△」と表記されています。カレーっぽい雰囲気は一切出ていません。
これはいったい、どういうことでしょうか?
インド料理店が閉店したのなら、食べログにはそのように書かれてあるはずですし、そもそも予約を受けてくれないはずです。
恐る恐る、扉を開けて店内をのぞいてみます。
店内からはスパイシーなカレーの香りが漂ってきます。
店員は、全員インド人と思しき顔つきです。
「すいません。××という店を探しているんですが....」
「アア、ハイ、ココデス。ご予約のお客サンデスカ?」
「は.....ここ? 看板には△△って書いてあるけど?」
「昼は××、夜は△△デス。ご予約デスカ?」
「どういうこと? ××の看板がないけど?」
「昼は看板アリマス。夜アリマセン。ご予約デスカ?」
「ななななななんで? なんで昼夜で名前を変えるの?」
「夜もカレー、アリマスヨ! 美味しいネ!」
意味不明です。混乱します。
ひとしきり噛み合わない会話をした後、店内に通されました。
参加者のうち、僕が最初の到着のようです。
着席するとすぐにスマホを取り出し、他の参加者に連絡します。
「あのね。店名は××ではなく△△だからね。場所は同じだけど。間違えないでね」
「え? どういうこと?」
「場所は食べログの情報どおり。でも、××の看板はないの。△△だから」
「ええ? 店が変わったってこと? カレーじゃないの?」
「いや、変わってない。カレーはある」
「じゃあ、どういうこと?」
......やはり噛み合いません。無理もありません。

その後、全員集合後、最初から最後まで王道のインド料理を堪能しました。
幹事が推薦する本場のカレーもチーズナンも期待どおりの美味でした。
しかし、「個室居酒屋 肉バル △△」と謳っておきながら、料理は完全なインド料理、個室らしき部屋も見当たりませんでした。
料理は満喫したので何の不満もないのですが、店員さんからは昼夜の店名が違う理由は聞けませんでした。
これだけ美味しいインド料理が出せるのなら、堂々とインド料理の看板で推せばいいと思うのですが。
これは一体何だったのか、狐につままれたような気分です。
いずれにしても、自分のポンコツ化が加速していないことが確認できたことだけは、安心しました。