「日の名残り(1989年)」でカズオ・イシグロの世界にはまり、「忘れられた巨人(2015年)」を読
んで、本作「浮世の画家(1986年)」と読んできましたが、本当に不思議な作家で、舞台も年代もバラ
バラながら、共通するのが常に主人公の語りが中心であり、その記憶が実際の現実と自身の認識に少し
ずれがあったり、曖昧である事、もしくは思い込みが激しいことから不安定で事実が歪められているか
もしれない、という懸念を読者は常に抱きながら物語が進んでいく。
この小説でも画家の小野の一人語りでありながら、戦前にこの画家がどういう行動をしたのかハッキリ
せず、多くの弟子に囲まれ、周囲から称賛されていたとしながら、その弟子たちとの現在には触れたが
らず、娘たちや義理の息子ともぎくしゃくする。作者が小津安二郎の影響を受けた感じは分かる。娘た
ちとの会話のシーンにも見て取れる。
読んでいてこの作品に登場する日本の戦前、戦後の街並みの描写は何故か微妙にずれがあるような気が
してならない。意図的にリアルさから離れた感じもする。戦後に激変する周囲と自分の価値観が強烈な
違和感を持って表出しているようだ。それだけに読後不思議な感情を抱かせる。そして考えさせられる。
しばらくしたら、もう一度読み直そうと思う。
浮世の画家 カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫
んで、本作「浮世の画家(1986年)」と読んできましたが、本当に不思議な作家で、舞台も年代もバラ
バラながら、共通するのが常に主人公の語りが中心であり、その記憶が実際の現実と自身の認識に少し
ずれがあったり、曖昧である事、もしくは思い込みが激しいことから不安定で事実が歪められているか
もしれない、という懸念を読者は常に抱きながら物語が進んでいく。
この小説でも画家の小野の一人語りでありながら、戦前にこの画家がどういう行動をしたのかハッキリ
せず、多くの弟子に囲まれ、周囲から称賛されていたとしながら、その弟子たちとの現在には触れたが
らず、娘たちや義理の息子ともぎくしゃくする。作者が小津安二郎の影響を受けた感じは分かる。娘た
ちとの会話のシーンにも見て取れる。
読んでいてこの作品に登場する日本の戦前、戦後の街並みの描写は何故か微妙にずれがあるような気が
してならない。意図的にリアルさから離れた感じもする。戦後に激変する周囲と自分の価値観が強烈な
違和感を持って表出しているようだ。それだけに読後不思議な感情を抱かせる。そして考えさせられる。
しばらくしたら、もう一度読み直そうと思う。
浮世の画家 カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫
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