こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

2020年07月30日 07時29分16秒 | つぶやき
父の納棺日。
清拭と末期の水の儀式に参加した。
そして死に装束を整えて納棺へ。
棺に落ち着いた父の顔を見つめていると、
不意に涙が……。
寡黙で生真面目過ぎた父。
人見知りの激しい私と滅多に話したことはない。
言葉で話さなくてもわかり合えたと思う。
無口の分、父の思いやりがモノを言った。

二十代の私が失恋と失職が重なり打ちのめされた時だった。
長い時間近辺を彷徨した末に、
どこも頼るところもなく、
足はやはり実家に向いた。
真夜中近くに実家の前に辿り着いた。
玄関には明かりがついたまま。
吸い込まれるように明かりへ急いだ。
「ガラリ」と玄関が。
そこには父が立っていた。
日頃から近づきがたい存在の父の登場に立ち尽くした。
「風呂湧いとる」
それだけ言うと、父はくるりと踵を返した。
誰もいなくなった廊下を渡り風呂場へ。
当時はマキで沸かしていた風呂。、
気持ちいい湯加減だった。
父は私が帰う時間を見計らって沸かしてくれていたのだ。
風呂に浸かると、煩わしいことが解けて流れた。
「食え」
風呂から上がった私の前にに父は丼鉢を置いていった。
そして父は奥の間に消えた。
即席ラーメンだった。
作りたてのラーメンに生卵がトッピングされていた。
殆ど料理をする姿を見たことがない父の作ったラーメン。
湯気の立つ暑いラーメンは実にうまかった。
万事心得た父の思いやりが隠し味だった。
父が漏らした二つの言葉。
ぶっきら棒そのものだが、
わたしにはちゃんと伝わった。
ずるずるすすっているうちに涙が生まれた。

私と父の会話は、
「あ」「い」「う」「え」「お」で事足りていた。
ケッタイな父と息子の日常が、
その夜だけ変わったのを思い出す。
誰にも分ってもらえないだろう。
私と父のサイレント絆を。(笑)

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