平安時代末期から鎌倉時代前期の銅造阿弥陀如来座像です。
像容全体は、鎌倉時代の仏像の様式の特徴を多く備えていますが、平安時代の様式の面影をも残す像です。
表面は火中して肌が荒れています。しかし、この荒れた銅の肌合いは、像に複雑な陰影を与え、味わい深い表情となっています。
弦楽器で言えば、時としてバイオリンの滑らかな音より、チェロの低音が心にずしりと響くように、心打つものがあります。
古(いにしえ)の時代の人々の、祈りという形に変えられた思いが伝わって来るようです。
時代を経た古銅の味わいとともに、心に深く響きます。
顔の造形から仏師の卓越した造形感覚が見てとれます。
見る者を穏やかな気持ちへと誘(いざな)ってくれる、優しい微笑みを湛えています。
平安の香りが楽しめる美しい仏像です。
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