男の手料理愛をひとつまみ
昨春、退職を機にわが家の食事づくりを担当するはめになった。
さっそくレシピ本や料理サイトを見て和洋中に挑戦だ。意気込みは充分だが、いざ調理となると、思惑違いの連続。
「ボク、食べる人」のときは考えもしなかった食費の限界。現実は厳しかった。予想外の体験で、妻がいかに苦労していたか、やっと分かった。
レシピ通りの食材調達など無理。自家栽培の野菜中心にならざるを得ない。試行錯誤を重ねて、ようやくわが家なりの調理法がつかめたのは半年後だった。
食材や調味料の買い出しはチラシとの睨めっこ。スーパーや安売りの目玉商品を求めて走る。
おかげでモノの値段を覚えた。安い食材で、うまい料理。言うは易く行うは難し。しかし、家族への思いやりを忘れなければ、美味いものが出来上がる。そして。それは家族の笑顔を生み出す。
女性に委ねがちだった家事・料理が、男の手に移ってもおかしくない時代だ。
誰が担うにせよ、根底に家族への愛があればいい。
さあ、今年こそ、隠し味に愛をひとつまみだ。
(朝日・2013・1・1掲載)
昨春、退職を機にわが家の食事づくりを担当するはめになった。
さっそくレシピ本や料理サイトを見て和洋中に挑戦だ。意気込みは充分だが、いざ調理となると、思惑違いの連続。
「ボク、食べる人」のときは考えもしなかった食費の限界。現実は厳しかった。予想外の体験で、妻がいかに苦労していたか、やっと分かった。
レシピ通りの食材調達など無理。自家栽培の野菜中心にならざるを得ない。試行錯誤を重ねて、ようやくわが家なりの調理法がつかめたのは半年後だった。
食材や調味料の買い出しはチラシとの睨めっこ。スーパーや安売りの目玉商品を求めて走る。
おかげでモノの値段を覚えた。安い食材で、うまい料理。言うは易く行うは難し。しかし、家族への思いやりを忘れなければ、美味いものが出来上がる。そして。それは家族の笑顔を生み出す。
女性に委ねがちだった家事・料理が、男の手に移ってもおかしくない時代だ。
誰が担うにせよ、根底に家族への愛があればいい。
さあ、今年こそ、隠し味に愛をひとつまみだ。
(朝日・2013・1・1掲載)
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