臨床現場の言語聴覚士(ST)

臨床現場の言語聴覚士(ST)のブログ、です。
摂食・嚥下障害や高次脳機能障害などについて考察します。

STの存在理由③

2007年11月19日 | Weblog
STとしての腕、について述べてきた。

嚥下に関して、特に「食べれる口作り」を考察してきた。

パンドラの箱の話を引用したのは、老婆心のつもりである。

さて、話しを少し元に戻そう。

「食べれる口作り」である。

言葉では簡単であるが、なかなか実践出来るものではないことは、現場のSTの方々は良くご存知のことと思う。

摂食・嚥下リハへの取り組みへ協力的なDrやNsなどが居られる場合もだが、そうでないも場合は、なかなか大変である。

誤嚥性肺炎の最大の要因が、食事時のムセなど顕性誤嚥のみでなく、嚥下反射が低下している睡眠中の唾液誤嚥による不顕性誤嚥であることがあまり知られていない。

そして、誤嚥性肺炎は全身疾患であることを念頭に置かなくてはいけない。

つまり、摂食・嚥下障害のみをリハビリして食べれるようになりました→そのうち誤嚥して肺炎になりました、では困る。

また、誤嚥性肺炎で急性期病院に入院し、経口摂取困難として胃瘻造設となり、そのまま維持期施設へ入所したものの、ご家族は、実は経口摂取を希望されている、といった場合に、リスクをどうするのか、を考えなくてはいけない。

つまり、嚥下の直接訓練を行う事と、その影響がどの程度なのか、継続して直接訓練を行えるのか、のバランスを診なくてはいけない。

そういう場合に、STの腕が問われるのではないだろうか。

単に「食べれる口作り」に長けているだけでなく、全身状態を診て、血液データを診て、フィジカルアセスメントを行い、ご家族のご意向(水羊羹を食べさせたい、自分で食べさせたい、形のあるものを食べさせたい等)への配慮、嚥下機能の把握、直接訓練の実施予定期間(エンドレスなのか、期間限定なのか等)、食形態を上げるべきか下げるべきか、などなど。

いったん口から食べたら、それは誰でも食べたいのだから、それを何らかの理由があるにせよ、中止するのは、とても酷なことである。

だからこそ、エンドレスで続けれる直接訓練をまずは模索しておくべきであろう。

何はともあれ、まずは「食べれる口作り」について、次回からもっと詳細に述べる。