The Society of Helical Carbon ヘリカル炭素学会

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TPPアメリカ陰謀説は誤り  混合診療 全面解禁には反対だ

2013-06-12 09:18:22 | 経済


毎日新聞 2011年10月31日 02時31分

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に対する議論が熱をおびてきた。このなかで、根拠に乏しく必要以上に不安をかきたてる反対論を少なからず見聞する。それには懸念を表明せざるをえない。

 「TPPによって日本は一方的な被害国になる」「米国の陰謀だ」と主張する人が多い。しかし、主権国家が日本を含めれば10カ国集まり、相互の複雑な利害を調整する場である。日本だけが一方的に不利益をこうむるはずがない。

 そもそも米国はTPPに日本が参加することを想定していなかった。菅直人首相(当時)が成長戦略の一環として、自らの発案で参加したいと言ったのだ。米国は日本に参加要請していない。

 米国はアジア市場で米国抜きの自由貿易圏が形成されるのをおそれ、TPPによってアジア関与を強めようとしている。数カ国で開放度の非常に高い自由貿易圏を作り、それを広げ、最終的には中国も含めたアジア太平洋経済協力会議(APEC)諸国全体を包み込む狙いだ。

 その過程で、日本の参加は歓迎に違いない。しかし、包括経済協議で数値目標を迫った頃とは違い「日本たたき」する経済的、政治的メリットはもうない。米国のビジネス界、政界は停滞する日本への関心を失っているのが実情だ。

 交渉分野は24もあり、最近の反対論は農業以外に懸念を広げている。

 混合診療解禁、株式会社の病院経営などを要求され、日本の医療制度が崩壊するという論もある。だが、公的医療制度が通商交渉のテーマになった例はなくTPPだけ違う交渉になることは考えられない。

 TPPでは投資家が投資先の政策で被害を受けた場合、その国を訴えることができるという制度(ISDS)が議論される。それを「治外法権」などと攻撃する声がある。

 だが、今後、日本企業はどんどん途上国への展開を加速する。してみれば、外資系企業に対し差別的扱いがあった場合、企業側に対抗手段があることは、全体として日本にメリットが多いと考えるべきだろう。

 また、遺伝子組み換え食品について米国で安全と認定された食品は、食品表示に遺伝子組み換え食品であることを表示する必要はない、というのが米国の態度だ。これを押しつけられるのではないかという懸念があるが、豪州もニュージーランドも米国に反対であり、米国の主張が通ることは考えられない。

 政府の態度表明までに残された時間は少ないが、国民にはまだあまたの懸念がある。不利な情報が仮にあったとしても、隠さず丁寧に説明していくことが理解を得る早道だ。

混合診療 全面解禁には反対だ

毎日新聞 2013年03月04日 02時32分

 政府の規制改革会議や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関する議論で混合診療が注目されている。混合診療の一部は現在も認められており、必要性に応じて慎重に広げるべきだが、患者の安全や負担の面から全面解禁には反対だ。

 病気で治療を受けると公的医療保険から治療代や薬代が支払われる。どの治療や薬を保険適用とするかは値段も含めて国が決めており、それ以外の自由診療は患者の自己負担となる。混合診療とは保険適用の治療と自由診療を併用することで、この場合は保険適用分も含めてすべて患者が負担しなければならない。重い自己負担を課すことで、実質的に自由診療を制限しているのだ。

 海外で使われているのに国内では未承認の医薬品、先進的な医療技術を用いることに意欲のある医師は少なくない。希望する患者も多いはずだ。自由診療の拡大は製薬企業や医療機器メーカーだけでなく民間保険会社も歓迎するだろう。

 しかし、一般の商品やサービスと医療は違う。消費者の立場である患者より医師の方が圧倒的に専門知識がある「情報の非対称性」、医療が本質的に持つ不確実性を考えねばならない。もしも大事な家族が病気となり、未承認で費用もかかるが効くかもしれない治療法があると医師に言われたら、借金をしても頼みたくなるのが人情ではないか。有効性や安全性の判断は最終的に医師に委ねるしかなく、効果や副作用を後で患者が検証することも容易ではない。

 国内外で承認された薬でさえ不適切な使用で多くの副作用被害を出した例はいくらでもある。市販後に新たな副作用や不具合が確認された薬や医療機器も珍しくない。そのために公的な審査機関で何重ものチェックをしているのだ。

 現在、100種類以上の高度先進医療が混合診療を認められているが、国が指定する医療機関で行われ、有効性や安全性が確認されれば保険適用となり、そうでなければ混合診療から外される。その枠を広げることは検討すべきだが、個々の医師の判断にすべてを任せるのは無謀だ。最高裁も安全面などを考慮し現行制度を認める判決を出している。

 高齢化や医療技術の革新に伴って公的医療費は年々増えている。医療費抑制への圧力が強まる中で混合診療を解禁したら、患者負担の自由診療が広がるのは目に見えている。毎日多数の患者を診察して疲弊している現場の医師にとっても高収益の自由診療は魅力的なはずだ。今でさえ医師不足や医療崩壊が叫ばれているのだ。保険診療しか受けられない患者は医師探しに苦労することになりはしないだろうか。

「混合診療」解禁問題 抗がん剤から事実上の適用範囲拡大へ
フジテレビ系(FNN) 6月11日(火)19時39分配信
政府が、14日に閣議決定する規制改革の実施計画で、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の解禁問題について、2013年秋をめどに、まず抗がん剤から、事実上の適用範囲を拡大していくことがわかった。
混合診療は現在、一部の先進医療などに例外的に認められているだけだが、FNNが入手した実施計画案によると、「最先端医療迅速評価制度」を推進することにより、先進医療の対象範囲を大幅に拡大するとしている。
そのうえで、2013年秋をめどに、まず、抗がん剤から開始するとして、抗がん剤から混合診療の事実上の適用範囲を拡大していく方向性を打ち出している。

 ◇自由診療拡大の可能性 平等な受診機会、損なう恐れ

 なるほドリ 環太平洋(かんたいへいよう)パートナーシップ協定(TPP)と言えば「農産物輸入自由化」という印象だけど、公的医療保険制度にも影響すると聞いたよ。

 記者 日本医師会など多くの医療関係者は、国民皆保険(こくみんかいほけん)が揺らぎかねないとして日本のTPP交渉参加に反対しています。

 Q どういうこと?

 A 民主党政権は医療保険制度について「TPPの議論の対象外」と説明してきました。しかし、途中で「交渉参加国から個別の2国間懸案(けんあん)事項への対応を求められる可能性は否定できない」と言い始め、医薬品に関しては「規定が置かれる可能性はある」と認めました。

 Q 「可能性」なんだ。

 A 医療保険制度は直接の議題ではないためです。ただ、米通商代表部(USTR)は日本に対し、ほぼ毎年「外国貿易障壁(しょうへき)報告書」で外国営利法人への医療市場開放や医薬品関係の規制撤廃、利益の出る新薬の価格引き上げを迫ってきていて、TPPでも必ず求めてくる、というのが反対派の見立てです。

 Q どうして反対なの?

 A 米国では3000万人の無保険者をなくす医療保険制度改革法が成立しましたが、日本のように国民が等しく受診できる公的医療保険はありません。自在に価格を設定できる自由診療が基本で、民間保険に入って備えます。このため高い掛け金を払える高所得層は最高水準の医療を受けられる半面、民間保険に入れず、病院にさえかかれない人もいます。反対派はTPPで外国の保険会社が参入し、日本の医療が米国のようになるのを警戒しています。

 Q 既に参入していない?

 A がん保険の入院給付金や保険適用外の自由診療部分をカバーする商品は一部認められていても、国が決めた価格に基づき公的保険で支払われる保険診療部分には参入できません。日本は保険診療と自由診療をセットでする「混合診療」を禁じていますが、米側は利益を上げられる自由診療部分を日本で広げることを狙い、混合診療の解禁を求めています。

 Q で、どうなりそう?
 A TPPには規制に損害賠償請求をできる規定が設けられそうで、一部を緩和(かんわ)すれば残った規制が次々訴訟対象となるのではと懸念されています。ただ、高額な料金の自由診療が普及すれば、同時に行われる保険診療も増えて、保険料と税で賄う公的医療費も跳ね上がるとみられています。公的医療費の抑制(よくせい)を課題とする日本政府にとっては簡単に譲れず、経済特区での部分開放が落としどころとなる可能性もあります。もっとも、自民党政権はTPPにどう対処するのか明確にしておらず、TPPに参加しないこともあり得ます。



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