「セヴィリアの理髪師」がこんなに派手なオペラだと思わなかった。
思えば生のステージで「セヴィリア…」を見るのも四年ぶりぐらいなのだが、興奮して観ているうちにあっという間にフィナーレになってしまった。
最初から最後まで、楽しすぎて頭皮の毛穴が開きっぱなしの公演だったのだ。
ロッシーニ23歳の作。若々しく、機知に富み、あるゆる場面が「見せ場」のチャーミングなオペラ・ブッファ。
それでもって、歌手たちには「無茶ぶり」ばかりする。
三角定規で書いたような高音のオブリガード、こまごまとした装飾音は、ベルカントの定番だけど、この日の歌手たちは
さらに華やかに、ロッシーニの若い野心に油を注いで華麗な炎をめらめら燃やしていた。
森麻季さんのロジーナがすごい。2010年の「愛の妙薬」のアディーナも素晴らしかったが、針穴を通すような正確な音程で超絶技巧のスケールを楽々歌う。
それが、とても楽しげで優雅なのだ。森さんのロジーナは、美人で知的でユーモアセンスもあり、なんともいえない香気を舞台の上で放つ。
キリリ眉のメイクも素敵だったが、個性もあって、「これが今の日本の歌手のレベルなのよ!」と世界に自慢したくなるような出来栄えだ。
細いウエストに、パニエでふくらんだスカートがとても似合っていらしたのもよかった。
フィガロの堀内康雄さん、バジリオの池田直樹さんも最高。バジリオが「ゲイっぽい」風貌なのがものすごく似合っていて
あの奇奇怪怪なデザイン(?)の帽子と髪型も加わって、新しいバジリオのキャラクターを作り上げていた。
若いロジーナと結婚しようとするお爺さん医者のバルトロは、志村文彦さん。歌もお芝居もハジケ切っていて、ここまでやってくれるんだ…と
目頭が熱くなった。名演である。
そこに、錦織さんのアルマヴィーヴァ伯爵である。完璧なアンサンブル・オペラ。錦織さん、去年のリサイタルもノリノリだったが
また調子を上げてきた。ますます年齢不詳だ。伯爵が学生のふりをして弾き語りをする「空のほほえみ」ではギターの腕前も披露してくれた。
「変装をして目的の女のいる屋敷にのりこむ」というのは、「オリー伯爵」と同様ロッシーニ・オペラの常套パターンだが
錦織さんの変装はイキきっている。酔っぱらった兵隊に変装するシーンでは、「くるみ割り人形」が出てきたのかと思った。
バジリオに変装して屋敷に乗り込むシーンでは、声まで変える。その声が、とてもヘンテコリンなのだ。爆笑の渦。
錦織さん、歌も相当磨きこんでいたが、「小芝居」にかける情熱には、もやは職人芸を越えたものを感じる。
「オペラは面白いものだ」「日本人が演じるアンサンブル・オペラは素晴らしい」
それを、命がけでつたえている。使命感がなきゃ、あそこま出来ないだろう。吉本新喜劇よりよほど面白い。
ギャグというのは知性でありセンスなのだから、オペラ歌手の方のギャグセンスは卓越していて当然なのだ。
森さんも、錦織さんのグルーヴに感染して、すごいキックをするシーンがあったり、アンサンブルオペラなので
みんなの気持ちがひとつになっている。
これ、ロッシーニの故郷で上演してくれないかな? イタリア人に、見せたいのです。
この小さな島国で、こんなにスゴイ「セヴィリアの理髪師」が上演されている…。自慢したくてたまらない気持ちになった。
(3/20に東京文化会館でもう一度公演があります)
思えば生のステージで「セヴィリア…」を見るのも四年ぶりぐらいなのだが、興奮して観ているうちにあっという間にフィナーレになってしまった。
最初から最後まで、楽しすぎて頭皮の毛穴が開きっぱなしの公演だったのだ。
ロッシーニ23歳の作。若々しく、機知に富み、あるゆる場面が「見せ場」のチャーミングなオペラ・ブッファ。
それでもって、歌手たちには「無茶ぶり」ばかりする。
三角定規で書いたような高音のオブリガード、こまごまとした装飾音は、ベルカントの定番だけど、この日の歌手たちは
さらに華やかに、ロッシーニの若い野心に油を注いで華麗な炎をめらめら燃やしていた。
森麻季さんのロジーナがすごい。2010年の「愛の妙薬」のアディーナも素晴らしかったが、針穴を通すような正確な音程で超絶技巧のスケールを楽々歌う。
それが、とても楽しげで優雅なのだ。森さんのロジーナは、美人で知的でユーモアセンスもあり、なんともいえない香気を舞台の上で放つ。
キリリ眉のメイクも素敵だったが、個性もあって、「これが今の日本の歌手のレベルなのよ!」と世界に自慢したくなるような出来栄えだ。
細いウエストに、パニエでふくらんだスカートがとても似合っていらしたのもよかった。
フィガロの堀内康雄さん、バジリオの池田直樹さんも最高。バジリオが「ゲイっぽい」風貌なのがものすごく似合っていて
あの奇奇怪怪なデザイン(?)の帽子と髪型も加わって、新しいバジリオのキャラクターを作り上げていた。
若いロジーナと結婚しようとするお爺さん医者のバルトロは、志村文彦さん。歌もお芝居もハジケ切っていて、ここまでやってくれるんだ…と
目頭が熱くなった。名演である。
そこに、錦織さんのアルマヴィーヴァ伯爵である。完璧なアンサンブル・オペラ。錦織さん、去年のリサイタルもノリノリだったが
また調子を上げてきた。ますます年齢不詳だ。伯爵が学生のふりをして弾き語りをする「空のほほえみ」ではギターの腕前も披露してくれた。
「変装をして目的の女のいる屋敷にのりこむ」というのは、「オリー伯爵」と同様ロッシーニ・オペラの常套パターンだが
錦織さんの変装はイキきっている。酔っぱらった兵隊に変装するシーンでは、「くるみ割り人形」が出てきたのかと思った。
バジリオに変装して屋敷に乗り込むシーンでは、声まで変える。その声が、とてもヘンテコリンなのだ。爆笑の渦。
錦織さん、歌も相当磨きこんでいたが、「小芝居」にかける情熱には、もやは職人芸を越えたものを感じる。
「オペラは面白いものだ」「日本人が演じるアンサンブル・オペラは素晴らしい」
それを、命がけでつたえている。使命感がなきゃ、あそこま出来ないだろう。吉本新喜劇よりよほど面白い。
ギャグというのは知性でありセンスなのだから、オペラ歌手の方のギャグセンスは卓越していて当然なのだ。
森さんも、錦織さんのグルーヴに感染して、すごいキックをするシーンがあったり、アンサンブルオペラなので
みんなの気持ちがひとつになっている。
これ、ロッシーニの故郷で上演してくれないかな? イタリア人に、見せたいのです。
この小さな島国で、こんなにスゴイ「セヴィリアの理髪師」が上演されている…。自慢したくてたまらない気持ちになった。
(3/20に東京文化会館でもう一度公演があります)