花笑 はなえみ

          呼吸を大切に 呼吸を忘れないで と願っています

アンデルセンの人魚姫

2016年07月18日 09時46分11秒 | 本棚
 完訳 アンデルセン童話集 1 大畑末吉訳 岩波文庫
 1984年5月16日 改版第1刷発行 2003年6月6日 第31刷発行

 初版訳者序に、『この本はアンデルセンのEventyr go Historierの訳であります』と書いてあります。
 童話というわけでなく、本来は『お話と物語』だそうで、子供ばかりではなく、大人も喜んで読んだものだそうです。
 
 わたしが手にしているのは、完訳10巻中の1巻目です。
 この巻には、絵本化もされて日本に良く知られている物語が沢山あります。

 小クラウスと大クラウス、小さいイーダの花、親指姫、旅の道づれ、人魚姫、皇帝の新しい着物(はだかの王様で知られる)、野の白鳥、などが掲載されています。

 読めば読むほど、アンデルセンってどんな人物だったんだろうって思います。
 子供の頃ってどんな子だったんだろうとかね、思いますよ。
 
 この書物は、もちろん文学なんですが、とても哲学的であり、かなり詩的であり、そして宗教的であり、美しくもあり恐ろしくもあり、絵画的であり、音楽的であり、たとえようもなく品格に満ちています。
 訳も優れているからこそ、こんな感情が沸き起こってくるのでしょうね。代々の訳者の方々に感謝いたします。
 そして、こんな事業を継続させてきた出版関係者の方々にも感謝ですね。

 『人魚姫』の最後のあたりに、お気に入りのフレーズがあります。

 「人魚の娘には、不死の魂というものはありません。人間の愛を得なければ、決してそれを持つことはできないのです。ですから永遠の命をさずかろうと思うならば、ほかのものの力に、たよらなければならないのです。わたしたち空気の娘も、やはり不死の魂を持っていません。けれども、よい行いをすると、それがさずかるのです。わたしたちは、むし暑い、毒気で人が死ぬような熱い国へとんでいって、涼しい風を吹かせてあげるのです。また、花のかおりを空中にふりまいて、すがすがしいさわやかな気分を送ってあげるのです。こういうふうにして、三百年のあいだ、わたしたちにできるだけの、よいことをするようにつとめますと、ついに不死の魂をさずかって、人間の永遠の幸福にあずかることができるのです。可哀そうな人魚姫さん、あなたも、わたしたちと同じように、まごころをつくして、おつとめになりましたのね! そして、ずいぶん苦しんだり、しんぼうなさったりして、いま、空気の精の世界へのぼっていらっしゃったのですよ。これからよい行いをなされば、三百年ののちには、不死の魂があなたにもさずかりますよ。」
 人魚姫は、すきとおった両腕をお日様の方へ高く上げました。

 なにかしら、宮沢賢治の世界観と共通しているようなところがありそうな気がしてしようがありません。
 ほんとうに優れた方々というのは、そういう方々なのではないのでしょうか。

 国や言葉や、文化や宗教や、肌の色や目の色や、食べ物や飲み物や、子供の育て方、死者の弔い方や、表現方法や文字などが、みな異なったり違ったりしていても、大切な人間性の所は共通しているものでしょう、人間ならばね。
 そうあらねば争いは地上から去ることはないように思うのです。

 宮沢賢治さんが願った、思いをはせた世界ってどんな世界なんでしょうね。

 以前、旅した道の途中で、気に入り、写メ撮りました。
 そこに、石に、刻まれていた文言です。
 あとで調べたら、宮沢賢治/農民芸術概論綱要序論に書かれている文章の中にありました。

 われらは
 世界の
 まことの幸福を
 索ねよう

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