臨床現場の言語聴覚士(ST)

臨床現場の言語聴覚士(ST)のブログ、です。
摂食・嚥下障害や高次脳機能障害などについて考察します。

嚥下について⑨

2007年11月13日 | Weblog
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⑥フィジカル・アセスメント(英語だと難しそうだが、結局、人体を調べて評価を行うこと)→視診、聴診、触診などだが、とりあえず難しく考えないこと。表皮がめくれてカサカサなのは、脂肪欠乏性なのか、微量元素欠乏なのか、脱水なのか、それらの合併なのか、などを考える。
ただし、筋や骨の同定、肺の聴診、腸の触診などとなると正確な解剖の知識が必要となる。目的の構造物がどこにあるのか、体表の目印(鎖骨、胸骨柄、肩峰など)からどの位離れたところにあるのか、聞いている肺の音は本当に肺の音なのか、そもそも、使っている聴診器で聞ける周波数帯に目的の音が入っているのか、など、こだわるとかなり修練を要する。

⑦褥瘡(嚥下障害で生じる低栄養状態では、発生しやすい。仙骨部に好発するのは背臥位姿勢では全体重の44%がかかり、また座位姿勢で日中過ごす時間が増える傾向にあることも影響している。筋肉は、最高のクッションだが、姿勢を自ら変えて除圧出来ない時間が長くなると、ご存知の通り、褥瘡が出来る可能性が高まる)

⑧感染症(肺炎が該当する。肺炎とは、原因菌の出す酸による肺胞の損傷であり、創傷の治癒が必要となる。つまり、手術や外傷、熱傷など観血性でないだけで、創傷治癒には蛋白質などが必要となる。不顕性の誤嚥で体重が減る原因と思われる。いくら食べても、その摂取カロリーを肺炎の創傷治癒へまわすことで結局身にならない。)

とりあえず、一旦この「嚥下について」のシリーズを終了する。

私見及び様々な資料からの見解を述べてきた。嚥下障害と言っても、当然のことながら、教科書的な対応で話がすむことが無い。

そのとき、どうするのか。

その答えを、自分なりに追求して、ここまで述べたようなプロットや思考パターンを形成してきた。

これで効果がでているかどうかは、正直に言って自信が無いが、しかし、確実に言えるのは、知らないでいるよりは知っているほうが引き出しが多くなって、嚥下障害を多面的に診れるような気がしているのは事実である。