今回は西武鉄道㈱さん（以下「西武さん」）に対して、なんでこんなに腹が立つのかを考えてみる。
「としまえん」の閉園は経営不振が原因ではないと一昨日のブログに書いた。
ただしかし。
あまりに「としまえん遊園地」から得られる利益が少なすぎた、という事情はあるだろう↓
https://maonline.jp/articles/toshimaen_close_20200207
この記事によれば、「としまえん」は2019年の入場者数は増加に転じたものの、業績は52万7000円の黒字に過ぎなかった。
その前年は22万1000円の赤字。前々年は2万4000円の黒字。
豊島園駅前にあったマクドナルドのバイト高校生だってもっと稼いでたろう。
ギリギリの綱渡り経営。
削れる出費はすべて削って、血の滲むような経営努力をしてなお、黒字は52万7000円。
しかも、たくさんの子どもたちに夢を与え続けなければならない遊園地。
事故だけは絶対に起こせない。
アトラクションの保守点検。
次々に老朽化してくるアトラクションの入れ替え。
削れる部分はほとんどない。
そんな状態で10年20年と「としまえん」を見捨てずに遊園地であり続けさせてくれた西武さんに、僕らはずっと感謝していた。
ちなみに「としまえん」の敷地価格は上の記事によれば828億円。
銀行に預けとけば、年利0.01％でも828万円の利息だ。
それが現実の収益は52万7000円。実に0.00063％。
株式会社の目的は第一に営利追及だ。
収益を上げられない会社は株主に見捨てられ、ライバル会社に淘汰される。
828億円の資産で52万7000円しか生み出さない遊園地。
誰が西武さんの社長でも閉園を決めるだろう。
だから、そこまではいい。
ましてや「としまえん」は東京都によって広域防災拠点として活用することも決まっていた。
万一の時には周辺住民のみならず、東京都民の命を守る最後の砦だ。
閉園は仕方ない。
実際、私に手紙を送って来てくれる方々やTwitter上でのコメントでも、「としまえん」の閉園それ自体を真っ向から否定し、反対している人はおそらく少数派だ。
そこまで理解できるのに何故、僕らは西武さんにこうも腹が立つのか。
それは西武さんが「営利追及」という会社の目的だけを見て、もう一つの会社の存在意義、「社会の公器」としての役割を「としまえん」の最後に放棄したからだ。
「としまえん」の閉園、ワーナーさんへの30年間の土地賃貸、ハリポタ施設の建設。
こうした巨大プロジェクトがまさか今年6月に急転直下で決まったとは言わさない。
事前交渉があり、契約内容の修正があり、プランの変更があり、おそらく2～3年前から「ハリポタ施設建設」の交渉は始まっていたはずだ。
「としまえん閉園」を前提として。
一昨日のブログにも書いたが、こうしたプロジェクトの交渉では秘密厳守は至上命題。
ほんの少しの情報が漏れただけで頓挫した交渉なんて腐るほどある。
だから西武さんが、「ハリポタ施設」とか「ワーナーさんへの土地賃貸」とかを口が裂けても言わなかったのは仕方ない。
でもさ。
「としまえんを閉園すること」だけはもっと早く公表できたでしょ？
そうすることで僕らは「としまえん」に名残を惜しむ時間を手にできた。
「としまえん」をなんとか残せないかと願う人たちも最後の一瞬まで努力する時間を手にできた。
みんなが、ゆっくりゆっくりお別れの準備をすることができた。
たとえば「としまえんをみんなで送る委員会」を立ち上げて。
「としまえん」を愛してきた人たちの中から抽選で委員を募って。
みんなが最後の日に笑顔とくしゃくしゃの涙とありがとうで「としまえん」を見送る企画を考えてもらうことだってできた。
撤去するアトラクションの行く先をみんなで悩んで考えて探すこともできた。
アトラクションの解体に立ち会って、ひとつずつひとつずつお別れをいうこともできた。
別れることが辛いんじゃない。
別れを思い出に変える機会を与えられなかったことが辛いんだ。
西武さんや豊島園さんは、「地域住民と一緒に歩んで」という。
「地域に根付いた、地域に愛される遊園地に」という。
でも、地域住民と一緒に歩いて、地域に愛されていたのは西武さんでも豊島園さんでもなく、「としまえん」が閉園してなお、炎天下、近所のゴミ拾いを続けてくれているスタッフさんたちだ。
今回、西武さんが「としまえん閉園」にあたってしたことは、顕微鏡で見ても「地域住民と一緒に歩んで」なんかいなかったし「地域に根付いて」もいなかった。
地域住民だけじゃなく。
「としまえん」が大好きだった子どもたち。
休日に遠方から家族を車に乗せてやって来ていたお父さんたち。
朝早起きして家族のためにお弁当を作っていたお母さんたち。
進学で、就職で、結婚で、「としまえん」を遠く離れ、それでも故郷の「としまえん」の思い出を大切にして生きている人たち。
西武さんは、そういうすべての人たちの心を顧（かえり）みなかった。
ワーナーさんの名前も、ハリポタ施設の名前も出す必要はなかった。
ただ、
「ごめんね。としまえん、もう続けられない。
でも、最後はみんなで知恵を絞って、94年分の思い出を詰めて、
一生忘れられない最後の1年にしよう。
そして、最後はみんな笑顔で手を振ってお別れしよう。」
ということはできた。
今年の2月。
ハリポタ施設の話が一斉にマスコミで報じられた時、情報源は誰だ？という騒ぎになった。
ハリポタ施設の話をマスコミにリークしたのは、西武さんとワーナーさんの交渉が進まないのに業を煮やした東京都の関係者ではないか、とも言われたけど。
もしかしたら、地域の住民も、これまで「としまえん」を愛し続けてくれた人たちも、すべてを切り捨てて、ワーナーさんとの契約だけを見続けていた上層部を許せなかった、最後の瞬間までお客様に寄り添いたいと願った西武さん内部の人間だったのかもしれない。
ワーナーさんに貸し出す土地の地代がいくらか知らない。そんなことに興味もない。
遊休資産を有効活用した社長や役員は、きっとたくさんの株主や経済評論家から拍手を送られるだろう。
ハリポタ施設誘致を仕掛けた人は、この先マスコミにもてはやされて華やかな舞台に立ち続けるだろう。
けれど僕らは「地域住民と一緒」「地域に根付いた」「地域に愛される」という言葉がいかに空虚だったかを見てしまった。「としまえん」閉園という最悪のタイミングで。
そういう会社から土地を借りてハリポタ施設を作るワーナーさんが、どんなに目映（まばゆ）い青写真を見せてくれても、どれほど「地域の皆様のことを考えます」と繰り返しても、その言葉を信じることはもう、できない。
「としまえん」が大好きだった人たちを切り捨ててお金を取った西武さん。
何度も言うけど、お金に走ったことを否定はしない。会社なら当然の決断だ。
でも。
僕らのとしまえん愛を見くびったこと。
まるで老いた社員をリストラするように僕らを切り捨てたこと。
いつか必ず、後悔するぞ。
会社は公器だから、社会貢献も大事ですが、それは充分果たしたでしょ？
コメントありがとうございます。
ご指摘の通りだと思います。
なので、西武さんの「としまえんを見捨てなかった」姿勢にはブログ中でも述べたように感謝しています。これ、私の本心です。
また、最終的には「広域防災拠点化」という公の観点と、「収益率」という私の観点から、としまえんを手放さざるを得なかったことも理解しています。
問題は最後の幕の引き方。
幕の引き方がよければ、多分、西武さん・としまえんは「遊園地の伝説」として歴史にポジティブな名だけを残せたかもしれません。
私はこのブログでつねづね、「対案も出さずに批判だけするな」と言っているので、ブログ中でも私なりの「幕引き案」を出してみました。
まぁ、それがベターかどうかはもちろん議論があるでしょうが。
あと、本当にとしまえん愛があるなら、「利益が出ないなら潰れるのは仕方ないけど、もっと思い出作らせて欲しかった」じゃなくて、潰れないように実際にもっと行くなり、集客に貢献する行動をするのが真っ当な愛なんじゃないですかね…（実際に行動してたならすみません）。
閉園が決まるまで全然行ってないのに、閉園決まってから潰れて欲しくないだの何だの言う人があまりにも多くて辟易します。慈善事業や公共事業と勘違いしてるんですかね。
西武の体質に問題はあると思いますが、それとは全く別の次元で何だかなぁと思います。「今まで来てない客でない人」の思い出づくりのために、長期間前から公表するなんでことある訳ないのに。
コメントありがとうございます。
もしかしたら一部には「赤字だろうか何だろうかとしまえんを潰すな」的な考えの方もいるかもしれませんが、経営が苦しいのにとしまえんを続けて来てくれた西武には私も含めて皆んな感謝してるんですよ。ほとんどのとしまえんファンは「赤字だろうが何だろうがとしまえん潰すな」なんて思ってなかったと思います。
今、私の所には「としまえん問題」を読んで色んな方からメールやお手紙が届きますし、Twitterでも、リアルでも、今回のとしまえん問題に異を唱えている沢山の方とお話ししますが、少なくとも私がお会いした皆さんは、「経営も苦しかったんだし、としまえんを閉園して都民のための広域防災拠点の公園になるのは仕方ないよね。でも、なんとかアトラクションの一部とかプールだけでも残せないかな」と仰る方ばかりです。
都庁のホームページを見るとたくさん資料が公開されてますが、としまえんの跡地に造られる練馬城址公園に関する説明資料は今でも「緑や水辺が多くて憩いのスペースも沢山ある、ある意味、よくできた公園」です。皆んな、としまえんの跡地にはこういう公園ができて、広域防災拠点になるんだと思ってた。というか東京都からそう説明されてたのです。ずっと。
でも、実はそれ、30年後の予想図に過ぎなくて、それまでは巨大なハリポタ施設が公園予定地の半分を占め続ける。SNS上で何人かの方がCGで完成施設を予想されてますが、東京ドームとかサンリオピューロランド並みの大きさです。としまえんの半分の敷地に。
現実は都が説明していたのと全然、違った。でも、いまだに近隣のお年寄りの中には、緑と水にあふれた素敵な公園ができるとか信じてる人もいます。
そういう「事実」をずっと伏せられて来て、西武さんも今年の春頃まで閉園の予定はない、と言い続けてたわけです。
で、6月12日に蓋を開けたら今までの説明と全く違ってた。みんなびっくりする間も無く2ヶ月半後には閉園。跡地には公園どころか巨大な建物。だから今、みんなが「話が違う！」と怒ってるわけです。
あと、「閉園情報はもっと早く、1年くらい前に」というのは、別に私が考え出したアイデアではなく、実際に閉園の1年前にそのことを発表して、1年後のカウントダウンイベント目指して多くのファンと盛り上がったスペースワールドの例があります。「ワーナー」の名前を出すことなく、そういう対応は取れたはずだと思います。ギリギリまでファンに事実と異なる説明をするんじゃなくて。
結局、としまえん問題は西武さんの企業体質、東京都の情報操作や防災軽視、跡地にできる想像を絶する巨大な建物、そのために破壊される自然‥と、色んな問題が絡み合っていて、色んな方が色んな側面から問題点を追及している、というのが現状かと思います。
興味を持たれたら、しばらく、お手隙の時に「としまえん問題」を追いかけて頂けると嬉しいです。
どういった収益形態になっていたかもわかりませんし、こういった運営会社には運営委託料のみを支払い、利用料金や園内施設での料金は親会社収益とするモデルもあるかと
多くの方が純利益(税後利益)を気にされますが、今回のような子会社の場合、資金調達もおそらくグループ金融なので純利益を多く出しても税負担が大きくなるだけ。普通なら利益が大きく出ないよう特損などでなるべく調整した方が得と思います。園内の遊具の投資なども行っているでしょうし。
読み取れるとしたら利益剰余金が27百万円、これも配当後なのかわかりませんが利益の積み増しは一応毎年できてるねってぐらい。流動比率なども子会社であれば余剰資金は持たずに必要時にグループから調達するでしょうからあてになりません。
結論としては注記有りの決算書でもない限り経営が厳しかったかどうかなど誰にもわかりません。もっと言えばこの会社だけを見るのではなく親会社の決算書も見なくてはわかりません。
横からのコメント失礼します。
としまえんが閉園することはみなさん受け止めてましたよ。
ただ、皆さんは幕の引き方、その後のことを知ったうえで
こんなことになるなら閉園させたくなかったと言っているんです。
・自然豊かな防災公園になるはずがとしまえんの半分を占める大きな建物がたつ。
・としまえんの豊かな自然を活かすはずが逆に破壊される。
・コロナで入園者が限られている中、2ヶ月前に閉園告知。
・防災公園になるのは30年後。
・ハリポタありきの計画。公園の内容は決まっていない。
・近隣住民との話し合いが全くされていない。
・災害時における避難場所がなくなる。
・代替の避難場所も確保されていない。
・工程と異なる閉園翌日からの重機による解体。
etc
この内容が閉園後にどんどんあきらかになっていったんですよ。
豊かな公園になり、その一画にハリポタの施設がある。そういう計画だと思っていたんです。
それがこれです。
おっしゃっている閉園決まってから潰れてほしくないと言っている訳ではないんですよ。
父親を亡くしたときも同じようなことを思いました。
コメントありがとうございました。
このブログでも詳しく経緯を書いていますが私も父を亡くしました。ただ、私の父は癌の告知を受けてから亡くなるまで3年近くありました。その間、父と交流し、語り合い、少しずつ少しずつ父と別れる心の準備ができました。
あの3年があったからこそ、私は父との別れを乗り越えられました。
別れは避けられませんが、別れの悲しみを希釈化する方法を考えることはできます。そしてそれは多分、われわれ人間だけに許された特権です。
今回のとしまえん問題は、その特権を行使する機会を奪われた故の怒りのような気もしています。
利益が少なかったからメンテなど不能で閉園かな…と納得しようと努力しましたが、一月に発表されてる西武園のリニューアル計画をよくよく見直してみました。組んでる戦略家さん、USJハリーポッターの仕掛け人なんですね。関西のお方とおみうけします。としまえんと練馬区民の長い関係性なぞそりゃ気にしないのだろうと思いました。
ネットでとしまえんの遊具を西武園にって署名あつめてる方いますが、多分それはそもそも西武園のリニューアル計画に入ってる気がしますよ。
エルドラドの新しいグッズまで急にでてきましたがとしまえんの文字は消したようですね。
>>としまえんの名残りを惜しむ時間
思えば、スペースワールドは1年間じっくりかけて
「名残りを惜しむ時間」を使って来た訳ですよね。
（朝方Youtubeで拝聴した、各種さよならCMなんか
まさにそれですよね）
しかしとしまえんは・・・・2月に閉園を発表し
8月に閉園・・・しかもコロナの大流行りだった頃・・・
これでは名残りを作る時間どころか、8月の閉園日に
さよならを言いに行きたくても、行けなかった
人達も大勢いた事でしょう（自分もその1人です泣）