芳珠記念病院の受付窓口
さて、和楽仁塾でのグループワークがはじまって、まず驚いたのがトップバッターの池田さん(総務)の宣言です。 「『和やかに楽しく働きがいをもち・・・』が大きく関わってくる部署として、各部署の架け橋となる総務をめざします!」 そうです。実はこの言葉が「和楽仁(わらに)のこころ」なのです。和楽仁(わらに)という聞き慣れない言葉は、芳珠記念病院のモットーを表した言葉。そしてそのモットーとは、
「私たちは、地域の中核をささえる医療法人として、和やかに(=和)、楽しく働きがいをもち(=楽)、利用される皆様に対しては思いやりと保健・医療・介護を統合した良いサービスを提供(=仁)します。」
その心が職員一人一人に共有されているのですね。さすがは改革人財・池田さん!(でも池田さん、ちょっとカードをカンニングしていたような・・・) ←私のメル友・青島先生
このように、芳珠記念病院では職員の一人一人が「和楽仁のこころ」という共通目的(ありたい姿)をもっています。そして和楽仁塾などの場を通じて、お互いが「コミュニケーション」を図り、その実現をめざして協働しているわけです。
しかし共通目的を持ち、コミュニケーションを図っていても、肝心の職員に貢献意欲(=やる気)がなければ成果は上がりません。立派な「経営理念」や「経営目標」を掲げ、毎日職員に唱和させている企業もありますが、必ずしも成果が上がっていないケースもあるようです。そこには、もう一つの要素である「貢献意欲」(=やる気)が不足しているのです。つまり一人一人が「自分ごと」としてとらえていないわけです。
芳珠記念病院でも、仲井先生が理事長に就任したばかりの頃は、同じような状態だったとのこと。先代理事長がとてもカリスマ性の高い、利強いリーダーシップで病院を運営されてこられたため、「どうすればいいのか指示して欲しい」「何か言うと潰されるのではないか」というように、自分で考えることを拒む風潮が広がっていたそうです。
そんななかで、慣れない病院経営という重荷に苦しんでいた仲井先生が出会ったのが、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の近藤先生。その近藤先生の励ましで、「『四画面思考』で、ありたい姿を全職員で共有化する」という目標をもたれたとのこと。当然、職員の間に抵抗感や戸惑いもあったでしょうし、失敗もあったことでしょう。それでも仲井先生ご自身の「ありたい姿」がはっきりとしていましたから、少しずつ先生をささえる改革人財も育っていき、やがては「全員主役の経営改善」が実現していったのです。そしてその成果は数字にも表れました。赤字が続いていた経営が、2008年度はついに黒字化に成功したのです。本当におめでとうございます。
「全員主役」について、仲井理事長は次のように語っています。
「何か決定するにしても、みんなで話し合って決めるプロセスを必ず作り、方針や成果を年に数回開く研修会などを通じて発表します。こうした動きを通じて、バラバラになっている職員のベクトルをひとつの方向にそろえ、職員の「やらされ感」を「やるぞ感」に換えていくのです。」
私が和楽仁塾で出会った人たちは、みなそれぞれに自分ごととして改革をとらえ、考えていました。それは「和やかに楽しく働きがいをもち」という言葉に表されているように、一人ひとりが主役だからです。そして「利用される皆様に対しては思いやりと保健・医療・介護を統合した良いサービスを提供(=仁)します」という宣言で表されている共通目的、つまり「ありたい姿」をもっているからなのです。ただ単なる経営改善ではなく、その土台として「仁」(思いやり、いつくしみのこころ)がある。それが和楽仁(わらに)の心なのですね。その気持ちを教えてくださった和楽仁塾の皆さん、本当にありがとうございました。
エピローグ
和楽仁塾の皆さんが元気なもうひとつの理由は、情報発信にあります。みんなで進めている改革を、いろんな場を通じて仲井理事長が外部に発信しているのです。その結果として芳珠記念病院の取り組みが世間に注目されることとなり、「期待されている」という緊張感が生まれます。そしてそれがまた改革実践のエネルギーになっていく・・・理想的な循環ができつつあるようです。
その仲井先生は、「全員主役の経営改善」について、次のように語っています。
「私は和楽仁塾が好きで、塾生のことも皆大好きです。」 「実は、塾生の反応を見つつ臨機応変にやるぞ感を醸し出しているのは、阿部(ほうじゅ連携室係長)なんです。」
生まれてまだ4年という、まだまだ若い和楽仁塾。その成長を見守っている仲井先生の笑顔が印象的でした。
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