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茶色い目、青い目

2017-09-21 12:45:48 | お話
👀茶色い目、青い目👀


1968年4月4日、黒人運動家の牧師であるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺された。

翌年、アイオワ州の小学校教師ジェーン・エリオットは、担任する3年生のクラスに彼の死を説明したいと考えた。

ここアイオワ州ライスビルは白人ばかりの町で、児童はキング牧師を知ってはいても、

誰がどんな理由で彼の死を望むのかは理解できるはずもなかった。

エリオット先生は言う。

「差別については、新学期の初日からクラスで話し合っていたので、

そろそろ具体的に取り組むべきだと思いました。

とはいえ、わずか2ヶ月前に『今月の英雄』として紹介したキング牧師が暗殺されたことを、

アイオワ州ライスビルの3年生に説明するのは不可能でした」

エリオット先生はある計画を立て、翌日、教室でそれを実行した。

その目的は、差別を児童に具体的に実感させることだった。

彼女は授業の冒頭、茶色い瞳の子と青い瞳の子に児童を分けた。

そして、

「茶色い目の子は、青い目の子より優れている」

と衝撃的な宣言をした。

「この教室では、目が茶色い方が偉いのです」

2つのグループは隔離され、青い目の児童は教室の後ろに座らされた。

茶色い目の児童は

「あなた達の方が賢い」

と言われ、休み時間も長くもらえた。

遠くからでも瞳の色がわかるよ、青い瞳の子は特別な首輪をつけさせられた。

2つのグループは休み時間に一緒に遊ぶことも許されなかった。

エリオット先生は、クラスの急速な変貌ぶりに衝撃を受けた。

「3年生の子が悪意に満ちた差別的な人間に変わるのを見て、ぞっとしました。

友情はたちまち崩れ、茶色い目の子は、昨日まで友達だった青い目の子を嘲(あざけ)るようになりました」

茶色い目をしたある児童は、エリオット先生にこう言った。

「先生は青い目なのに、よく先生になれたね」

翌日、エリオット先生は授業の冒頭こう言った。

「自分が間違っていた、実は茶色い目の子の方が劣っていた」と。

子供たちはこの運命の逆転を、たちまち受け入れた。

青い目の子は歓喜の叫び声をあげ、自分たちより劣る茶色い目の子に首輪をつけようと駆け出した。

子供たちは、自分たちの方が劣っている時は悲しい気分になり、

自分のことを愚かで意地悪な悪い人間だと思った。

ある少年は上ずった声でこう言った。

「自分が下のときは、嫌なことは全部、自分たちの身に起きるような気がした」

一方、自分たちが上のときは、児童は幸せな気分になり、自分は賢いよい子だと感じた。


変化は学業の成績にまで現れた。

国語の時間に単語のカードをできるだけ早く読むことになった。

青い目の子が下だった初日、カードを全部読むのに5.5秒かかった。

ところが、彼らの方が上だった2日目には2.5秒で読めた。

「なぜ昨日は早く読めなかったの?」

エリオット先生が尋ねると、青い目の少女が答えた。

「あの首輪をつけていたから…」

そこへ、別の児童が口を挟んだ。

「あの首輪のことが頭から離れなかったんだ」

エリオット先生のシミュレーションは、偏見を残酷なまでに具体化した。

この経験は、児童の人生に後々まで影響を及ぼした。

10年後と20年後に行った調査によると、

このクラスの児童は同年代の人々と比べて、はるかに差別意識が低かったという。

子供たちがこのシミュレーションをいまだに鮮明に覚えている。

公共テレビPBSの番組『フロントライン』で放映された、このクラスの15年目の同窓会見ると、

彼らが深い感銘を受けていたことがわかる。

レイ・ハンセンは、自分の意識が1日で一変したのを覚えていた。

「それまでの人生で最も深い学習体験のひとつでした」

スー・ギンダー・ローランドはこう語る。

「偏見は幼いうちに対処しないと、一生その人につきまといます。

私も時々、自分が差別をしているのに気づきますが、

そんなときは、3年生当時のことを思い出し、

差別される側の気持ちを思い出して自分を制します」


シェーン・エリオットは、偏見というアイディアにフックを与えた。

授業で教える他のアイディア、

例えばカンザス州の州都や「真実」の定義といった重要だが抽象的な知識と同じように、偏見のアイデアを教えるのは簡単だっただろう。

また、第二次世界大戦中の戦闘の逸話と同じように学ばせることもできたはずだ。

だが、そうする代わりに、エリオット先生は、偏見を体験に変えた。

友人が突然、自分をあざ笑う光景、首輪の感触、

絶望的な劣等感、鏡で自分の瞳を見たときの衝撃。

それらは全て偏見というアイディアに与えられた「フック」だ。

この体験は子供たちの思い出に、何十年たっても忘れられないほど多くのフックを植えつけたのだ。


(📖「アイデアのちから」チップ・ハース+ダン・ハース著、飯岡美紀訳📖より)