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速藤年正 Toshimasa Hayato

フェイス・エヴァンスの『First Lady』

2005年05月09日 12時14分12秒 | 全米チャート
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今回は、女性R&Bシンガー、フェイス・エヴァンス(Faith Evans)の4thアルバム『First Lady』を紹介しましょう。

1995年にバッド・ボーイからデビューを飾ったフェイス・エヴァンスも今年(2005年)でメジャーデビュー10周年。超人気ラッパー、ビギーとの結婚、そして悲しい別れ。彼女を公私ともに支えてきたエグゼクティヴプロデューサー、トッド・ラッソウとの再婚。バッド・ボーイとの契約を失い、ニューヨークからアトランタへ転居。自らのスタジオとプロダクション会社を作り新たな音楽活動をスタートするもドラッグ所持で逮捕されるなど、彼女の10年間は波乱に満ちていた。

そしてここに紹介するキャピトルレコード移籍第一弾アルバム『First Lady』は、ヒップホップ色が濃いバッド・ボーイのイメージから脱却し、次世代フィリーソウルの旗手とも言えるアイヴァン・バリアス&カーヴィン・ハギンスのコンビを大々的にプロデューサー起用。心地いいサウンドとともに、じっくり聴かせてくれる味わい深い内容です。
アイヴァン・バリアス&カーヴィン・ハギンス(Ivan Barias & Carvin Haggins)のコンビはこれまでに、ミュージック(Musiq)の「ハーフクレイジー」(2002年6月1日付全米R&Bチャート2位)や「フーノウズ」(2004年5月8日付全米R&Bチャート23位)といったシングルヒットをはじめ、ジル・スコット(Jill Scott)の2ndアルバム『Beautifully Human: Words And Sounds Vol.2』(2004年)、ブライアン・マックナイト(Brian McKnight)の7thアルバム『Gemini』(2004年)などを手がけている。新世代のフィリーソウルを感じさせる温かいプロダクションワークが特徴だ。

アルバムにはこのほか、ザ・ネプチューンズ(The Neptunes)、チャッキー・トンプソン(Chucky Thompson)、ジャーメイン・デュプリ(Jermaine Dupri)、ブライアン・マイケル・コックス(Brian Michael Cox)、マリオ・ワイナンズ(Mario Winans)といった豪華プロデューサー陣が参加。

さてさて、そのアルバム内容ですが、仮にラジオでかけるとしたらどの曲を選ぶかという基準で聴いてみると、これはいいなと思ったのが2曲、まあまあかなと思ったのが2曲。

《これはいい組》

02.「Again」
アルバムからの1stシングルです。プロデュースは前述のアイヴァン・バリアス&カーヴィン・ハギンスが担当。The Whatnautsの「Genuine」をサンプリング使用したフィリーソウル風の柔らかいサウンドが心地いいですよね。それでも歌詞はかなり深刻。「苦しみを味わってきたわ」から始まり、過去のつらい経験に立ち向かう力強い姿勢を歌ってます。2005年5月7日付全米R&Bチャート7位。

13.「Hope」
トゥイスタ・フィーチャリング・フェイス・エヴァンス(Twista Featuring Faith Evans)名義でアルバム発売前にヒットしてた曲です。人気女性R&Bシンガーのアシャンティが出演する映画『Coach Carter』サウンドトラックからの1stシングルとしてカットされ、2005年3月5日付全米R&Bチャート24位を記録。もともとはトゥイスタのビッグヒットアルバム『Kamikaze』(2004年)に収録されていた同名曲がオリジナル。そのオリジナルではコーラス部分を元グッディ・モブのシーローが歌ってましたが、サウンドトラックと本作ではコーラス部分がフェイス・エヴァンスに入れ替わってます。シーローのバージョンも聴きましたが、やっぱりフェイス・エヴァンスのほうが勝ってる感じです。なんてったって、歌詞内容がビギーとか2パックに対する追悼ですからね。

《まあまあ組》

01.「Goin' Out」
ヒットメイカー、ザ・ネプチューンズがプロデューを担当。ザ・ネプチューンズならではのシンセサウンドがうねってます。フェイス・エヴァンスの前作アルバム『Faithfully』からの4thシングル「Burnin' Up」(2002年9月7日付全米R&Bチャート19位)もザ・ネプチューンズでしたが、男性ラッパーのルーンが参加したアルバムバージョンの「Burnin' Up」とは別に、当時はミッシー・エリオットがゲストのリミックスもあったんですよ。プロモ盤しか出てなかったかもしれませんが、すっごくカッコいいバージョンなので、機会があったらぜひ聴いてみてください。この「Goin' Out」も別のラッパーに差し替えてリミックスを出せば、かなりヒットするんじゃないでしょうか??

06.「Tru Love」
ジャーメイン・デュプリがメインプロデューサーに、その愛弟子ブライアン・マイケル・コックスが共同プロデューサーにクレジットされているアトランタ風スローナンバー。フェイス・エヴァンスの優しい歌声でつづるラヴソングは、歌詞の内容がまさに彼女のハートそのものです。「二人で人生をともにするようになって6年5カ月」なんて歌詞、絶対に日本のアーティストじゃ歌えないですよね??

そのほか

03.「I Don't Need It」
07.「Jealous」
08.「Ever Wonder」

…あたりも捨てがたいのですが、曲に対する好みは千差万別なのでタイトルだけの紹介とさせていただきました。

フェイス・エヴァンスの4thアルバム『First Lady』、個人的評価☆☆☆★★(三ツ星)という感じでしょうか。

■フェイス・エヴァンス■
1973年6月10日フロリダ生まれのニュージャージー育ち。わずか2歳の時から教会で歌い、ハイスクールを優秀な成績で卒業。ジャズやクラシック専攻のフォーダム大学に奨学特待生として入学するが、現代R&Bシーンに興味を抱き1年間で自主退学。ハイ・ファイヴ(Hi-Five)の2ndアルバム『Keep It Goin' On』(1992年)へのコーラス参加や、アッシャー(Usher)の1stアルバム『Usher』(1994年)でのコーラス&ソングライト参加を経て、メアリー・J.ブライジ(Mary J. Blige)の2ndアルバム『My Life』(1994年)のコーラス&ソングライトを担当したことをきっかけにパフ・ダディ(ショーン・"パフィ"・コムズ)と知り合う。フェイス・エヴァンスはパフ・ダディ(Puff Daddy=P.Diddy=Sean Puffy Combs)率いるバッド・ボーイ・レコードの初代女性ソロアーティストとして迎えられ、1995年に1stアルバム『Faith』を発表。同年ビギー(The Notorious B.I.G.)と結婚し1996年に子供が生まれるが、1997年にはビギーが凶弾に倒れ帰らぬ人となってしまう。ビギー追悼ソング「I'll Be Missing You」(1997年6月14日付全米チャート1位~11週連続)参加後の1998年、2ndアルバム『Keep The Faith』をリリース。ここからベイビーフェイス(Babyface)のプロデュースによる心温まるバラード「Never Gonna Let You Go」がソロ名義初の全米R&Bチャート1位(1999年9月1日付)を獲得し、アルバムで共同エグゼクティヴプロデューサーを務めるトッド・ラッソウ(Todd Russaw)と再婚。2001年の3rdアルバム『Faithfully』でもトッド・ラッソウがエグゼクティヴプロデューサーにクレジットされている。2005年4月5日に全米発売(日本盤は2005年3月30日発売)された4thアルバム『First Lady』は発売第1週で15万7千枚(ニールセン・サウンドスキャン集計)を売り上げ、2005年4月23日付全米アルバムチャート初登場2位、全米R&Bアルバムチャート初登場1位をマークし、過去3作の初登場最高位記録を塗り替えた。現在は夫・子供(3人)とロサンゼルス在住。



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