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「Q&A年金の行方  ―基金解散と代行返上」 3

2015年11月17日 | 厚生年金基金

 

Ⅱ 基金解散と代行返上の真因

 

 一.資産運用の低利回り

 

Q  厚生年金基金から代行返上すると言ってきたが、どうしてそうなったのだろう。加算分も清算したがっているようだが。

 

Q  参ったよ。代行返上するんだそうな。

A  そうですか。記録を確認しますから年金手帳ありますか?

Q  はい、これっ。

A  ちょっと、待ってください。……。5Hになっていますから返上されていますねぇ。返上された分は国の厚生年金の中に合算されて振り込まれますから大丈夫ですよ。

Q  それはいいんだが、……。加算分はどうなるのかな。

A  それは各基金まちまちですが、通常は三つの選択肢が提供されます。

Q  それから自分で選ぶんだ。

A  ええ。

Q  そお。……。なんか、会社は加算分も終わりにしたいみたいなんだが、どうしたんだろう。

A  ええ、一般的には基金の資産運用の低利回りというのがあると思います。基金の資産運用は年5.5%の利回りを予定しているんですが、ここ 一〇年ほどとてもその利回りは確保できていないんです。このため、資産が不足になってきて、年金が支払えなくなりつつあります。

Q   そお、一%とか二%かせぐのも大変なんでしょう。

A   銀行預金の利回りを考えますと分かりますよね。それに、日本経済の構造変化、つまり終身雇用とか年功序列賃金とかが難しくなってきていますよねぇ。さらに、日本経済が世界環境に合わせていく上で不可欠な時価会計の採用というのも大きなインパクトになりました。

Q  環境が変わって昔のインフラでは用が足せないなんだ!

A  ええ、おっしゃるとおりだと思います。

Q  でも、自分たちはそのハザマで年金を受けて老後のリスクに立ち向かわなければならないんだから、ドサクサ紛れに年金をカットされるのは避けたいものだねぇ。

A  そのとおりですねぇ。年金支払い者の動向には十分監視の目を光らさなければならないということになりますねぇ。

Q  どうしたらいいんだろう。

A  政治家や役人・企業経営者、それに労働組合の役員などの発言に注意するとか、ということになりますかねぇ。直接的には、受給の権利のあるものはすべて一〇〇%、漏れがないように請求することですねぇ。そのためには、年金制度を熟知して、調査を完全に行って、自分のガードを固めないといけないでしょう。

Q  そのようだねぇ。ありがとう!  

A  もう、ひとがん張りしてください。 

 

 

 

 二.新規加入員数の激減

 

Q  厚生年金基金から掛け金引き上げの知らせがあったが、どうしてだろう。

 

Q  こんにちは!

A  どうぞ、お座りになってください。ムシますねぇ。

Q  でも、ここは涼しいよ。

A  おかげさまで、私は腰痛が出て参っています。

Q  傍目には分からないやつだね。お大事に!

A  ありがとうございます。それで本題は?

Q  それが、会社の基金から、掛け金を上げると言ってきたのだが。

A  それは加算年金分ですねぇ。ここでは、その辺のことはよくわからないんですよ。詳しくは基金さん聞いてください。

Q  うん。分かっているんだが、今日はもっと一般的なことを聞きたいと思って……。

A  総論話でいいんですね。

Q  そういうこと。

A  加算型基金では、退職金の一部を基金に移して、一時金の年金化を図っていますよね。

Q  そうみたいですねえ。

A  そこで、年金数理計算をすると、各種予定数字の変動に伴い掛け金を引き上げざるを得ないことがあります。

Q  予定数字って?  

A  予定利回りとか予定加入員数とかがあります。

Q  利回りが低ければというのは分かるけど、社員数って?  

A  ええ、毎年新入社員が定期的に一定数入社してきた右肩上がり経済では、そういう心配はなかったのですが、それでは数理計算が成り立たなくなるんです。

Q  たしかに、最近は新入社員が入ってこないよねぇ。

A  そうしますと、数理計算に基づく計画経済は機能しなくなるんですねぇ。掛け金も引き上げざるを得ないということです。

Q  会社って計画経済なの!

A  いえ、日本の年金・企業の年金は数理計算で収支の予測をしていますので、その意味では計画経済と言っていいんだろうと思います。

Q  そういうことなのか、だったら随分時代離れしているねぇ。いっそのこと、じゃあ、数理計算のいらない年金ってないのかな。

A  それは、最近、企業年金の世界で実験が始まった「確定拠出年金」でしょう。

Q  401K!

A  そうです。日本のインフラは総じて時代遅れになってますから、変わらなきゃあならないのでしょう。

Q  世界に打って出て経済活動しなければ日本は生き延びれないんだから、日本のインフラの再建設が必要なんだ。

A  ええ。日本の年金制度にもそういう意味で401Kの実験が始まったといえるでしょう。

Q  新しいインフラなんだ。

A  試行錯誤が続くでしょうが、ひとつの起爆剤にはなりえるでしょう。

Q  掛け金引き上げの背景には随分と難しいことがあるんだねぇ。いやあ、ありがとう。大きな話になって楽しかったよ。

A  楽しかったですか。大味すぎましたけど……。

Q  腰をお大事に。

A  ありがとうございます。

 

 

 

 三.事前積立方式だがどんぶり勘定

 

Q  年金額って皆同じですか?  どんぶりだって聞いたものだから。

 

Q  年金って、皆同じ額なのかなぁ。

A  お座りください。

Q  ええ。どんぶりだって友達が言うもので。

A  う~ん、二つのことが一緒になっているようですねぇ。まず、一人一人の年金額と、年金制度全体の収支ということでしょうか。

Q  そお。

A  お一人一人の年金額は、国民年金でしたらその方が納付された国民年金保険料納付月数によって計算されますので、全員年金額が違います。また、厚生年金でしたら、その方の就職から定年までの全期間の平均給与で計算する報酬比例分とその間の月数で計算する定額分との合算になります。ですから、厚生年金も一人一人年金額が違います。厚生年金基金でも、平均給与と月数によって年金計算しますので一人一人ちがいますしねぇ。

Q  そお。じゃあ、どんぶりじゃないんだ。

A  年金額計算の場面では、どんぶりじゃないですねぇ。

Q  そお……。

A  う~ん、どんぶりって、どんぶり勘定のことですか。

Q  そういうこと。

A  年金額を計算するときにはそういうことはありませんけど、年金全体の収支、決算をするときの財政計算の場面ではどんぶり勘定と言えることはあるかと思います。

Q  たとえば?  

A  国の年金財政では、世代間の助け合いという美名の下に社会保険方式という賦課保険方式(今では実態は修正積立方式になっている)で年金数理計算をしますから、言ってみれば、こずかい帳の経理です。これは、どんぶり勘定といえるでしょう。数理という考え方は予定数字で見込むのですから、単なる計画にしかすぎません。現実とはまったく異質なものが出来上がるのです。ここに、政治家や官僚の恣意が入る余地が生まれるのです。数理というのは、目くらましの方法なんですよね。

Q  そうなの!

A  その点、厚生年金基金の財政は完全事前積立方式ですから、個々人の年金額の積み上げで全体の経理を行うので一応バランスシート勘定になっています。でも、悲しいことに制度の未成熟でしょうか、資産の保全の面では個人勘定になりきっていませんでしたので、結果的に厚生年金基金もどんぶり勘定になってしまいました。

Q  ふう~ん?  

A  どちらにしても、どんぶり勘定のフレーム・ワークであれば、責任の所在はうやむやになりますし、うやむやにできます。政治家や官僚、それに企業経営者にとって都合の良いフレーム・ワークなわけです。

Q  そお。

A  「受託者責任」という言葉をご存知でしょうか?

Q  いや。

A  これも輸入語ですけど、日本の土壌には馴染まないようですねぇ。日本で、この責任を追及すると、日本の司法は国家賠償法で対応するしか能がないんです。

Q  そお。

A  国家賠償法というのは、政治家や官僚、それに企業経営者等の個人レベルの責任を回避する手法なんでしょう。

Q  組織責任というやつね。

A  そうです。個人レベルではなく、組織レベルなんです。

Q  だから、裁判に訴えてもせん無しと言うことか。

A  奥深いところから変わらなきゃあ、ということのようです。

Q  こりゃあ、なかなかだねぇ。

A  百年、河清を待つ、ほどのことなんでしょう。

 

 

 

 


 四.多額な不足金発生

 

Q  厚生年金基金の決算報告書に多額な不足金が計上されているのだが、どうしたことだろう。確か、今まで不足金ではなく、剰余金だったが。

 

Q  おはようございます!  今日も混んでいますねぇ。  

A  ええ、おかげさまで商売繁盛(!)です。

Q  ところで、今年も基金から決算報告の広報誌が届いたのだが、今年、突然、不足金が計上されているのだが……。

A  う~ん、突然ですか?  

Q  そお、ちょっと前までは剰余金だったのに。突然、大きな不足金に変わったんだが。

A  会計方式について、基金から連絡はありませんでしたか。

Q  さて、知らないねぇ。

A  そうですか。ここの窓口では、基金の決算についてはご案内できませんけど、オフレコで私の知る限りのことでよろしかったらお話させていただきます。

Q  それでいいですよ。

A  さて、う~ん、どこから話しますかねぇ。

Q  簡単でいいよ。

A  といわれても、……。そお、バランス・シートってご存知ですか?

Q  会社の決算で使っているやつかな。  

A  ええ、貸借・損益計算書です。基金の決算も、制度発足以来そのバランス・シートで決算をしています。

Q  そうでないところもあるんだ!

A  はい、国の厚生年金などの決算はバランス・シート方式ではありません。単式簿記のこずかい帳決算です。

Q  ふう~ん?  それで、どんな問題があるのかな。

A  単式簿記と複式簿記、さらに簿価主義と時価主義の違いということになります。

Q  そお。

A  単式簿記と複式簿記の違いは役所経理と会社経理の違いですねぇ。バランス・シートが有るか無いかの違いなんですが、ものの見方、ものの考え方の違い、世界観が違うんですねぇ。

Q  そお。

A  さらに簿価主義と時価主義の違いは、多少図式的な説明になりますけど、会社経理と基金経理の違いということになりますねぇ。

Q  そお。

A  たとえば、以前に買った不動産の経理処理で、簿価主義は購入当時の金額のまま計上します。値上がりした部分は含み益という考え方です。時価主義であれば、現在値に修正されて計上され、含み益という考え方はとりません。 すると、簿価主義では資産のバブルが発生します。時価主義であれば、バブルは基本的にありえません。

Q  なるほど。

A  バブルという意味では、役所経理の単式簿記も同様です。次年度以降の収入を大前提にしていますので、常にバブルを内包しています。

Q  そお。

A  つまり、日本の企業会計インフラと行政会計インフラは、右肩上がりの経済を前提にしてバブルを生み出し、先送りが許容されるシステムになっているわけです。都合がいいんですよ、彼らには。使い勝手がいい経理になっているのです。

Q  そお。

A  それで、今回、基金が不足金を発生させた件は、複式簿記の簿価主義であった基金経理に企業会計より一足先に時価主義(平成 九 年)が採用されたので、突然、債務が巨額化したというわけです。

Q  そお。

A  そうなると、政府から預かっている「代行分」は企業にとってお荷物以外の何物でもなくなってきたのです。「代行分」の資産運用で稼ぐノウハウは日本企業には無いですから。日本株式会社は製造業ですから。

Q  それで、いっせいにどこの会社でも代行返上に雪崩込んでいるんだ。

A  図式的には、大まかにそう言えると思います。

Q  そうなんだ、これで大分すっきりしましたよ。もやもやが晴れてきました。どうも、ありがとうでした。

A  どういたしまして。

 

 

 

 五.時価会計採用でどうなるのか

 

Q  厚生年金基金の決算で時価会計採用と聞いたが、どのような問題が発生するのだろう。

 

Q  もう、終わりですか?  

A  どうぞ、機械を使わない問題でしたら、かまいませんですけど。

Q  年金の請求は済んでいるんだが、ちょっと、聞きたいことがあってきたんだが……。

A  お座りになってください。どういうことでしょうか?  

Q  実は、会社で営業の役員をやっていたのだが、年金とか、会計とか、厚生年金基金についてまったく知らないんだ。いまさら会社に聞くのは気が引けるので、ここへ聞きにきたわけ。

A  そうですか、この窓口は公的年金の年金請求や年金受給が中心の年金相談ですから、年金制度の会計とか財政の話になりますと、一般論程度しかお話できませんけど。

Q  それで、結構。

A  で、どういうことですか?  

Q  基金で時価会計を採用するとか聞いたが、会社ではまだだったよね。

A  会社はまだですね。でも、近々そういうことになるようですねぇ。

Q  それで、基金はもう時価会計になったのかな。

A  ええ、なっていますよ。

Q  そうすると、どういうことになるのだろう。  

A  はい、時価会計ということは、保有資産の評価をその時点の時価で評価するということですから、その評価額が直接決算計上されることになります。

Q  時価って言うと……。

A  はい、会社経理で簿価というのがありますよねぇ。

Q  買ったときの値段というやつだね。

A  ええ、それを現時点で評価して決算計上することを時価会計といいます。

Q  そお。評価の方法って決まっているのかな。

A  いえ、それがいろいろ問題が有りまして定まっていないのもありますね。不動産、株式、債券、投資信託、外株、ヘッジファンドなどいろいろありますから。基金の資産運用も多岐にわたってきています。

Q  そお。基金でそんな運用もしているんだ。

A  ええ、資産配分とか分散投資とかリスク管理とかを科学的に計画して、グローバルな運用環境に基金スタッフは立ち向かっています。その点、基金に蓄積された資産運用ノウハウは、日本経済にとって初めてのことでもあるし、貴重なものだと思います。

Q  そお。

A  ええ、ですから、こういう場面で時価評価になると、いっそう保有資産のリスク管理を徹底しなければならないと思います。

Q  なるほど。リスク管理?

A  基金でも、始まったばかりで試行錯誤の最中です。

Q  そお。基金の仕事って面倒なんだねえ。

A  そうですけど、皆さんの大切な老後資金ですから、誰かがやらなければならないですよね。フットライトはあたりませんけどね。

Q  がんばってもらわなければならないねぇ。

A  そういうことになります。 ただ、現在の基金会計のフレーム・ワークでは、資産の保全は基金全体の勘定として経理されます。

Q  ということは?

A  個人資産のセキュリティの面では不十分なんです。実は、会社役員等の恣意が入りやすい点がクリアーされていません。

Q  というと、現実にそういうことが行われているというのかな。経理とか人事の役員だろう。

A  ええ。会社都合という美名に隠れて粛々と行われています。年金というものに対する認識に欠ける役員が多いというより、そういう認識がまだ日本では形成されていないといったほうが正しいのかも知れません。

Q  そう。

A  基金の年金も、まだ個人勘定になっていませんので、どんぶり勘定になりやすいんです。つまり、資産保全の点では、欠けるところがあるわけです。

Q  そう。時価会計ですべて解決というわけではないのか。

A  ええ、ようやっと、スタート台に立ったところです。基金がフロント・ランナーになって日本経済の実験が始まったところです。

Q  そう、大分理解できました。

A  少しは、お分かりいただけたでしょうか。

Q  早速、本を読んで勉強してみるよ。

A  それがよろしいですねぇ。

Q  ありがとう。ちょっと、遅くなってごめんなさいよ。

A  どういたしまして。

 

 

 

 

 六.基金解散や代行返上に伴う責任

 

Q  厚生年金基金が解散したのだが、責任を誰も取らないのでしょうか?

 

A  こんにちは。おかけください。

Q  ええ、こんなこと聞いていいのかしら?  

A  どういうことでしょうか?  

Q  長いこと加入してきた基金が解散したのですけれど、……。

A  ええ、それで、年金は企業年金連合会から受けられますよね。

Q  はい。

A  加算年金分について、どの選択肢を選ばれましたか?  

Q  十五年確定にしました。

A  それは良かったですねぇ。

Q  良くないのよ。

A  と、いいますと……。

Q  終身年金で生活設計を立てていたのに、そうはいかなくなってしまったのよ。  

A  それはそうですねぇ。制度変更の際に、大なり小なりそういう問題が出ますねぇ。

Q  それで、今日はその点の責任を誰かが取らないものなのか、お聞きしたくて来たのですが。

A  う~ん、その点は、会社として信義に反した事実は言い逃れできないでしょうが、個人責任を問うことは難しいんじゃないでしょうか。

Q  どうして?  

A  ええ、現状の日本の経済インフラでは個人責任というより組織責任ですから。よくTVのニュースで会社のお偉いさんが、不祥事謝罪の頭下げをしているのをご覧になったことありますでしょう。最近は、繰り返し、繰り返し放映されますよね。あれが精一杯で、一個人の責任を取らせるため監獄にぶち込むのはできないんじゃないでしょうか。

Q  そうなの。なんかあれだけでは許せないわ。

A  戦後60年の政官財のフレーム・ワークではなんともできないんじゃないでしょうか。過去に幾つか組織犯罪を裁く裁判もありましたが、日本の司法は組織責任しか言いませんでした。どこかに個人責任を問う経路があるのかもしれませんが……。

Q  そうなのね。男社会だからね。男は勝手なことばかりしてきましたでしょ。

A  そうでもあるし、そうではないでしょう。ところで、「受託者責任」という言葉をご存知ですか?

Q  新聞で見たことがあるみたい。「製造者責任」とかというのも有りますよねぇ。

A  そうですね。年金の世界でも、同じようなことがあるんですが、年金制度を作った人間、制度運営をしてきた人間、年金資産を運用する人間等に、「受託者責任」が問われるのです。

しかし、この言葉も日本に入ってきて高々一〇年くらいのものですから、日本の現状インフラにはアン・マッチになってしまうんですね。この考え方が日本の風土に定着するには、二、三〇年はかかるんじゃないでしょうか。

ただ、この話はあくまでも企業年金の世界のことであって、国の年金制度では、一〇〇年も先の話でしょう。

Q  そうなの。

A  誰も責任を取らない、というより、誰も責任を取れないフレーム・ワークになっているのですよ。その点では、日本のあらゆるフレーム・ワークは新たに作り直さなければならないんでしょう。

Q  そお。単なる義憤では世の中動かないでしょうが、

A  そういうことてですねぇ。ご理解いただきありがとうございました。でも、試行錯誤は続けなければ変わりようが無いですよね。ロシアの皇帝の「民の声は、神の声」ということばもありますしね。

Q  そうよね、発言していくことが大事よね。

A  ええ、そう思います。お仕着せではなく、自らの手で作らなければならないのでしょうし、そういう営為が次の時代を切り開くのでしょう。それが無かったら、次の時代は無いんでしょうから。

Q  ええ、私もそう思います。ありがとう。変な質問でお手間を取らせました。

A  とんでもありません。小うるさいことを申しあげました。

 

 

 

 

 七.裁量的フレーム・ワークの機能不全

 

Q  年金制度の変更権限は誰が持っているのだろう。

 

Q  在職老齢年金で支給停止をかけるのはふとどきだよ。

A  そういわれましても……。どういうことでしょうか?  まず、お座りになってください。

Q  うん。誰がその権限を持っているのだろう。

A  実態は、社会保険庁でしょうけれど、政治家が承認していますし、その政治家を選挙した国民ということになるでしょうね。

Q  そう、でも支給停止かけるということは、働くな!  ということだよ。

A  結果的にそういう事態を招いているのも現実ですね。それでも、徐々に改正されてきましたけど。  

Q  賞与でも保険料取り、年金は支給しないというのはひどいよ。

A  お怒りは良く分かりました。……ちょっと、現行の年金の原理・原則から考えて見ましょう。

国の年金制度は賦課方式で世代間の助け合いを基本理念にしていますよね。

Q  そうらしいけど。

A  そのため、給与のある人には若い人との収入のバランス上、年金を少し辞退してもらいましょうというのが、世代間の助け合いの理念だろうと考えられます。給与と年金のある人には、この点で貢献してもらいましょうというわけです。

Q  随分、勝手な論理じゃないかな。  

A  勝手かもしれませんが、その点ではご主人のお考えもほんの少し勝手かもしれませんよ。視野が少々狭いという点で。

Q  そうかい、それは、承服できないけどね。

A  しかし、厚生年金基金の事前積立方式であれば、むしろ六〇歳無条件給付が当たり前で、支給停止をかけるほうがおかしいことになるのでしょう。

Q  すると、年金のやり方、

A  ええ、財政方式によってやむをえないというわけですねぇ。ただ、国の年金の財政方式がこのままでいいと言ってるわけじゃないですけど。

Q  そう。

A  それとは別の問題ですが、国の年金では 五年ごとの財政再計算というのがあり、年金額の見直しがされますが、これなんか世界の年金状況から見ると、年金額が変わるというのは異常であり、年金に値しない、補助金だというのがあります……。

Q  そう、日本の年金はおかしいんだ。

A  年金とは、何なのでしょう。政治家や役人の裁量的恣意が介入していいものなんでしょうか。

Q  六〇歳や六十五歳の無条件給付がいいねぇ。政府の言っている世代間の助け合いは年金とは別のところで達成すればいいんだよ。

A  そうですね。裁量が入る余地のあるフレーム・ワークは時代遅れなんでしょうねぇ。

企業年金の世界での代行返上や基金解散は、この際そういうものはご破算にしようという思慮が働いたのかも知れませんねぇ。

Q  なるほど。

A  政治家や役人とか企業経営者、労働組合の役員等には年金についてしっかりしたビジョンを持ってもらいたいですねぇ。彼らには責任があるのですから。反面、国民一人一人の年金に対する認識が変わることが不可欠なんでしょうが。

Q  そお。

A  時代の要請をきちっと察知できる感覚が必要ですねぇ。ただ、それを現実の政策に反映していくのには大変な努力が求められます。

Q  そうだね。

A  ましてや、時代の要請を読み解く作業の中で、意見は百家争鳴の状態になり、従来の対症療法や先送り政策は否定されることになるでしょう。その意味で、年金制度は「なし崩しに改善される」べきものではなく、つまり、法華の太鼓ではビジョンが持てないのですから、はじめに永続的なものとして設定されるべき性格のものだと思うのですが……。いかがでしょうか?

Q  そうじゃなければ、老後の生活設計など出来やしないよねぇ。

A  ころころ変わるのは、もう、勘弁してほしいですねぇ。

Q  いやぁ、すっかり丸め込まれてしまったなぁ。

A  とんでもないですよ。そんな気はさらさら無いですからね。

Q  分かってますよ。どうも、ありがとう。自分が年金のことを知らなすぎたことがわかりましたよ。もう一度、年金についてじっくり考えて見ますよ。

A  そうですか。失礼なこと申し上げたのでしたら、ごめんなさい。

Q  いやいや、ありがとう。

 

(続きます)

 


 

 

 

 


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