goo blog サービス終了のお知らせ 

A Diary

本と音楽についてのメモ

L. P. ハートリー

2005-10-09 10:12:21 | 作家紹介
■ L. P. Hartley (1895-1972)

<経歴>

1895年ピーターバラの近く、ケンブリッジシャー北部の町ウィトゥルシー(Whittlesey)生まれ。父親がレンガ製造業で成功し、1908年に、家族はピーターバラ市内のフレトン・タワー(Fletton Tower)に移り住んだ。プレパラトリー・スクール時代の1909年の夏に、モクシーという名の同級生に招かれて、ノーフォークにあるブラドナム・ホールという邸宅に滞在したことが、後に代表作『The Go-Between』(1953)のモデルになったと言われている(小説では、友人の苗字MoxeyがMaudsleyに、館の名前BrandenhamがBrandhamになっている)。

その後、ハロー校を経てオックスフォード大学ベイリオル・カレッジの奨学生となり、現代史を学ぶ。1916年に第一次世界大戦に志願し休学するが、体調がすぐれず、実際に戦闘には参加することなく1918年に傷病兵として退役。1919年にベイリオル・カレッジに復学し、その頃から、雑誌の先週や本のレビューなどに携わるようになった。

在学中には、親交のあったオルダス・ハクスリーに連れられて、オックスフォード郊外のガージントン・マナーに住む、当時の文化サークルのひとつとなっていたオットリーン・モレル(Lady Ottoline Morrell)の集まりに加わった。さらに、同級生で後に作家となるクリフォード・キッチン(Clifford Kitchin)からは、マーゴット・アスキス(Margot, Countess of Oxford and Asquith、アスキス首相の夫人)の一家を紹介されている。

最初の作品は短編集『Night Fears』(1924)で、その後中編小説『Simonetta Perkins』(1925)や、短編集『The Killing Bottle』(1932)を出版した。ハートレイが注目されたのは1944年出版の『The Shrimp and the Anemone』以降で、続く『The Sixth Heaven』(1946)と『Eustace and Hilda』(1947)とともに、三部作をなしている。1953年の『The Go-Between』は一番よく知られた作品で1971年に映画化された(脚本はハロルド・ピンターによる)。

彼は生涯独身を通し、伝記作家のデイヴィッド・セシル(David Cecil)や、作家兼風刺画家のマックス・ビアボーム(Max Beerbohm)と親交があった。1956年にCBEの称号を授けられている。1972年ロンドンにて死去。

* * * * *

<主な著作>

多数の作品があるが、『The Go-Between』(1953)と、「ユースタス三部作」の評価が高い。


Night Fears: And Other Stories(1924) 短編集

Simonetta Perkins(1925) 中編小説

The Killing Bottle(1932) 短編集

The Shrimp and the Anemone(1944) 「ユースタス三部作」

The Sixth Heaven(1946) 「ユースタス三部作」

Eustace and Hilda(1947) 「ユースタス三部作」(ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞)

The Travelling Grave: And Other Stories(1948) 短編集

The Boat(1949)

My Fellow Devils(1951)

The Go-Between(1953)(ハイネマン文学賞受賞)

The White Wand: And Other Stories(1954) 短編集

A Perfect Woman(1956)

The Hireling(1957)

Facial Justice(1960)

Two For the River: And Other Stories(1961) 短編集

The Brickfield(1964)

The Betrayal(1966)

Poor Clare(1968)

The Novelist's Responsibility(1967) エッセイ

The Love-Adept(1969)

My Sister's Keeper(1970)

Mrs. Carteret Receives (1971)  短編集

The Harness Room(1971)

The Collections: A Novel (1972)

The Will and the Way (1973)

* * * * *

<L.P.ハートリーの邦訳作品>

日本では「怪奇短編集」や「恐怖短編集」に収録されるような作品ばかりが邦訳されていて、他多数の長編小説は『The Go-Between』を除き、まったく翻訳されていない。

★小説『The Go-Between』(1953)
『恋を覗く少年』 蕗澤忠枝訳 新潮社 新鋭海外文学叢書(1955)
『恋』 森中昌彦訳 角川書店 角川文庫(1971)

★短編集『Night Fears: And Other Stories』(1924)から

「Night Fears」
「夜の怪」 今本渉訳 『夜の怪』 国書刊行会 怪奇小説の世紀3(1993)

★短編集『The Killing Bottle』(1932)から

「The Killing Bottle」
「毒の殺虫瓶」 大西尹明訳 『消えた心臓』 東京創元社 世界恐怖小説全集4(1959)
「毒瓶」 宮尾洋史訳 『イギリス怪奇傑作集』 福武書店 福武文庫(1991)

「The Cotillon」
「コティヨン」  西崎憲訳 『輝く草地』 筑摩書房 英国短篇小説の愉しみ(1999)

「A Visitor from Down Under」
「遠い国からの訪問者」 長井裕美子訳 『恐怖の分身』 朝日ソノラマ文庫海外シリーズ31(1986)
「豪州から来たお客」 大西尹明訳 『消えた心臓』 東京創元社 世界恐怖小説全集4(1959)

「Conrad and the Dragon」
「コンラッドと竜」 渡辺南都子訳 『ビバ!ドラゴン』 早川書房 ハヤカワ文庫 ファンタジイ傑作集2(1981)

★短編集『The Travelling Grave』(1948)から

「Podolo」
「ポドロ島」 宇野利泰訳 『怪奇小説傑作集2』 東京創元社 創元推理文庫(1969)
「ポドロ」 高橋和久訳 『猫物語』 白水社(1992)

「Three, or Four, for Dinner」
「ディナーは三人、それとも四人で」 ピーター・へイニング編『ディナーで殺人を』第一巻(1991) 田口俊樹訳 東京創元社 創元推理文庫(1998)

「The Travelling Grave」
「ひとりで動く棺桶」 大西尹明訳 『消えた心臓』 東京創元社 世界恐怖小説全集4(1959)

★短編集『A White Wand and Other Stories』(1954)から

「W.S.」
「W.S.」 坂本和男訳 集英社 『世界短篇文学全集 世界短篇文学全集 2 イギリス文学20世紀』(1962)
「W.S.」 乾信一郎訳 『ロアルド・ダールの幽霊物語』(1983) 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫(1988)
「週末の客」 田中文雄訳 『幻想と怪奇 おれの夢の女』 早川書房 ハヤカワ文庫(2005)

★短編集『Two For the River: And Other Stories』(1961)から

「Someone in the Lift」
「メリー・クリスマス」 大井良純訳 『世界ショートショート傑作選1』 講談社文庫(1978)
「エレベーターの人影」 大井良純訳 『幻想と怪奇 ポオ蒐集家』 早川書房 ハヤカワ文庫(2005)

「The Face」
「顔」 古屋美登里訳 若島正編『棄ててきた女』 早川書房 異色作家短編集19(2007)