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2015年12月05日 | 厚生年金基金


11月30日に投稿しました「誰も知らない厚生年金基金 ―日本版401k誕生秘話!No one knows the employees' pension fund 」拙著・¥860・254ペ-ジ・Amazonについて、多くの方に更に一層基金の事を知ってもらいたく、12/5~12/9に無料ダウンロードを行います。

キャンペーンの開始時刻と終了時刻は、それぞれ開始日の午前 0 時 (太平洋標準時) および終了日の午後 11 時 59 分 (太平洋標準時) です。そのため、実際にキャンペーンが開始するのは日本時間の午後 5 時、終了時間は終了日翌日の午後 4 時 59 分になります。

上の無料ダウンロードをクリックしてAmazonへお出かけください。PC・スマホ・タブレット等でお楽しみいただけます。皆さんの周りに基金の事を知らない方がいらっしゃいましたらご吹聴のほどお願いします。

これを機会に、WEB蔵書の一つとして保存しておいてもいいかもしれません。

友人たちからコメントもいただいております。「今こそ温故知新」 「 厚生年金基金のどこに無理があったのかに関する振り返りは、未だ十分になされていないように感じます。」


 


 「誰も知らない厚生年金基金 ―日本版401k誕生秘話!」

はじめに

  

社会保険事務所(現年金事務所)で相談しても、社会保険労務士に聞いても、WEBサイトで調べても、……誰も知らない厚生年金基金! いったい、どうなっているの? というのが、厚生年金基金です。こんな疑問が巷にあふれています。

 

 

 

かつて一二〇〇万人(国民の一割)がかかわり、年金資産六〇兆円も積み立てた厚生年金基金について「誰も知らない!」なんて変な話・ミステリーではないでしょうか?

 

 

 

この本は、厚生年金基金事務所の二十五年に及ぶ実務経験(事務所の人的物的体制構築・規約規定の整備・基金業務の機械化・加入員の年金計算年金振込み・基金財政の検証・基金の予算決算・ライフプランセミナー開催・OB会運営・年金給付改善・資産運用体制構築・年金調査研究等)と、社会保険事務所の年金相談員五年経験(ほぼ三〇,〇〇〇人と面談)の年金カウンセラーが、「厚生年金基金」という堅い話をなんとか柔らかく皆さんにお伝えしようと試みます。

 

 

 

つまり、学者先生が書けないインサイダーによるドメスティックな本になります。ハウトウものや解説本や教科書ではありません。その類の本は筆者の任にあらずです。

 

そのため、論文調の退屈さ・窮屈さを避けるために、「基金って何?」、「引用文」、「講演録」、「事例集」、「Q&A」、「401(k)調査記」等による話としました。

 

要するに、いろいろな語り口を通じて、皆さんにお楽しみいただきながら、自然に、「厚生年金基金」のイメージが定まるようにしています。

 

 

 

さて、平成十五年(二〇〇三年)一〇月、確定給付企業年金(DB Defined Benefit)である厚生年金基金の将来分代行返上が法律で認められ、一気に六六〇基金の「代行返上」が始まりました。そのほかに平成十三年(二〇〇一年)に始まった確定拠出企業年金(DC Defined Contribution)に移行した基金(三〇基金)や「基金解散」も急拡大し、全国にそれまで一八〇〇余基金あったのが、一〇〇〇基金になり、平成二十二年(二〇一〇年)二月一日現在では六〇九基金(大半が身動きの取れない総合基金)になっています。

 

 

 

このように、いまやあたかも「厚生年金基金」は時代の要請を果たし終わり、次にバトンタッチをしているかのような状況にあります。それは、まるで米国の後追いをしているかのような景色でもあります。

 

 

 

と言いますのも、日本でも、老後の生活保全については、次の図表1のように昭和四〇年以前はFamily家族が担っていました。昭和四〇年~平成十五年頃はGovernment/Company政府/企業でしたが、平成十五年頃以降(米国に二〇数年遅れて)Individual個人の責任へとシフトしつつあるようです。

 

 

 

【参照 図表1 年金主体の移り変わり 出所:米国フィディリティィ社 プレゼンテーション資料 1999年訪問】

平成二十四年の現在、このような立ち位置の「厚生年金基金」は確かにタイムリーな話題ではありません。

 

 

 

しかし、「厚生年金基金」には関係者のマドリング・スルーな必死の切磋琢磨によって蓄積されたインフラ・ノウハウ(例えば、退職金の年金化・外部保全化、資産運用の方法、官僚まかせの他者依存意識からの覚醒、受給権保護の方法、受託者責任、個人勘定の革命性等々)には膨大なものがあります。そこに、厚生年金基金の歴史的意義が凝縮されています。

 

つまり、この本はそれらの一端に言及している代行返上前のドキュメント、更にはプレ確定拠出年金のドキュメントとしてお読みいただけたら幸いです。要するに、「日本版401k誕生秘話!」です。

 

 

 

若い人たちにとって、新たに始まった確定拠出年金(個人勘定故の自分年金)の成功のために、この「厚生年金基金」のインフラ・ノウハウを承知しておくことは必要不可欠なことです。と言いますのも、ここから、若い人たちが将来何をすべきかの方向が見えてくるからです。

 

それでは、皆さん、厚生年金基金についてのいろいろな語り口を、まずはお楽しみください!

 

 

 

 

     平成二十四年八月

 

年金カウンセラー 高野 義博

 


 【結果報告】

ありがとうございました。

DLは32でした。

2015.12.12.

年金カウンセラー

 

 


 




「 誰も知らない厚生年金基金―日本版四〇一k…」 目次 No one knows the employees' pension fund

2015年11月30日 | 厚生年金基金

 

 

 

内容紹介

社会保険事務所(現年金事務所)で相談しても、社会保険労務士に聞いても、WEBサイトで調べても、……誰も知らない厚生年金基金! いったい、どうなっているの? というのが、厚生年金基金です。こんな疑問が巷にあふれています。 
この本は、厚生年金基金事務所の25年に及ぶ実務経験(事務所の人的物的体制構築・規約規定の整備・基金業務の機械化・加入員の年金計算年金振込み・基金財政の検証・基金の予算決算・ライフプランセミナー開催・OB会運営・年金給付改善・資産運用体制構築・年金調査研究等)と、社会保険事務所の年金相談員5年経験(ほぼ30、000人と面談)の年金カウンセラーが、「厚生年金基金」という堅い話をなんとか柔らかく皆さんにお伝えします。 
つまり、学者先生が書けないインサイダーによるドメスティックな本になります。そのため、論文調の退屈さ・窮屈さを避けるために、「基金って何?」、「引用文」、「講演録」、「事例集」、「Q&A」、「401(k)調査記」等による話としました。要するに、いろいろな語り口を通じて、皆さんにお楽しみいただきながら、自然に、「厚生年金基金」のイメージが定まるようにしています。 

 

 

はじめに 

目次 

第一章 厚生年金基金の成立

1.厚生年金基金の成立前史

2.厚生年金基金制度の仕組み

第二章 厚生年金基金の展開

1.ブレイク・スルーな事態

2.厚生年金基金経営の有機的連結

3.代行の金縛り

4.〈人様のお金〉

5.基金の見た資産運用環境

第三章 事例で学ぶ厚生年金基金

第四章 厚生年金基金を問う

1.厚生年金基金は死に体!

2.基金問題のインパクト

3.〈人様のお金〉が変える日本のインフラストラクチャー

4.未曾有な事態

第五章 Q&A年金の行方(基金解散と代行返上)

1.基金解散と代行返上に伴う年金の行方

2.基金解散と代行返上の真因

第六章 401(k)の百聞は一見に如かず

1.401(k)一見

2.法門先個社マター

3.取敢えずの401(k)論

第七章 確定拠出年金スタート

 

付録

1.これは宝もの!

2.読書案内

3.基金広報誌「めんばぁ」

著者

著作・評論等

 

注 企業年金連合会図表の掲載は許諾を得ています。


 Amazon

登録情報

  • フォーマット: Kindle版
  • ファイルサイズ: 13871 KB
  • 紙の本の長さ: 254 ページ
  • 出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 4版 (2013/12/8)
  • 販売: Amazon Services International, Inc.
  • 言語: 日本語
  • ASIN: B00F7IBX3S

厚生年金基金事務長奮闘記 あらまし 

2015年11月28日 | 厚生年金基金

戦後日本経済の復興と興隆を懐古趣味で振り返るのはマイナス思考の極みであり、日本経済の「失われた一〇年」とか、「二〇年」と言われるときに必須のことはそれをリアリズムに徹して見据えることであろうと考えるのは一般常識でありましょう。

戦後日本経済の数あるスキームのなかでも一時的にもっとも機能した年金制度、特に厚生年金基金制度については、いっとき一八〇〇余基金、資産規模六〇兆円、加入者一二〇〇万人にも達しましたが、ほとんどの基金の代行返上・解散を招き、残るのは辞めるに辞められない総合基金ばかりになってしまいました。つまり、いまや厚生年金基金制度は歴史的使命を果たし終えて、官僚の敗残の記念碑となりおおせてしまっております。

もはや、三種の神器も右肩上がり経済もありえず、あるのは少子高齢化とグローバリズムという現実の中で、いかに生き抜くかということになってきました。日本の年金制度の見直しはをどう展開したらよいのでしょう。それには、この厚生年金基金制度の実態はどのようなものであったのかをリアリスティックに見据えることが不可欠でしょう。それを、基金事務所のドメスティックな現場に視点を定めて、以下の五章で明らかにしてまいります。

 

第一章 ブレイクスルーな事態

 この章は筆者の講演録です。はじめに年金に関わった筆者の自己紹介をして、基金業務の幾つかの改善をしている最中に、改善に改善を重ねても動的現実に対処できないでいるとき、ブレイクスルーな思考方法に巡り合いました。

基金の資産運用が日本の金融システム、ノウハウの従来手法では機能不全をきたしているが、その原因は官僚による統制計画経済によりスポイルされた国民の総サラリーマン化であろうと考えられます。グローバル経済の下でサラリーマンでは太刀打ちできないと論じます。

 

第二章 厚生年金基金とは?

 厚生年金基金制度の仕組みは、その年金給付の仕方に特徴があります。それは国の厚生年金の一部を基金から支払うという世界にも稀な奇怪な姿をしています。

 

第三章 経営資源の有機的連結

 厚生年金法を始めとする政令・省令・告示・通知等の大枠に伴う行政サイドの規制と行政指導、それに基金を取り巻く日本経済の保守的環境の中で、小さな基金事務所の自主性確保の切磋琢磨な試行錯誤の一端を「経営資源の有機的連結」と題して述べます。

つまり、基金事務所のドメスティックな現場の奮闘をお話して、基金事務所の自主性獲得の様子をお読みいただきます。

 

第四章 フレームワークの刷新

厚生年金基金制度のフレームワーク(給付建て年金・設立形態・給付形態・業務委託形態等々)はシンクタンクとしての金融機関(信託銀行と生命保険会社)が主導して法律化された経緯があります。

その法律により、企業は厚生年金基金の設立認可申請を大臣宛にし、認可された後、人を派遣して事務所運営を行います。当初、機材搬入はありません。商店街にある不動産屋の店舗みたいなものです。机二つに椅子が二つで事足ります。

店開きしてみれば、所与のものとしてフレームワークが与えられており、年金給付は他に選択肢のない「給付建て年金」(確定給付年金)、設立形態は単独、連合、総合の選択肢があり、・給付形態は代行型と加算型、業務委託形態はⅡ型とⅠB型とⅠA型の選択肢があります。当初、一般的には単独、代行、Ⅱ型で設立されました。

このフレームワークは選択肢があるものについても継続的に維持されるばかりで、これを刷新しよう、改善しようという気運は基金事務所には起きませんでした。といいますのも、基金を取り巻く環境も基金事務所も保守的な姿勢が支配しており、自主性などという観念は革命的なもののように忌み嫌われたのが実態です。

そういう保守的土壌において、小さな基金事務所で単独設立を連合設立へ、代行型を加算型へ、そしてⅡ型をⅠA型へ移行し、フレームワークの刷新を図った事例をお読みください。

 

第五章 資産運用の立ち上げ

厚生年金基金は一般的に、貸借対照表の借方の資産を守り、貸方の債務を果たすことで、加入員等の老後生活を保障することを設立趣旨としています。つまり、資産の保全と債務の遂行のために基金は掛金を徴収し、年金を支払うことになります。これを全うするために、受給権を保護し、受託者責任を果たさなければなりません。このことは、基金は常に資産と債務のバランスを視野に入れた〈最良執行〉を求められているということになります。基金は〈最良執行〉を達成し、事業主と加入員等にローコスト・ハイリターンの老後生活保障を提供することになります。

  これを達成するために基金事務所ではミクロの積み上げが重要になってきます。とは言え、ミクロを単発で個々バラバラに行っていては基金の顔が見えて来ないことになりますし、そういう基金の多いことも実態ではあります。そこで、重要になってくるのが「経営指針」に基づく資源の集中化・集約化、経営資源の有機的連結による資本のシナジー効果を高めることであります。具体的には、〈資産運用〉を中心にして衛星的に〈給付改善〉と〈福祉事業〉と〈広報事業〉を配置し、これらの有機的連結によってローコスト・ハイリターンの老後生活保障を実現することになります。

それでは、厚生年金基金事業の有機的連結の中心になる〈資産運用〉はどのように立ち上がり、どのように展開し、どのような成果をもたらしたのでしょう。

その事例をご案内いたします。昭和四十四年設立当初、ABC厚生年金基金の基金事務はソロバンで行われていました。筆者着任後、電卓をいれパソコンを設置して、業務委託形態もⅠA型にして自前で事務処理ができる体制を築きました。福祉施設事業も利差益を使って、弔慰金、OB会のパーティ運営、年金ライフプランセミナー開催、年金受給者の大型観光バス三台を連ねて一泊旅行も十年ほど行いました。

資産運用については、電気科・哲学科出身の筆者には畑違いも最たるもので、何の予備知識もありませんでした。又、会社にも事務所にもそのような経験を持っている人は誰も居ませんでした。

そのような背景の中、金融本の読書から始めました。また、筆者が移動アンテナになって、先行する基金に教えを請い、金融機関等のセミナーにも通い、数多くの研究会にも参加しました。そうして得た金融知識を事務所に反映し、業務に展開しました。

しかし、平成時代へ移行した頃、日本経済の凋落と共に厚生年金基金の積立金不足が明らかになり、厚生年金基金は未曾有な事態を迎えました。〈給付削減〉、〈資産運用効率化〉、〈基金解散〉が当面の緊急課題となりました。

 

 

こうして資産規模六〇兆円、一、二〇〇万人が関わった「厚生年金基金」という一大ページェントが幕を下ろそうとしています。

 

 

 

平成二十五年八月二訂

 


アマゾン

 


「Q&A年金の行方  ―基金解散と代行返上」 4

2015年11月18日 | 厚生年金基金

 

 

 Ⅲ 哲学の時代

 

 一.ソクラテス來迎

(1)

ソクラテス  コンニチハ!

A  どうぞ、お座りください。えっ、ことによると、ソクラテスさんですか?  変装じゃないですよね。一段とヒゲが長くなりましたねぇ。

ソクラテス  ソオネ。

A  ええ、どうしたんですか、こんなところに現れたりして……。

ソクラテス  チョット、ヨッテミタノヨ。最近ノ日本ノ様子ヲキキタクテ。

A  そうですか……。ここは年金相談所ですけれどいいんですか? ……。

何がなんだか分からないけど、まあ、いいでしょう。なんでもありの世の中ですから。

ソクラテス  トコロデ、貴君ワ、ドウシテ哲学ヲ志シタンダッタカナ。

A  えっ、また、そんな突飛なことをお聞きになるんですか!  

ソクラテス  単刀直入ダケノコトヨ。私は哲学徒ダカラ。

A  でも、どうしてそんなことをご存知なんですか?

ソクラテス  ナンデモ承知シテイルノヨ。天上ニ住ンデミルト、下界ノコトハナンデモ見エルンダカラ。

A  そういうものですか。うるさくないんですかねぇ、森羅万象が見えてしまうのは。

ソクラテス  大丈夫。或ル見方ガアルンダヨ。

A  そうなんですか、物事を透かして見るとか、

ソクラテス  イヤ、違ウネ。

A  透かすんじゃないんですか。

ソクラテス  ソウ。天上ニ来レバ分カルヨ。経験シナケレバ分カラナイモノッテアルンダヨ。

A  そうですか。じゃ、楽しみですねぇ。

ソクラテス  モウシバラク待ツンダネ。デ、キッカケハ?

A  えっ、何でしたっけ。それより、どこかで聞いたことのあるフレーズですねぇ。

ソクラテス  何デモ知ッテイルンダカラ。

A  そうなんですか。きっかけ……は何だったか、哲学を始めたのは、そお、夜間高校を卒業して就職先が無くて、雑踏の中の新宿駅のベンチで、「人生とは、何ぞや?」という大疑問に取り付かれたことかなあ。

ソクラテス  ナルホド。

A  若いときって、皆、そんなものでしょう。

ソクラテス  ソオ。デモ、ソレヲ真正面カラ問ウ人ト、生活ニ紛レ込マス人トアルデショウ。

A  そうかもしれませんねぇ。

ソクラテス  デ、貴君ハマッスグ哲学ノ勉強ニハイッタンダッタネェ。

A  真っ直ぐでもないんですけど、……。

ソクラテス  卒論ハ「ヤスパースノ暗号ニツイテ」ダッタネ。

A  それもご存知なんですか。じゃあ、試すようなことになりますが、その中の一節が指導教授の『気分の哲学』という本に引用されたこと、……

ソクラテス  アア、知ッテイマスヨ。アノコトハ万人共通ノ経験ナンダガ、ソレヲ記憶ニ残ス人ハ少ナイカモネェ。

A  そうですか。まれなことですか。

ソクラテス  デ、ソノ後、苦労シテ『情緒の力業』ヲ著述・出版シマシタネ。

A  そこまでご承知なんですか。もう、お手上げです。私には、あなたはすっかりリアルになってきました。

ソクラテス  マダマダ。デ、ソノ書評デ唯一、貴君ヲ理解シタ文章ヲ書イテクレタ人ガオラレタンダッタヨネ。

A  ええ、それで私の目的は達成されてしまいました。

ソクラテス  ソンナコトハナイデショウ。

A  もう、いいんですよ。

ソクラテス  ソオ、天上界ニ行クト、淡白ニナルンデ、コレ以上深入リハシナイケレド……出版ハ慶賀ナコトデシタヨ。ソノ著作ノ苦労モ含メテ。

A  ありがとうございます。でも、なんだか変ですねぇ。お墨付きをもらったような……、幻のような……。

ソクラテス  デ、貴君ハナゼ年金ノ仕事ガライフ・ワークニナッタノカナ。

A  えっ、それはご存知ないんですか!

ソクラテス  モチロン、知ッテマスヨ。デモ、自ラハ語ラナイノヨ。人ヲシテ語ラシメル ッテワケ。産婆術!

A  そうでした。産婆術でした。年金の仕事は会社に勤めてからです。.たまたまの配置換えで厚生年金基金の仕事をするようになり、以後、会社からの再々の肩たたきを肩透かしして、二十五年間年金の仕事をさせていただきました。

ソクラテス  ソオ、ジャア、理事ニハ

A  肩透かし屋には無縁の話です。

ソクラテス  ソウダッタネェ。

 

 

(2)

ソクラテス  デ、聞キタイノハネ、ドウモ雲ガカカッテハッキリ見エナイトコロガアルンダガ……。

A  ええ、何でしょう!

ソクラテス  日本ノ政官財ノ意思決定過程ナンダガ、ドウナッテイルンダロウ。

A  難しい質問ですねぇ。そこがどうして雲に隠れるんでしょう。

ソクラテス  サテ、ドウシテカネェ。天上ノ論理ニハ無イロジックガ働イテイルンジャナインダロウカ。

A  そうですか。でも、さも、ありなんです。

ソクラテス  ト、言ウト。

A  われわれ、日本人は、渦中にありますから、渦中にあるを知らずで、意識しないところがあると思います。第三者的、客観的に見ると、多少、見えてくることがあります。

ソクラテス  ソオダネ。

A  それで、一言で言うと、日本の組織では誰一人として個人としての行動はないと言っていいのだろうと思います。

ソクラテス  チーム・プレーミタイナモノ……。

A  それに近いかもしれません。

ソクラテス  責任ハ誰ガ取ルノカナ。

A  誰がというより、組織、あえて言えば組織の代表者でしょうか。でも、その人は個人として責任を取るのではないんです。

ソクラテス  フゥム。

A  日本のTVニュースをご覧になったことはありませんか。最近、日本では不祥事が多発して企業トップが謝罪している場面が多数放映されていますけど。

ソクラテス  ソウナンダ。

A  日本のインフラはあらゆるところで機能不全をきたし、日本沈没を心配する人が増えています。

ソクラテス  ドウシテソウナッテシマッタノカナ。

A  さて、それを一言で言うのは分析力が鋭敏でなければできないのでしょうが、……。

ソクラテス  ソレダケデハナイダロウケドネ。

A  言えることは、観念論ではないとだけでしょうか。

ソクラテス  ソオネ。

A  戦後日本の復興は、ドイツ以上に成功したといわれています。

ソクラテス  デ。

A  そんな中で、日本のフレーム・ワークは成熟状態になり、ほころびが出てきました。五〇年にも及ぶ鎖国政策はグローバル経済の現実にアン・マッチになってしまっています。

ソクラテス  デ、……。

A  この状態は、一言で言うと、日本人の他者依存の性向にあるのだと思います。自分で切り開くというよりも、農耕民族の天候依存の体質、陽が出なけりゃ、豊作にはならないのです。

ソクラテス  他者依存……。

A  ええ、日本の官僚はこういう民族の気質を巧妙に組成して、自らの政策展開に都合の良い裁量的フレーム・ワークを作り出したのです。ソビエト以上の計画経済フレーム・ワークを作ってきたのです。その典型が「護送船団方式」でしょう。

ソクラテス  デ、……。

A  年金制度も、その意味では裁量的フレーム・ワークであり、数理計算に基づく計画経済なのです。社会保険方式とか、世代間助け合いとかの美辞麗句は官僚の常套手段でしかなく、旧来はそれでも機能しましたけれど、現実にはマッチしなくなっていると思います。

ソクラテス  デ、……。

A  ソクラテスさん、さっきから、デ、デ、ばかりですねぇ。

ソクラテス  気ガツキマシタカ。コレモ、一種ノ産婆術デショウ。

A  そのようですねぇ。

 

 

(3)

ソクラテス  デ、日本ノ年金ノ社会保険方式ハドイツヲモデルニシタヨウダガ、……。

A  そのようです。

ソクラテス  ドイツトイウコトデアレバ、理念先行ノ方法論ダネ。

A  ええ、イギリス経験論のマドリング・スルーのような経験の蓄積という考え方はないようです。

ソクラテス  ハジメニイデーアリキダカラ、ファッショニナリガチダネ。

A  ええ、ドイツにも日本にも、そのような不幸な戦争時代がありました。

ソクラテス  ソウダネ。社会保険方式ヲ金科玉条ニシテイナイカネ。

A  その気がありますねぇ。日本の年金は社会保険方式を堅持していますが、これを疑うことはしません。

ソクラテス  ファシズムノ盲点ハ国民自体ノ自主性ヲ簒奪スルコトダカラ……。

A  それで、他者依存の風潮が蔓延するんですよね。

ソクラテス  ソオ。

A  国家とか、お上とか、お役人が前面に出て、唯々諾々の、その他大勢の国民が付き従う構図になるんですねぇ。そうしていたほうが利益になるから安易に走るんです。

ソクラテス  ソウ、自分デ考エナクナルワケ。

A  そもそも日本人は自分で考えたことが無いんじゃ、無いでしょうか。生活のすべてがお仕着せで足りていましたから。

ソクラテス  フゥム。ソコマデ言イマスカ?

A  言い過ぎですかねぇ。日本人もいろいろですからねぇ。

ソクラテス  ソンナニ自己放棄ガ徹底シテイルノダロウカ、ソウナンダ。

A  悪い意味でですよ。

ソクラテス  ソレデ、成功シテキタンダ。日本経済ノ復興ハ。

A  それだったからなんでしょう。……でも、それって成功ですかねぇ。

ソクラテス  サテネ、見方シダイダネェ。デ、今後ハ、ドウシヨウトシテイルノカナ。

A  あらゆる面がグローバルな状況になった、今となっては、アンシャン・レジームでは立ち向かえなくなりましたねぇ。経済界は、ここ一〇年、「失われた一〇年」を過ごしてきました。

ソクラテス  ソオ。

A  年金の世界でも、終身雇用が崩れ少子高齢化の時代に突入して、社会保険方式というイデーが、はたして年金に不可欠な機能かと、問われ始めたようです。

ソクラテス  デ。ソレッテ遅々タルモンナノ。

A  ええ、国民の気質が変わるなんてことは一〇〇年や二〇〇年の話じゃないですか。

ソクラテス  ソウネ。デ、……。

A  方向の、経路の集約っていう動きはあると思います。胎動っていう程度ですかねぇ。

ソクラテス  カスカニ、ソウイウノハ感ジラレルンダ……。

A  ええ、そのようですねぇ。

 

 

(4)

ソクラテス  デ、ソノヨウナ状況デノ解決策ハ何ダト考エテイルノカナ?……。

A  そういう解決策って言うのは無いんじゃないですか。それではイデー先行の方法論になるだけじゃないですか。でもイデーと言わず信念は必要ですが、信念が形成されるには経験の蓄積が欠かせないでしょうねぇ。

ソクラテス  貴君の言うマドリング・スルーな……。

A  ええ、そういう経験の総和から抽出される原理・原則っていうのはあるかもしれませんねぇ。常に見直される原理、フレキシブルな原理、柔らかな原理ってありえるんでしょうか?

ソクラテス  ソレガ信念ナノカモネェ。

A  なるほど、そおか、そうかもしれない。そうなのか。

ソクラテス  デ、

A  知恵の総和としての信念ってわけだ。

ソクラテス  ソオ。

A  きっかけは、ではなく、解決策は?

ソクラテス  ソウ、デ。

A  現行フレーム・ワーク下の現実にマッチした改善という手法は限界ではないでしょうか。過去の改善パッチワークの結果、今では年金制度は複雑になってしまい、国民には理解できないものになり、支払い者側の取り扱い事務ミスも多発しています。こういう現象面にとどまらず、制度根幹の年金財政方式についても検討を加えるべき時期だと考えられます。

ソクラテス  ソウイウ動キハ有ルノカナ。

A  公的年金についてはいろいろ議論が始まった段階でしょうか。

ソクラテス  ソウナンダ。

A  私的年金、企業年金では、厚生年金基金の三〇年余に及ぶ実験の結果、完全事前積立方式でもどんぶり勘定である限り機能しないことが判明し、代行返上や基金解散に至っています。その後を受けて、新たな実験がセットされました。それが、確定拠出年金の個人勘定です。この制度が定着するまでには様々な試行錯誤が繰り返されることになりましょう。政府も企業もさらに一層のインセンティブを提供しなければならないでしょう。国民サイドも資産運用の面で数段のレベル・アップが必要不可欠だと思

います。なにしろ、日本人は資産運用などしたことも無い民族ですから。コツコツ、勤勉に、ものづくりに励んできただけなんですから。

ソクラテス  デ、……。

A  こういう民間の実験がどういう成果を出すかは未知数ですが、必ずや、国民意識の覚醒は実を上げると思います。基金が達成した「退職金の年金化」という考え方のように、国民の間に定着するものと考えられます。

ソクラテス  ソレデ、国ノ年金デ考エラレル別ノ方式ッテ。

A  そうですねぇ。今、注目されているのはスゥエーデン方式でしょうか。他に、イギリスの適用除外方式、アメリカのブッシュの提案、そお、それに中南米の年金動向等幾つかあります。

ソクラテス  ナルホド。

A  そんな中で、わたしが方法論として注目しているのはポーランドの動向です。ある本に、次のような文章があります。 

 「バルツェロビッチは「斬新的な改革」はかならず失敗すると確信するようになる。広範囲な改革を急速に実施しなければ、経済の方向を変えられる「臨界量」には達しない。」

 ソクラテス  ソレハ面白イネェ。

A  イギリスのサッチャーも似たよう考えなんでしょう。

ソクラテス  ソウ。遅々タル行動トハ別ノ考エ方ダネ。

A  ええ、私の「積習の薫重」も近いかもしれません。

ソクラテス  ソウ。一度、読ンデミマスカ。貴君ノ本。

A  光栄です。ただし、眠くなられても怒らないでください。

 

(5)

ソクラテス  トコロデ、ヤスパースノ暗号ハ

A  えっ、またまた、突然ですねぇ。

ソクラテス  神ノ言葉ノ読ミ解キニツイテ……。

A  ええ、それを「暗号解読」といいました。

ソクラテス  貴君ノ卒論モ、ソノコトヲテーマニシタノダッタカナ。

A  はい、もう四〇年も前のことですねぇ。十三 歳のときの経験、夏の中学校の校庭で友人たちの Y シャツが旗のようにバタバタ揺れている様子に見ほれて固まったとき、突然、他者の存在を強烈に叩き込まれたのでした。Y シャツのバタバタが、暗号だったのです。意味が読めずに固まっていたのです。

ソクラテス  ソオ、オソラク意識ノ別次元ヲ垣間見タノデショウ。

A  実は、私の義母は修験道の信者で、行者の一歩手前の人ですが、山の尾根に一晩中座禅して、般若波羅蜜多と唱える行をしているのですが、その義母が言うのには真夜中の行の最中に意識は無限の拡大をして光さんざめく領域に侵入するそうです。

ソクラテス  ソオ。ギリシャニモソウイウ一派ガイタネェ。

A  日本では、そういう荒行をする人が多いですよ。

ソクラテス  ソウ。

A  密教修行者、空海とか……。

ソクラテス  デ。

A  ソクラテスさん、空海に会われると話が尽きないかもしれませんねぇ。

ソクラテス  ソウ。帰リニ寄ッテミヨウカナ。ドコヘ行ケバ、会エルカナ?

A  高野山の上じゃないですか。

ソクラテス  ソオ。デ、貴君の『情緒の力業』で、言っているのは……。

A  またまた、ドラスティックですねぇ。私の考えは「積習の薫重」といいまして、多様な経験の情緒が薫重して、ある時点で力業が発することがあるということを言っているだけです。計画とか意図とか作為とかが到達できない地点の話ですが。

ソクラテス  ソレハ理性的思弁デハナインダネ。

A  ええ、私はその理性にはおのずと限界があると考えています。感性も然りです。

ソクラテス  ナルホド。

A  突然ですが、アメリカン・カフェ・チェーン創始者の R・ジアモという人が興味深いことを言ってます。

  「似たような状況において蓄積された経験であり、いわば内面から沸きあがってくる推測のようなもの」

  「直感そのものは内なるロジックを持っているが、そのロジックは言葉で表現できるものではない。それは内在している数多くの情報であり、その人の中にある何かによって、その内的情報が互いに結びつけられて経験へと変換していく。その経験とは、問題解決に向けての分析の統合でもある。」

ソクラテス  苦労人デスネ。経験ノ至宝デショウ。

A  そうですねぇ。

 

 

(6)

ソクラテス  デ、最近ノ哲学ノ方面ハドウナッテイルンダロウ?

A  それって、哲学史ということですか?  それは大事ですねぇ。私の任にあらず、です。私なりのものになりますけど、アット・ランダムに関心のあるものを上げますと、哲学ばかりじゃないですけど。

ソクラテス  デ。

A  まず、空海、道元禅師、それに鈴木大拙でしょうか。プラトンも読み直したいですねぇ。ユダヤ教のショーレム、井筒俊彦、イギリスのミル、複雑系文書、日本の数学者、あと、年金関係ではサッチャーの政治手法、ポーランドの政治改革、中南米の従属理論、ボリビアの年金基金、アメリカの『果たすべき約束』……等々、たくさんあります。

ソクラテス  ソレハイイデスネェ。死ンデル暇モ無イワケダ。

A  ええ、別に生き急いでいるわけじゃないですけどね。

ソクラテス  時間ハ限ラレテクルカモシレナイネェ。

A  覚悟はしていますけど。そうなると、毎日が勝負ですねぇ。これまでも、これからもそうなると思います。

ソクラテス  ソオ。デ、貴君ノコレマデノイロンナ経験ノ結果ノ最終メッセージハ何?

A  大げさですねぇ。でも、常々「哲学から始めよう!」と、考えています。というのも、日本人は、自分で考えるということをあまりしてこなかったですから。習慣とか、伝統とかの力が強く、自分で考える必要が無かったとも言えるかもしれませんが。

ソクラテス  ソノヨウダネ。

A  ということは、自分が無かった。というより、他人と自分とが存在していなかった。もっと言えば、融合状態で未分化のままであった……。要するに、意識的には幼児のままだったということでしょう。

ソクラテス  デ。

A  島国、日本で足りていたのが、そうは行かなくなってきていますよね。眼前に展開する現実は。

ソクラテス  ソウダネ。私ミタイナモノモ飛来スルシ、……。

A  ええ、なんでもありで、いままでの振る舞いでは収まらなくなってきています。政治、経済、司法、行政、企業、それに年金も、その他、生活全般について言えると思います。

ソクラテス  ソオ。大分話シマシタネ。デ、……、貴君ノ最後ノ望ミハ何ナノカナ。

A  そんな、今すぐ死ぬわけじゃないですよ。最後じゃないと思いますが、当面の個人的な望みはあります。

ソクラテス  マアマア、ソレデイイケド。

A  いままでに、ギリシャは二度訪問しましたけど、もう一度行きたいんです。

ソクラテス  ソウダッタ。

A  ええ。で、デルフィの丘で沈思黙行、座禅して、二〇〇〇年の時の経過の事象に身を晒してみようと考えています。ヘロポネス半島に吹き降ろすデルフィの風に身をなぶらせるのが当面の望みなんです。

ソクラテス  ソオ、ジャ、ソノトキ、マタ会イマショウ。アソコハ神域デスカラネ。

A  ええ、ぜひ、そのときはデルフィにいらしてください。

ソクラテス  ソウシマショウ。……デハ、マタネ。

 

 

 

(終りです)

 

 

お楽しみいただけましたでしょうか? ご意見・ご感想等賜れば幸いです。 左サイドのメッセ-ジ欄からお送りください。 お待ちしております。


 

 

内容紹介

 平成15年(2003年)10月、厚生年金基金の将来分代行返上が認められ、一気に660基金の「代行返上」が始まりました。そのほかに確定給付企業年金に移行した基金(30基金)や「基金解散」も急拡大し、全国にそれまで1800余基金あったのが1000基金になりました。多くの厚生年金基金(企業年金)が「基金解散」や「代行返上」に雪崩をうって走り始めたところです。それは、まるで巨艦から脱出するネズミの大群の如しという事態になっています。 
このような基金解散と代行返上に伴う年金の取り扱いとそこに至った真因をQ&Aでご案内いたします。これを読まれれば、あなたは「基金解散」や「代行返上」に伴う年金の取りこぼしがなくなります。 
 

登録情報

  • フォーマット: Kindle版
  • ファイルサイズ: 1420 KB
  • 紙の本の長さ: 86 ページ
  • 出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 2版 (2013/12/8)
  • 販売: Amazon Services International, Inc.
  • 言語: 日本語
  • ASIN: B00F09D288

 

 

第3章哲学の時代を「ソクラテス來迎」としてアマゾンにアップしました。

 


「Q&A年金の行方  ―基金解散と代行返上」 3

2015年11月17日 | 厚生年金基金

 

Ⅱ 基金解散と代行返上の真因

 

 一.資産運用の低利回り

 

Q  厚生年金基金から代行返上すると言ってきたが、どうしてそうなったのだろう。加算分も清算したがっているようだが。

 

Q  参ったよ。代行返上するんだそうな。

A  そうですか。記録を確認しますから年金手帳ありますか?

Q  はい、これっ。

A  ちょっと、待ってください。……。5Hになっていますから返上されていますねぇ。返上された分は国の厚生年金の中に合算されて振り込まれますから大丈夫ですよ。

Q  それはいいんだが、……。加算分はどうなるのかな。

A  それは各基金まちまちですが、通常は三つの選択肢が提供されます。

Q  それから自分で選ぶんだ。

A  ええ。

Q  そお。……。なんか、会社は加算分も終わりにしたいみたいなんだが、どうしたんだろう。

A  ええ、一般的には基金の資産運用の低利回りというのがあると思います。基金の資産運用は年5.5%の利回りを予定しているんですが、ここ 一〇年ほどとてもその利回りは確保できていないんです。このため、資産が不足になってきて、年金が支払えなくなりつつあります。

Q   そお、一%とか二%かせぐのも大変なんでしょう。

A   銀行預金の利回りを考えますと分かりますよね。それに、日本経済の構造変化、つまり終身雇用とか年功序列賃金とかが難しくなってきていますよねぇ。さらに、日本経済が世界環境に合わせていく上で不可欠な時価会計の採用というのも大きなインパクトになりました。

Q  環境が変わって昔のインフラでは用が足せないなんだ!

A  ええ、おっしゃるとおりだと思います。

Q  でも、自分たちはそのハザマで年金を受けて老後のリスクに立ち向かわなければならないんだから、ドサクサ紛れに年金をカットされるのは避けたいものだねぇ。

A  そのとおりですねぇ。年金支払い者の動向には十分監視の目を光らさなければならないということになりますねぇ。

Q  どうしたらいいんだろう。

A  政治家や役人・企業経営者、それに労働組合の役員などの発言に注意するとか、ということになりますかねぇ。直接的には、受給の権利のあるものはすべて一〇〇%、漏れがないように請求することですねぇ。そのためには、年金制度を熟知して、調査を完全に行って、自分のガードを固めないといけないでしょう。

Q  そのようだねぇ。ありがとう!  

A  もう、ひとがん張りしてください。 

 

 

 

 二.新規加入員数の激減

 

Q  厚生年金基金から掛け金引き上げの知らせがあったが、どうしてだろう。

 

Q  こんにちは!

A  どうぞ、お座りになってください。ムシますねぇ。

Q  でも、ここは涼しいよ。

A  おかげさまで、私は腰痛が出て参っています。

Q  傍目には分からないやつだね。お大事に!

A  ありがとうございます。それで本題は?

Q  それが、会社の基金から、掛け金を上げると言ってきたのだが。

A  それは加算年金分ですねぇ。ここでは、その辺のことはよくわからないんですよ。詳しくは基金さん聞いてください。

Q  うん。分かっているんだが、今日はもっと一般的なことを聞きたいと思って……。

A  総論話でいいんですね。

Q  そういうこと。

A  加算型基金では、退職金の一部を基金に移して、一時金の年金化を図っていますよね。

Q  そうみたいですねえ。

A  そこで、年金数理計算をすると、各種予定数字の変動に伴い掛け金を引き上げざるを得ないことがあります。

Q  予定数字って?  

A  予定利回りとか予定加入員数とかがあります。

Q  利回りが低ければというのは分かるけど、社員数って?  

A  ええ、毎年新入社員が定期的に一定数入社してきた右肩上がり経済では、そういう心配はなかったのですが、それでは数理計算が成り立たなくなるんです。

Q  たしかに、最近は新入社員が入ってこないよねぇ。

A  そうしますと、数理計算に基づく計画経済は機能しなくなるんですねぇ。掛け金も引き上げざるを得ないということです。

Q  会社って計画経済なの!

A  いえ、日本の年金・企業の年金は数理計算で収支の予測をしていますので、その意味では計画経済と言っていいんだろうと思います。

Q  そういうことなのか、だったら随分時代離れしているねぇ。いっそのこと、じゃあ、数理計算のいらない年金ってないのかな。

A  それは、最近、企業年金の世界で実験が始まった「確定拠出年金」でしょう。

Q  401K!

A  そうです。日本のインフラは総じて時代遅れになってますから、変わらなきゃあならないのでしょう。

Q  世界に打って出て経済活動しなければ日本は生き延びれないんだから、日本のインフラの再建設が必要なんだ。

A  ええ。日本の年金制度にもそういう意味で401Kの実験が始まったといえるでしょう。

Q  新しいインフラなんだ。

A  試行錯誤が続くでしょうが、ひとつの起爆剤にはなりえるでしょう。

Q  掛け金引き上げの背景には随分と難しいことがあるんだねぇ。いやあ、ありがとう。大きな話になって楽しかったよ。

A  楽しかったですか。大味すぎましたけど……。

Q  腰をお大事に。

A  ありがとうございます。

 

 

 

 三.事前積立方式だがどんぶり勘定

 

Q  年金額って皆同じですか?  どんぶりだって聞いたものだから。

 

Q  年金って、皆同じ額なのかなぁ。

A  お座りください。

Q  ええ。どんぶりだって友達が言うもので。

A  う~ん、二つのことが一緒になっているようですねぇ。まず、一人一人の年金額と、年金制度全体の収支ということでしょうか。

Q  そお。

A  お一人一人の年金額は、国民年金でしたらその方が納付された国民年金保険料納付月数によって計算されますので、全員年金額が違います。また、厚生年金でしたら、その方の就職から定年までの全期間の平均給与で計算する報酬比例分とその間の月数で計算する定額分との合算になります。ですから、厚生年金も一人一人年金額が違います。厚生年金基金でも、平均給与と月数によって年金計算しますので一人一人ちがいますしねぇ。

Q  そお。じゃあ、どんぶりじゃないんだ。

A  年金額計算の場面では、どんぶりじゃないですねぇ。

Q  そお……。

A  う~ん、どんぶりって、どんぶり勘定のことですか。

Q  そういうこと。

A  年金額を計算するときにはそういうことはありませんけど、年金全体の収支、決算をするときの財政計算の場面ではどんぶり勘定と言えることはあるかと思います。

Q  たとえば?  

A  国の年金財政では、世代間の助け合いという美名の下に社会保険方式という賦課保険方式(今では実態は修正積立方式になっている)で年金数理計算をしますから、言ってみれば、こずかい帳の経理です。これは、どんぶり勘定といえるでしょう。数理という考え方は予定数字で見込むのですから、単なる計画にしかすぎません。現実とはまったく異質なものが出来上がるのです。ここに、政治家や官僚の恣意が入る余地が生まれるのです。数理というのは、目くらましの方法なんですよね。

Q  そうなの!

A  その点、厚生年金基金の財政は完全事前積立方式ですから、個々人の年金額の積み上げで全体の経理を行うので一応バランスシート勘定になっています。でも、悲しいことに制度の未成熟でしょうか、資産の保全の面では個人勘定になりきっていませんでしたので、結果的に厚生年金基金もどんぶり勘定になってしまいました。

Q  ふう~ん?  

A  どちらにしても、どんぶり勘定のフレーム・ワークであれば、責任の所在はうやむやになりますし、うやむやにできます。政治家や官僚、それに企業経営者にとって都合の良いフレーム・ワークなわけです。

Q  そお。

A  「受託者責任」という言葉をご存知でしょうか?

Q  いや。

A  これも輸入語ですけど、日本の土壌には馴染まないようですねぇ。日本で、この責任を追及すると、日本の司法は国家賠償法で対応するしか能がないんです。

Q  そお。

A  国家賠償法というのは、政治家や官僚、それに企業経営者等の個人レベルの責任を回避する手法なんでしょう。

Q  組織責任というやつね。

A  そうです。個人レベルではなく、組織レベルなんです。

Q  だから、裁判に訴えてもせん無しと言うことか。

A  奥深いところから変わらなきゃあ、ということのようです。

Q  こりゃあ、なかなかだねぇ。

A  百年、河清を待つ、ほどのことなんでしょう。

 

 

 

 


 四.多額な不足金発生

 

Q  厚生年金基金の決算報告書に多額な不足金が計上されているのだが、どうしたことだろう。確か、今まで不足金ではなく、剰余金だったが。

 

Q  おはようございます!  今日も混んでいますねぇ。  

A  ええ、おかげさまで商売繁盛(!)です。

Q  ところで、今年も基金から決算報告の広報誌が届いたのだが、今年、突然、不足金が計上されているのだが……。

A  う~ん、突然ですか?  

Q  そお、ちょっと前までは剰余金だったのに。突然、大きな不足金に変わったんだが。

A  会計方式について、基金から連絡はありませんでしたか。

Q  さて、知らないねぇ。

A  そうですか。ここの窓口では、基金の決算についてはご案内できませんけど、オフレコで私の知る限りのことでよろしかったらお話させていただきます。

Q  それでいいですよ。

A  さて、う~ん、どこから話しますかねぇ。

Q  簡単でいいよ。

A  といわれても、……。そお、バランス・シートってご存知ですか?

Q  会社の決算で使っているやつかな。  

A  ええ、貸借・損益計算書です。基金の決算も、制度発足以来そのバランス・シートで決算をしています。

Q  そうでないところもあるんだ!

A  はい、国の厚生年金などの決算はバランス・シート方式ではありません。単式簿記のこずかい帳決算です。

Q  ふう~ん?  それで、どんな問題があるのかな。

A  単式簿記と複式簿記、さらに簿価主義と時価主義の違いということになります。

Q  そお。

A  単式簿記と複式簿記の違いは役所経理と会社経理の違いですねぇ。バランス・シートが有るか無いかの違いなんですが、ものの見方、ものの考え方の違い、世界観が違うんですねぇ。

Q  そお。

A  さらに簿価主義と時価主義の違いは、多少図式的な説明になりますけど、会社経理と基金経理の違いということになりますねぇ。

Q  そお。

A  たとえば、以前に買った不動産の経理処理で、簿価主義は購入当時の金額のまま計上します。値上がりした部分は含み益という考え方です。時価主義であれば、現在値に修正されて計上され、含み益という考え方はとりません。 すると、簿価主義では資産のバブルが発生します。時価主義であれば、バブルは基本的にありえません。

Q  なるほど。

A  バブルという意味では、役所経理の単式簿記も同様です。次年度以降の収入を大前提にしていますので、常にバブルを内包しています。

Q  そお。

A  つまり、日本の企業会計インフラと行政会計インフラは、右肩上がりの経済を前提にしてバブルを生み出し、先送りが許容されるシステムになっているわけです。都合がいいんですよ、彼らには。使い勝手がいい経理になっているのです。

Q  そお。

A  それで、今回、基金が不足金を発生させた件は、複式簿記の簿価主義であった基金経理に企業会計より一足先に時価主義(平成 九 年)が採用されたので、突然、債務が巨額化したというわけです。

Q  そお。

A  そうなると、政府から預かっている「代行分」は企業にとってお荷物以外の何物でもなくなってきたのです。「代行分」の資産運用で稼ぐノウハウは日本企業には無いですから。日本株式会社は製造業ですから。

Q  それで、いっせいにどこの会社でも代行返上に雪崩込んでいるんだ。

A  図式的には、大まかにそう言えると思います。

Q  そうなんだ、これで大分すっきりしましたよ。もやもやが晴れてきました。どうも、ありがとうでした。

A  どういたしまして。

 

 

 

 五.時価会計採用でどうなるのか

 

Q  厚生年金基金の決算で時価会計採用と聞いたが、どのような問題が発生するのだろう。

 

Q  もう、終わりですか?  

A  どうぞ、機械を使わない問題でしたら、かまいませんですけど。

Q  年金の請求は済んでいるんだが、ちょっと、聞きたいことがあってきたんだが……。

A  お座りになってください。どういうことでしょうか?  

Q  実は、会社で営業の役員をやっていたのだが、年金とか、会計とか、厚生年金基金についてまったく知らないんだ。いまさら会社に聞くのは気が引けるので、ここへ聞きにきたわけ。

A  そうですか、この窓口は公的年金の年金請求や年金受給が中心の年金相談ですから、年金制度の会計とか財政の話になりますと、一般論程度しかお話できませんけど。

Q  それで、結構。

A  で、どういうことですか?  

Q  基金で時価会計を採用するとか聞いたが、会社ではまだだったよね。

A  会社はまだですね。でも、近々そういうことになるようですねぇ。

Q  それで、基金はもう時価会計になったのかな。

A  ええ、なっていますよ。

Q  そうすると、どういうことになるのだろう。  

A  はい、時価会計ということは、保有資産の評価をその時点の時価で評価するということですから、その評価額が直接決算計上されることになります。

Q  時価って言うと……。

A  はい、会社経理で簿価というのがありますよねぇ。

Q  買ったときの値段というやつだね。

A  ええ、それを現時点で評価して決算計上することを時価会計といいます。

Q  そお。評価の方法って決まっているのかな。

A  いえ、それがいろいろ問題が有りまして定まっていないのもありますね。不動産、株式、債券、投資信託、外株、ヘッジファンドなどいろいろありますから。基金の資産運用も多岐にわたってきています。

Q  そお。基金でそんな運用もしているんだ。

A  ええ、資産配分とか分散投資とかリスク管理とかを科学的に計画して、グローバルな運用環境に基金スタッフは立ち向かっています。その点、基金に蓄積された資産運用ノウハウは、日本経済にとって初めてのことでもあるし、貴重なものだと思います。

Q  そお。

A  ええ、ですから、こういう場面で時価評価になると、いっそう保有資産のリスク管理を徹底しなければならないと思います。

Q  なるほど。リスク管理?

A  基金でも、始まったばかりで試行錯誤の最中です。

Q  そお。基金の仕事って面倒なんだねえ。

A  そうですけど、皆さんの大切な老後資金ですから、誰かがやらなければならないですよね。フットライトはあたりませんけどね。

Q  がんばってもらわなければならないねぇ。

A  そういうことになります。 ただ、現在の基金会計のフレーム・ワークでは、資産の保全は基金全体の勘定として経理されます。

Q  ということは?

A  個人資産のセキュリティの面では不十分なんです。実は、会社役員等の恣意が入りやすい点がクリアーされていません。

Q  というと、現実にそういうことが行われているというのかな。経理とか人事の役員だろう。

A  ええ。会社都合という美名に隠れて粛々と行われています。年金というものに対する認識に欠ける役員が多いというより、そういう認識がまだ日本では形成されていないといったほうが正しいのかも知れません。

Q  そう。

A  基金の年金も、まだ個人勘定になっていませんので、どんぶり勘定になりやすいんです。つまり、資産保全の点では、欠けるところがあるわけです。

Q  そう。時価会計ですべて解決というわけではないのか。

A  ええ、ようやっと、スタート台に立ったところです。基金がフロント・ランナーになって日本経済の実験が始まったところです。

Q  そう、大分理解できました。

A  少しは、お分かりいただけたでしょうか。

Q  早速、本を読んで勉強してみるよ。

A  それがよろしいですねぇ。

Q  ありがとう。ちょっと、遅くなってごめんなさいよ。

A  どういたしまして。

 

 

 

 

 六.基金解散や代行返上に伴う責任

 

Q  厚生年金基金が解散したのだが、責任を誰も取らないのでしょうか?

 

A  こんにちは。おかけください。

Q  ええ、こんなこと聞いていいのかしら?  

A  どういうことでしょうか?  

Q  長いこと加入してきた基金が解散したのですけれど、……。

A  ええ、それで、年金は企業年金連合会から受けられますよね。

Q  はい。

A  加算年金分について、どの選択肢を選ばれましたか?  

Q  十五年確定にしました。

A  それは良かったですねぇ。

Q  良くないのよ。

A  と、いいますと……。

Q  終身年金で生活設計を立てていたのに、そうはいかなくなってしまったのよ。  

A  それはそうですねぇ。制度変更の際に、大なり小なりそういう問題が出ますねぇ。

Q  それで、今日はその点の責任を誰かが取らないものなのか、お聞きしたくて来たのですが。

A  う~ん、その点は、会社として信義に反した事実は言い逃れできないでしょうが、個人責任を問うことは難しいんじゃないでしょうか。

Q  どうして?  

A  ええ、現状の日本の経済インフラでは個人責任というより組織責任ですから。よくTVのニュースで会社のお偉いさんが、不祥事謝罪の頭下げをしているのをご覧になったことありますでしょう。最近は、繰り返し、繰り返し放映されますよね。あれが精一杯で、一個人の責任を取らせるため監獄にぶち込むのはできないんじゃないでしょうか。

Q  そうなの。なんかあれだけでは許せないわ。

A  戦後60年の政官財のフレーム・ワークではなんともできないんじゃないでしょうか。過去に幾つか組織犯罪を裁く裁判もありましたが、日本の司法は組織責任しか言いませんでした。どこかに個人責任を問う経路があるのかもしれませんが……。

Q  そうなのね。男社会だからね。男は勝手なことばかりしてきましたでしょ。

A  そうでもあるし、そうではないでしょう。ところで、「受託者責任」という言葉をご存知ですか?

Q  新聞で見たことがあるみたい。「製造者責任」とかというのも有りますよねぇ。

A  そうですね。年金の世界でも、同じようなことがあるんですが、年金制度を作った人間、制度運営をしてきた人間、年金資産を運用する人間等に、「受託者責任」が問われるのです。

しかし、この言葉も日本に入ってきて高々一〇年くらいのものですから、日本の現状インフラにはアン・マッチになってしまうんですね。この考え方が日本の風土に定着するには、二、三〇年はかかるんじゃないでしょうか。

ただ、この話はあくまでも企業年金の世界のことであって、国の年金制度では、一〇〇年も先の話でしょう。

Q  そうなの。

A  誰も責任を取らない、というより、誰も責任を取れないフレーム・ワークになっているのですよ。その点では、日本のあらゆるフレーム・ワークは新たに作り直さなければならないんでしょう。

Q  そお。単なる義憤では世の中動かないでしょうが、

A  そういうことてですねぇ。ご理解いただきありがとうございました。でも、試行錯誤は続けなければ変わりようが無いですよね。ロシアの皇帝の「民の声は、神の声」ということばもありますしね。

Q  そうよね、発言していくことが大事よね。

A  ええ、そう思います。お仕着せではなく、自らの手で作らなければならないのでしょうし、そういう営為が次の時代を切り開くのでしょう。それが無かったら、次の時代は無いんでしょうから。

Q  ええ、私もそう思います。ありがとう。変な質問でお手間を取らせました。

A  とんでもありません。小うるさいことを申しあげました。

 

 

 

 

 七.裁量的フレーム・ワークの機能不全

 

Q  年金制度の変更権限は誰が持っているのだろう。

 

Q  在職老齢年金で支給停止をかけるのはふとどきだよ。

A  そういわれましても……。どういうことでしょうか?  まず、お座りになってください。

Q  うん。誰がその権限を持っているのだろう。

A  実態は、社会保険庁でしょうけれど、政治家が承認していますし、その政治家を選挙した国民ということになるでしょうね。

Q  そう、でも支給停止かけるということは、働くな!  ということだよ。

A  結果的にそういう事態を招いているのも現実ですね。それでも、徐々に改正されてきましたけど。  

Q  賞与でも保険料取り、年金は支給しないというのはひどいよ。

A  お怒りは良く分かりました。……ちょっと、現行の年金の原理・原則から考えて見ましょう。

国の年金制度は賦課方式で世代間の助け合いを基本理念にしていますよね。

Q  そうらしいけど。

A  そのため、給与のある人には若い人との収入のバランス上、年金を少し辞退してもらいましょうというのが、世代間の助け合いの理念だろうと考えられます。給与と年金のある人には、この点で貢献してもらいましょうというわけです。

Q  随分、勝手な論理じゃないかな。  

A  勝手かもしれませんが、その点ではご主人のお考えもほんの少し勝手かもしれませんよ。視野が少々狭いという点で。

Q  そうかい、それは、承服できないけどね。

A  しかし、厚生年金基金の事前積立方式であれば、むしろ六〇歳無条件給付が当たり前で、支給停止をかけるほうがおかしいことになるのでしょう。

Q  すると、年金のやり方、

A  ええ、財政方式によってやむをえないというわけですねぇ。ただ、国の年金の財政方式がこのままでいいと言ってるわけじゃないですけど。

Q  そう。

A  それとは別の問題ですが、国の年金では 五年ごとの財政再計算というのがあり、年金額の見直しがされますが、これなんか世界の年金状況から見ると、年金額が変わるというのは異常であり、年金に値しない、補助金だというのがあります……。

Q  そう、日本の年金はおかしいんだ。

A  年金とは、何なのでしょう。政治家や役人の裁量的恣意が介入していいものなんでしょうか。

Q  六〇歳や六十五歳の無条件給付がいいねぇ。政府の言っている世代間の助け合いは年金とは別のところで達成すればいいんだよ。

A  そうですね。裁量が入る余地のあるフレーム・ワークは時代遅れなんでしょうねぇ。

企業年金の世界での代行返上や基金解散は、この際そういうものはご破算にしようという思慮が働いたのかも知れませんねぇ。

Q  なるほど。

A  政治家や役人とか企業経営者、労働組合の役員等には年金についてしっかりしたビジョンを持ってもらいたいですねぇ。彼らには責任があるのですから。反面、国民一人一人の年金に対する認識が変わることが不可欠なんでしょうが。

Q  そお。

A  時代の要請をきちっと察知できる感覚が必要ですねぇ。ただ、それを現実の政策に反映していくのには大変な努力が求められます。

Q  そうだね。

A  ましてや、時代の要請を読み解く作業の中で、意見は百家争鳴の状態になり、従来の対症療法や先送り政策は否定されることになるでしょう。その意味で、年金制度は「なし崩しに改善される」べきものではなく、つまり、法華の太鼓ではビジョンが持てないのですから、はじめに永続的なものとして設定されるべき性格のものだと思うのですが……。いかがでしょうか?

Q  そうじゃなければ、老後の生活設計など出来やしないよねぇ。

A  ころころ変わるのは、もう、勘弁してほしいですねぇ。

Q  いやぁ、すっかり丸め込まれてしまったなぁ。

A  とんでもないですよ。そんな気はさらさら無いですからね。

Q  分かってますよ。どうも、ありがとう。自分が年金のことを知らなすぎたことがわかりましたよ。もう一度、年金についてじっくり考えて見ますよ。

A  そうですか。失礼なこと申し上げたのでしたら、ごめんなさい。

Q  いやいや、ありがとう。

 

(続きます)

 


 

 

 

 


「Q&A年金の行方  ―基金解散と代行返上」 2

2015年11月16日 | 厚生年金基金

  五.年金が一時金に化ける

 

Q  六十六歳で厚生年金請求、基金解散となり私の年金ライフプランが破綻した!  (厚生年金四十三年、うち基金二十三年の昭和十三年二月生まれの女性)

 

Q  こんにちは。

A  お待たせいたしました。お座りください。二五六番さんですね。

Q  はい、これ受付票。

A  ありがとうございます。六十六歳ですか?  それで、どのようなご相談でしょう?

Q  実は、年金請求をしてないんですけど、どうなりますか。それに、基金が解散するとか、言うんですが……

A  えっ、待ってください。六十六歳になりましたよねぇ。年金証書、無いんですか?

Q  年金手帳は有りますけど。

A  年金請求書類の提出はしてないんですね。六〇歳になったとき、出してないんですか?

Q  出すんだったの?  ずっと働いていたので、退職したら出そうと思っていましたの。

A  そうですか。年金手帳を拝見します。年金加入記録を調べますので。

Q  何か、不都合なことがあります?

A  五年の時効というのがあるんですよ。六十六歳ですと、六〇歳で年金受給権発生で、五年経過した 一 年分が時効となり、年金が受けられなくなります。でも、ちょっと、待ってください。六〇歳のとき、給料は高かったですか?

Q  さて、どうだったでしょう。……そういえば、六〇歳から下げられたわ。

A  そうですねぇ。この記録ですと、五〇万円が二十二万円に変更されています。そうすると、五年を経過した六〇歳の時点で、在職老齢年金が一部受けられたのですが、それは時効で消滅します。

Q  受けられないの?  それはもらえないの。ふぅ~ん、なんだか、おかしな話ねぇ。

A  現行の厚生年金保険法は、請求主義の方式を取っていますので、ご本人の請求がない限り年金裁定をしません。法体系構築上、請求主義をとっていれば、時効という方式が内包されることになります。このことは、官僚の責任回避の方策とも、個人の意思尊重とも言えて、なかなか難しい問題ですよねぇ。「知らなかった」では、時効回避はできませんから、よくよく年金制度をご承知いただかなければならないのですが、では、行政サイドは「知らしめている」か、と言えばそれも限界があります。とすると、防衛的に国民サイドの意識が高いことが必要になります。もはや、日本でも依存的心情は通じなくなってきているのですねぇ。年金も、自分の年金は自分で作る時代になっていますので。

Q  よきに計らえ、の時代ではないということね。

A  ええ、同じ、厚生年金の老齢年金でも、一人一人中身が違うんですよ。その中身を作るのは、ご自身なんです。提供されているフレーム・ワークをどのように組み合わせ、ご自分の年金を作るかということです。

Q  「提供されているフレーム・ワーク」っていうのが分からないのよね。

A  そうですねぇ、年金制度が複雑多岐になってしまいましたから。例えば、年金支給開始年齢、失業保険、在職老齢年金、繰り上げ・繰り下げ、加給年金、振替加算、厚生年金基金、基金解散・代行返上、確定拠出年金、高年齢雇用継続給付金、遺族年金、障害年金、国民年金、寡婦年金、共済年金……等々、ここの窓口でもすべてを説明できる人はいないほどですから。

Q じゃあ、どうやりますの、相談を。

A  年金手帳を見せていただいて、まず、コンピューターで年金制度の加入状況を確認・把握してその方に「提供されているフレーム・ワーク」をご案内することになっています。

Q  そお。私自身の年金受給条件を示してもらえるの?

A  そういうことです。それで、今しばらく働かれるのですか。

Q  この二月で退職します。

A  そうですか。そうすると、六〇歳の時点は時効ですが、六十一歳から六十五歳までの 四 年間の在職老齢年金が清算されます。ここ(図表6.六十五歳から七〇歳までの在職老齢年金のイメージ図)の部分ですね。

 

 

 

Q  まとめてもらえるのね。

A  ええ、それに六十五歳から請求時までの在職老齢年金と基礎年金が過去分として支払われます。

Q  それじゃあ、五年分がまとめて払われるということ。

A  ええ、五年を経過した 一年だけ時効になりますが、五年分は一時金で振り込まれます。

Q  まとまったお金ねぇ。

A  ええ、六〇歳で退職していた人などでは一千万円くらい受けられる人もいます。

Q  そお。

A  それで、退職は 二 月末ですか?

Q 二十九日の末日退職。

A  そうでしたら、三月分は在老(在職老齢年金)のまま払われますが、四月以降は退職改定が行われ、将来分は偶数月十五日に終身給付が始まります。

Q  大体、分かりましたけど、厚生年金は私が死ぬまで「年金」でもらえますよね。

A  はい、「終身年金」です。死亡月までです。

Q  会社の年金は、そうとは限らないみたいなので!

A  ええ、はじめから確定年金で十五年とか一〇年とかに決まっているのもありますねぇ。

Q  突然、一時金になってしまうのもあるんでしょう。

A  会社の年金、企業年金はいままでは「適格退職年金」と「厚生年金基金」でした。適格退職年金は一般的には有期で一〇年とか十五年で終了しますが、厚生年金基金は終身が原則です。ところが、最近の基金解散や代行返上に際して終身の原則が崩れてきています。代行返上の場合は、厚生年金で終身給付されますが、基金解散の場合、終身であった加算部分とプラスアルファ部分は一時金に化けてしまうことが一般的です。基金によっては有期年金になるところもありますが。

Q  私の会社では厚生年金基金なんですけど、解散することになって年金じゃなく一時金になるみたい!  年金で老後を考えていたのが、それが出来なくなるみたい。

A  基金解散ですねぇ!

Q  年金を一時金にするって、会社の勝手に出来ますの?

A  勝手には出来ませんが、……その前に、会社の厚生年金基金は「代行型」でしょうか「加算型」ですか?

Q  さあ、どうでしょう?

A  この記録(被保険者記録回答票)ですと、基金番号●○●番の基金ですねえ。ちょっと、お待ちください。……この名簿ですと「単独・加算・Ⅱ型」のようです

ねぇ。退職金の一部が年金化されていますか?

Q  そういえば、五〇%とか言っていたみたい……。

A  そうですか、それでしたら、加算部分は一時金でも、基金の代行部分は「厚生年金基金連合会」(  http://www.pfa.or.jp/  )から終身給付されますよ。

Q  連合会から?

A  ええ。

Q  連合会って?

A  厚生年金基金を中脱退した人の年金を支払っている団体です。

Q  何処にありますの、それって。

A  平成十六年三月に移転予定で、東京港区の芝公園(TEL(代表)03―5401―8711)です。

Q  そお、ということはその代行部分というのは終身なんですね。支払者が変わるだけなの?

A  とも言い切れないんですが……、連合会の支給基準によって支払われるようになるんで、従来の基金設立メリットというのは無くなり、細かいところで相違が出ます。

Q  それでも、終身給付なのね!

A  そうですねぇ。

Q  聞きに来てよかったぁ。助かるわ。女ひとりの老後計画のし直しかと思っていたので。

A  ご主人は?

Q  独身なの。

A  そうですか、老後が心配になりますよねぇ。定期的に終身受けられる年金があれば、まずは安心ですからねぇ。よろしかったですねえ。でも、加算部分は一時金ですか?

Q  まだ、解散の案内が来ていないの。どうなるのか、わからないわ!

A  年金か一時金か、の選択肢があると思いますので……。新企業年金になるのかな……。

Q  年金にするわよ。

A  それがいいですねぇ。よくよくあなたのところの基金にお聞きになって確かめた方がいいですよ。基金により、まちまちですから。これ(図表7.解散とはなにか。)をご覧になってください。ある基金の事例ですけど……

 

 

 

 

Q  いただけますか?

A  どうぞ。それに、これ(図表8.プラスアルファ部分の清算)は代行返上基金の事例ですが、プラスアルファ部分の清算がわかりやすいのでご覧ください。三つの選択肢がここの基金はあるようです。

 

 

 

 

 

Q  それって何なの?

A  プラスアルファというのは、基金設立のとき、代行部分にその基金独自の全額会社負担による上乗せ給付をしないと、基金設立が認可されなかったもので、すべての基金にこれが付いています。

Q  それも、一時金なの?

A  ここの基金は、終身年金と五年有期年金と一時金の三つの選択肢ですねぇ。

Q  私の基金は、どうなるのかしら?

A  基金に確認してください。

Q  ええ、すぐしてみるわ!  でも、年金で払うと約束していたものをどうして一時金にしてしまうのかしら?  そんなに簡単なものなの?

A  日本のインフラは虚弱体質なんですねえ。年金の受給権保護については確立していないのが実態で、受託者責任も曖昧なままですから。日本では、ようやっと問題として浮上してきた段階なんです。これからも、数多くの愚行を繰り返しつつ、少しずつ展開していくのでしょう。その意味では、新企業年金に期待したいものですが、まだまだ多くの紆余曲折があるんでしょう。

Q  私の人生が終わっちゃうわ!

A  ほんとに、そうですねぇ。

Q  でも、全部が一時金ではないのね。少しは安心したわ。しっかり基金に聞いて見ます。

どうも、ありがとう。

A  よい、老後をお過ごしください。

Q  ハッピィ、ハッピィに行くわ!

 

 

 六.確定拠出年金のスタート

 

Q  基金が代行返上となり年金ライフプランが破綻した夫に連れ添う妻の心配!  (厚生年金四十三年、うち基金二十三年の昭和十三年二月生まれの男性の妻)

 

A  お待ちどうさまでした。お座りください。

Q  夫の年金のことで、お尋ねしたいのですけど。

A  どうぞ。委任状はお持ちになりましたか?

Q  いるの?

A  年金見込み額をご希望でしたら、必要なんですが?

Q  そうじゃなく、一般的なことをお聞きしたいの。年金の仕組みっていうのかしら、夫

婦の年金について、どうなっているのかしら。なんにも分からないので。

A  そうですか。年金の一からですね。「年金のそもそも」論ですかぁ……。

Q  ええ、そもそもから。

A  奥さんにご理解いただけるように、説明できるかなぁ。自信はないけど。

Q  簡単でいいわよ!

A  それが一番むずかしいですよ。そういえば、先日、TVで「平凡は奇跡!」と言っていた女性がおりましたが、「簡単は奇跡!」ですよ。

Q  奇跡を起こして!

A  そう、言われても、能力がなければ……。

Q  いい声、しているわよ。

A  茶化さないでくださいよ。う~ん、どこからはじめましょうか!  日本の年金制度から、お話ししましょうか。

Q  しくみ?

A  ええ、日本の年金は、大きく分けて「公的年金」と「私的年金」に分けられます。公的年金は、日本国内に住んでいる二〇歳以上六〇歳未満の人が必ず入る国民年金、会社に勤めている人が入る厚生年金、役所に勤める人が入る共済年金に大別されます。

Q  私は国民年金で、夫は会社へ行っているから厚生年金なのね。

A  ええ、そうであれば奥さんは三号被保険者で国民年金ですね。手続きはしてありますね?

Q  あるわ!  夫の給与明細に「厚生年金基金掛金」というのが引かれているけど?

A  分かりました。それを次にお話します。私的年金には会社がしている企業年金と個人で加入する個人年金があります。企業年金は、今まで適格退職年金と厚生年金基金がありました。ご主人が給料控除されているのは、その厚生年金基金の掛金で、ご主人は厚生年金と厚生年金基金に加入しているということになります。

Q  年金、年金と、次から次と出てくるのねぇ。それで、年金って、いつからもらえるの。

A  ちょっと、待ってください。その前に、年金が受けられる受給資格期間というのがありますので。

Q  えっ、入っていれば、年齢がくればもらえるんじやないの?

A  ええ、国民年金だと二十五年、厚生年金や共済年金では原則二〇年かけてないと年金にはなりません。特例や特別な取り扱いが無数にありますけど。その上で、国民年金であれば、原則六十五歳から。厚生年金や共済では、原則六〇歳からです。年金開始年齢についても特例や特別な取り扱いが無数にあります。個々人によってどれが適用になるかはまちまちです。一般論での判断は危険です。一人一人の個別のご相談が必要です。

Q  面倒なのねぇ。どうして、そうなったのかしら。

A  奥さんも、そういう質問をされますか?  制度ができて、国民年金でも四〇年、厚生年金では六〇年も経過していて、その間に、社会情勢は大きく変貌してしまい、都度さんざんいじくり回されて、複雑怪奇な制度になってしまったのです。ここは、いっそすべてをご破算にしてシンプルな制度にすべきというご意見もあるようです。それとは別に、時代にアン・マッチな制度はもはや機能しないと考える人もいます。時代は猛スピードで先を行っているのに、人の考え方は依然「世代間扶養」というオールド・

ファッションのままというわけです。「賦課方式」は既に機能しなくなっているのです。

Q  私も、そう思うわ!  サッチャーみたいにはできないのかしら?

A  年金にサッチャーですか!  それは面白いですねぇ。

Q  「合意に基づく政治ではなく、信念に基づく政治」よ。最近、『市場対国家』という本を読んだばかりなの。いつまでも、合意なんてできっこないんですから。合意って、既得権益集団のフレーズでしょ。愚図愚図していたら、日本沈没だわ。そうそう、夫の会社の厚生年金基金は代行返上するとか、したとか、言ってたわ!  新しく確定拠出年金とかいうのを始めるそうなの。

A  確定拠出年金ですか?  

Q  ここではないのかしら。

A  ええ、それは公的年金制度に関係しない純然たる企業年金ですから、会社にお尋ねいただくべきものだと思います。一般的に、ここの社会保険事務所の年金相談では回答できません。でも、たまたま私は、元は厚生年金基金の職員でしたから、多少、承知しています。最近、基金解散や代行返上に関して質問が多くて、先日も訊かれたんですけど、オフレコでよろしかったら、どうぞ。

Q  なんでもいいわ。今度、新しく資産運用をするそうなの。資産運用よ。夫の老後プランが突然変わるのよ。

A  ええ、それで。

Q  どうすればいいの。

A  会社から、ご案内がないですか?

Q  紙を一枚、夫が持って来たわ!

A  一枚ですか。

Q  ええ。それこそ、「しくみ」の説明よ。

A  掛金をどう拠出するとか、どういう商品で運用するとかの……。これ(図表9.確定給付型年金(DB)と確定拠出型年金(DC)の相違点)をまずご覧ください。今までの厚生年金基金は、「確定給付型年金」で、会社が将来の年金を保証していたんですけど、日本経済のここ一〇年の落ち込みによって、この保証ができなくなってきて一斉に投げ出し始めたのですよね。ていたらくな男どもというわけです。それが、代行返上や基金解散ですね。

 

 

 

 

 

Q  夫の会社もそうなのね。

A  ご主人が、ということではないですけど……。

Q  どうしてそうなったのかしら?

A  「日本経済のここ一〇年の落ち込み」は、いろいろ言われていますけど、世界がグローバル化しているのに、日本が鎖国化政策を採り続けているからでしょう。

Q  鎖国は江戸の時代じゃなかった。

A  ええ。ですけど、政府や企業の政策推進者の頭の構造は統制・計画経済のままなんですねぇ。国民はすっかり飼い馴らされていますし、国民は、政府をうるさいと思わないですからねぇ。一部には、日本ほど成功した社会主義国家はないとも言われています。

Q  サッチャーの出番ね!

A  年金の世界でも、賦課方式が世代間扶養という美名のもとに守られていますし、「数理」という統制・計画経済の手法がいまだに幅を利かせています。

Q  そおなの?

A  その点、新たに始まる確定拠出年金は「数理」は要らないですし、日本で始めて積立方式が試験されることになります。日本の公的年金も、これへ向かって大きくターンすべきなんでしょう。サッチャーのように、これを信念とする政治家の輩出が必要だと思います。

A  「確定拠出年金」の考え方は、今までの考え方とは違うのね。

Q  ええ、実験が始まったということでしょう。新しい考え方の。

A  具体的に、どうするの。資産運用を。今までは、住宅ローンの返済や、生命保険や自動車保険の契約、それに郵便貯金が少しという程度で、なんにも資産運用などしたことがないのに。

A  はじめ数年は資産も積み上がっていないでしょうから、確定利付商品ですか。

Q  定期預金よね。

A  おいおい、投資信託とか債券とか株式ということになりますか。

Q  そんなのぜんぜん知らないわ!

A  少しずつ、勉強するしかないでしょうねぇ。逃げるわけにはいかないですから。賢くならないと、生き馬の目を抜かれますよ、業者は虎視眈々と狙っていますから。美味いこと言って法外な手数料をとる業者もあれば、わけのわからない仕組み債とか、高利保証をちらつかせるカタカナ商品などを売りつけられます。

Q  美味い話は無いと、思っていた方がいいのね。

A  日本の金融界は、過去に散々個人顧客をドブ客扱いしてきましたからねぇ。資産運用文化では後進国ですから。インフラがきちんと整備されていないんですよねぇ。大会社が白昼堂々と法律違反なことをやってきましたし、政府はそれを取り仕切ることもできなかったのですから。

Q  そう……。

A  「受託者責任」という言葉をご存知でしょうか?

Q  いいえ。

A  日本の金融界では、いま、この言葉を使うのは気恥ずかしさが先立ちます。書生っぽいと、馬鹿にされるのです。この言葉が日本の常識になるには、まだまだ時間がかかることでしょう。でも、一歩一歩、進めるしかないでしょう。

Q  気の遠くなるような話なのね。

A  ええ、戦後五〇年政府も企業も、組織的に「人様のお金」を「自分の金」扱いして掠め取ってきましたからねぇ。

Q  そうなの!

A  国民一人一人の認識の覚醒が必要ですよね。初めに、「まず、食わなきゃあ」ありきで、日本人は哲学をしてこなかったのですから。食うに終われて哲学が無かったんでしょう。要するに、賢くならなきゃアと言うわけです。

Q  まずは、お勉強ということねぇ。

A  ええ、そうなりますか。だいぶ、説教じみちゃいましたねぇ。ごめんなさい。

Q  どういたしまして、こんな話、初めて聞いたわ!

A  ここで聞いたとは、オフレコにしてください。私は、民間人ですから。

Q  お役人のセリフではないわよねぇ。

A  落ちは、やはり、サッチャーになりますか!

Q  そうみたい。もう一度、本、読み直してみるわ。どうも、ありがとう。

A  どういたしまして、ご主人に、よろしくお伝えください。

 

 

 

 七.解散と返上の問い合わせ先

 

Q  人生いろいろあって、来月六〇歳の定年(昭和二〇年生まれの男性)を迎えることになった。転職を繰り返してきたが、年金が受けられるか心配。  (年金手帳等が幾つかあるが、どうなっているのかわからない)

 

Q  こんちは。

A  どうぞ、お待たせいたしました。

Q  実は、人生いろいろあって、来月六〇歳の定年(昭和二〇年生まれの男性)を迎えることになったんですけど、転職を繰り返してきたので、年金が受けられるか心配なんだけど。

A  そうですか、はじめに年金手帳を見せてください。ありがとうございます。

Q  手帳のほかにも、いろいろあるんだけども……。

A  年金関係のものは全部見せてください。

Q  これは加入員証でしょう。これは厚生年金基金連合会の葉書。これが基礎年金番号通知書。これは基金解散の知らせ。被保険者証。三 枚あるねぇ。これは失業保険かな。

A  いろいろありますねぇ。よく失くしませんでしたねぇ。

Q  そお、苦労がしのばれるでしょう。

A  ええ、お察しいたします。

Q  これで、年金は受けられるかなぁ。

A  確認しますので、ちょっと待ってください。

Q  一 社に腰が落ち着かなくてね……。

A  そのようですね。生年月日が違っていたなんてことはありませんでしたか?  それにお名前が変わったことはないですね。下の名前は間違えられることはありませんでしたか?  

Q  そういうことはなかったねぇ。

A  そうですか。

Q   あったら?  

A  ええ、それで検索しないと記録が出てこないんです。

Q  そお……。

A  会社は、全部……で、七つですかねぇ。

Q  さて、何社だったろう。はっきり覚えていないなぁ。

A  学生時代にアルバイトなんかしたことはないですか?  

Q  幾つかしたけど、年金は?  

A  アの付く会社名は記憶にないですか?  

Q  アの付く会社……、朝日通信だ。

A  正解です。六ヶ月厚生年金の加入がありますねぇ。

Q  そお、すごいねぇ。二〇歳ごろのでしょう。何年前よ。

A  四〇年前ですか。一発ですねぇ。これも全部、五 番号の統合をしますから。

Q  ひとつの番号になるんだ。

A  ええ、印鑑ありますか。これに名前と住所を書いて捺印してください。

Q  それで、全部で何年年金に加入したことになるのかな?  

A  ええっと、待ってください。四五三ヶ月ですから三十八年くらいでしょうか。

Q  そお。だったら年金は受けられるんだ!

A  ええ、OKですよ、ただ……。

Q  ただ……、何?

A  年金の問合せ先、相談・請求先が幾つにもなりますねぇ。

Q  どういうこと?  

A  アルバイトとA社.とD社は基金なしですから厚生年金の中で一緒でいいんですが、他は全部基金がありますねぇ。B社は厚生年金がなかったんですよね。C社のこの基金の分は企業年金連合会(厚生年金基金連合会改め)、E社の基金解散分も連合会、F社の基金分はその会社の基金、G社の代行返上は国の厚生年金と、それぞれ問合せ先が違うのですよ。

Q  ええ、そうなんだ。面倒だねぇ。

A  年金もいろいろですねぇ。でも、一度手続きすれば、後は終身振り込まれますから。

現況届けだけは年 一 回年金支払者に出す必要がありますけど。

Q  私の人生もいろいろだったけど、私の年金もいろいろなんだ。

A  そうなりますねエ。今までのバイタリティを年金にもだしていただかなければなりませんね。

Q  そうみたいだねぇ。

A  ご事情がお分かりになったと思いますので、あとは簡単ですよ。

Q  それぞれに問い合わせればいいってことだね。

A  そういうことです。

Q  そお、大変ありがとう、助かったよ。

A  どういたしまして。疑問が出ましたら、また、お出かけください。

Q  そうします。ありがとう。

A  雨になったようですから、気をつけてお帰りください。

 

(続きます)

 


 

 

 

 


「Q&A年金の行方  ―基金解散と代行返上」 1

2015年11月15日 | 厚生年金基金

このブログにお出かけの方々に、日頃の感謝を込めて年金カウンセラ-からサプライズ! 

「Q&A年金の行方  ―基金解散と代行返上」を数回に分けてご案内します。

お楽しみいただけましたら幸いです。

特に、毎日お出でいただいているアメリカはカリフォルニアの御方、お楽しみください。

 


 

 

Q&A年金の行方 ―基金解散と代行返上

 

 

年金カウンセラー 高野 義博

 

 

 基金解散と代行返上に伴う年金の行方について、社会保険事務所の年金相談窓口でのQ&A形式で説明する。ただし、ここで取り上げるトピックスは架空のものであり、事実誤認があるかも知れません。責任はOPM研究会に限定されます。単なる年金話しとしてお読みいただければ、基金解散と代行返上に伴う年金のおおよそがご理解いただけるようになりましょう。

 

 

 目 次 

はじめに

 I 基金解散と代行返上に伴う年金の行方

Ⅱ 基金解散と代行返上の真因

Ⅲ 哲学の時代


はじめに 

厚生年金基金制度がスタート(昭和四十一年(1966年)一〇月)して三十五年余が経過した現在、厚生年金加入者は三、一五八万人(平成十四年三月末現在)、うち厚生年金基金加入者は一、〇三八万人(平成十五年三月末現在)で、厚生年金加入者の三人に一人は厚生年金基金加入員です。

実際の年金支払の場面では、制度開始から三十五年ほど経過したので厚生年金(老齢年金)の報酬比例部分の大半は厚生年金基金の代行分から民間の手によって支払われています。

つまり、厚生年金基金加入員の老齢年金(国が支払う)のほぼ半分は民間の厚生年金基金から支払われています。

このように厚生年金基金制度が成熟した中、平成十五年(2003年)一〇月、厚生年金基金の将来分代行返上が認められ、一気に六六〇基金の「代行返上」が始まりました。そのほかに確定給付企業年金に移行した基金(三〇基金)や「基金解散」も急拡大し、全国にそれまで一八〇〇余基金あったのが一〇〇〇基金になろうとしています。

要するに、多くの厚生年金基金(企業年金)が「基金解散」や「代行返上」に雪崩をうって走り始めたところです。それは、まるで巨艦から脱出するネズミの大群の如しという事態になっています。

 

この背景には、いったい何が考えられるでしょうか?

厚生年金基金財政の積立て不足でしょうか?  因果の連鎖をたどって見ればそれは結果でしかないでしょう。低利回り・非効率な資産運用環境、運用機関にも基金にもプロのいない資産運用、新規加入員減少に伴う数理計画の破綻、事前積立方式ではあっても政府の年金勘定と同様どんぶり勘定である基金会計の限界等々。しかし、何よりも大きな影響力を発揮したのはジャパニーズ・スタンダードの放棄を迫る時価会計の採用でしょう。退職給付債務の計上が突然巨額な負債を出現させたのです。

世界はすでにグローバル化していて、唯我独尊の鎖国状態のまま日本が生きていくことはできなくなっているのです。ましてや、資源のない製造業の輸出事業振興をメインにした経済活動がなければならないのですから、時価会計を拒むようなアナクロニズムは「死に至る病」となるのです。

否認された「三種の神器」は、厚生年金基金の経験を経路にして、新たに生まれ変わることになるのでしよう。

 

このような混迷のとき、社会保険事務所の年金相談コーナーには、お尋ねの人が大挙して押し寄せています。現在、窓口はプレ団塊世代の大勢の相談者も含めて溢れかえっています。ところによっては、五〇人待ち、二、三時間待ちが常態になっている社会保険事務所もあります。加えて、厚生年金の過払いや未払等の行政サイドのミスに対する問いただし、新聞・TV・週刊誌等の「カラ報道」による問い合わせ等の風あたりが強くなっています。それに加えて、世の中にリストラによる四〇代・五〇代の失業者が溢れかえっているのに、社会保険事務所での年金見込額の計算は、現在五十八歳以上でなければ資料提供をしていません。遅ればせながら、今後五十五歳、または五〇歳から資料提供をしようという

予定はあるようです。二―ズはあるのですが、対応が追いついていない状態です。こうして現在の年金相談窓口は、何かと、問題含みで、平安な日々がないありさまでストレスが高まっています。

「厚生年金基金」についての相談に対する行政サイドの対応もどちらかというと消極的で後手、後手に回っています。社会保険事務所の年金相談窓口では、基金制度について制度の基本的な仕組みや加入状況、代行返上後の年金見込額等は回答しますが、基金一般についてはほとんど承知していないというのが実態です。しかも、「基金解散」や「代行返上」について詳細・細部の相談は個別基金ごとに給付内容が異なるので、年金相談窓口からすればやむを得ず「それは基金に聞いてください」ということになります。門前払いを食わされた多くの相談者は不満を抱えたまま退散することになっています。

 

このように基金解散と代行返上について、厚生年金基金からの説明不足と行政サイドの消極姿勢の狭間で宙に浮いている加入員等が大勢おられるのが現実となっています。そこで、筆者の厚生年金基金二十五年の実務経験と年金窓口相談二年余の現場経験をもとに、年金相談者と回答者の窓口風景として基金解散・代行返上についての幾つかの問題点を説明してみようと考えます。

ただし、この「Q&A『年金の行方』」は、あくまでも筆者(民間人の年金相談窓口アルバイター)の個人的発言であり、役所の公式な発言ではないことを重々ご承知おきください。

筆者の窓口での「年金相談」は窓口混雑のため相談件数を上げなければならないのですが、どちらかというと「人生相談」になってしまい、一人当たりの相談時間が長くなりがちです。反面、アカデミックな説明はおろそかになりがちです。そのためここでは、極力詳細に、しかもQ&Aの範囲内で、分かりやすく説明したいと考えます。年金相談一般に絡めて基金解散・代行返上を説明しますので全体をお読みいただければ、年金の概要がご理解いただけるようになると思います。

さらに、詳細をお知りになりたい方、疑問をお持ちになった方等は、直接社会保険事務所の年金相談窓口にお出かけください。年金は個別事案ですので、人情としての勝手解釈や一般論では大きな間違いとなることもありますので、個別に確認されることが非常に重要です。

さらにまた、最近は年金関係の書籍も多数出版されていますし、インターネット上には数々の年金サイト、シミュレーションもありまので、そちらを参照されることもお勧めいたします。

 

最後に、このQ&Aが厚生年金基金を経路とした日本の「年金の行方」についてお考え頂く何らかの端緒となればと考えます。ご満足いただける説明になるかどうかは疑問ですが、幾分かでもみなさんの参考になれば幸いです。

 

 

          平成十五年十一月

OPM 研究会 

年金カウンセラー 高野  義博

 

注:社会保険事務所は年金事務所に、厚生年金基金連合会は企業年金連合会に名称を変更しています。

 

  

 I 基金解散と代行返上に伴う年金の行方

 

一.厚生年金基金の仕組み

 

Q  定年で会社を退職するのだが、年金はいくら受けられるのだろうか? (厚生年金三十九年加入・厚生年金基金二〇年加入・国民年金六ヶ月加入の昭和十八年五月生まれの男性・妻あり)

 

A  はじめに、加入期間の確認をしますから年金手帳を見せてください。

Q  被保険者証しかないが……

A  それで結構ですよ。年金手帳でも基礎年金番号通知書でもおなじことですから。コンピューター(社会保険庁・業務センター「社会保険オンラインシステム」)で確認しますからちょっとお待ちください。

A  この記録(被保険者記録照合回答票)ですと、昭和四〇年四月が最初の厚生年金加入になっていますが、それ以前に働いたことはないですか?

Q  学生中にアルバイトはしたけど、年金はなかったと思うけど……。

A  ちょっと、待ってください。……。生年月日とお名前では出てこないですね。その会社名は分かりますか?

Q  ●●だったかなぁ。

A  ああ、ありましたよ。●●株式会社ですね。別番号ですねぇ。六ヶ月ですから、年間一八、〇〇〇円くらい追加され、終身給付されます。

Q  ええ、ほんと!  すごいねぇ。すぐ分かるんだ。

A  昭和十七年以降の厚生年金保険料納付記録を社会保険庁は保管・管理しています。倒産や解散など関係なく。お名前と生年月日、それに会社名などが分かれば調べられます。

Q  そおですか。……。そうすると、全期間では四七四ヶ月になるんですね。

A  年金見込み計算をしますから……。

A  お待ちどうさまでした。十八年五月生まれですと、報酬比例分が六〇歳からで、定額分と加給年金分が六十二歳からですねぇ。

Q  報酬比例分って?

A  その方の厚生年金加入から退職までの全期間(三十八年)の平均給与で計算する部分です。生涯給与が高い低いで年金額が違ってきます。ここの昭和四〇年ごろの標準報酬月額(給与)は一二、〇〇〇円ですけど、平均給与を計算するときこのままは使わず、現状に近い額に見直しをして計算します。再評価率というのを乗じて求めます。

Q  昔の給与も今風に見直すんだ。

A  ええ。

Q  ところで、定額分というのは

A  生年月日により決まっている単価があり、それに加入月数を掛けて求めます。ただし、あなたの場合、四四四ヶ月の上限を超えていますので、四四四ヶ月として計算されます。

Q  それ以上は増えないわけ?

A  ええ、六十五歳とか、七〇歳まで厚生年金に加入しても定額分は打ち止めです。増えるのは報酬比例分だけです。

Q  そうなのか。妻の分も出るのかな?

A  それが加給年金です。ご主人が受給権取得のときに年収八五〇万円以下の戸籍上の妻

がいらっしゃる方につきます。事実婚の場合も受けることができる場合もあります。

これも、ご主人の生年月日により単価が決まっています。通常、これは奥さんが六十五歳になるまでの間、付きます。ただし、奥さん自身が厚生年金等で二〇年とか十五年の特例で年金を受けられる場合はその時までです。

Q  ややこしや、ややこしやだね。

A  ええ、まだ序の口ですよ。日本の年金は制度の成熟とともにぶざまなほど複雑になってしまいました。このため、年金を受ける方と支払者双方に混乱が生じていますので、ここの年金相談みたいな仲介者が必要になるのでしょう。

Q  で、六〇歳のときは幾らなの?

A  四七四ヶ月加入(制度共通年金見込額照会回答票)で、年額五〇三、二〇〇円となっています。普通、四〇年ほど加入の人の報酬比例分は一〇〇万とか一二〇万とかになるのですが、ご主人の場合は、厚生年金基金が二〇年ありますので、その基金の代行分を合算しないと正当な報酬比例分にはなりません。

Q  基金って、会社でやってる企業年金?

A  そうです。

Q  国の年金とは別に請求するの?

A  ええ、忘れているというか、知らない人が結構多いですよ。六〇歳になったら厚生年金基金から案内があると思いますが……昔の恩給と違って、国の年金も基金の年金も請求主義ですから、本人の請求がなければ年金は支払われません。

Q  そうなんだ。それで、厚生年金基金って何なの?

A  そうですねぇ……これ(図表1.厚生年金基金の仕組み)をご覧ください。

 

 

 

国の厚生年金(老齢年金)は先ほども言いましたように報酬比例分と定額分と加給年金で構成されていますが、厚生年金基金はこの報酬比例分の一部を国に替わって代行して厚生年金基金から年金を支払います。加えて、基金は、代行分のほかにその企業独自の上乗せ分(退職金の一部または全部が含まれる方式もある)を合算して支払います。このため、厚生年金からは代行分がマイナスされて支払われます。

Q  ややこしやだねぇ。

A  病、何とかですねえ。

Q  ほんとに!

A  ご主人の場合はまだシンプルですよ。転職を繰り返したような人は、厚生年金基金が幾つもあり、みんな一〇年以下の勤務だとすると、その年金原資は厚生年金基金連合会に移管されていて、そこへ年金請求することになります。基金では一ヶ月以上の加入はすべて終身年金になります。短期しか勤めなかった基金の分でも、いくつかを取りまとめて厚生年金基金連合会から終身給付があります。

Q  そうなんだ!  知らなかったなぁ。忘れずに厚生年金基金や厚生年金基金連合会に請求しなければ駄目なんだ。誰もやってくれるわけじゃないんだ。自分でやるんだ。

A  そうですね、自分の年金は自分で作るんですよねぇ。日本の年金制度は複雑・多岐になっていますので、その中で「自分年金」をビルディングするのはあなたご自身です。

Q  ふぅ~ん……。ところで、六十二歳からは幾らになるんだろうか?

A  報酬比例分に定額分と加給年金分が支給開始になり、合算して一、八三〇、六〇〇円です。月当たり一五二、五五〇円ですね。

Q  えっ、月十五万円なの?

A  そうです。でも、厚生年金基金があること忘れないでください。厚生年金基金が七〇万ぐらいはあると思いますよ。それに六十五歳になったら、国民年金の六ヶ月分、年一万円ぐらい増えますでしょうか。

Q  こんなものなの。

A  ええ、世代間で大分差がありますけど、平成十五年の今、六〇歳になる人の年金の水準は、厚生年金四〇年加入の妻ありの人で月額二〇万円ぐらいです。

Q  そうなんだ。これじゃ、都会地じゃ暮らせないねぇ。田舎へ行くか、物価の安い外国へ行くか……う~ん、こりゃあ、深刻だねぇ!  

A  そうですねぇ。六〇歳以降、働くところもないまま、突然の病気や借金に立ち向かわなければならないし、「予測不能な闇」と対面することになるんですねえ。

Q  まったくそうだねぇ。よく分かりましたよ。現実は、超、厳しいねえ。しっかり考えないといけないなぁ。……どうも、ありがとう。

A  どう致しまして。奥様にもよくお話しください。

 

 

 

 

 

 二.基金解散後の年金

 

Q  基金が解散するとか言うんだが、私の年金、どうなっちゃうんだろう?(厚生年金二十九年加入、うちA基金一ヶ月・B基金十二年・C基金解散の昭和二十六年生まれの人)

 

A  解散ですか。厚生年金基金からお知らせとかありましたか?  

Q  いや。社内のうわさなんですけどね。皆がいろいろ言っているもんで、……。

A  そうですか。厚生年金基金を解散するには事前の準備が大変で、なかなかすぐにはできないのが実態のようですねぇ。

Q  時間がかかるんだ!  

A  そうですねぇ。はじめに、厚生年金基金を解散しようと考えるにはあなたのところの基金は年金原資の積立不足があるんだと思われます。その積立不足のお金の捻出をどうするか、会社は頭を痛めていると思います。

Q  どうしてそうなったのかねぇ。

A  いろいろありますけど、日本経済のバブル崩壊後の低金利、内外株式市場の低迷、新規加入員の減少、それに特に大きな影響は時価会計の採用による突然の巨額債務の出現でしょう。大部分はこのような個別基金の努力の範囲外の要因のせいでしょうねぇ。

Q  そりゃあ、大変だねぇ。

A  そうですねぇ、日本の従来の政官財のやり方は改めざるを得ない状況になってきました。

Q  そういう激動の時代に自分たちは年金生活に入っていこうとしているわけだ。

A  ええ。次に大変なのが、一人一人の年金加入記録の突合(とつごう)という事務局の作業があります。基金全員の加入記録が厚生年金の加入記録と合致しなければ解散できないわけです。厚生年金基金の名前はなんと言いますか?  窓口常備ではないんですが、私専用の名簿(厚生年金基金連合会発行:厚生年金基金役職員名簿)で見ましょう。

Q  XYです。

A  XY、XY……単独・加算・Ⅱ型ですねぇ。こりゃあ、大事だ。時間がかかりますねぇ。業務委託がⅡ型じゃあ、さぞかし、事務局は泣いていますよ。それに、解散の同意を3分の2以上集めなければなりませんから。そんなこんなで、事務局は大変なわけですし、時間もかかるということになります。おそらく、分けの分からない役員が早く早くと、騒ぎ立てているんじゃないですか。

Q  会社の清算と同じようなことになるわけだ。

A  そうですねぇ。

Q  それはそれとして、私の年金はどうなっちゃうの?

A  手帳を見せてください。記録を見ますから。……。

A  この記録(被保険者記録紹介回答票)ですと、厚生年金基金が三つありますねぇ。

Q  三つ?

A  この会社のときですけど、一ヶ月だけですね。

Q  一ヶ月?  憶えがないなあ。

A  一ヶ月厚生年金基金に加入していますよ。これは将来六〇歳になったら厚生年金基金連合会(電話03―3377―3111・ホームページ http;//www.pfa.or.jp/)から終身給付されます。

Q  そぉ、一ヶ月でも終身払ってくれるんだ。すごいことやってるんだねぇ、その連合会というのは。

A  ここの基金は、……十二年あるじゃないですか。これは、ここの会社の厚生年金基金から支払われます。通常、一〇年以上厚生年金基金加入の場合は、その厚生年金基金から支払われ、一〇年未満だと、厚生年金基金連合会に年金原資が移管され、厚生年金基金連合会から支払われることになっています。

Q  そぉなっているんだ。

A  在職中のこの厚生年金基金は五年ほどですか?

Q  そおね。解散するとか言われているんだけどね。前のふたつは分かったけど、この年金はどうなるのかな。

A  どう説明したらいいでしょうかねぇ。言葉だけだと分かりづらいんですよねぇ、抽象的になってしまい。これ(図表2.解散基金の場合)をご覧ください。

 

     

この代行部分は厚生年金基金連合会から終身給付されますが、基金が存続してたときには基金が支給する年金には支給停止を行わない規約になっていても、基金解散後は国が支給している老齢厚生年金と同様に扱われるため、在職中や雇用保険(失業給付等)との調整により、老齢厚生年金が支給停止されることにより、代行相当部分の年金であっても、年金額が減額または支給停止となる場合があります。

Q  支給条件がきびしくなるんだ。

A  そうなりますねぇ。それに、この(D)と(E)の上乗せ部分は各基金独自のものですけど、この部分の年金はなくなります。これは、残余財産として解散基金加入員に一時金で分配されます。一時金のかわりに連合会に申し出れば、連合会から代行加算年金として受けることもできます。この一時金は、基金によっては、十五年とか一〇年とかの年金で支払うところもあります。

Q  上乗せ部分の(D)と(E)は清算されるんだ?

A  基金解散というのは、年金が清算されることですよね。代行部分は支払者が変わりますけど……。

Q  そうなんだ。

A  この連合会資料(図表3.基金の解散について)は参考までに、後で見といてください。

 

 

  

Q  ありがとう。うぅ~ん、解散って言うのは、将来の年金額が減額になるってことだねぇ。

A  なんだかんだ言っても、そういうことです。年金受給権が一部そがれるということですよね。

Q  以前の保証はしないし、できないってことなんだ。

A  そうなりますね。

Q  今までが出来すぎだったんだ。

A  終身雇用も年功序列も維持できないという現実が基金解散ということになって噴き出してきているんですねぇ。

Q  そおいうことなのかねぇ。われわれはどこへ行くのかなぁ。

A  日本人は、それを見つけ出さなけりゃならないところへ追い込まれたのでしょうねぇ。

Q  そういうことみたいだねぇ。……。いやいや、ありがとう。よく考えてみますよ。

A  プラス思考でいきたいですね。

  



 三.代行返上の仕組み

 

Q  会社から代行返上すると言ってきたんだが、私の基金の年金はどうなるんだろう?(厚生年金四〇年加入・うち基金三〇年加入の昭和十六年五月生まれの年金受給者)

 

A  こんにちは、どうぞ。もう、年金は受けていらっしゃるのですね。

Q  そお、ようやっと年金生活が落ち着いてきたところなのに……。「代行返上」すると言ってきたんだが。どうしてくれるんだろう。いったい、何を考えているんだろうねぇ!  

A  その苦情は基金さんに言ってくださいよ。この窓口では、代行返上の仕組みとその後の年金についてはお話できますが、皆さんの心配の責任は取れませんので。むしろ、代行返上によって、またひとつ行政サイドは仕事が増えるわけですから歓迎していないのが実状です。できれば、基金にがんばってもらって代行返上をしないでほしいわけですよ。

Q  役所とはしてはそうだろうねぇ。でも、年金受けている者にとっちゃ、どこへ怒りをぶつけたらいいんだい。

A  それは、まず第一に基金でしょうかねぇ。次に、会社ですか。労働組合も。それに、3分の2の同意をした人たちでしょうか。とは言っても、本当は組織が問題ではなく、日本経済の低迷とか、時価会計の導入とかが事の背後にありますよねぇ。政官財の日本的経営手法が改めて問われ始めたということでしようか?

Q  そうなってくると、ぶつけようがないねえ。

A  単に怒りをぶつけてどうなるもんでもないですよねぇ。むしろ、事の理路を見極めなければならない問題だと思います。冷徹な観察眼が必要で、週刊誌的な空騒ぎはかえって問題を感情的にしてしまいます。

Q  そういうことかもね。……。それでも、グリーンピアの不始末とか、いろいろあるでしょう。

A  ありますねぇ。ここの窓口に怒鳴り込んでくる人もいますけどね。ここは、苦情処理センターじゃないですからねぇ、対応の仕様がないんですよ。いっそのこと、社会保険庁とか、厚生労働省のメール受付 http://www.mhlw.go.jp/getmail/getmail.html にでも投稿していただけるといいんですけどね。

……とは言っても、日本の組織風土では欧米風な裁判で決着を付けるというのは馴染まないようですねえ。

Q  そう。それで、代行返上ってどうなっているの?

A  その前に、「代行」ってご理解いただいておりますでしょうか?

Q  そうねぇ、なんでも国の年金の一部を会社が支払うとかいうんじゃなかったかな!

A  そういうことですよねぇ。厚生年金の報酬比例部分を厚生年金基金が代行して年金支払をするっていうことなんですけど……、そもそも厚生年金基金の制度発足の意味ご存知でしょうか?

Q  さて、なんだろう?

A  昭和三〇年代後半に発生した厚生年金と退職一時金制度の調整問題解決のために厚生年金基金制度が発足したのです。つまり、年金と一時金の調整としての厚生年金基金ができたわけなんです。以来三〇年ほど経過して「退職金の年金化」は一応の社会的認知は得られたと思います。さらに、基金設立後の経過期間が30年にもなり厚生年金の半分ほどは民間で支払われるまでの実績が生み出されてきました。

Q  そお、それがどうしたこと。ここにきて、代行返上だなんて!

A  ご承知かと思いますが、「三種の神器」の日本的経営が立ち行かなくなり日本経済の低迷を招いてしまい、その結果、基金の資産運用が思わしくなくなり、ここ一〇年位積立不足が常態化してましたよねぇ。

Q  そうらしいねぇ。

A  追い討ちをかけるように、平成十二年度には基金の会計に時価会計が採用されて、各基金に突然巨額な債務が発生したんですよ。

Q  ふぅ~ん!

A  会社はその損の穴埋めに耐えられなくなって、代行部分を国に返還して債務を軽くしようと考えたわけです。

Q  そうなんだ。それで自分たちの年金はどうなるのかな?

A  これ(図表4.参考図)をご覧ください。基金から支払われることになっていた代行部分は、国に代行返上されて国から給付されることになります。

 

 

 

Q  国って?

A  厚生年金です。もっと言うと、厚生年金の報酬比例部分です。

Q  そおぉ。

A  残った上乗せ部分と加算部分は代行返上後、会社の新企業年金から支払われます。

Q  そうすると、代行部分だけが支払い者が変わるわけだ。

A  まあ、そういうことです。

Q  年金が減るようなことはないんだろうねぇ。

A  原則ありません。ただし、代行分は、基金は基金の支給基準で支払い、国は国の支給基準で支払いますので若干の相違が発生します。

Q  若干だね。

A  ええ、ほんの若干です。基金の年金は平均給与を求めるとき再評価率を適用しませんし、物価スライドも適用しません。それに年金計算過程での端数処理も違いますのでドンピシャッとはいきません。

Q  そのなの。

A  物価スライドの取り扱いが分かりやすいと思うのですけど、基金の年金は物価スライドが適用されませんから、平成十五年四月の0.991%減額は基金の分も含めて国の年金で減額されました。そのため、基金の年金は変更ありませんでした。今までは、逆に物価が上がって国の年金が増額になっても、基金の年金は変わりませんでした。

というより、基金の年金は一度年金額が決定されると生涯変更がないのです。増減は国の年金で行われるのです。

Q  そうだったのかぁ!

A  それに、基金の基準というのは基金ごとにさまざまで、ドンピシャッと合わせるには

その基金の基準を承知しないとできませんので……。行政サイドからチェックするのは難しいです。むしろ、基金サイドからチェックするほうが適当かと考えられます。

Q  詳しくは基金のほうに聞いたほうがベターだというわけだ。

A  そうですね。国の基準は一つなんですが、基金の基準は無数にあると言ってもいいでしょうねぇ。

Q  事情が分かりましたよ。なかなかだねぇ。

A  制度が複雑になり、精度が劣化しましたねぇ。

Q  どうも、ありがとう。外の人にもよく説明してあげてくださいよ。

A  ええ、それがここの窓口の仕事ですので。

Q  じゃ。

A  失礼します。

 

 


 四.代行返上後の年金の行方

 

Q  代行返上後の年金はどうなるのだろう?  (厚生年金十九年、うちA基金三年、B基金十一年、C基金四年、さらに国民年金三年の昭和二十一年七月生まれの男性)

 

A  お待ちどうさまでした。

Q  こんにちは!  こんでますねぇ。

A  そうですねぇ。今日は、ちょっと多いですねぇ。四十七人待ちですか。

Q  いつもこうですか?  

A  いいえ、ここの社会保険事務所は、二、、三〇人待ちが普通ですねぇ。窓口は一〇人おりますから一時間待ち位でしょうか。昼休みも交替でとり、続けてやっているんですけど。

Q  そうなんだ。でも、これからは、私みたいな「団塊の世代」が押し寄せるんでしょ。ますます混み合うねえ。

A  よく、ご承知ですねぇ。それに、お一人お一人の相談内容が複雑になり、事務所では頭を痛めているところですし、相談員に対するノルマも増える一方です。

Q  ノルマがあるんだ!

A  ええ、一人当たり一日二十五人ほどやらないと、皆さん全員に対応できないんですけど、私みたいなロートルはせいぜい十六、七人になってしまうんですよ。

Q  そうなんですか。それじゃ、さっそく本題に入りましょうか。

A  ええ。

Q  C基金が代行返上すると言ってきたんだけど、どうなっちゃうんでしょう?

A  代行返上であれば、国の厚生年金から支払われますので、大丈夫ですよ。まず、加入記録の確認をしますので、年金手帳、ありますか?

Q  これしかないんだけど。

A  厚生年金被保険者証ですねえ。結構ですよ。被保険者証でも年金手帳でも基礎年金番号通知書でも、どれでもいいですよ。ちょっと、お待ちください。

 

A  この記録(被保険者記録照会回答票)ですと、厚生年金は二三〇月ですから十九年ほど加入されているんですねぇ。この「5」という数字は厚生年金基金男子加入員ということで、こっちの「5H」というのは代行返上という意味です。で、今何歳ですかねぇ?

Q  五十七になるところだけど。

A  年金の加入はこれだけでしょうか?  五十七歳で十九年しかないのは変ですねえ。ほかに別番号で働いていたとか、国民年金の加入はないんでしょうか?  あるいは共済だとか……。

Q  昭和五〇年ごろ、一時国民年金に加入していた時期があったが。

A  その番号は分からないんですね。

Q  そうねえ。

A  じゃ、お名前と生年月日で調べましょう。お待ちください。名前が変わったことはないですよねぇ?

Q  ないねぇ。

A  大宮に住んでいたことありますか。国民年金の記録が出てきましたけど。

Q  大宮の●●にいたことがあるけど。

A  住所が合致しますので間違いないでしょう。三年ありますねぇ。それに、厚生年金の別の会社が一つありますよ。昭和四十三年三月から四十九年十二月まで会社で働いていませんでしたか。

Q  えっ、その会社は倒産したんだよ。○○って言ったと思うけど。

A  ○○ですねぇ。八十二ヶ月出てきました。倒産でも破産でも、当時厚生年金保険料の納付がある場合、記録は残っています。これで、年間二〇万円以上の年金がオンされ終身給付されます。

Q  倒産でも出てくるんだ。

A  りっばな会社だったんですよ。従業員に対する責任はきちんと果たされているんですから。

Q  そお、ありがとう。ここに来た甲斐がありましたねぇ。

A  それに、先ほどの十九年の厚生年金の加入記録の中には、基金が三つありますねぇ。A基金が三年、B基金十一年、C基金は四年、これが代行返上!  う~ん、こりゃあ、大変だ!

Q  ど、どうして?

A  年金受け取るのが複雑なんですよ!  まず、厚生年金と国民年金の請求書を六〇歳のときに社会保険事務所に提出します。六〇歳から厚生年金の報酬比例分の支給が始まり、あなたの生年月日ですと六十三歳から定額分と加給年金が出て、六十五歳になると国民年金(老齢基礎年金)が始まります。

Q  国の年金だね。

A  ええ。それに、六〇歳になったらA基金分は厚生年金基金連合会へ、B基金の十一年分(待機期間者→待期者)はB基金へ請求します。C基金四年分の代行分は代行返上で国から支給されますが、C基金の上乗せ分はC社の新企業年金へ請求ということになります。 つまり、請求先が①社会保険事務所(国民年金と厚生年金)、②厚生年金基金連合会(A基金とC基金分)、③B基金、④C社の新企業年金と四つになるんですねぇ。ということは、四ヶ所から年金が振り込まれることになります。

Q  四ヶ所から年金がもらえるんだ。すごいねぇ。

A  というか、「細切れ年金」になるってことでもありますよ。請求手続きも四ヶ所だし、現況届なども毎年四ヶ所に出すようになります。

Q  面倒なんだ!

A  面倒って言えば、C社の新企業年金は新しいメニューですよね。

Q  そうそう、それを聞きに来たんだった!

A  C社の新企業年金は何型ですかねぇ?

C  何型って?

A  いろいろあるんですよね。五種類だったと思いますけど。……。 これ(図表5.年金制度の選択肢の拡大)をご覧ください。

 

 

 

 

いままでの企業年金は選択肢が二つに限定されていましたけど、今後は五つの選択肢に拡大されるんです。企業が財政責任を持つ確定給付型として、今までの「厚生年金基金」、それに代行なし基金としての「基金型企業年金」、適格年金廃止の受け皿として「規約型企業年金」。新たに、社員が財政負担を求められる「確定拠出年金」。さらに、確定給付と確定拠出の混合型として「キャッシュ・バランス型」もOKになりました。それぞれ一長一短ありますけど、個人が任意に選択できるのではなく、企業が選択・提供することになります。

Q  こんなにあるんだ!  目がくらむね。

A  でも、本人にとっては、どれかひとつですからねぇ。それさえ分かればそう難しいことじゃないと思いますよ。

Q  どうして、こんなにメニューが増えたんですか?  

A  そうですねぇ。日本経済の護送船団方式をグローバル・スタンダードにシフトしていかなければならない状況で、企業の年功序列とか、終身雇用が立ち行かなくなりつつありますよね。雇用の形態も多様化していますし、退職金制度も再度見直しが始まりましたよね。つまり、いままでの政官財一体の拡大・成長志向という統一された考え方が否認され、多様な価値観の試行錯誤が始まったということでしょうか。

Q  そうですか。……。うちの社はどれなんだろう。

A  「基金型企業年金」か「確定拠出年金」でしょうかねぇ。

Q  会社に聞いてみよう。

A  そうですね、それがよろしいてしょう。「確定拠出年金」であれば、ご自分で資産運用もするようになりますからねえ。

Q  何だかそんなようなことも言ってたなぁ……。

A  それでしたら、よく会社に聞いたほうがいいですよ。猛烈な勉強が必要になりますから。

Q  そうなんだ。株なんかもやるのかな?

A  そうなるかもしれません。

Q  そお、そりゃあ、おおごとだ!  四ヶ所に年金請求するんだったよね。

いやぁ、長々とありがとう。

A  どういたしまして。

 

(続く)

 


 

 

 

 

 


ノンフィクション「人様のお金」―厚生年金基金は何になるのか?   Other People's Money

2015年07月29日 | 厚生年金基金

 



2014/07/13~17の無料配布キャンペーン(Amazon)で、72冊のDLをいただきました。

 

内容紹介

 

 歴史から消えようとしている厚生年金基金の実態、内部構造、問題点等を具体的事例にそって明らかにするノンフィクションです。筆者が25年間、基金業務に全人的にのめり込むという原始的な手法で、現場から「厚生年金基金って、何んだ?」と追い求めたレポートです。
 右肩上がり経済時代の落とし子である厚生年金基金は官民ひっくるめてドタバタの限りをつくして終焉を迎えようとしています。永遠のα版として学ぶべきことは多岐にわたっています。
 この本は、そんな厚生年金基金についての世界で唯一の古典です。 


目 次

はじめに

第一章 制度発足三〇年経過して

第二章 厚生年金基金の経営フレームワーク

1.経営などしたこともない!

2.基金経営の組織機能

3.厚生年金基金の過渡的な経営フレームワーク

第三章 厚生年金基金の資産運用方法

1.それとも資産運用で稼ぐか

2.基金の見た日本の資産運用環境

3.世界の資産運用環境

4.平成一〇年度現在の資産運用状況

5.資産運用マネジメント

第四章 厚生年金基金経営上の諸問題

1.基金運営から基金経営へ

2.厚生年金基金のリスク管理

3.代行の金縛り

4.〈人様のお金〉

5.果たすべき約束

6.パブリック・コメント?

第五章 凍結した死に体

1.「厚生年金基金は死に体!」

2.基金問題のインパクト

3.〈人様のお金〉が変える日本のインフラストラクチュア

第六章 ビジョン「年金基金」

1.戦後日本の哲学もどき

2.「年金基金」というビジョン

3.ビジョンのメッセージ

 

謝 辞

 

・厚生年金基金の経営フレームワーク資料集

・情報収集先

・書籍等一覧

・年金関係インターネット・サイト

・著者

 

 

はじめに

 

 最近、「人様のお金」という言葉をお聞きになったことがおありでしょうか? 

 「他人の金」という言い方は時々見聞きするようになりましたが、一般的にはまだまだ「自分たちのカネ」という意識、といいますより、そのようなことに無頓着な無意識の行動が幅を利かせているようです。つまり、「人様のお金」を「自分たちのカネ」に摩り替える政官財のモラルハザードは極まってきているということ。

 なにはともあれ、「人様のお金」などという言い回しは久しく聞いたこともなく、死語と化しているというのが現実のことでしょう。

 そうではありましても、日本人ならどなたでもこの言葉に何やら、懐かしい響き……が、母親の面影が立ち上がってくるような気がしませんでしょうか。他界してしまった母親のように遠い何処かに、江戸時代か、明治の商人世界、あるいは終戦直後等の一昔前に、まったく忘れ去られたかのような感じがします。

 

 「厚生年金基金って、何んだ?」という筆者の二十五年に及ぶ小さな基金事務所での実務経験に基づくドメスティックな一考察が、厚生年金基金制度の提供主体である官僚と企業人が、「自分たちのカネ」とばかり思い込んでいました厚生年金基金の年金給付〈代行分〉と〈加算年金〉は、実は他人の金、「人様のお金」ですということを発見したのです。つまり、年金給付を受ける当事者自身の〈皆さんのお金〉でありましたという発見を基金の現場でのマドリング・スルーの結果導きだしたのです。

 同じように、「似たような状況において蓄積された経験」(R・ジアモ)の幾多の繰り返しにより厚生年金基金の公的部分(代行)と私的部分(加算)、つまり、この国家と企業のフレームワークは、各々が実施してきました国民と社員の〈統制手法〉なのだという認識を生み出したのです。この論理的帰結として、国家と企業の手から分離された形での「人様のお金」=「年金基金」というビジョンが成立したのです。

 さらに、このビジョンが日本の金融・年金・資産運用等のインフラストラクチュアを、強いて言えば、日本そのもののインフラストラクチュアを再構築することになりましょうという、〈壮大な経路〉(三ツ谷誠:JMMメール)の発見につながったのです。

 要するに、「人様のお金」というフレースは、刈谷武昭さんが『金融工学とは何か』(岩波新書)でおっしゃっている「不完備制度の完備化」の機能を果たすことになるのでしょう。

 

 このようなことは、すでに三〇年程前、1976年に米国でドラッカー教授が『見えざる革命ー来るべき高齢化社会の衝撃』で予言していたことであり、愈々そのようなことが、この日本でも少子化という問題を上乗せした形ではありますが具体化しつつあります。現実に日本のGDP五〇〇兆円に対して年金資産は半分強にまで積み上がってきているのです。資料によりますと、日本全体の年金資産は三〇〇兆円弱に積みあがり、厚生年金基金の資産も六〇兆円となってきています。このような年金資産(実態は、「人様のお金」)の〈資本の論理〉が保持しているパワーが、政官財の旧来システムの見直し・断罪を強く要請することになるでしょうし、サラリーマン・ゼネラリストを馘首し、様々なオーナーを次々と誕生させるでしょう。〈倫理ファンド〉、ベンチャー・キャピタル、ストック・オプション等の隆盛をもたらすにとどまらず、国家、企業等の組織都合な統治発想は否認され、インディビュジアル(個人)レベルから新たなインフラストラクチュアが構築されることになるのでしょう。

 とは言いましても、日本の構造改革は国債の大量発行に象徴されますように民意度は後進国並みですから、未だしばらくは遅々たる進展しか望めないでしょうが、方向だけは定まってきたようです。

 

 さて、通常一冊の本は、事前に推敲の経緯・経過は捨象され、抽象化されたうえで書かれるものと考えられます。泥の中を通り抜けるマドリング・スルーな経過そのものは主題足り得ないものなのでしょう。

 しかし、この「人様のお金」を、筆者は平成八年六月に厚生年金基金の経営を主題に「ペンションファンドマネジメント」として書き始め、推敲のドメスティックな展開そのものを内容にして、平成十二年八月にタイトルを「人様のお金」(第一部厚生年金基金の変貌、第二部厚生年金基金の資産運用ドキュメント、第三部厚生年金基金の経営の三部構成、四〇〇字詰め原稿用紙二二〇〇枚)と改めて、書き上げました。

 その後、何人かの人に目を通していただきましたところ、商業べースに乗らないということで、皆さん一様に余りに大部に過ぎるということでした。そこで、編集し直し、五〇〇枚ほどをカットし、一七〇〇枚としました。

 さらに、それを「経営資源の有機的連結」を中心にした五〇〇枚ほどを独立させ『事務長奮闘記ー厚生年金基金って、何んだ?』とし、残りの一二〇〇枚ほどをこの『人様のお金ー厚生年金基金は、何になるのか?』に分冊しました。それでもなお、一般の本に比べて分厚くなりましたのは主題追求の手法のせいとご容赦ください。

 

 これらのことを、筆者は母体企業の再三の肩叩きを肩透かししつつ、厚生年金基金業務に全人的にのめり込むという原始的な手法で、現場事務所で「厚生年金基金って、何んだ?」と追い求めたのです。このような不器用な生き様は決してエフィシェント(効率的)とは言えませんが、愚かな素朴さ、ピュアであるとは言えるかもしれません。単に、ドメスティックなだけに終わっているかも知れませんが……。

 しかし、この判断は読者諸賢がお決めになること。 筆者としては、ただ「厚生年金基金は、何になるのか?」の「叩かれ台」(山崎元『年金運用の実際知識』)を、「人様のお金」の素材提供が出来たのであれば、または、せめて読者の基金に対するイメージ構成が幾分かでも立ち上がり始めましたら良しとしなければならないでしょう。

 

 後は、ただ、笑而不答……

 

 

 

 

第一章 制度発足三〇年経過して

 

 厚生年金基金制度は昭和四十一年に創設以来、三〇年が経過しました。

 恙無かった昭和の時代が終わり、戦後日本経済の閉塞状況と共に平成の時代に入ってから制度発足以来の「未曾有な事態」を迎えています。この「未曾有な事態」とは、年金基金の資産運用の低利回りが恒常化したことに伴い財政悪化が募り、一九〇〇弱基金中、五〇〇基金程の多くの基金が年金資産の積立水準をクリアー出来ず、中には耐え切れずに解散する基金も出始めていることをいいます。

 しかも、この度の事態は単なる制度疲労とは違い、従来のような対症療法、つまり日本経済の製造業が得意技としてきた業務の一部見直し、各種の業務改善手法等で対応できるようなものではなく、年金基金の基盤を形成している制度の構造、フレームワーク、運営方法、特にサラリーマン的手法による基金運営を根本のところから変えなければならないような事態なのです。そしてこの背景には、戦後日本経済が培ってきました各種の経済スタンダードが機能不全をきたし、グローバル・スタンダードへの変換を強要されている事態があるのも明らかです。

 

 さて、この三〇年の間に、厚生年金基金は単なる「掛金徴収団体」から「年金給付団体」に変身し、少なからざる人々の老後生活の安定に寄与しつつある現実は見逃せません。基金加入期間が三〇年にもなり、厚生年金本体の「老齢年金額」と年金基金の代行分の「基本年金額」が半々にまでなってきているのが現実です。たまたま資産運用利回りの低下が恒常化したために、世情でかまびすしく取りざたされることになりましたのも、そういう現実があるために社会問題となったのでありましょう。

 このようなきっかけとは言え、年金基金制度について議論されることは基金問題が国民的関心事に浮上してきたということであり、インサイダーとして基金関係者と基金の役職員(筆者は一企業の社会保険担当から昭和五〇年にこの企業の基金へ出向して二〇年余になる)は慶賀すべきことなのでありましょう。

 しかし、アウトサイダーからの発言が多いということは逆に当事者の発言が少ないことを意味しますが、そういうことというのは罷り通るのでしょうか。マナ板に乗せられた年金基金に対してインサイダーからの発言があってもよろしいのではないでしょうか。インサイダーのそれは、議論の質の向上と議論の公平さを保つためにも必要でありましょう。それとも、インサイダーは沈黙を守るのが、この日本の〈世間の掟〉でしょうか。百家争鳴の百花繚乱に馴染のない言論統制状態が現在の日本なのでしょうか。「万機公論ニ決スベシ」は明治の智恵止まりなのでしょうか。

 

 当初の〈掛金徴収時代〉は基金に関係した多くの人たちにとって「年金基金」とうイメージが定かではなく、老後生活の安定を図るための具体策がなかなか見出せず、試行錯誤の繰返しばかりでありました。筆者が基金に出向した時の事務長は、「困難なフレームワークのなかで、ともかく何かを試して転がしてみないことには次が始まらない。」といいつつ、志し半ばにして亡くなりました。

 年金基金は戦略もポリシーも経営資源も無い中から基金を立ち上げていく過程で、関係者多数の人の叡智と努力が結集されて単に年金を支払うだけでなく、その他業務の経営資源も有機的に結び付けて、「厚生年金基金」(ペンションファンド)という老後生活の安定を図る構造体を曲がりなりにもこの日本に実現したのです。

 

 戦後日本の世間一般のように、 年金基金も〈基金の変貌〉を計る間に、やみくもな試行錯誤の繰返しの中で様々な業務改善を行なってきましたが、しかし、この度の〈未曾有な事態〉に対しては、先にも申したように従来手法による単なる業務改善ではもはや如何ともし難いでありましょう。というのも、業務改善の思考スタイルというのは基本的に線状論理で構築されていて、改善に改善を重ねて一直線上をひた走るのです。そのスタイルは硬直的、断定的、固定的、静的、無機的でありすぎ、或る一つの世界だけに捕らわれた硬直状態が特徴であり、別の世界の可能性を初めから排除した競争馬の如き疾走の世界であり、フレキシビリィティ、柔軟さ、遊びが無い世界であります。

 例えば、「自動車」というコンセプトは業務改善にとって「自動車」という既成のイメージが大前提としてあって、それは壊しようのないものになっています。つまり、方法の持っている限界が初めから内部にリンクされているのです。その延長線の上だけのごく狭く限定された世界であって、そこでの果実を取り入れてしまえば〈おしまい〉しかない方法論なのであります。あるいはまた、免除料率や予定利率等の〈全基金一律基準方式〉に見られる一点豪華主義的行政手法の頑迷さはこの度の基金の〈未曾有な事態〉で明らかになりつつあるところです。

 もはや、スタティックな業務改善では動的な現実に対応出来なくなっているのです。コンセプトの拡張は新しい視点、複眼、逆照射、超現実主義的な手法等を駆使しての〈型の変貌〉を求めているのです。それには、清濁・大小への許容力、未完成のままに放置されることに対する忍耐が必要であり、日本経済が未経験なそのエレガントなコンセプトの世界は、群れの発想とはまったく違って個人の直感的飛躍の能力(ブレイクスルー)が求められる世界であります。

 

 いま、年金基金は〈未曾有な事態〉に直面して経営体としての年金基金を確立・発展させるために、従来手法の審議会や役人、既得権益集団の資産運用機関、母体企業のサラリーマン的経営者等に全面的に頼るだけでは何の解決も計れないでありましょう。そういう外部の力に全面的に依存し続ける心性が年金基金の関係者にある限り、年金基金など潰れるままに放置しておけばよいでしょうし、黙っていても潰れていくことでありましょう。

 そうではなく、年金基金自らがイニシアティブを発揮して〈未曾有な事態〉に取り組まなければならないのです。というのも、年金基金にとって遺産が転がり込むなどという降って湧いたような話は週刊誌の三文小説だけのことにしたいものですが、現実の年金基金役職員の中にはこのような〈外部の力に全面的に依存し続ける心性〉が数多く見られるのも事実です。人をして「基金農協論」といわせる所以があるのも否定出来ないことですし、今風にいえば「基金住専論」とも言える一面もあると考えられます。

 独立法人たる年金基金(とはいえ、基金は商法上の登記は行なわれていず、行政の設立認可のみの税法上の公益法人)の自主性などは、そもそも制度発足の時から無いのだと考える人が多いのも事実です。基金制度のフレームワークは年金基金の自主性を考慮して作られているわけではなく、むしろそれをないがしろにして金融機関が官僚とつるんで互いの利益をむさぼる形ででっち上げたものですと、制度発足の経緯を知る人から聞いたことがあります。〈退職金の年金化促進〉という大義と、公的年金の一部を民間に放出すること(代行方式)による民間活力の奨励を隠れ蓑にして制度が発足することにより、金融機関(信託銀行と生命保険会社)サイドは年金資産の独占を確保し、官僚サイドは天下り先の確保という好餌を得たわけでありますし、それが、「調整年金」(厚生年金基金の当初の呼称)という言葉の隠された背景でありましょう。

 

 これらのことをつらつら考えますに、今、〈未曾有な事態〉に直面して年金基金の関係者がまず為さなければならないことは、基金制度創設時の不幸な生いたちとそのフレームワークの中で形成された基金の役職員の受動的な心性を払拭することであり、それは別の言い方をすれば基金の独立法人たる独立性、自主性の確立・確保ということであります。この自主性確立・確保の事業は、コンビニの商品棚に定価を付けて並べられているようなものではなく、基金自らが〈未曾有な事態〉に取り組む、その個々の事業への姿勢の中にあるのは確かでしょう。

 とはいえ、現在の年金基金資産運用能力の程度が示していますように、とても受動的な心性を払拭しているとは言えず、「基金農協論」といわれるのも甘んじて受けなければならないのでありましょう。これをなんとか年金基金の将来のために変えていかなければならない状況にあることは間違いないことでしょう。イニシアティブ発揮のための戦略、財政安定のための戦略は外部の力への依存の従来スタイル、理解を求めるとか、根回しとか、抱込みとかのサラリーマン世界特有の構造的手法ではなく、年金資産を経営資源としてオーナー的にフル活用するという単純な事であります。その上で、年金基金の当面の対策は只一つ、〈資産運用の効率化〉ということになりましょう。

 三〇年も経過した日本の年金基金は各基金とも資産規模が大きくなり(個々の基金で、一〇〇億とか五〇〇〇億円、全体では平成九年度で四十八兆円?)、規模のメリットを算出できる状態にあり、資本の生産性を問われる規模にもなっています。しかし、二ケタの利回りが当たり前になっている欧米の年金資産運用の世界(1989~93米国15.92%、英国16.68%、日本2.41%)に対して、何故日本だけが最近のように5.5%さえも(平成八年度までの基金では、年金給付も資産の積立水準の検証も全基金一律に5.5%と規定されている)達成出来ないのか。出来ない部分は、基金関係者の心性に始まる人的体制の未整備、ぬるま湯環境による切磋琢磨の欠如、規制によるローリターン・ハイコストの構造化、護送船団方式による幼稚園レベルの金融インフラ、プロといわれる運用機関の能力の立ち遅れ、日本一局集中投資のハイリスク認識と世界発のグローバル・スタンダードからの視点の欠如等々によるものと考えられます。

 それとも、事業主と加入員の艱難辛苦の結晶である年金資産の金融資本としての社会的価値というものは、年率2、3%程度のものなのでしょうか。あるいは、或る大学の故人となられた経済学部教授が言いましたように、その年次のGDPが客観的な数値になるのでしょうか。又は、「10年物国債流通利回り」等が妥当な指標になるのでしょうか。

 問題の分析も学問的な論定もさておいて、年金基金は今、直ちに「稼ぎださなければ」全てが始まらないのです。稼ぎだすために必要なのは、現在のように資産運用をめぐる状況が混乱している場面で、ディフェンシブな農耕的取組み(得てして市場環境のせいにし、全てを太陽が支配しているという)より、先手、先手と撃って出る狩猟的取組みの試行錯誤場面での解決能力に期待する方が現実的な対応ではないかと考えられます。

 その意味で、「ディフェンスが最大の攻撃」というよく耳にするセオリーは理論臭が強すぎ、それは体系が完成している世界での保守感覚ではないでしょうか。あるいは、何もしない群れの発想の隠れ蓑になっていないでしょうか。それとも、こういう考え方は「経験不足の青二才奴!」と、お叱りを受けるのでしょうか。

 仮にそうではあっても、資産運用という未経験ゾーンに立ち入るのは日本全体がそもそもそういう世界を承知していないのですから、国民全体が経験不足の青二才なのです。そのような世界に立ち向かうのにいきなりのアッパーカットを繰り出すような賭けは、晴れる日もあれば雨の日もあるのですから、そのようなアッパーを繰り出すような「投機」は余りにハイリスクです。まず、ジャブでさぐりを入れるのが勝者の常道でありましょう。ボクシングでは、ジャブが世界を制覇するといいます。明大ラクビー部のように、常に「まえへ!」というところもあり、少年野球ロッキーズのように、「打て、打て!」の大合唱をチームカラーにするところもあります。

 つまるところ、戦う年金基金、攻めの年金基金、〈ジャブかましの年金基金〉が、この〈未曾有な事態〉に対する年金基金のポリシーとならなければ、世情噂されているように何もしない常務理事や学識経験監事の馘首が今以上に蔓延することになりましょうし、解散基金が続出することになりましょう。今のままではとてもとても日本版ビックバンさえ乗り越えられないでしょう。

 要するに、〈未曾有な事態〉に対して〈基金経営の中心戦略は年金資産運用の効率化〉に尽きると見つけました。

 

 以上申してきたような背景の上で、筆者はこの『ペンションファンドマネジメント』(当初のタイトル)を書いてみたいと考え、それも単なる学術書や研究書の類(それは他の専門家の仕事)ではなく、読者が直接関わりたくなるような、何らかの刺激、ちょっとしたヒントが得られるようなキラキラしたものにしたいと考えています。そうであれば、抽象され整理された決定版ではなく、ドロドロした原石、素材の提供ということになりましょう。それも、「真っ赤な炭火を直接わし掴みにするようなそんな生臭い術」(拙著『情緒の力業』あとがき。近代文藝社  1995年)を使わず、曖昧さを含んで揺れながら進行して、論理的不整合(或る種の人々に言わせますと最大のミス)など恐れないし、朝令暮改(或る種の人々にいわせると最大の信義違反)など朝飯前のこととするような、遊び(日本語の真の意味での深さ・幅・奥行き・含蓄)の、ブレのある、ブレイクスルーな仕掛けのあるものにしたいものです。このため、論理的整合性を求める人や頭脳明晰を自負する人には清濁合わせ飲むご自身の包容力の大きさを示して頂きたいですし、結論の無い宙ぶらりんのまま放り置かれる孤独と忍耐を経験してもらいたいとお願いします。

 恐らく、「厚生年金基金」そのものの実像がまだまだ定まらず、概念の拡張作業(資産運用の低迷が定着してから研究・開発・規制撤廃等が着実に展開し、資産運用方法の合理化、行政手法の変換、時価会計への移行、数理基準の改正、支払い保証制度の充実、運用評価体制の確立、受託者責任のガイドライン制定、情報開示の姿勢等が日本経済の金融危機・日本版ビックバンを背景に進められている)を続けているのであって、試行錯誤の連続による「叩き」の真最中なのですから、論理的整合性を求める人や頭脳明晰を自負する人向けに、お手軽に把握できるようにはなっていないのです。

 要するに、これを書くのに筆者自身が前著で経験しました論理的不整合や朝令暮改を遠目に意識しながら苦しむなどということは一切したくありません。ましてや、チィベートのような議論は望んでもいません。この本を書くことが楽しみ!  五十代半ばのたった今を夢中になって生きたい、書きたい、熱中したい!  その結果、おもしろく、熱気のある本が出来たら幸いであります。

 

 今朝も、我が家の坪庭に生え育った辛夷(こぶし)の青々とした葉揺れの向こうの朝まだき淡い空が、光り輝き始めました。ただ、そこに日々の営みは繰り広げられてはいますが、意味を知る者には、それは人の生の深みと厚みと流れがギリシャの蜂蜜のような濃厚な味わいを秘めて壮大な人生の絵図となって展開されています。

 

 そうそう、本川達雄東京工業大学教授の「歌う生物学」(平成八年七月十六日朝日新聞夕刊:私空間)のような発想が素晴らしい。

 教授曰く、

「講義で歌をうたっています。科目は大学一年生の生物学。講義の最後にまとめの歌をうたいます。(……)それにしても科学に歌とはねぇという意見もあります。科学は論理を重視するもの、歌は情緒やイメージが主体のものですから相性が良いようには見えないでしょう。でも私は科学教育にもイメージが必要だと考えています。(……)論理を理解した上で、さらにそれが何を意味しているのかというイメージが湧(わ)いた時に、本当に分かった!  という気になるものです。 イメージが湧く教育をしなければなりません。言葉でイメージといえば詩。それに曲をつければ覚えやすくなります。だから歌う生物学なのです。」

 

 筆者にも「歌うペンションファンド」が出来れば良いのですが、世の中そうそううまくは行きません。筆者に出来ることといえば、基金事務所から二〇数年の基金業務現場の地虫のような声を発することだけ。それも、筆者自身が基金業務について特別な能力も教育も受けていませんド素人であり、ただ母体企業に採用された理由が社会保険担当者の補充というご縁であっただけなのです。そういう現場の地虫のような声を発するに際し、ご理解を頂きたく私事に渡ることを申せば、高校は夜間の電気科、大学は哲学科、社会は基金「科」(?)、そしてその間のプライベートな研究が『情緒の力業』、そう、それに地域ボランティア活動としての少年野球のコーチという、総じていえば少々金融業風に「三部リーグ」的な基金に対する経歴であり、基金業務に関係する法律も経済学も年金数理も、更に資産運用も基金経営にもまったくのド素人なのです。

 しかし、二〇数年も同じことに従事させて貰えたということは大変有り難いことであり、母体企業ABC㈱でもゼネラリストの多様な経験が尊重され単身赴任が勲章となっている中で、筆者は「異物」扱いされていますが、他に使いようがないからと基金の代々の上司始め母体企業の役員の配慮を頂いてきました。二〇数年も同じことをやっていれば、他の部門とは違うその世界独自な経験は誰でもするし当然なことですけれど、幸い事業の継続的な展開を維持出来たために貴重な基金業務の経験を数多くさせて頂いております。

 ちなみに申せば、①代行型から加算型への移行、②業務委託Ⅱ型からⅠA型への移行、③単独設立から連合型への移行、④業務委託指定法人の採用に伴う総幹事離れ、⑤資産運用評価会社の採用、⑥外資系運用機関の採用、⑦手作り広報誌の定期発行、⑧年金ライフプランセミナーの開催、⑨シニアーズクラブの設立等々、基金のフレームワークを大きく変え、年金支払団体としての基金の基盤整備の一部を達成出来たかと考えています。

 この間、①理事長六人・天下り常務理事二人プロパー常務理事二人の下での事業展開、②単独連合厚生年金基金連絡協議会等での委員会活動、③厚生年金基金連合会の資産運用講座に一〇回連続出席、④平成二年の基金連合会主催十五日間のヨーロッパ資産運用調査に参加、⑤四大證券会社の年金セミナーへの参加、⑥二〇社程の外資系運用機関年金プレゼンテーションへの参加、⑦私家版「厚生年金基金二十五年のノウハウ」作成、⑧日本公社債研究所主催青山護横浜国立大学教授の「現代投資理論研究会」、企業年金研究所主催「年金経営問題研究会」等への参加、それに平成時代になってからの⑨金融関係読書八〇〇冊程……等々の経験をさせて頂いています。それに、頂いた名刺が二〇〇枚ほどになる外資系金融機関の方々の資産運用ノウハウの教示の数々です。

 これだけの経歴と経験で、ただ二〇年来基金業務に携わってきただけのベテランというだけで、世間一般のゼネラリストのような大所高所の客観性(?)はなく、自ずと現場の地虫のようなドメスティックな声にもなるというものです。

 

 「厚生年金基金」(ペンションファンド)というイメージを攻めの厚生年金基金、〈ジャブかましの厚生年金基金〉という切り口で読者の皆さんに感得して頂くために、筆者は本書の構成を本論の三章構成の他に、本論を遮るかのように資産運用文化の精華と言える語句と、或る少年野球チームの物語をジャブの繰り出しのように散りばめて、アメーバー状にうごめく相関関係の増幅の末に、読者それぞれの「厚生年金基金」(ペンションファンド)が、本川教授のいうようにイメージとして確立されるようにしたいと考えています。

 長い間、「基金農協論」といわれるほどであった厚生年金基金は「お任せ運営」でしたが、〈ジャブかましの厚生年金基金〉という無数の切磋琢磨の試行錯誤なジャブを次から次へと繰り出して着実に「基金経営」に脱皮すべきではないかと考えています。行政風な「お任せ運営」から金融子会社風な「基金経営」にキャッチ・アップを計る時期になったということでしょう。

 とはいえ、組織の中で現実を消化し未来を実現するのは日々の営為の積算しか方法はないでしょう。一発ホールイン・ワンは事務所では出来ません。そうではあっても、ブレイクスルーが実現するのも、その前段に無数・膨大なジャブかましがあっての上です。実は、そのひとつひとつのジャブかましのインパクトの瞬間に、強烈なアッパーの未来が既に成就しているのを承知するのは、勝者の手が高々と上げられた時です。要するに、「今」は既に「未来」を含んでいるのです。「ボールの行方は、フォロースルーに聞いてくれ!」

 

 「金融市場は直線的ではない。本書の構成もそうである。」と、グレゴリー・J・ミルマンは『ヴァンダルの王冠―国際金融帝国の敗退』(渡辺靖訳・共同通信社・1996年)の「読者への言葉」で述べています。金融革命の解説には金融革命の実態に即した論理が必要でしょうと示唆し、「このように、章の番号は順列数をとっているが、読者は直線的な順序に縛られて読む必要はない。話の全体を読み取るには、本書に登場する多くのさまざまな人物や出来事を考慮に入れなければならない。それは、新国際金融システムへの参加者それぞれが相互に相手の行動の文脈を提供しているからである。本書の各章もまたそのような構成となっている。」と、ミルマンはいいます。

 筆者の考えは多少違っております。論述の直線をあえて直接関係の無い事柄で遮り、揺さぶりをかけ、結論の無い宙ぶらりんを仕掛けて、まず読者の方向感覚を奪います。その上に、更に数多くの文脈の異なる材料を提供して、読者の交響感覚を刺激します。そうして、或る時、突然に、見知らぬ街で方向感覚が失われている時に風景全体がガラガラと音を立てて廻り、方角がどっかりと座るときの、その生理的揺り戻しのようなものを読者に感得してもらえたらと考えています。それには時間がかかります。読後数年を要するかもしれません。いつまでも、イメージが固まらないかも知れません。それを避けるためにも無数のジャブが必要です。非難・中傷をものともしない面の皮の厚さが必要ですし、無限の熱意・熱中が不可欠です。人の半生をかけた情熱的な関わりが必要でしょう。

 はたして、そんな詐欺師のような手が読者に通じるのでしょうか。

早速、直接関係の無い引用を一つ。 

 

 右に揺れ左に揺れ戻りつつ展開する思惟の流れに、人はしばしば路を見失う。 要するに、一見単純な論理的構成にもかかわらず、『大乗起信論』の思惟形態は、直線的ではないのだ。だからこのような思考展開の行き方を、もし我々が一方向的な直線に引き伸ばして読むとすれば、『大乗起信論』の思想は自己矛盾だらけの思想、ということにもなりかねないだろう。 

               井筒俊彦『意識の形而上学』―「大乗起信論」の哲学 中央公論社 1993年

 

 

(平成八年六月五日起稿)

 

 

第二章 厚生年金基金の経営フレームワーク

 

 (1)経営などしたこともない!

 企業業務の傍ら「基金兼任理事長」が民間感覚で、過去に時々基金業務に発言することがありましたが、事務局からかくかくしかじかになっていますという説明・助言を受けて言うことは、「誰が責任者なんだ!」、「誰が経営しているのか!」という怒りの声でした。

 規制・指導で雁字搦めになっていて裁量の余地を残してない基金制度について、基金事務所は〈役所の出先〉なのか、とよく叱られたものです。

 というのも、理事長交替のたびに、基金業務の認可・指導行政の実態説明、大蔵省にべつたり張り付き厚生年金基金制度の直接の所管官庁の厚生省を無視した本邦金融機関の護送船団体制感覚、厚生省と民間の狭間で身動きが容易でない厚生年金基金連合会の実態、基金業界に蔓延する保守主義等々を説明し、ニツチがほとんどない実態を理解してもらうのに苦労したものです。

 筆者は八人にのぼる理事長交替を経験してきましたが、代々の理事長の発言趣旨を要約すれば、各理事長は、基金の「経営など、したこともない!」ということになりましょう。

今でも、〈経営〉などと基金業界で言い出すと、何処からともなく「〈行政〉なんだよ」、と聞こえてくる始末です。別の人からは、「国の委託業務を粛々とこなすだけ」などという、第三セクター並みの発言を耳にしたこともあります。国が最終責任を取ってくれるという負け犬の姿勢、他力本願のゼネラリストの責任霧散体質が、このたびの資産運用利回りの低下による積立不足を身動き出来ない状態にまで引きずりこんでしまったということでしょう。

 

 

 ヘッジファンドは投資収益の絶対水準のみを追求し、例えば株価指数などの収益差などには関心がない。……。最近では、少数の銘柄の株式、特定の通貨や債券に集中的に投資することは一般的には主流ではないが、成功しているヘッジファンドは、自分たちが自信を持っている集中投資の戦略を堅持している。

 つまり、ヘッジファンドは、どこでもマーケツトが動けば収益が上がるといった楽観論に基づいて投資をするゼネラリストではない。明確な戦略に基づいて投資を行うスペシャリストなのである。

                                 米タイガ-・マネジメント社M・Dイェスパー・コール

                              「ヘッジファンド対策」日本経済新聞社:経済教室 99.4.23

 

 

 三〇年余の長きにわたり国の委託業務のオペレーションで運営されてきた厚生年金基金には、経営主体など在りえようがなかったのです。経営権を剥奪されたまま、官僚の遠隔操作によってお祭りをしてきただけともいえるでしょう。

 

 

(以下略)

 


 

人様のお金 ―厚生年金基金は何になるのか

 

平成八年六月五日起稿

平成十二年八月二十九日脱稿

平成二十五年八月二十七日改訂

 

著 者   年金カウンセラー 高野 義博  

発行者   OPM研究会

住 所   〒251-0032 藤沢市片瀬一―五―三

メール   hitosamano@gmail.com

ブログ   http://blog.goo.ne.jp/hitosamano

検 索   年金カウンセラー

電子本   Amazon

発行所   Amazon KDP

 


 

「厚生年金基金アーカイブ」一覧

 

1.年金シリーズ

 1 検定:年金入門

 2 年金記録問題解決!年金履歴書

 3 知らないじゃ、すまないでしょ! 事例で学ぶ年金

 4 Q&A年金の行方

 5 ちょっと待った! これから年金の50代の方 年金生活への第一歩

2.基金シリーズ

 1 厚生年金基金事務長奮闘記

 2 人様のお金―厚生年金基金は何になるのか

 3 日本版401k誕生秘話!誰も知らない厚生年金基金

3.運用シリーズ

 1 401kの秘法 勝手格付け

 2 再々の肩叩きをスルーして 厚生年金基金の資産運用に 25年のめりこみました!

 3 1990 ヨ-ロッパ 資産運用

 4 転ばぬ先のシミュレーション: 確定拠出年金をはじめる方への先人の ドハハな教え!

4.確定拠出年金シリーズ

 1 401(k)の百聞は一見に如かず

 2 確定拠出年金はじめのはじまり

 3 プロ野球選手よ! 年金はもらうもの?

 

出所・http://goo.gl/fj4Y0H   

 

 

 

 

 

 

 

 


年金ライフプランセミナー

2015年06月18日 | 厚生年金基金

厚生年金基金の資産運用で予定利回りの5.5%以上で回った時、その一部を利差益として加入員の福祉等に使っていいというのがありました。

セミナー経費はこれでまかないました。

詳細は、「厚生年金基金事務長奮闘記」第三章 経営資源の有機的連結 5資産運用収益による福祉施設事業、業務機械化、給付改善 をご覧ください。

 


厚生年金基金アーカイブ 4.確定拠出年金シリーズ

2015年04月30日 | 厚生年金基金

①401(k)の百聞は一見に如かず

 

 厚生年金基金が行き詰まった平成11年(1999)、打開策を求めて民間の「米国401(k)プラン視察ツアー」が行われた、そのアメリカ訪問記です。ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコを一週間で廻り、10ヶ所の企業視察、事業視察、そして大学生協視察(?)に参加しました。

アメリカの401(k)プランは〈Individual〉をキイタームに、インセンティブ付与がダイナモとなり、個人ベースのテクノロジーとエデュケーション(教育・啓蒙の戦略)が相まって高速回転エンジンと化していました。その結果、アメリカ経済が活性化されるという循環も成立していました。

お読みいただければ、日本にはないアメリカ経済の活力を学ばれるでしょう。

 

[目次]

一 401(k)一見

二 訪問先個社マター

三 取り敢えずの401(k)論

 

一 401(k)一見

①視察団

  平成11年6月6日から13日にかけて、民間研究所の企画・主催で「米国401(k)プラン視察ツアー」が行われ、私はニューヨーク、ボストン、サンフランシスコを廻り、10ヶ所の企業視察、事業視察、そして大学生協視察(?)に参加してきました。

 

  視察団一行のメンバーは、厚生年金基金の理事長・常務理事・事務長等5名のDB(Defined Benefit)組と、他に大手企業の企画・人事畑の30歳台若手5名のDC(Defined Contribution)組、それに主催者・通訳の三名、加えて13名の小集団でした。

  ホテルが筆者と同室になった方は大手基金の常務理事で同じ昭和16年生まれ。就任されて3ケ月目、片や筆者の方は1/4世紀。片や財務畑のゼネラリスト、片や基金のベテラン?  もしくはスペシャリスト?  片や公費、片や自費。とは言え、理事長の理解を得て年休使用で事務所だけは休ませていただきました。基金連合会の10年来続いていた恒例の海外調査でさえ、応募者がなく中止になっている状況でありますから、これもまた象徴的であるにすぎません。

  筆者にとってはこの度は二度目の海外調査となりました。最初は平成2年の上記基金連合会の調査旅行で、UK、オランダ、ベルギー、スイス、ドイツ、フランス、ギリシャの15日間の公費資産運用調査でありました。このヨーロッパの資産運用調査では金融機関や年金基金の資産運用の伝統というか歴史の違いを認識させられた旅行でした。その後、UKで訪問した金融機関はそろって日本進出を果たし、グローバルな金融再編劇のすえに社名の消えてしまった金融機関もあります。幸いそのときの報告書の担当先は、今もエキセントリックな活動を展開している「ドイツ銀行」でありました。

 

②三大都市の印象

  この度の401(k)調査のアメリカ旅行で、廻ってきた三大都市の各々2日間の印象は、「三つのE」でまとめることが出来ます。すなわち、ニューヨークは〈エネルギッシュ〉、ボストンは〈エレガント〉、サンフランシスコは〈エフィシェント〉(効率の良い)でありました。

 〈エネルギッシュ〉というのは、ウォール街目指してヒルトン・ホテルからタクシーを飛ばしたところ、N.Y.の事務所の一斉の引け時にぶつかり、半島のため溢れ出た車が一線に集まり渋滞で身動き出来ず、Uターンして次のスケジュールのためにお上りさんの〈ウォール街詣で〉がはたせなかったことによります。

 〈エレガント〉というのは、双発の超小型プロペラ機で、日が雲海の遥か彼方に沈んだばかりの午後8時半の薄暮の中、視野一面に街の明かりが木々の合間にさんざめき散在するボストン市街から新宿程度の高層ビルの一角目指して、高度をグイグイ下げてプロペラ機特有の身体に直に感じられる飛行体験をしつつ、川をまたいだと思ったら横揺れ・落下・浮遊・失速しつつ飛行場に滑り込んでいました。そこは、まさにフットライトの降り注ぐ〈ステージ〉そのもの。小さな感動が走りました。何のステージ?  人、様々でしょうが、筆者にとっては何やら〈死後の目〉のポジション成立か。この度の旅行全体を自分が〈飛天〉になって飛び回ったような気がする。少々、禿げてきました、太り気味の、落下しそうな〈飛天〉ではありますが。

 最後に〈エフィシェント〉というのは、市電のターンに機械を使わず、2人の赤髭の大男の人力で方向転換することに代表されているように、街全体が人間的なレベルで企画されていることを指しています。あえて言えば、人生の過ごし方の点で街全体が効率市場を形成しているようでした。きらびやかな人生の華とでも言うべき。そう言えば、街の中心のユニオン・スクエア(ビルの谷間の一角の小公園、我々のホテルは対面のセントフランシス)には、偶々画家たちの絵がたくさん展覧されていました。その公園には、エーゲ海のように湿気のまったくない陽光が燦々と降り注ぎ、人に容赦のない風そのものとも言うべき湿気のまったくない風が吹いていました。見回っているうちにオーク樹を描いた大きなエッチングが目に止まりしばし佇みました。傍らに同じ絵の絵葉書カードを見つけたので、ドル紙幣をポケットから引っ張り出したところ、「Oho,No No! 」と言われ、片腕を引っ張られ公園のエリアを出て歩道まで案内されてしまいました。そこで商い成立。そこで始めて了解成立。公園内で商いはご法度になっているのでした。

 

 

 

 

 

(以下略)

 

登録情報

フォーマット: Kindle版

ファイルサイズ: 2160 KB

紙の本の長さ: 43 ページ

出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 4版 (2013/12/28)

販売: Amazon Services International, Inc.

言語: 日本語

ASIN: B00FL9CO2M

PC・スマホ・タブレット対応

 

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②確定拠出年金はじめのはじまり


 

 確定拠出年金の入門書です。Q&Aで楽しみながら気軽にお読みいただけます。これからの年金、老後の生活について欠かせない資料となっております。

つまり、これは年金実務経験30年の著者が贈る若い人向けの応援歌です。

 

[目次]

1.はじめのはじまり

2.浪費家・貯蓄家・投資家

3.年代別資産配分

4.目標設定

5.投資商品の選択と運用

6.資産配分チェック

7.勝手格付けゲーム

 

確定拠出年金はじめのはじまり 

  1.はじめのはじまり

Q3 ひとつお聞きしたいのですが、最近始まった確定拠出年金について? <日本版401k>とか言うのですか……。

A ええっ、大上段に来ましたね。出来れば、ハッシと受け止め、ガバッと打ち据えたいのですが……それは別の本に当たってください。実務書はたくさん出版されています。それに理論や知識や技術はインターネットの検索でも調べられます。ここでは、導入というか、入り口辺りをお話するだけですが、宜しいですか?

つまり、確定拠出年金のはじめのはじまりです。

Q3 ストーリーがお聞きできればいいです。

A そお、ストーリーですね。確定拠出年金の筋書き、物語りですか……。

Q3 自分の立ち位置がわからず、うろうろしているものですから。

A そおですか。…じゃあ、始めてみましょうか、とはいえ、……。

う~ん、そお、これをまず見てください。この「米国401(k)調査記録」(平成11年1999・拙著)のここにこういう記事があります。 

「日本経済の10年に及ぶ超低金利のもと、確定給付型の厚生年金基金の積立不足、国際会計基準の導入等に伴う企業負担の増大を背景に規制緩和・公的年金等の改善の議論が沸き起こっていました。平成9年3月の自民党行革本部を端初に、平成10年3月規制緩和推進計画が閣議決定され、以後、自民党労働部会・勤労者拠出型年金等小委員会、年金審議会、自民党年金制度調査会・私的年金等小委員会、税制調査会等の審議を経て平成11年1月の関係4省(大蔵、厚生、通産および労働)による「確定拠出型年金制度準備会議」の設置を受け、この6月には具体的な制度設計が示されることになっていました。偶々、ボストンに移動するためのジョン・F・ケネディ空港に向かうバスの中で、6月9日付けの読売新聞国際版の自民党年金制度調査会・私的年金等小委員会(8日開催)において示された政府・自民党案「確定拠出型年金制度案」の記事のコピ-が配られました。この間、民間でも平成10年9月の経団連「確定拠出型企業年金制度の導入を求める」というレポ-トが出て、確定給付型、公的年金を含めて多方面に議論が巻き起こり、マスコミにも取り上げられセミナ-も多数開催され、関係書籍も多数出版されていました。情報過多のような状況でしたが、マイナス思考の考え方が圧倒的に多く、日本にいては視野が限定されていて今一つ分からない部分があり、<現場に行こう>ということになったとのことでありました。」

 Q3 盛んに研究されていたのですねぇ。

A ええ。…さて、それは別にして、このような法律成立前の動きがあった後、次のような経過を経て、確定拠出年金法が成立しました。

Q3 やはり、企業サイドの意向が強かったのですね。

A バブル崩壊で切羽詰っていましたからねぇ。確定拠出年金は、政府が、平成13年(2001)確定拠出年金法、平成14年(2002)確定給付企業年金法を制定し、新しく確定拠出年金(DC Defined Contribution)を導入したものです。これには、企業型と個人型がありますけど、時代のニーズに応えたものでしょう。この頃から働き方が多様化していましたので。

Q3 時代のニーズ、要請ですか?

A ええ、バブル崩壊後の日本経済の落ち込みはご承知でしょ。会社では生き残りのために旧秩序の見直しがされていますよね、護送船団方式とか成果主義とか代行返上とか、お聞きになったことありますよね。 

Q3 ええ、世の中混沌としていますものねぇ!

A 乱れているってことは、末は明るいのですよね。

Q3 そうですね。明るくするには、どうしたらいいんでしょう?

A まずは旧秩序の検証でしょう。それと時代の変化を読み取ることでしょうか。

Q3 検証……ですか。

A 戦後日本人は貧しかったので、政府や官僚や会社がしてくれることを唯々諾々と受けていたきらいがありますでしょ。

Q3 と言われてもねぇ、他になすすべもなかったんでしょう。それに雇われないなんて難しかったんでしょ。

A そうではあったのですが、一歩下がって、日本の年金の生い立ちを考えると受け身であったことにはちがいありませんでしょ。

Q3 そうですね、……。

A 日本の年金は、上(政府)から下(国民)へ提供されていたので、年金はもらうものでしたものねぇ。企業年金だって会社から、もらうものでしたもの。つまり、年金は二の次というか受け身だったんですよ!

Q3 そうですねぇ、……会社の先輩たちを見ていると。

A 新しい確定拠出年金の枠組みは、そこが違うんです。

Q3 そこって、

A つまり、もらうだけでよかったのが、かちとるに切り替わったということです。自分で老後資金を勝ち取る仕組みなんですよ。政府や会社は仕組みを用意するだけで、中身は自分で作るわけです。

Q3 そお、……。それって何かいいことありますか?

A メリットですね。ええ、今までにない最大のメリットは<個人勘定>だということでしょう。

Q3 なんですか、それは? どんぶり勘定と言うのは聞いたことありますけど。

A そうですね、日本の年金はこれまで全て政府の一括管理、つまりどんぶり勘定だったんです。例えば、「厚生年金勘定」はあっても、その中の自分の年金は幾らというのが不透明な仕組みだったのです。それもこれも、背景に国の会計が単式簿記の小遣い帳方式をベースにしているため、不透明になってしまうのです。

Q3 国の会計が単式簿記なんですか!

A ええ、国だけではなく、県や市町村もです。

Q3 そういえば、前に新聞で藤沢市が複式簿記にしたとかいうのを見たことがありました。他にも、実験的に取り組んでいるところがあるようですね。

A そうでした。ところで、<アフリカ諸国・北朝鮮・日本>で、なにを想像しますか。

Q3 えっ、なんだろう、核保有じゃないし、飢餓国……でもないし、なんだろう。

A ……実は、これは国の会計制度が単式簿記の国々です。未開国なんですよ、日本のインフラは。国民として恥ずかしい限りです。

Q3 ほほっ、ビックリしたなぁ。それが現実なんですか!

A そこへ風穴を開けるのが確定拠出年金の個人勘定です。これを端緒のひとつに日本の公会計もおいおい複式簿記になっていくのでしょう。国際会計基準も入ってくるし。でも、一言付け加えれば、私の経験では、健康保険組合は単式簿記でしたが、厚生年金基金は制度発足(昭和41年)以来複式簿記でした。それも、時価会計採用(平成8年)は企業会計より先行しました。

Q3 そうなんだ、知らなかったなあ! 皆、知っているのかな?

A 知る人ぞ知る、でしょうね。今の都知事とかね。でも、大企業のトップたちでさえ知らないのが実態のようですし、ほとんどの人が知らないでしょう。知っているふりをする人は多いようですが。それは別にして、この単式簿記の弊害を承知して、どんな政策提言よりも、国の根幹をなす複式簿記の導入を最優先課題とすべきでしょう。つまり、政府予算の使い切りという単年度予算の仕組みを変えなけりゃならないんです。あえて言えば、現在の日本の諸問題、<失われた20年>の根本原因は単式簿記だと考えることが出来ます。今の日本の諸悪の根源になっています。損を認識しなくていいので、というよりできないので延命可能な単式簿記、<借金は収入>のカラクリ、これを複式簿記にしなければ、何らかの特別な事案でも発生しない限り<失われた30年>となってしまいます。

Q3 そうなんですか!……僕もそう思います、あれはひどいですよね、年度末の道路工事! それに加えて、きたならしい駅前の電信柱と電線! ……で、確定拠出年金の個人勘定というのは僕にとってどういいんですか?

A 今、会社で働いていて厚生年金加入ですね。企業年金はありますか?

Q3 いいえ、ありません。

 

(以下略)

 

登録情報

フォーマット: Kindle版

ファイルサイズ: 1081 KB

紙の本の長さ: 33 ページ

出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 3版 (2013/12/8)

販売: Amazon Services International, Inc.

言語: 日本語

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PC・スマホ・タブレット対応

 

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③プロ野球選手よ! 年金はもらうもの?

 

 プロ野球選手よ!

 少年野球、中学野球、高校野球、そしてプロ野球とふるい落としの階段を駆け上がり、最盛期の20代を華やかに活躍してきて、気が付くと30代、人生下り坂最高! と叫べない現実にぶち当たり、当惑にからめとられるプロ野球選手の人生無手勝流。

 野球機構のいままでの年金は2011年に清算され、選手は放り出されることになりました。今の時代、無年金のまったくの裸で生きるのはハイリスクに過ぎます。

 高額年俸にもコーチや解説者にも無縁であれば、引退後の長い人生がのしかかってきますし、食う心配のほかに老後生活の不安も極端に増大します。

 働き方が多様になったとはいえ、誰もがフリーランスで成功というわけにはいかないでしょう。雇用や経営が不安定なのが今の時代。パート・契約社員・嘱託・派遣労働者等の老後はどうなるのでしょう。こうした時代にマッチした年金が「確定拠出年金」です。

 まずは、年金実務30年経験の年金カウンセラーがおすすめする以下の対談形式のご案内をお読みいただいて、プロ野球選手よ! 頼りにならない機構等から独立して、長い人生のスキルのひとつとして「確定拠出年金」を使って人生のハイリスクに挑戦してみよう。

 

  はじめに

日本の年金の推移を「年金はもらうもの?」なのかと糺します。たった今は、「もらうもの」というのが世間一般の通り相場のようです。現在のメディア、つまり本、新聞、TV、インターネット等でも、とか、とか、とか、つまり「年金はもらうもの」と言ったり書いたりしていますので、そう思われるのもいたしかたありません。

時代をさかのぼれば、大正・昭和1ケタ生まれの人は、「年金はいただくもの」という観念が一般的でした。それは、軍人恩給だったり役人の共済だったりしたのですから、国家から<賜る金子(きんす)>という意味合いが強かったのです。

それが、昭和2ケタ以降生まれの人になると、厚生年金や国民年金等が始まり、「年金はもらうもの」というふうに変わってきました。国民は保険料負担をしているのに「年金はもらうもの」という言い方が長いこと続き、今も引き継がれているのです。

ここには、恩給時代の遺風ばかりではなく、経済が三種の神器(終身雇用・年功序列・企業別組合)によって右肩上がりを続けていた<平和ボケ>が災いしました。年金は国家や企業に任せておけば足りましたので、もらうだけだったのです。逆に言えば、一人一人は国家や企業に絡め取られていました。ですから、夕方、サラリーマンはマージャン牌を転がし、立ち飲みで一杯引っかけ、愚痴っているだけでよかったのです。ところがここにきて、確定拠出年金が始まり、いままでの「もらうもの意識」ではいかんともしがたい事態になってきました。終章では、その具体的解決策をお示しします。

Q&A形式ですので、楽しく読めます。年金問題を俯瞰的に把握し、年金に対する覚醒をもたらします。

 

[目次]

プロ野球選手よ!                                                                              

はじめに                                                    

目次                                                    

序章 暖簾分け                                                

第1章 「もらうもの」になったわけ                                          

 1.官僚の観念論

 2.経済の「三種の神器」

 3.公的年金の賦課方式・世代間扶養

 4.厚生年金基金

 5.税制適格退職年金(適年)

 6.退職金

 7.要するに

第2章 「もらうもの」のゆらぎ                                           

 1.統制計画経済から自由主義経済へ移行

 2.官僚の立ちすくみ

 3.職場環境の激変

 4.終身雇用制年金から成果主義年金へ

 5.企業年金の変容

 6.受給権保護と受託者責任

 7.要するに

第3章 「かちとる」てだて                                             

 1.自分年金ツリー

 2.無年金の恐れ

 3.ねんきん定期便のチェックと保存

 4.年金履歴書

 5.就業形態別年金

 6.目を光らす!

 7.要するに

終章 確定拠出年金はじめのはじまり                                       

 1.はじめのはじまり

 2.浪費家・貯蓄家・投資家

 3.年代別資産配分

 4.目標設定

 5.投資商品の選択と運用

 6.資産配分チェック

 7.勝手格付けゲーム

おわりに                                                    

 

  あらまし

 Q1は誰? もしかして、あの人かな? 

 

常套句―これが世の中をたぶらかしているのを少々生きてくるとどなたでも経験します。しかし、一般的にはこれに疑念を持たずに日々の生活は展開します。そうして覚醒することもなく生活はその常套句にまぶされます。

例えば、平成二十四年現在、「年金をもらう」という言い方が昭和時代から引き続きいまだに一般的です。この言い方、フレーズ、常套句が「失われた二〇年」の難局の前に立ちふさがり、ブレイク・スルーが起動しておりません。

では、この「年金をもらう」というのはどのようにして常套句にまでなりおおせたのでしょう。

 

日本は戦後経済復興を果たす中で、官僚の采配・按配によって経済復興に携わった高齢者の老後を賄う年金を作りました。国民に老後の安心をもたらす年金を経済復興の順風にのり提供したのです。その年金の組成は、全面的に官の仕事として仕掛けられたものでした。国民には、「どうぞお受け取りください」というわけです。受け取る国民の方としては、官から「年金をもらう」というコースしかなく、他には選択肢はなかったのです。

 

それがどうでしょう。時代が「失われた二〇年」の難局を迎えてみると、従来の官僚の采配・按配という年金スキームがまったく機能しないことが明らかになってきました。それに、気がついてみると、年功序列も終身雇用も右肩上がり経済もないグローバル経済になっていました。もはや、年金は官が提供できない事態を迎えてしまいました。つまり、「年金をもらう」ことが実質できなくなったのです。つまり、これまでの常套句はナンセンスとなりました。

 

さあ、ここからが本番です。新しい常套句を生み出さなければならない事態となりました。幸い年金の新しいスキームが平成十三年(2001)にはじまりました。確定拠出年金法です。この普及に伴い、国民意識も変わっていくでしょう。「年金をつくる」という新たな常套句が様々な失敗の上に作られていくでしょう。終章で、「確定拠出年金はじめのはじまり」をご案内して、一つのノウハウをお示しいたします。

 

平成二十四年十一月

年金カウンセラー 高野 義博

 

第一章 「もらうもの」になったわけ

 1.官僚の観念論

Q2 どうして年金は「もらうもの」なんでしょう。皆、そう言うし、疑問に思っていないみたいだし……。

A じゃ、君はどう思っているのかな。

Q2 う~ん、どっちかと言うと、自分で請求するかなぁ。むしろ、払い戻しを受けるかな、保険料高いですしね。

A そうですか。それが、四〇代の平均的な感覚なのかねぇ。

Q2 う~ん、どうでしょうね。いろんな考え方と感じ方がありますから。

A じゃあ、日本の年金が「もらうもの」になった背景を一緒に考えてみましょうかねぇ。

Q2 ええ、……。

A はじめに年金の生い立ちを振り返りましょう。とは言っても、簡略に戦後から始めましょう。まず、日本の戦後経済復興は、GHQによって戦前の領土拡張政策を全否定され、変わって経済民主化政策(公職追放、財閥解体、独占禁止法、農地改革、労働組合育成等)によって始まりました。

Q2 学校の教室みたいですねぇ。

A そぉう。しばらく、ごめん! 追放を受けた前代の指導者層に変わってそこに登場したのが、満州建国の失敗から戻ってきた官僚たちでした。

Q2 満州浪人? が、徘徊していた時期があるんですってね。祖父に聞いたんですけど。

A その官僚たちの満州での経験に基づく考え方は、マルクス主義をモデルにして、ドイツ風観念論で統治するという縦割り行政の国家統制計画経済であったことは周知の事実です。

Q2 統制経済というのは聞いたことあるけど。

A その統治の仕掛けの数ある中のひとつは、国の会計制度・公会計(税金の使い道を明らかにするため昭和二十二年に法律化された財政法並びに会計法による会計)を、単式簿記(経済的取引を現金出納帳等を用いて記載することで、期中の収支と現時点の残高を簡単に把握できる会計方式。資金の収支重視で、財産・債務は二次的になる。)で行うというものでした。官僚の使い勝手が良い仕組みで、だぶつきや先送りが許容されました。例えば、〈借入れ〉が〈収入〉扱いされる類のものでした。そのような国家統制計画経済(計画を統制する国家運営)の仕掛けによって、復興に取り掛かりました。

Q2 戦後混乱期の緊急措置だったんですかねぇ。緊急が永続化したみたいですけど……。

A その判定は、歴史の審判に任せましょう。国家統制計画経済は経済界の三種の神器と右肩上がり経済と相まって、急速に日本経済を復興させました。一〇年後の昭和三十一年(1956)には「もはや戦後ではない」と言われ、日本型資本主義が成功しました。

Q2 そうでしたか。

A ところで、年金ですが、国家統制計画経済の下、年金は、社会保険方式の美辞麗句を掲げ、右肩上がり経済を前提にした計画で、国家が取りさばいて国民に付与するものとされました。

Q2 国家と言うことは、官僚が取りさばいたんですね。

A ええ。つまり、国民にすれば、年金は国家から「もらうもの」でした。

 

 (以下略)

 

 

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紙の本の長さ: 112 ページ

出版社: 高野 義博; 3版 (2014/1/16)

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言語: 日本語

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厚生年金基金アーカイブ  3.運用シリーズ

2015年04月29日 | 厚生年金基金

401kの秘法 勝手格付け

 

 

厚生年金基金の資産運用では資金量が多額であること、関係者が多いこと、資産運用経験が少ないこと等のためなかなか難しい現実があります。この対策のひとつとして、我々の基金では、英国の資産運用経験と米国の金融理論の成果をミックスした「資産運用総合評価表」(添付事例の様式第1号を参照)を使って、母体企業、労働組合、年金受給者、加入員等の理解を促進し、運用機関の選択・解約を実行しています。

「英国の資産運用経験」というのは、定性・定量評価に際して定性評価のウェイトを80%にしたこと、「米国の金融理論の成果」というのは格付けの手法を利用すること、これら二つを組み合わせて厚生年金基金自らが〈資産運用機関の勝手格付け〉を行なうところがコロンブスの卵となっています。

確定拠出年金の時代になり、みなさんお一人づつが資産運用をしなければならなくなってきました。無手勝流で立ち向かうには相手は巨大に過ぎます。厚生年金基金に蓄積された経験の一端、〈資産運用機関の勝手格付け〉を使ってバトルを勝ち抜きましょう!

 

資産運用機関の勝手格付け

 年金カウンセラー 高野 義博

 

 

平成9年12月(年発第五九七〇号年厚生省年金局長通知)、5.3.3.2規制が撤廃され、厚生年金基金の資産運用は「自由化時代」を迎えましたことはご同慶の至りです。

反面、過去の付けが大きな積立不足となり、各基金を襲っている事実も厳然たる現実です。文字通り呻吟されている基金の選択肢として、巷間①〈給付引下げ〉、②〈解散〉、それに③〈資産運用の効率化〉が取りざたされています。

 

①は労使共々の同意を取り付けるのがなかなか困難ですのでセカンドベターな選択でありましょう。②は、全くの負け犬の発想でしょう。この結論の前にやることがあると考えますがいかがでしょうか。残る道は、唯ひとつ。③〈資産運用の効率化〉ということになります。

 

とは言え、〈資産運用の効率化〉などというのは、お手軽にコンビニの棚に並べられているようなものとは、いささか違うようです。この点について資産運用を行なう者について、年金局長も「熱意を有するもの」(平成10年10月・年発四一八七号)を充てるよう留意しています。具体的には、これでは余りに文学的に過ぎ意味不明ですが、現場の基金の経験では、長い期間にわたる基金業務の従事、内外金融機関・金融手法の調査、欧米金融事情調査、金融関係読書1,000冊、それに会話の出来る英語力にPC操作等々が必要になりましょう。とは言え、これを100%達成するのは至難の業です。しかし、いわゆる〈上がり意識のサラリーマン〉では対応出来ませんし、それでは受託者責任の観点からも責任を果たすことができないでしょう。或る高名なコンサルタントが言うように、そういう人は「猛烈に勉強するか、去るか」です。

 

 さはさりながら、現実のドブ泥は避けようもありません、現有勢力で戦いを挑むことになりましよう。ほっておいたら各基金間で7、8%余の収益格差が定例のようになりましょう。資産配分の戦略化を企画し、効率運用を目指して運用機関の選択・解約もしなければなりません。

 しかし、現実の各基金の資産運用は、基金の置かれた状況により千差万別、運用手法のステージもバラエティに富んでいるようです。お任せ運用から懸命に脱出を試みているレベルから政策運用のレベル、戦略アセット・ミックスを通じて運用機関に指示を出すレベル、更に高度な数値データを駆使した運用等といった具合です。

 

悲しいかな、資産運用に関しては、日本には英国の2、300年にわたる「経験」も、米国のノーベル賞多発の「理論」もないのですから、それらを右と左に見据えつつキャッチ・アップを目指すのが精一杯と言うところでしよう。だが、後発組の有利さというのも無視しえません。必ずや猛烈なスピードで追いつくことでしよう。ちなみに、日本では資産運用の理論研究(伊藤清氏以降、東工大、東大、一ツ橋等の大学院で盛んに研究されている由)も急激に進んでいるようですし、年金基金に蓄積された資産運用ノウハウ・インフラも無形財産として着実に積み上がりつつありますから、案外キャッチ・アップは早くなるかもしれません。

 

基金の現場では、切磋琢磨の試行錯誤を繰り返しながらドメスティックなものを作り上げるのが仕事になるのでしょう。しかし、資産運用の基本方針を定め、資産配分を決め、業者に運用を委託するという段階で、〈運用機関の選択・解約〉という問題が発生します。ここで、受託者責任に悖るような非常に悩ましい場面に出くわします。これらグレーな問題に、弱小・弱体な基金事務局はどのように対処したらよいのでしょう。

 

この対策として、我々の基金では、英国の資産運用経験と米国の金融理論の成果をミックスした「資産運用総合評価表」(添付事例の様式第一号を参照)を使って、母体企業等の理解を促進し運用機関の選択・解約を実行しています。

 

「英国の資産運用経験」というのは、定性・定量評価に際して定性評価のウェイトを80%にしたこと、「米国の金融理論の成果」というのは格付けの手法を利用すること、これら二つを組み合わせて基金が〈運用機関の勝手格付け〉を行なうところがコロンブスの卵となっています。

 

厳密な、或いはアカデミックな観点からすれば、全くの〈まがい物〉にしか過ぎないものではありますが、現場の基金のレベルでは、ある程度の客観性、合理性、透明性が確保され、説明資料としてはかなりの効果を発揮します。これを使って、ここ数年、我々の基金では運用機関の4社解約、6社採用を果たしております。「評価表」の示す事実が、重い腰の現実をおもむろに打ち砕くようです。ちなみに20%のウェィトの定量評価に際しては、過去5年から3年の時間加重利回り、複合ベンチマーク対比の超過収益率、インフォーメーション・レシオ等々の数値を参考にしております。

 

現在では、国際会計基準等が入ってきて経営サイドも一般世論も年金に関する認識はかなり改善されつつありますが、現実のこととして弱小・弱体の基金がこの「資産運用総合評価表」を手段・ツールとして使うことで、母体企業並びに運用機関等と対等に議論が出来るようになり、コミニュケションが一段と改善するものと考えられます。併せて、資産運用プロセスの透明性が担保され受託者責任も一部保全されるものと考えられます。

 

以上、ひとつのドメスティックな手法の事例としてご覧いただけたら幸いであります。

 

〈運用機関の勝手格付け〉の帳票は本書でご覧ください。

 

(以下略)

 

登録情報

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紙の本の長さ: 11 ページ

出版社: 高野 義博; 3版 (2013/12/8)

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②再々の肩叩きをスルーして 厚生年金基金の資産運用に 25年のめりこみました!

 

日本の年金は、平成13年(2001)からあなたが資産運用する時代になりました(確定拠出年金の開始)。

そこで、はじめに製造業中心の日本において、未知の分野の資産運用立ち上げをはたした厚生年金基金での資産運用インフラ・ノウハウ獲得の経緯とその成果をご覧いただき、最後にこれからあなたが立ち向かはなければならない資産運用Q&Aの物語をお楽しみいただきます。

一読後、あなたは資産運用にたくましくなられること受け合います。

 

友人の読書感想(2015.02)「次から次へと読みたくなり、一気に読んでしまった」「小さな基金でのご苦労・奮闘ぶりがよくわかりました」「Q&Aが分かり易かった」「ともかく面白かった!」

 

 はじめに

厚生年金基金の資産運用に取り組むことになった昭和50年(1975)当時、中学野球・電気科・哲学科出身の筆者(35才)にとって、資産運用は全くの別世界でありました。

その頃、基金の年金資産が積み上がりつつあるなかで、効率的な資産運用で収益を出さなければならない事情が高まりましたが、あいにく日本には企業にも個人にも資産運用のインフラ・ノウハウが見当たりませんでした。

そこで、資産運用ド素人が以下のような試行錯誤の切磋琢磨に取りかかり、ミイラ取りがミイラになってしまい、これが以後筆者の30年間のライフワークとなりました。

 

1.           資産運用の立ち上げ

2.           事務長の読んだ金融本

3.           戦略アセット・ミックスの構築の経緯

4.           パブリック・コメント?

5.           受託者責任の概要

6.           ABC基金の資産運用マネジメント

7.           ABC厚生年金基金資産運用基本方針

8.           厚生年金基金リスク管理規程

9.           資産運用機関の勝手格付け

10.         資産運用関係図表等

11.         取り敢えずの401(k)論

12.         機関運用から個人運用へ

13.         確定拠出年金のスタート

14.         確定拠出年金はじめのはじまり

15.         資産配分チェック

増補.アセット・ミックス(資産配分)

 

 厚生年金基金等に蓄積されたこれら資産運用インフラ・ノウハウの一端を皆さんとシェアしたくて集めてみました。

これらの資料が、確定拠出年金開始に伴い、これからご自分で資産運用をすることになった皆さんにとって、一つの事例として何らかのヒント、ひらめきを提供できて、皆さんのご参考になればこれに勝る幸いはありません。

 

(以下略)

 

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フォーマット: Kindle版

ファイルサイズ: 7780 KB

紙の本の長さ: 113 ページ

同時に利用できる端末数: 無制限

出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 7版 (2014/4/30)

販売: Amazon Services International, Inc.

言語: 日本語

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Amazon「再々の肩叩きをスルーして 厚生年金基金の資産運用に 25年のめりこみました!」

 

 

1990 ヨ-ロッパ 資産運用

 

 

 資産運用の本場、ヨ-ロッパ7ヶ国歴訪の旅! 報告書担当部分「DBプレゼンテーション」をご覧ください。1990年のヨ-ロッパの沸騰ぶりがお楽しみいただけます。なんと言っても、ヨ-ロッパ資産運用経験の長い伝統が素晴らしい!

 

無料配布キャンペーン(2015.01.17~21)を行いましたところ、35冊のダウンロードをいただきました。

 

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Japanese Pension Fund

Association

 

May 23rd,1990

In Frankfurt Deutsche Bank

 

団長 厚生年金基金連合会 木戸常務理事

通訳 日本コンペンションサービス 川岸 麗

テープ録音 厚生年金基金連合会 根本係長

録音聴取筆記 ABC厚生年金基金金 高野義博

 

DBCMI W.リチャード

 

それでは午後の部を始めたいと思います。

午後の最初のスピーカをご紹介します。P.ウォーカーさん、ロンドンにありますモルガングレンフェルアセットマネージメントの取締役をされています。

 

MGAMのプレゼンテーション

 

MGAM P.ウォーカー

 

それではまず、今日の午後、何をお話するかということで、この冊子のAGENDA「説明事項」と書いてあるころをご覧下さい。

初めにドイツ銀行(以下「DB」と略称)とモルガングレンフェルアセットマネージメント(以下「MGAM」と略称)との新しい刺激的な関係について触れ、次に東京に設立されたDBMGAMという投資顧問会社について述べ、最後に世界の年金資産の運用状況についてご説明致します。

 

ただ今、DBの方ですばらしいお昼を33階で御馳走になりここへ戻ってきたのですが、配布資料のページも飛んでいますので、「説明事項」のページから2ページ前に来て、そうすると1ページ(筆記者注:長円形で囲っているページ)になりDBトラストグループというページがありますので、そこをご覧ください。

モルガングレンフェルというのはロンドンの金融機関で、150年前に設立されています。モルガンというのは、元々はモルガンギャランティ又はモルガンスタンレイと同じモルガンです。

 

モルガングレンフェルとモルガンスタンレィとの間には昔は株の持ち合いが有りましたが、現在は別個に責務業務を行なっております。

モルガングレンフェルは150年の間、独立した銀行としてロンドンで業務を行ってきました。昨年末、非常に幸運なDBの買収が行なわれ、モルガングレンフェルはDBの傘下に入りました。

このDBのモルガングレンフェルの買収はモルガングレンフェル社の全社的な協力と合意の下に行われました。1992年を間近に控え、又現在の東欧情勢を考えるとDB程最適のパートナーはいないとモルガングレンフェルは考えました。

DBもモルガングレンフェルもそれぞれの国においては重要な銀行です。そして、それぞれの特異な分野で運用を行なってきました。

現在、投資の依頼を受けでいるその運用総額は770億米ドル(筆記者注:1ドル150円換算で11兆5,500億円)になります。

そのうち、フランクフルトのDBではドイツ向けのお客に450億米ドル、ドイツ以外の国際的なお客には30億米ドルの運用を行なっています。ロンドンのモルガングレンフェルは世界のいろいろなお客の運用を290億米ドル行なっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下略)

 

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Amazon「1990 ヨーロッパ 資産運用」

 

 

④転ばぬ先のシミュレーション: 確定拠出年金をはじめる方への先人の ドハハな教え!

 

刺激的な金融本章句の抜粋です。確定拠出年金を始められるあなたは必ず「ドハハな教え!」をいただくことでしょう。

資産運用のイロハが身に付き、いつの間にか頑丈になります。

 

目 次

 1.不完備制度の完備化

 2.ベンチャーキャピタルの実態と戦略

 3.僕はこうやって11回転職に成功した

 4.2004年公的年金改革

 5.実践IR

 6.国家の役割

 7.企業分析と資本市場

 8.国際会計の教室

 9.二ューヨーク流 たった5人の「大きな会社」

 10.市場の役割 国家の役割

 11.通貨が堕落するとき

 12.アメリカ年金事情

 13.ディ・トレーダー.

 14.時価会計不況

 15.市場対国家

 16.グローバリズムの終焉

 補遺

 1.新しい科学をつくる

 2.複雑系科学者市場予測に挑む

 3.外資の常識

 4.賢明な投資家への道

 5.投機バブル―根拠なき熱狂

 6.ネットトレーディングのいかさま師たち

 7.サルになれなかった僕たち

 8.ブルーチップ市場創設のすすめ

 9.隠された官の聖域

 10.100万人を破滅させた大銀行の犯罪

 11.誰が日本経済を崩壊させたのか

   12.競争と協調

 13.不良債権問題とビックバン

 14.現代の徳政令

 15.「複雑系の知」から経営者への七つのメッセージ

 16.新しいコミュニティ通貨の誕生

 17.確定給付年金は生き残れるか

 18.クォークとジャガー

 19.企業年金設計の多様化について

 20.eエコノミーの衝撃

 21.キャピタルフライト

 22.誰も書かなかった日本銀行

 23.経済システムの進化と多元性

 

 資産運用素材抜粋集

 厚生年金基金の資産運用に取り組むことになった昭和50年(1975)当時、中学野球・夜間電気科・哲学科出身の当方(35歳)にとって資産運用などというものは全くの別世界でした。

 年金資産が積み上がりつつある中で、効率的な資産運用をして収益を出さなければならない事情が高まりましたが、あいにく企業には資産運用のノウハウも人材もおりませんでした。

 そこで、資産運用ド素人が以下のような試行錯誤の切磋琢磨に取り掛かりました。

 

 金融本読書報告(140回)

 系列・お任せ運用からの脱却

 戦略アセット・ミックスの構築

 外資系運用機関の調査・採用

 資産運用機関の勝手格付け

  資産運用委員会の設定・運営

 資産運用方針の策定

 欧州資産運用状況調査旅行等

 

 こうした厚生年金基金事務所における25年間の資産運用実務経験のなかで、折に触れ読みこんだ金融本からこれはと思う文章、感動した章句、教えられたフレーズ等の抜粋を「素材抜粋」として集めてみました。

 

 はてさて、このような資料が皆さんの参考になるかどうかは定かではありませんが、資産運用に関してなんらかのヒント・閃きを提供できるかもしれないと考えました。

 

 ご覧いただいて、お楽しみいただけましたら幸いです。 

 

2011.12.30

年金カウンセラー 高野 義博

 

(以下略)

 

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紙の本の長さ: 205 ページ

同時に利用できる端末数: 無制限

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PC・スマホ・タブレット対応

 

Amazon「転ばぬ先のシミュレーション: 確定拠出年金をはじめる方への先人の ドハハな教え!」

 

 


厚生年金基金アーカイブ   2.基金シリーズ

2015年04月28日 | 厚生年金基金

①厚生年金基金事務長奮闘記

 

厚生年金基金について、小さな基金事務所職員の筆者が、昭和50年から平成13年の定年まで25年に及ぶインフラ・ノウハウ立ち上げの実務経験の幾つかを書いてみました。

この「厚生年金基金事務長奮闘記」は、一般の解説本のようにテーマの総覧とか、解説・教示・説明などとは異なり、体系・理念以前のドメスティックなもの、どちらかと言うと皆様を巻き込むと言うか、ご一緒に「厚生年金基金って、何んだ?」とお考えいただくような方向で書いております。

お読みいただければ、基金事務所の現場のドメスティックなドブドロのなかにおもむろに立ち上がってくるものを必ず見出されることでしょうし、基金制度の実態の具体的事例を通じて基金の何たるかをご理解いただけることと思います。そのうえで、願わくは、皆様が「私ならこうやる!」というアイデアを練り上げるきっかけにでもなりましたら、これに勝ることはありません。

 

[読者コメント]

*さて、「事務長奮闘記」、ようやく読了致しました。

先人の30年にも及ぶ実務経験をいわば追体験できる貴重な文献でした。

とりわけ、総幹事制が基金の独立性・自主性を阻害したという指摘と、その脱却策としてのIA型移行・指定法人採用という視点は、目から鱗でした。(2006/07/04 ブロガーA氏)

 

*痛快かつ本質にズバリ (国士夢想)             2010-10-05 04:41:13

と切りこんだキレのある意見で読んだ後味がさわやかでした。

年金基金の総幹事制の弊害は一般国民が全く知らない世界ですね。年金記録以上の恐ろしい問題です。政治家も知らないのでしょうか?

これじゃ運用利回りがあがる筈もなく、高齢者社会の年金受給者は主要な消費者でもあるのにデフレスパイラルですね。この総幹事制は海外からの圧力になるような気がします。

 

[目次]

あらまし 

はじめに

第一章 ブレイクスルーな事態 

第二章 厚生年金基金とは? 

 1厚生年金基金制度の仕組み

第三章 経営資源の有機的連結 

 1事業展開状況

 2厚生年金基金経営の有機的連結

 3年金業務の機械化と自主性の確立

 4厚生年金の受給資格確認代行、年金請求代行、政府負担金

 5資産運用収益による福祉施設事業、業務機械化、給付改善

第四章 フレームワークの刷新 

 1フレームワークの刷新

 2代行型はハイコストが仕組まれている!

 3業務委託ⅠA型と指定法人

 4ディスクローズの試行錯誤

 5手作り広報誌のポリシー「お元気ですか?」

 6事務所に情報は転がっていない!

 7厚生年金基金の格付け

第五章 資産運用の立ち上げ 

 1経営指針達成の方策

 2事務長の読んだ金融本

 3戦略アセットミックス構築の経緯

 4未曾有な事態

おわりに 

 

あらまし 

戦後日本経済の復興と興隆を懐古趣味で振り返るのはマイナス思考の極みであり、日本経済の「失われた10年」とか、「20年」と言われるときに必須のことはそれをリアリズムに徹して見据えることであろうと考えるのは一般常識でありましょう。

戦後日本経済の数あるスキームのなかでも一時的にもっとも機能した年金制度、特に厚生年金基金制度については、いっとき1800余基金、資産規模60兆円、加入者1200万人にも達しましたが、ほとんどの基金の代行返上・解散を招き、残るのは辞めるに辞められない総合基金ばかりになってしまいました。つまり、いまや厚生年金基金制度は歴史的使命を果たし終えて、官僚の敗残の記念碑となりおおせてしまっております。

もはや、三種の神器も右肩上がり経済もありえず、あるのは少子高齢化とグローバリズムという現実の中で、いかに生き抜くかということになってきました。日本の年金制度の見直しはをどう展開したらよいのでしょう。それには、この厚生年金基金制度の実態はどのようなものであったのかをリアリスティックに見据えることが不可欠でしょう。それを、基金事務所のドメスティックな現場に視点を定めて、以下の五章で明らかにしてまいります。

 

第一章 ブレイクスルーな事態

 この章は筆者の講演録です。はじめに年金に関わった筆者の自己紹介をして、基金業務の幾つかの改善をしている最中に、改善に改善を重ねても動的現実に対処できないでいるとき、ブレイクスルーな思考方法に巡り合いました。

基金の資産運用が日本の金融システム、ノウハウの従来手法では機能不全をきたしているが、その原因は官僚による統制計画経済によりスポイルされた国民の総サラリーマン化であろうと考えられます。グローバル経済の下でサラリーマンでは太刀打ちできないと論じます。

 

第二章 厚生年金基金とは?

 厚生年金基金制度の仕組みは、その年金給付の仕方に特徴があります。それは国の厚生年金の一部を基金から支払うという世界にも稀な奇怪な姿をしています。

 

第三章 経営資源の有機的連結

 厚生年金法を始めとする政令・省令・告示・通知等の大枠に伴う行政サイドの規制と行政指導、それに基金を取り巻く日本経済の保守的環境の中で、小さな基金事務所の自主性確保の切磋琢磨な試行錯誤の一端を「経営資源の有機的連結」と題して述べます。

つまり、基金事務所のドメスティックな現場の奮闘をお話して、基金事務所の自主性獲得の様子をお読みいただきます。

 

第四章 フレームワークの刷新

厚生年金基金制度のフレームワーク(給付建て年金・設立形態・給付形態・業務委託形態等々)はシンクタンクとしての金融機関(信託銀行と生命保険会社)が主導して法律化された経緯があります。

その法律により、企業は厚生年金基金の設立認可申請を大臣宛にし、認可された後、人を派遣して事務所運営を行います。当初、機材搬入はありません。商店街にある不動産屋の店舗みたいなものです。机二つに椅子が二つで事足ります。

店開きしてみれば、所与のものとしてフレームワークが与えられており、年金給付は他に選択肢のない「給付建て年金」(確定給付年金)、設立形態は単独、連合、総合の選択肢があり、・給付形態は代行型と加算型、業務委託形態はⅡ型とⅠB型とⅠA型の選択肢があります。当初、一般的には単独、代行、Ⅱ型で設立されました。

このフレームワークは選択肢があるものについても継続的に維持されるばかりで、これを刷新しよう、改善しようという気運は基金事務所には起きませんでした。といいますのも、基金を取り巻く環境も基金事務所も保守的な姿勢が支配しており、自主性などという観念は革命的なもののように忌み嫌われたのが実態です。

そういう保守的土壌において、小さな基金事務所で単独設立を連合設立へ、代行型を加算型へ、そしてⅡ型をⅠA型へ移行し、フレームワークの刷新を図った事例をお読みください。

 

第五章 資産運用の立ち上げ

厚生年金基金は一般的に、貸借対照表の借方の資産を守り、貸方の債務を果たすことで、加入員等の老後生活を保障することを設立趣旨としています。つまり、資産の保全と債務の遂行のために基金は掛金を徴収し、年金を支払うことになります。これを全うするために、受給権を保護し、受託者責任を果たさなければなりません。このことは、基金は常に資産と債務のバランスを視野に入れた〈最良執行〉を求められているということになります。基金は〈最良執行〉を達成し、事業主と加入員等にローコスト・ハイリターンの老後生活保障を提供することになります。

  これを達成するために基金事務所ではミクロの積み上げが重要になってきます。とは言え、ミクロを単発で個々バラバラに行っていては基金の顔が見えて来ないことになりますし、そういう基金の多いことも実態ではあります。そこで、重要になってくるのが「経営指針」に基づく資源の集中化・集約化、経営資源の有機的連結による資本のシナジー効果を高めることであります。具体的には、〈資産運用〉を中心にして衛星的に〈給付改善〉と〈福祉事業〉と〈広報事業〉を配置し、これらの有機的連結によってローコスト・ハイリターンの老後生活保障を実現することになります。

それでは、厚生年金基金事業の有機的連結の中心になる〈資産運用〉はどのように立ち上がり、どのように展開し、どのような成果をもたらしたのでしょう。

その事例をご案内いたします。昭和44年設立当初、ABC厚生年金基金の基金事務はソロバンで行われていました。筆者着任後、電卓をいれパソコンを設置して、業務委託形態もⅠA型にして自前で事務処理ができる体制を築きました。福祉施設事業も利差益を使って、弔慰金、OB会のパーティ運営、年金ライフプランセミナー開催、年金受給者の大型観光バス三台を連ねて一泊旅行も10年ほど行いました。

資産運用については、電気科・哲学科出身の筆者には畑違いも最たるもので、何の予備知識もありませんでした。又、会社にも事務所にもそのような経験を持っている人は誰も居ませんでした。

そのような背景の中、金融本の読書から始めました。また、筆者が移動アンテナになって、先行する基金に教えを請い、金融機関等のセミナーにも通い、数多くの研究会にも参加しました。そうして得た金融知識を事務所に反映し、業務に展開しました。

しかし、平成時代へ移行した頃、日本経済の凋落と共に厚生年金基金の積立金不足が明らかになり、厚生年金基金は未曾有な事態を迎えました。〈給付削減〉、〈資産運用効率化〉、〈基金解散〉が当面の緊急課題となりました。

 

こうして資産規模60兆円、1200満人が関わった厚生年金基金という一大ページェントが幕を下ろそうとしています。

 

(以下略)

 

登録情報

フォーマット: Kindle版

ファイルサイズ: 5718 KB

紙の本の長さ: 189 ページ

出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 2版 (2013/12/8)

販売: Amazon Services International, Inc.

言語: 日本語

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Amazon「厚生年金基金事務長奮闘記」

 

 

人様のお金―厚生年金基金は何になるのか

 

歴史から消えようとしている厚生年金基金の実態、内部構造、問題点等を具体的事例にそって明らかにするノンフィクションです。筆者が25年間、基金事務所で業務に全人的にのめり込むという原始的な手法で、現場から「厚生年金基金って、何んだ?」と追い求めたレポートです。右肩上がり経済時代の落とし子である厚生年金基金は官民ひっくるめてドタバタの限りをつくして終焉を迎えようとしています。厚生年金基金は永遠のα版として学ぶべきことは多岐にわたっています。この本は、そんな厚生年金基金についての世界で唯一の古典です。

 

[目次]

はじめに

第一章 制度発足30年経過して

第二章 厚生年金基金の経営フレームワーク

 1. 経営などしたこともない!

 2. 基金経営の組織機能

 3. 厚生年金基金の過渡的な経営フレームワーク

第三章 厚生年金基金の資産運用方法

 1.それとも資産運用で稼ぐか

 2.基金の見た日本の資産運用環境

 3.世界の資産運用環境

 4.平成10年度現在の資産運用状況

 5.資産運用マネジメント

第四章 厚生年金基金経営上の諸問題

 1.基金運営から基金経営へ

 2.厚生年金基金のリスク管理

 3.代行の金縛り

 4.〈人様のお金〉

 5.果たすべき約束

 6.パブリック・コメント?

第五章  凍結した死に体

 1.「厚生年金基金は死に体!」

 2.基金問題のインパクト

 3.〈人様のお金〉が変える日本のインフラストラクチュア

第六章 ビジョン「年金基金」

 1.戦後日本の哲学もどき

 2.「年金基金」というビジョン

 3.ビジョンのメッセージ

謝 辞

・厚生年金基金の経営フレームワーク資料集

・情報収集先

・書籍等一覧

・年金関係インターネット・サイト

 

 はじめに

 最近、「人様のお金」という言葉をお聞きになったことがおありでしょうか? 

 「他人の金」という言い方は時々見聞きするようになりましたが、一般的にはまだまだ「自分たちのカネ」という意識、といいますより、そのようなことに無頓着な無意識の行動が幅を利かせているようです。つまり、「人様のお金」を「自分たちのカネ」に摩り替える政官財のモラルハザードは極まってきているということ。

 なにはともあれ、「人様のお金」などという言い回しは久しく聞いたこともなく、死語と化しているというのが現実のことでしょう。

 そうではありましても、日本人ならどなたでもこの言葉に何やら、懐かしい響き……が、母親の面影が立ち上がってくるような気がしませんでしょうか。他界してしまった母親のように遠い何処かに、江戸時代か、明治の商人世界、あるいは終戦直後等の一昔前に、まったく忘れ去られたかのような感じがします。

 

 「厚生年金基金って、何んだ?」という筆者の25年に及ぶ小さな基金事務所での実務経験に基づくドメスティックな一考察が、厚生年金基金制度の提供主体である官僚と企業人が、「自分たちのカネ」とばかり思い込んでいました厚生年金基金の年金給付〈代行分〉と〈加算年金〉は、実は他人の金、「人様のお金」ですということを発見したのです。つまり、年金給付を受ける当事者自身の〈皆さんのお金〉でありましたという発見を基金の現場でのマドリング・スルーの結果導きだしたのです。

 同じように、「似たような状況において蓄積された経験」(R・ジアモ)の幾多の繰り返しにより厚生年金基金の公的部分(代行)と私的部分(加算)、つまり、この国家と企業のフレームワークは、各々が実施してきました国民と社員の〈統制手法〉なのだという認識を生み出したのです。この論理的帰結として、国家と企業の手から分離された形での「人様のお金」=「年金基金」というビジョンが成立したのです。

 さらに、このビジョンが日本の金融・年金・資産運用等のインフラストラクチュアを、強いて言えば、日本そのもののインフラストラクチュアを再構築することになりましょうという、〈壮大な経路〉(三ツ谷誠:JMMメール)の発見につながったのです。

 要するに、「人様のお金」というフレースは、刈谷武昭さんが『金融工学とは何か』(岩波新書)でおっしゃっている「不完備制度の完備化」の機能を果たすことになるのでしょう。

 

 このようなことは、すでに30年程前、1976年に米国でドラッカー教授が『見えざる革命ー来るべき高齢化社会の衝撃』で予言していたことであり、愈々そのようなことが、この日本でも少子化という問題を上乗せした形ではありますが具体化しつつあります。現実に日本のGDP500兆円に対して年金資産は半分強にまで積み上がってきているのです。資料によりますと、日本全体の年金資産は300兆円弱に積みあがり、厚生年金基金の資産も60兆円となってきています。このような年金資産(実態は、「人様のお金」)の〈資本の論理〉が保持しているパワーが、政官財の旧来システムの見直し・断罪を強く要請することになるでしょうし、サラリーマン・ゼネラリストを馘首し、様々なオーナーを次々と誕生させるでしょう。〈倫理ファンド〉、ベンチャー・キャピタル、ストック・オプション等の隆盛をもたらすにとどまらず、国家、企業等の組織都合な統治発想は否認され、インディビュジアル(個人)レベルから新たなインフラストラクチュアが構築されることになるのでしょう。

 とは言いましても、日本の構造改革は国債の大量発行に象徴されますように民意度は後進国並みですから、未だしばらくは遅々たる進展しか望めないでしょうが、方向だけは定まってきたようです。

 

 さて、通常一冊の本は、事前に推敲の経緯・経過は捨象され、抽象化されたうえで書かれるものと考えられます。泥の中を通り抜けるマドリング・スルーな経過そのものは主題足り得ないものなのでしょう。

 しかし、この「人様のお金」を、筆者は平成8年6月に厚生年金基金の経営を主題に「ペンションファンドマネジメント」として書き始め、推敲のドメスティックな展開そのものを内容にして、平成12年8月にタイトルを「人様のお金」(第一部厚生年金基金の変貌、第二部厚生年金基金の資産運用ドキュメント、第三部厚生年金基金の経営の三部構成、四〇〇字詰め原稿用紙2200枚)と改めて、書き上げました。

 その後、何人かの人に目を通していただきましたところ、商業べースに乗らないということで、皆さん一様に余りに大部に過ぎるということでした。そこで、編集し直し、500枚ほどをカットし、1700枚としました。

 さらに、それを「経営資源の有機的連結」を中心にした500枚ほどを独立させ『事務長奮闘記ー厚生年金基金って、何んだ?』とし、残りの1200枚ほどをこの『人様のお金ー厚生年金基金は、何になるのか?』に分冊しました。それでもなお、一般の本に比べて分厚くなりましたのは主題追求の手法のせいとご容赦ください。

 

 これらのことを、筆者は母体企業の再三の肩叩きを肩透かししつつ、厚生年金基金業務に全人的にのめり込むという原始的な手法で、現場事務所で「厚生年金基金って、何んだ?」と追い求めたのです。このような不器用な生き様は決してエフィシェント(効率的)とは言えませんが、愚かな素朴さ、ピュアであるとは言えるかもしれません。単に、ドメスティックなだけに終わっているかも知れませんが……。

 しかし、この判断は読者諸賢がお決めになること。筆者としては、ただ「厚生年金基金は、何になるのか?」の「叩かれ台」(山崎元『年金運用の実際知識』)を、「人様のお金」の素材提供が出来たのであれば、または、せめて読者の基金に対するイメージ構成が幾分かでも立ち上がり始めましたら良しとしなければならないでしょう。

 

 後は、ただ、笑而不答……

 

第一章 制度発足三〇年経過して

  厚生年金基金制度は昭和四十一年に創設以来、三〇年が経過しました。

 恙無かった昭和の時代が終わり、戦後日本経済の閉塞状況と共に平成の時代に入ってから制度発足以来の「未曾有な事態」を迎えています。この「未曾有な事態」とは、年金基金の資産運用の低利回りが恒常化したことに伴い財政悪化が募り、一九〇〇弱基金中、五〇〇基金程の多くの基金が年金資産の積立水準をクリアー出来ず、中には耐え切れずに解散する基金も出始めていることをいいます。

 しかも、この度の事態は単なる制度疲労とは違い、従来のような対症療法、つまり日本経済の製造業が得意技としてきた業務の一部見直し、各種の業務改善手法等で対応できるようなものではなく、年金基金の基盤を形成している制度の構造、フレームワーク、運営方法、特にサラリーマン的手法による基金運営を根本のところから変えなければならないような事態なのです。そしてこの背景には、戦後日本経済が培ってきました各種の経済スタンダードが機能不全をきたし、グローバル・スタンダードへの変換を強要されている事態があるのも明らかです。

  さて、この三〇年の間に、厚生年金基金は単なる「掛金徴収団体」から「年金給付団体」に変身し、少なからざる人々の老後生活の安定に寄与しつつある現実は見逃せません。基金加入期間が三〇年にもなり、厚生年金本体の「老齢年金額」と年金基金の代行分の「基本年金額」が半々にまでなってきているのが現実です。たまたま資産運用利回りの低下が恒常化したために、世情でかまびすしく取りざたされることになりましたのも、そういう現実があるために社会問題となったのでありましょう。

 

 

(以下略)

 

登録情報

フォーマット: Kindle版

ファイルサイズ: 3903 KB

紙の本の長さ: 206 ページ

出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 2版 (2013/12/8)

販売: Amazon Services International, Inc.

言語: 日本語

ASIN: B00F32J4Z2

PC・スマホ・タブレット対応

 

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Amazon「人様のお金―厚生年金基金は何になるのか」

 

 

日本版401k誕生秘話!誰も知らない厚生年金基金

 

社会保険事務所(現年金事務所)で相談しても、社会保険労務士に聞いても、WEBサイトで調べても、……誰も知らない厚生年金基金! いったい、どうなっているの? というのが、厚生年金基金です。こんな疑問が巷にあふれています。

この本は、厚生年金基金事務所の25年に及ぶ実務経験(事務所の人的物的体制構築・規約規定の整備・基金業務の機械化・加入員の年金計算年金振込み・基金財政の検証・基金の予算決算・ライフプランセミナー開催・OB会運営・年金給付改善・資産運用体制構築・年金調査研究等)と、社会保険事務所の年金相談員5年経験(ほぼ30、000人と面談)の年金カウンセラーが、「厚生年金基金」という堅い話をなんとか柔らかく皆さんにお伝えします。

つまり、学者先生が書けないインサイダーによるドメスティックな本になります。そのため、論文調の退屈さ・窮屈さを避けるために、「基金って何?」、「引用文」、「講演録」、「事例集」、「Q&A」、「401(k)調査記」等による話としました。要するに、いろいろな語り口を通じて、皆さんにお楽しみいただきながら、自然に、「厚生年金基金」のイメージが定まるようにしています。

 

[目次]

はじめに

目次

第一章 厚生年金基金の成立

 1.厚生年金基金の成立前史

 2.厚生年金基金制度の仕組み

設立形態/給付形態/運営組織/業務委託形態/業務分掌/資産運用/資産運用基本方針/受託者責任/年金給付/加入員台帳/年金計算/中途脱退/退職給付会計/基金解散と代行返上/確定給付年金と確定拠出年金の相違点

第二章 厚生年金基金の展開

 1.ブレイク・スルーな事態

 2.厚生年金基金経営の有機的連結

事業運営/厚生年金基金の変貌/「経営など、したこともない!」/フレーム・ワークの刷新/事務長の読んだ金融本

 3.代行の金縛り

代行の由来/代行型はハイコスト!/代行の本旨/代行故の官の介入/最良執行/経営指針達成の方策

 4.〈人様のお金〉

 5.基金の見た資産運用環境

第三章 事例で学ぶ厚生年金基金

はじめに/年金のキホン/年金の加入記録/年金の仕組み/年金の請求/年金生活

第四章 厚生年金基金を問う

 1.厚生年金基金は死に体!

凍結通知/凍結した死に体

 2.基金問題のインパクト

〈人様のお金〉が要請する効率市場/受託者責任が再構築する/基金問題のインパクト

 3.〈人様のお金〉が変える日本のインフラストラクチャー

日本型資本主義の組成/インフラストラクチャーの再構築

 4.未曾有な事態

第五章 Q&A年金の行方(基金解散と代行返上)

 はじめに

 1.基金解散と代行返上に伴う年金の行方

厚生年金基金の仕組み/基金解散後の年金/代行返上の仕組み/代行返上後の年金の行方

 2.基金解散と代行返上の真因

年金が一時金に化ける/多額な不足金発生/時価会計採用でどうなるのか

第六章 401(k)の百聞は一見に如かず

 1.401(k)一見

視察団/3大都市の印象/ツアー企画の背景/訪問先/幾つかのトピックス

 2.訪問先個社マター

JOHNSON & JOHNSON/SONY US/HewlettーPackard Company(HP)/APL社/Scudder University/Fidelity Investments/Atlantic Financial社/Speech Works社/日本経済新聞社米州編集総局年金担当:越中記者による現地401(k)セミナー/「プラン・スポンサー」誌

 3.取敢えずの401(k)論

401(k)エンジンの仕掛け/おわりに

第七章 確定拠出年金スタート

 

付録

 1.これは宝もの!

 2.読書案内

 3.基金広報誌

著者

著作・評論等

 

はじめに

社会保険事務所(現年金事務所)で相談しても、社会保険労務士に聞いても、WEBサイトで調べても、……誰も知らない厚生年金基金! いったい、どうなっているの? というのが、厚生年金基金です。こんな疑問が巷にあふれています。

 

かつて1200万人(国民の一割)がかかわり、年金資産60兆円も積み立てた厚生年金基金について「誰も知らない!」なんて変な話・ミステリーではないでしょうか?

 

この本は、厚生年金基金事務所の25年に及ぶ実務経験(事務所の人的物的体制構築・規約規定の整備・基金業務の機械化・加入員の年金計算年金振込み・基金財政の検証・基金の予算決算・ライフプランセミナー開催・OB会運営・年金給付改善・資産運用体制構築・海外年金調査研究等)と、社会保険事務所の年金相談員五年経験(30,000人と面談)の年金カウンセラーが、「厚生年金基金」という堅い話をなんとか柔らかく皆さんにお伝えしようと試みます。

 

つまり、学者先生が書けないインサイダーによるドメスティックな本になります。ハウトウものや解説本や教科書ではありません。その類の本は筆者の任にあらずです。

そのため、論文調の退屈さ・窮屈さを避けるために、「基金って何?」、「引用文」、「講演録」、「事例集」、「Q&A」、「401(k)調査記」等による話としました。

要するに、いろいろな語り口を通じて、皆さんにお楽しみいただきながら、自然に、「厚生年金基金」のイメージが定まるようにしています。

 

さて、平成15年(2003年)10月、確定給付企業年金(DB Defined Benefit)である厚生年金基金の将来分代行返上が法律で認められ、一気に660基金の「代行返上」が始まりました。そのほかに平成13年(2001年)に始まった確定拠出企業年金(DC Defined Contribution)に移行した基金(30基金)や「基金解散」も急拡大し、全国にそれまで1800余基金あったのが、1000基金になり、平成22年(2010年2月1日現在では609基金(大半が身動きの取れない総合基金)になっています。

 

このように、いまやあたかも「厚生年金基金」は時代の要請を果たし終わり、次にバトンタッチをしているかのような状況にあります。それは、まるで米国の後追いをしているかのような景色でもあります。

 

と言いますのも、日本でも、老後の生活保全については、次の図表1のように昭和40年以前はFamily家族が担っていました。昭和40年~平成15年頃はGovernment/Company政府/企業でしたが、平成15年頃以降(米国に20数年遅れて)Individual個人の責任へとシフトしつつあるようです。

 

図表1 年金主体の移り変わり

出所:米国フィディリティィ社 プレゼンテーション資料 1999年訪問

 

平成24年の現在、このような立ち位置の「厚生年金基金」は確かにタイムリーな話題ではありません。

 

しかし、「厚生年金基金」には関係者のマドリング・スルーな必死の切磋琢磨によって蓄積されたインフラ・ノウハウ(例えば、退職金の年金化・外部保全化、資産運用の方法、官僚まかせの他者依存意識からの覚醒、受給権保護の方法、受託者責任、個人勘定の革命性等々)には膨大なものがあります。そこに、厚生年金基金の歴史的意義が凝縮されています。

つまり、この本はそれらの一端に言及している代行返上前のドキュメント、更にはプレ確定拠出年金のドキュメントとしてお読みいただけたら幸いです。要するに、「日本版401k誕生秘話!」です。

 

若い人たちにとって、新たに始まった確定拠出年金(個人勘定故の自分年金)の成功のために、この「厚生年金基金」のインフラ・ノウハウを承知しておくことは必要不可欠なことです。と言いますのも、ここから、若い人たちが将来何をすべきかの方向が見えてくるからです。

それでは、皆さん、厚生年金基金についてのいろいろな語り口を、まずはお楽しみください!

 

                                平成24年8月

年金カウンセラー 高野 義博

 

 

第一章 厚生年金基金の成立

 

1.厚生年金基金の成立前史

 

 日本では、長いこと、「世襲制」が伝統的な地位・資産・職業等の継承方法でありました。それが、日本の伝統を守り続けた効能は計り知れないものがありましたし、それが、日本文化の中核を形成してきました。

しかし、戦前、その恩恵から零れた次男・三男等は、外に「新宅」を構え、自らの力で生活を切り開いて行かなければならない苦闘がありました。小作人になり一生汲々とした生活を送るとか、商家に丁稚奉公して「暖簾分け」の恩恵を受けるとか、工場労働者の搾取されつくした低賃金に泣くとか、長い役人生活の代償で死に際に恩給を貰うとか……。一様にぎりぎり喰うための生活に明け暮れていました。

 

 

図表2  年金小史

 

さて、現代年金史は昭和17年の「労働者年金法」(後の厚生年金)に始まると言ってよろしいでしょう。

その厚生年金は、当初は積立段階で年金支払いは少なく戦費流用が可能ということで導入された暗い背景を持っていました。国民と企業から厚生年金保険料を徴収して、大砲や艦船に使い、海外派兵や諸国占領の経費に流用すべく目論まれていたのです。いっとき、保険料徴収の業務は「警視庁」が強権力で行っていた時期もありました。ここで問題だったのは、流用可能な会計制度を許容する大東亜精神・挙国一致思想の開明度合いということでしょうが、当時の政治家・軍人・官僚・国民等にそれを求めても詮方ない現実が立ちはだかっていました。

 

(以下略)

 

登録情報

フォーマット: Kindle版

ファイルサイズ: 13898 KB

紙の本の長さ: 254 ページ

出版社: 年金カウンセラー 高野 義博; 4版 (2013/12/8)

販売: Amazon Services International, Inc.

言語: 日本語

ASIN: B00F7IBX3S

PC・スマホ・タブレット対応

 

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