団長の雑技的時折BLOG

「山と渓谷のへっぽこ雑技団」のサイドレポートです。登山関連インフォメーション、山の本・映画・・etc.

再び『ホワイトアウト』

2005年06月16日 | 山の本
先日、「BOOK・OFF」で偶然にみつけて買ってきたコミック版の『ホワイトアウト』を読みました。

コミックとはいうものの原作がほぼ忠実の再現されて、読み応えがあり、上・中・下3巻ですが一気に読み終えました。

あらためて思いましたが、『ホワイトアウト』はれっきとした山岳小説です。漫画を読んで原作を再評価するということもあるのですね。

山岳救助に赴いた発電所員の富樫は先輩の吉岡を自分の失敗がもとで失ってしまう。この重荷を背負った吉岡が奧遠和ダムを占拠した武装集団に立ち向かうサスペンスに仕立て上げられてます。
映画は基本的にこの部分だけをとりだしてアクション映画に仕立てているのですが、こんど、このコミックで読み直してみて、吉岡を失った富樫の登山家としての苦悩が全編を通して主要なテーマになっていることに気がつきました。

映画を見たときに残った違和感はこれだったのではないでしょうか。製作側の商業的な意図が作品の面白さを半減させてしまったようです。

もうひとつ、これは私の推測にすぎないのですが、舞台になっている「奧遠和」は奧利根がモデルになっているような気がしてなりません。奧遠和ダムは矢木沢ダムがモデルということなります。作品中に出てくる「片貝ダム」は須田貝ダムを連想させます。
コミック中にでてくる地図も奧利根の雰囲気そのものです。奧利根好きの思い込みでしょうか。



コミック版『ホワイトアウト』

2005年06月16日 | 山の本
【2005.5.23】

ホワイトアウト (下)

講談社

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ぶらりと"BookOff"に寄ってみました。
真保裕一の「ホワイトアウト」がコミック化されていたのですね。
105円コーナーにあったので、上・中・下3巻で315円。この値段なら買っておいてもいいかとショッピングカゴに。

ぐるぐる売り場をまわってカゴの中に入ったのは


著者: 行方 均
タイトル: ブルーノート再入門
著者: 文芸春秋
タイトル: 大アンケートによる日本映画ベスト150
著者: 文芸春秋
タイトル: 大アンケートによる洋画ベスト150
著者: 梓 林太郎
タイトル: 槍ヶ岳 白い凶器
著者: 井上 ひさし
タイトル: 吉里吉里人 (上巻)
これは文庫ではなくハードカバーで一冊になっていました。やはり105円。  


自分でもよくもこう一貫性に欠ける買い方ができるものだと感心します。雑食性が強いのですよ、アタシャ。

『桜の森の満開の下』

2005年06月12日 | 山の本
【2005.4.10】
 


近所の土手の桜2題



この時期、いつも思い浮かぶのが坂口安吾の『桜の森の満開の下』です。原作は読んでませんが、いつだったか映画をみて強い印象が残りました。ストリー展開のようなものはすっかり忘れて覚えていませんが、無頼派坂口安吾の原作ですからそれでいいのでは・・・と勝手に納得しています。


もうひとつ野の花の作品。金子みすゞの童謡集から




みそはぎ

ながれの岸のみそはぎは、
誰も知らない花でした。

ながれの水ははるばると、
とおくの海へゆきました。

大きな、大きな、大海で、
小さな、小さな、一しずく、
誰も、知らないみそはぎを、
いつもおもって居りました。

それは、さみしいみそはぎの、
花からこぼれた露でした。

ここまで、【あはは堂本舗さん】へのTBでした。




山のブログのこだわりでもうひとつです。これも金子みすゞ。

キリギリスの山登り

きりぎっちょん、山のぼり、
朝からとうから、山のぼり。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。

あの山、てっぺん、秋の空、
つめたく触るぞ、この髭に
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。

一跳ね、跳ねれば、昨夜(ゆうべ)見た、
お星のとこも、行かれるぞ。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。

お日さま、遠いぞ、さァむいぞ、
あの山、あの山、まだとおい。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。

見たよなこの花、白桔梗、
昨夜のお宿だ、おうや、おや。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。

山は月夜だ、野は夜露、
露でものんで、寝ようかな。
アーア、アーア、あくびだ、ねむたい、ナ。



『空と山のあいだ』

2005年06月12日 | 山の本
【2005.3.14】
空と山のあいだ―岩木山遭難・大館鳳鳴高生の五日間

角川書店

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日本隊マナスル初登頂で登山ブームにわいた昭和30年代終わりに起きた秋田県の高校生の遭難事故のドキュメント・ノンフィクション作品です。
作品名は『空と山のあいだに/岩木山遭難・大館鳳鳴高校生の五日間』(TBSブリタニカ刊)。著者は田沢拓也、第八回開高健賞受賞作品です。

私の1、2歳年長の高校生の事故のリアルな記憶もあって、印象的な作品です。ただひとり、生き残った少年の証言から、事故と捜索の様子を忠実にかつ淡々と伝えているある意味できわめて地味な作品です。

これを読んだときの記憶ですが、最後の遺体発見を読んだのが電車の中でした。不覚にも涙がこぼれ落ちたことを覚えています。

事故当時、私は中学生で登山には何の興味も持たなかったのですが、なぜか父が仕事から帰ってくるなり母に「鳳鳴高校はどうなった?」と聞いていたのを鮮明に覚えています。勿論と言っては語弊もありますが、父も登山とは何のかかわりもない人間でした。

やはり、登山ブームの中で起きた事故は地元では衝撃的なできごとだったのにちがいありません。

【1999年4月30日 初版発行】

『古道巡礼』が届いた・・・

2005年06月12日 | 山の本
【2005.2.5】

古道巡礼

東京新聞出版局

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お願いしてあった『古道巡礼』が届きました。山岳雑誌『岳人』2001年2月号から2004年11月号まで連載された<道・その光芒>をまとめた高桑信一氏の新刊です。

うれしいことにサイン入りです。以前にもサインしてもらえるチャンスがあったのですが、自意識過剰な私は照れくささに負けて持って行った本を出しそびれたまま持ち帰ってしまいました。ようやくGETです。

まだ、手にしたばかりで読み始めていないのですが氏の磨かれた精緻な文体がはやくも心をくすぐります。

各章につけられた絵地図が素敵です。
『岳人』編集部の"のんちゃん"こと岩城史枝さんの労作です。11月の「山房祭」の時に車の中で描いていた地図というのはきっとこれだったのですね。

帯書きです。

   深い森のなかを、
   かすかな踏み跡が横切っていた。
   それはかつてゼンマイや、
   塩、砥石、鱒を背負った人々が、
   にぎやかに往来した
   街道の痕跡にちがいなかった。
   今は人影も絶えて、
   静かに森のなかへ、
   埋もれていくしかない道。
   その懐かしい記憶をたどる旅に、
   出てみたくなったのだ。

   

『峠』司馬遼太郎

2005年06月09日 | 山の本
峠 (上巻)

新潮社

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【2004.10.21】
『新ハイキング』04年7月号の記事に惹かれて読んでみました。文庫本、上・中・下3巻を仕事場への往復の時間をつかって、ひと月はかかったでしょうか、ようやく読み終えました。

・・・八十里越は、司馬遼太郎の小説『峠』の重要な舞台としても知られている。長岡藩家老の河井継之介が長岡戦争で敗れて会津藩へ落ち延びる途中、負傷し、といたに乗せられて運ばれ、、「八十里こしぬけ武士の越す峠」と自嘲して詠んだ句は有名である。(原文のまま)

八十里越は、今は只見線にとってかわられ、全くといっていいほど使われていないのですが、その昔は新潟県下田村と福島県只見村をつなぐ大事な峠道でした。

最近では『岳人』誌上で高桑信一氏によって『道ーその光芒ー八十里越の裏街道』と紹介されています。

『峠』のなかでの<八十里越>は下巻の最終章にわずかに登場するだけで、特に重要な舞台というほどではありませんでしたが、幕末の戊辰戦争の激戦、北越戦争の帰結の象徴ではあるようです。

幕末の評価は分かれるところでしょうが、司馬遼太郎による「あとがき」によればこうなります。

・・・「いかに美しく生きるか」という武士道倫理的なものに転換し、それによって死んだ。挫折ではなく、彼にあっても江戸期のサムライにあっても、これはうたがうべからざる完成である。

この長編を読み終わろうとする頃、この小説の舞台となった長岡、小千谷で地震の災害が起きました。なにか因縁めいたものさえ感じてしまうのですが、「八十里越」は今どうなっているのでしょうか。