はぐれの雑記帳

極めて個人的な日めくり雑記帳・ボケ防止用ブログです

歌集 色褪せた自画像 第3章 遠く離れて(3)

2016年05月22日 | 歌集 色褪せた自画像
あれ鈴虫が  92.9「芸術と自由」166



0464 緒の切れたげた一つ流れ流されて東京湾の青潮の波

0465 乳母車に揺られる幼子に秋深まる日の酸性雨しとしとと降る

0466 秋深く、いびきをたてて性欲は横になり埒ち外にある愛とかなんとか

0467 弔いの夜を徹して鈴虫の あれ 死ぬまで働けと鳴きとおす

0468 立体交差のコンクリートの柱が支えるのは行き違いの心である




0469 老涯と老害の違い問われ 秋茄子の花枯れたままの裏庭

0470 美しく嘘などちりばめて引っ張りあう脚の短さを嘆く

0471 こころ笑うこと忘れて黙したまま額づく魂あり そしていま冬の到来 

0472 もはや愛しむ女を一人として薄の穂ひかりにとけておわる秋
 







望 郷 
 91.5「芸術と自由」158             


0473 みずうみのほとり 魂の声にききいればなかば霞みゆく垂乳根の山

0474 画布に描いた白い雲 ゆっくりゆっくりみずうみを渡る

0475 釣り糸を静かに垂らすみずうみの その底に沈んでいる村

0476 乳の匂いも失せて 母のことみずうみ深く密葬のまま

0477 捨てられた子の故郷のみずうみはいまもなお深い藍色

                              




生き方  92.3
             

0478 ゆっくりと雪は降り積もり純白はいくつもの嘘を隠していく

0479 雪をまきあげる突風にであうとき どこにでもある人の不幸を思う

0480 見上げれば冬の空にあふれるほどの星があり 大地は沈黙する 

0481 汽車も走らない錆びた線路を跨ぐとき 雑草は強かだと考える

0482 争いを好まぬ性質は父からのゆずりもの 木連の花はいつも白いでしょ

0483 恥じることなど何もしていないと言い切れるから まっすぐに線を引く







君への恋文  92.3「私達の歌集」棟の会

                         裕子との出会いは昭和四十三年の秋、銀座祭の夜であった。その時は    
                         友人に紹介されたが、それだけで終わった。それからニ年後に偶然再会した。
                         僕はその瞬間に結婚することを決めた。この女しかいないと思った。
                         裕子は美しく僕には輝いて見えた。初めてのデートで僕はプロポーズをし、
                         一ヶ月後に婚約をして、半年後には結婚した。恋愛の時期などない。
                         結婚してから僕はずっと裕子と恋愛している。


0484 しがらみに絡まれて身動きがとれないのに 「愛している」なんて惚けて

0485 突然に海が恋しくなって真っ青な水平線に慰めを見ている

0486 そのとき素直になれたのは 青い青い海が反射して 空が明るかったからだ

0487 白い貝殻には何も書かれていないけれど 透けて見えるあなたへの想いがある

0488 浅い春の浜辺でじっと海を見つめている君のやわらかな影とならんでいる

0489 何もかも奪われたとしてもてのひらの温もりを奪うことはできません


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