
昨日、与太ばなしでふれた『ピートのスケートレース ー第二次世界大戦下のオランダでー』について、書こうかな。
昨日の『銀のスケート』は、予想外のアクセスがあって、驚いている。
私が、このブログを初めて以来、最高数のアクセス数なのだ。どのあたりが、興味をひいたのだろう。(^_^;)
もとい。
『ピートのスケートレース ー第二次世界大戦下のオランダでー』である。
これは、昨日のブログにも記したが、エルフステーデンホトというとてつもないスケート競技のこと、それとナチス占領下のオランダのこと、これはやっぱり気になります。
39ページに「作者より」という後書きがあり、そこには、エルフステーデンホトについて記されている。
それによると、1890年12月20日(明治23年)にウィレム・ヨハン・ヘルマン・ムリエイルというなんともなが〜い名前のスポーツジャーナリスト(この時代、そういう職業があったんだね!)が、オランダの北部フリースラント州の11都市をつなぐ運河をスケートで滑り通し、その経験からこれを公式レースにしようと尽力したことに端を発する言う。
フーリスラント州の地図を見て手帳に11都市の名前を記しているピート。

公式のエルフステーデンホト(Elfstedentocht)は、1912年、1917年、1929年、1940年、1941年、1942年、(この連続3年間は、キセキ的に寒かったんだね)ちょっと間をおいて1947年に開催。
1954年。ピートが初出場したレース。タイムは12時間だった。
1956年。ピート、2度目の出場。猛吹雪だったらしい。ピートは前回のタイムより遅かった。
10歳のピートが、ヨハンナとヨープの姉弟と共にブリュッヘまで、向かったのが1942年だから、ピートはこの年、24歳になっていたはず。
その後の開催は、1963年開催。もう、ピートは出場していない。
それから、ようやく、20年以上経って、偶然にも私が渡蘭した1985年、続けて1986年と開催。
ちょーラッキーな厳寒期だったのかも。
この2年、続けてのレースを、私はライデンでTV観戦。このレースの現オランダ王が皇太子時代に出場。
その後、在欄中には、開催されず。
そして、1997年を最後に、2016年の現在まで開催されていない。
この100年間で、この回数である。
幻のスケートレースと言われる所以である。
2012年も厳寒だったが、200kmの一部運河の氷の状態が良くなくギリギリで開催されなかった。
と、このように、開催された年度をみてみると、いかに、200kmの運河の自然結氷を条件にしたレースの開催が難儀なことか、わかってもらえると思う。
4年毎に行われるオリンピックとはわけがちがう。
いつ開催されるかわからないレースのために、少年たちは練習にあけくれ、スケート製作の職人の人たちもその技術向上に精を出しているんどえある。
オリンピックのほぼ屋内のリンクで行われるスピードスケートで、あのオレンジのウエアを着たオランダ勢が優勢なのは、しかるべき結果だと言える。
因みに、オランダの国際試合で、オリンピックだけではなく、サッカー選手もオレンジ色のウエアを着ているのには、訳がある。
オランダ王室の名字がオラニエと言って、英語読みするとオレンジなのだ。
15世紀、スペインから独立を果たしたとき、そこで大いに功績をあげたのがオラニエ1世。世界史で聞き覚えがあると思います。それにちなんでのオレンジ色。国旗は青、白、赤の三色旗ですが。
『ピートのスケートレース ー第二次世界大戦下のオランダでー』の主人公、ピートは十歳ですが、このレースに出場することを夢みて、日夜練習していた。
そのピートに白羽の矢が立って、くだんの姉弟をベルギーのブリュッヘまで逃してあげる役目を仰せつかる。
ピートの住むスラウスは、ベルギーとの国境の街で、ブリュッヘまでは、16,8キロある。(絵本では16キロと表記)
こどもたち3人で、ベルギーのブリュッヘを目指して出発。

ナチス支配下のオランダで、この道のりを(運河だけど)スケートで滑って隣国ベルギーまで、十歳のピートを頭に子ども3人で、たどり着かなくてはならない。

実際、グーグルマップで、調べてみると、あらためて、その距離とその困難さに、胸が打たれる。
それがこの絵本のストーリーである。
作者はアメリカ人だが、多分、これは事実にあったことを基にして書き起こしている物語に違いないというところが、多くの人の予想でもある。私も、そのように思う。
第二次世界大戦で、オランダは、中立を表明していたがナチスに攻められほぼ2,3日で、降伏し、ナチスの占領下になってしまうが、オランダ人市民によるのレジスタンス活動は、あらゆる手段で行われる。
オランダでは、アンネ・フランクの家族のように、多くのユダヤ人を一市民の人たちが匿った。
戦後も、ずっと、オランダ正規軍は弱かったが、しかし市民レジスタンスは、とても強かったと、言われたのだった。
父親がスパイ容疑で逮捕されたヨハンナとその弟ヨープをブリュッヘまで逃すために10歳のピートがその大役を担う。
それが、この絵本である。

3時半には暗くなるオランダ、ベルギーの冬。ようやくブリュッヘに着いた3人。
戦争は、つくづく厭だと思うが、それでもこのような物語があったことを知ることも大事な気がする。
10歳の、ピートを、読んでもらいたい。