はぐれの雑記帳

極めて個人的な日めくり雑記帳・ボケ防止用ブログです

歌集 色褪せた自画像 第四章 はびこる悪が (1) 

2016年05月22日 | 短歌
第四章 はびこる悪が







新 年  93.1


戦後半世紀過ぎて、平和を求めてきたはずなのに、いつまでも血腥い地球なのだ。争いを好むのが人間なんだと悲しむ新年である。

                    
0490 新年を祝う朝、アンゴラ・カンボジア・ソマリア・サラエボに銃弾の死者     
0491 ふりあおぐ宇宙のなんとロマンチックな、無数の星の死をみつめる        
0492 銀河の果てをつきぬけてもぼくが生まれた意味はみつからないんだ




       (イラク)                       
0493 イラクの砂漠から逃げ出す術もない民衆は無心に反米を叫ぶ           
0494 軍隊は陽炎だから逃げ場のない王様は人民を盾にする
0495 爆弾を落とすミサイルは機械で死ぬのは名もない人ばかり
      〈皇太子妃決まる〉
0496 プリンセスの帽子の黄色を喜ぶ気配はまぎれもなく回帰色だ



      


落花生の実  93.1「芸術と自由」179
  
                                  
0497 ぼくの髪は黒々としてこころの年齢を偽るのに加担している           
0498 もくもくと飯をくうことになれて、丸い人生をおくろうとする
0499 人間であることがなんで楽しいことなのかと冬の月は寒そう
0500 きえのこる星がひとつぽつんと、あいつはきのうもあすもぽつんと
0501 どうにもならないときのどうにもならない気持ちをささえきれない肉体がある 





0502 アルツハイマーとエイズというコトバにはさまれて男は雪に身ぶるいをする
0503 ときには酒瓶ひとつかかえて違う人間に生まれ変わるまで呑むんだ
0504 石に躓いたときアダムとイブをつくったのは悪魔ではなかったのか
0505 だれも私のこころをくみとる余裕もないから落花生の実はからっぽだ
0506 どんなこともすべて解決していく時間をよぎりながら雪が降る
                            






春の気配  93.1-2.


0507 今月かぎりで辞めると嬉しそうに話す人のほぐれていく眉間の皺        
0508 思想をもたない勤めの空腹のために肉饅ふたつで昼飯とする
0509 獰猛な顔つきで吠えているのは人間もどきの生き物みたいだ
0510 春の影法師が中年男のあとからよたよたしながらついてくる          
0511 はだかの木もキラキラ光る春につつまれてぼくは和んでゆく





0512 やさしさをしまいこんだ胸の底にも春の光りがさしこんでくる
0513 刺々しいことばにとりかこまれて 梅の花の狂い咲きとは笑止な        
0514 からまわり ずれた一歩の歩幅からずっと今日までからまわり
0515 さようならと一言申し上げて糸のきれた凧は自由である
0516 北風にお尻の冷たさをくらべてみるミニスカートのまあるい形状と       


                                   





海のひかり  93.2


0517 海のみえる小高い丘に煙突があって、出生の記憶はそこでとぎれる       
0518 うまれた位置をたしかめられない不安 うまれたときからひきずっている
0519 海のひかりのなか 汽車は 女から赤子をうばいさっていく
0520 そのひとを母とよぶにはかわいそう ひたむきな十九の春は 寒かった



地下道の住人  93.2


0521 雨のふる日は地下道の柱にもたれてひねもすのたり哲学をする         
0522 世俗の雑念をすてさる信念はダンボール一枚の広さに育まれて
0523 過去をすて路上に棲めば死にいそぐこともあくせく生きることもないか
0524 住居とするダンボールの広さ切り捨てられている者の主張とする
0525 路上に棲めば新聞に書かれている嘘をていねいに読む時間がある
0526 家をもてない者と家をすてた者とがすれちがう地下道の小劇場




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