臨床現場の言語聴覚士(ST)

臨床現場の言語聴覚士(ST)のブログ、です。
摂食・嚥下障害や高次脳機能障害などについて考察します。

このシリーズについて

2008年12月31日 | Weblog
まずは、このシリーズの構成について述べる。

何事においても、PDCAは大切なので、あらかじめ、進行予定を述べる。

いわゆるNSTに沿って話を進めることにする。

NSTといっても、STの臨床において、その重要性は非常に高い。

単に栄養のみでなく、呼吸、嚥下などと複合的なアプローチを行う際、単一というか専門分野だけでなく、様々な分野を考慮しなくてはならない。

摂食・嚥下障害を不可避と考え、リスク管理を第一に考えたとき、リスクを細分化して、どれだけ予備力があるのかを考える。

STなので、まずは嚥下となるだろうが、嚥下は呼吸と密接な関係がある。

呼吸を診ずに嚥下をリハするのは、まさに木を見て森を見ず、である。

何も呼吸理学療法をやれ、という訳ではない。

単に、嚥下のとき、鼻呼吸がどれくらい出来ているか、をみることから始めれば良い。

顕性誤嚥は、だれでも分かるだろうが、それに至るまでに、どれだけ誤嚥の徴候を見つけれるか、予備能力を評価できるか、である。

嚥下時の鼻呼吸で、呼吸が切迫するようであれば、まず、鼻閉がないかどうか、確認しよう。

これが案外、バカにならない。

普段、口腔はよくみるのだろうが、鼻を気にしてみよう。

当然、鼻閉であれば、嚥下時に呼吸がしにくくなる。

日常的な整容にはいるADLなのだろうが、普段みるポイントに付け加える価値は、ある。

今年の終わりに思うこと

2008年12月30日 | Weblog
知れば知るほど、知らなかったことが恐ろしくなる。

嚥下障害だから、トロミとか姿勢がどうとか、それで一口食べれておしまい、良かったね、さようなら、あとはヨロシク、という職場なら良いだろうが、そうは行かない事もある。

その理由は、例えば、呼吸と嚥下の協調の不具合、嚥下のときに呼吸が停止するが、その積み重ねで呼吸切迫、循環動態悪化などをまず、把握しなくてはいけない。

そもそも、摂食にかかる30分程度、ある程度容認できる姿勢が取れるか、起立性低血圧などが大丈夫か、脈などを診ながら食事介助したり、あえて口腔内に食事が貯留している時に声掛けして、きちんと嚥下してから発声出来るか、などを確認する。

あまり一度に列挙すると、きりが無いので、すこしづつ、シリーズ的に説明を行うこととする。

久しぶりの更新

2008年12月29日 | Weblog
なかなか、忙しい毎日で、なかなか更新出来なかった。

ただ、色々と充実した研修などを行っていた。

呼吸、嚥下、口腔、発声といった分野の、統合的なアプローチについて、色々と学習していた。

それぞれの分野のみの研修、実技、というのは割合多い。

しかし、臨床現場では、分かりきっていることではあるが、単に○○だけ、ということは、ほとんど無い。

維持期であれば、認知症、CVA、DM、高血圧、骨粗しょう症、廃用、肺炎、嚥下障害などは、基礎疾患として複合的に存在しているのが普通だ。

よって、そのアプローチも、必然的に、様々な分野にまたがったアプローチとなる。つまり、認知症と嚥下、呼吸と発声、嚥下と口腔、などだ。

しかし、なぜか、そういうアプローチ方法は、教科書には記載されにくいようだ。

確かに、実践的なアプローチであるほど、個別的であり、一般的な項目のみ載せる宿命の教科書および教科書的なリハが求められる職場では、日の目を見ないだろう。

つまり、腕が必要なのである。

経験的に、いわゆる認知症などで口頭指示への従命が出来ない場合で、嚥下や言語を良くしようと思ったら、べらぼうに大変である。

原始反射とか不随意運動、過敏、抗重力肢位の保持困難など様々な問題点と、優先すべき点のうち、どれを最優先するかを”取引”しないといけない。

これとあれを同時に達成して、ということが困難なのだ。

かろうじて、体幹保持が出来ないので今の時点では嚥下だけ優先しよう、姿勢はちょっと目をつむって、といった取引をせざるを得ない。

だから、姿勢保持は例え、STでも、シーティングの知識、実践方法が必要になるわけである。

単に一つの分野、専門分野だけでなく、複合的に、その人を診るようにすることが必要である。