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【イベント】まだ落ちていないほうの吊り下げ照明とApple・まだ溶けていないほうの山梨県美 / 雨宮庸介・ヤマナシ × ネオ・トウキョウ・パンクス メタバースミュージアム@山梨県立美術館

2024-04-01 16:31:33 | 博物館・美術館・イベント

ミレーで有名な山梨県立美術館で開催される企画展示は、いつも自分の琴線を刺激してくれるものが多く今回の展示もそんなひとつ
ずっと行く機会を伺っていたのだが、ようやく最終日に鑑賞する機会に恵まれた。
まずは、エントランスの2Fへの階段脇の吹き抜けに展示されていた作品
パッと見た時…。天井から吊り下げられていた照明の一部がフロアに落下し「えっ!これって?事故!?」と、一瞬思った。
それにしては、誰も騒いでないしフロアは整然と静かだったので、すぐにこれは作品である事が分かった。
ご丁寧にも破損したガラスがフロアに散乱し照明もチカチカしている。
この作品名『まだ落ちていないほうの吊り下げ照明』というテーマ作品
落下した状態と落下する以前の状態とを同じ時間軸で展示する事で、今目の前で観ている状況を通してより深いリアルティ感を鑑賞者に抱かせる事を狙った作品
作品名『Apple』この作品 なんと木製で、油彩で色づけてあるのだそう。
この「溶けるリンゴ」シリーズは、製作者 地元山梨にアトリエを構えていらっしゃる『雨宮庸介』氏の代表作品だそうでリアルなリンゴの形から溶けていく「ありえない」リンゴの時間軸を表現している。
この作品もありえない溶けている「リンゴ」の形から「溶けていなかった」リンゴの姿とを対比させることによってより実物のリンゴのリアリティさ「リンゴってこんな色かたち大きさだったけな?」と言ったリンゴの概念を鑑賞者に再認識させることを狙った作品
凡人の自分にはちょっとわかりにくい作品ではあるが、表現しようとしている意図は理解出来たつもりだ。

 つづいて、今回訪れて見たかった理由の作品『まだ溶けていないほうの山梨県美』 いわゆるVR(仮想空間)を使った作品
今回のアート展で紹介されているコンセプトから引用させていただくと
 2028年度に開館50周年を迎える山梨県立美術館は、2022年9月に「新たな価値を生み出す美術館」ビジョン骨子(案)を発表。
その中で「メタバースという新技術で美術館の新しい役割を果たす」と謳ったが、その成果が新たな企画シリーズ「LABONCH」として開催
 今回の『まだ溶けていないほうの山梨県美』 は、いままでにないアートの可能性を模索するシリーズの第2弾だそうで、アーティストやクリエイターの経験や直感によって仮説を立て、美術館を実験室として実践し生まれる視点や驚きを広く共有することをミッションとしているのだそう。

VRゴーグルを装着し、過去の『ここ』で起こった出来事を今の時間で共有する試み
以下は、雨宮氏ご本人のインタービュー記事から
「メタバースについて広い知見を持っているわけではないが、これまで『ここ』という場所について問い続けてきたと自負しているので、場所性を軸に自分なりのアプローチでメタバースを語る、という姿勢で取り組んだ。『ここではないどこか』のために使われることが多いメタバースだが、自分は『どこかではないここ』を表現する装置としてメタバースをとらえた。どこかに逃避するのではなく、いまこの場所を肯定するための装置としてメタバースを位置づけたのが本展だ」。(こちらより引用)

VR初体験のサクラさん 

 学芸員の方に案内されるがまま指定された席に座りVRゴーグルを装着される。
装着したすぐは「何が違うのか?」と、思った。整然と並べられた椅子とガラス越しの風景。そう今、席に着くすぐ前で見ていた記憶に残っていたフロアの風景そのままだった。
だが、すぐにこれは同じ場所で違う時間を撮影した映像であることを理解した。隣に座っていたサクラさんがいない。
彼女のいた席にはゴーグルセットが置かれているだけ。
フロアにたくさんいた人影が周囲を見渡しても誰もいないのだ。
すぐに妙な違和感を感じはじめた。
眼の前には木彫りの熊が置かれている。ガラス越しに子供がこちらを覗いたり、遊んだり。何かを複数人で運んでいる人影。
そのうち作者ご本人が登場し、木彫りの熊を持ち上げ何かを語りかける様に目線を自分に向けてくる。
おもむろにロビーの椅子を横倒しにして積み上げ映像スクリーンにする。
コントラバスの独奏BGMと、やがて男女のダンサーによるパフォーマンスが椅子を用いて繰り広げられる。
さらに作者は風船を膨らませ紙をちぎって輪をつくり、それを風船に吊るして浮かべる。次第に演者がひとり、またひとりと去っていたのち、風船と紙だけが誰もいないロビーに漂う。
※ 実際観た本編は以下YOUTUBEで紹介されている。
VRまだ溶けていないほうの山梨県美(WEBプレビュー版)
作者との対面、目の前で演じられるパフォーマーとの距離感が、バーチャルな過去の時間とメタバースな空間であると分かっていながらも自分には、現在の時間で起こっている事象と勘違いしている感覚が妙に生々しかった。
まさに作者の言われる「いまこの場所を肯定するための装置」として、狙い通りの結果を実際に体験出来たとても興味深く面白い企画展だった。

フロアにたまたまいらした作者と短い時間であったがお話出来た。
どのようにして撮影されたのとか、仕事柄どうでもいいような技術的な質問が優先してしまった。

続いて同館の図書室で開催されていた「ヤマナシ × ネオ・トウキョウ・パンクス メタバースミュージアム」を鑑賞
鑑賞と言ってもこちらもやはりMHDゴーグルを装着しいわゆる仮想現実をインタラクティブに楽しむというもの。
今回の展示は、2050年を舞台としたNEO TOKYO PUNKSの世界観を仮想空間(メタバース)で体感しながら、NFTや山梨県が世界に誇る水素エネルギーについて紹介する内容となっている。
 
MHDを装着し手元のコントローラーで仮想空間を移動する。
※ 以下のサイトから疑似体験できる。
WHAT'S NTP /  NEO TOKYO PUNKSとは
VRの技術進化で、手頃な価格で入手でき身近になりつつあるHMD
VR技術を用いればわざわざ美術館に足を運ばなくても絵画を鑑賞したり、本を読んだり、映画を鑑賞しコンサートを聴いたり…。自宅に居ながらにして無限の可能性を秘めてはいるが現在のコンテンツは、ゲームや映像関連など限られた一部だけでまだまだこれからという部分も多い。
日々の生活の身近なところに、コンテンツが充実してくれれば面白くなってくるのかも知れない。


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