こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ツボミ松茸

2015年08月06日 20時32分07秒 | 文芸
子どもの頃の秋。
 田舎の山は知る人ぞ知るマツタケの産地だった。マツタケが生える時期は、一家総出で山に入った。どこの家も似たようなものだった。
 当時の農家は貧しかった。山の幸は、いい臨時収入になったのだ。特にマツタケは別格。わざわざ買い付けの業者が足を運ぶほどだった。
 1回山に入ると、籠に入りきれないぐらい採れた。業者は選別して値段をつけて買い取った。
「こりゃカサが開いてしもうとるわ。惜しいのう。値打ちは半分になるぞ」
 同じマツタケでも開きとツボミに分類された。花のツボミと違って、ツボミのマツタケはかなり高い値段で買ってくれた。
 子どもごころには不思議だった。開いたカサのマツタケの方が立派に見えた。つぼみのマツタケは、まるでコケシに似た形で、とても好きにはなれなかった。
 ただマツタケ狩りに掛かると、大人顔負けに欲張りになった。眼の色を変えて、ツボミマツタケを求めて山を駆け巡った。お小遣いが増えるのだ。つぼみマツタケは子どもの味方だった。
(2014・2・1原稿)


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