よしーの世界

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毛沢東の私生活   李志綏(リ・チスイ)

2021-05-30 08:13:47 | 
私たちが知る中国はあくまで表面的なもので実態はよく分からない。何しろ政府が情報を極端に統制

しているので本当のことを知ることは出来ない。以前であれば漏れ伝わる地方の混乱とか政府が海外

には伝えたくない情報もあったが、習近平国家主席に権力集中が強まる中で政府にとって好ましくな

い実情が出ることもなくなった。私たちの知る伝説上の人物・毛沢東に関しても知ることは少ない。


本書には毛沢東がほぼ権力を掌握した時期に主治医として仕えた著者による素顔の毛沢東が描かれて

いる。西洋の医学を学んだ著者は毛沢東と一緒に食事をし、数々の会議に出席する毛沢東と行動を共

にし、あの広大で流れも急でしかも汚れている川で一緒に泳ぎ、生活時間の違う毛沢東に真夜中に叩

き起こされ診察をし、毛沢東の指示で地方の農民の貧しい生活を体験もしている。


毛沢東が権力を握っていた時代に「反革命分子」として処刑されたのが87万3000人余、「大躍進」で

の餓死者が2215万人、「文化大革命」では13万5000人が処刑、172万8000人が「異常な死」を遂げ

たという。本文中に毛沢東は中国は核戦争で一千万人の人名を失っても困らないと著者に言う、当時

中国の人口は6億人、理想の為なら人民の犠牲はやむを得ないという考えだ。


著者は共産主義の理想に燃え、意気揚々と帰国する。そして再三の呼び出しに応じ、毛沢東の主治医

になってしまう。毛沢東のカリスマ性に魅了されるが、22年の長きにわたり主治医を務めるうちに

様々な疑問を覚え、毛沢東の乱れた私生活にうんざりしていく。著者は妻の強い勧めに執筆を決断す

るが、本書の発売された3か月後にシカゴの自宅で遺体となって発見された。現代中国史を改めて知

る上で貴重な一冊を残して。


毛沢東の私生活        李志綏(リ・チスイ)        文春文庫


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