はぐれの雑記帳

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短歌 「北アルプ大縦走」

2021年04月29日 | 短歌

短歌 北アルプス大縦走 

2000年8月8日-14日の登山の短歌

(1日目 五色が原へ)

アルプスの稜線つなぐ企てを二年遅れてスタートだ

室堂の透きとおる風受けて一の越めざす室堂の朝

晴れだけど薄日の夏の肌寒い天気の崩れ畏れつ歩く

雲重く稜線にあり一の越薬師が岳の姿拝めず

竜鬼と獅子と名のつく悪道をようよう行けば薄日射し来る

今日の宿五色が原の小屋二つあれかと思えば頬ゆるんでる

ザラ峠真下に見れば一息に駈け下るごとわれくだりゆく

雲覆う五色が原に彩華はなく時も泊まるか山小屋の隅

2021.4.26

(2日目 スゴの小屋)

晴れることねがって早く小屋でるいやな予感の靄の道

不揃いの岩の道をばガス覆う見えざる先に不安と歩く

目の前の岩を繋いで道をいく得体の知れない越中澤岳

スゴの道靄うすれゆき乗越に至れば赤い小屋の屋根見る

スゴの小屋主とお茶飲みながら宇治長次郎の話を聴ける

小屋主は宇治長次郎と同じ村懐かしく聞く昔語りを

主言う田部重治を研究すと山居の主に敬意をもちぬ

スゴの小屋泊まりて主と語れたら山への想いなお深むなり

去りがたし過ぎすぎ行けばやむなくも主と分れ惜しくもあるに

2021.4.27

(薬師岳へ)

樹林帯抜け出ていできし稜線もガスに追われて薬師はいずこ

間山なる薬師前山至れども薬師の形茫々としてつかめず

雨となる稜線寒し黙々と歩けば至る北薬師かも

北嶺に至りて知るか薬師岳双嶺ありて南はさらに

眺める視界なし黒き吊尾根淡々と足ひきずって南峰遠い

眼下にすかな作カールに残雪の描ける文様しばし見とれる

その昔氷河もありしこの山の歴史をのこすかこの大きカールは

(薬師小屋へ)

山頂の祠の前に倒れ込むよくぞ歩けて薬師いただき

大き山と思い描けどわが足でもっとどでかい薬師嶽しる

暮れなずむ山の夕なり霧雲の中感激後に小屋へ急ごう

 

ふつふつと喜びはわき足取軽く薬師の小屋目指す

大仕事追えたるような心地して薬師の下り顔緩んでる

星もなく白い夜なり薬師小屋明日の青空夢みて眠る

 

(3日目 薬師澤へ)

テント場で男子と思った女子大生山話して峠に登る

雲あつく雲の平は見えないな太郎平もかなしい朝か

薬師沢流れる黒部の森を見る縄文人も見たかもしれぬ

幾万年変わらぬ森があるならばカベッケガ原の森に尋ねよ

2021.4.28

(高天原へ)

この水が黒部のダムに流れ入る上の廊下の河原を歩く

いくつもの沢をまたいでつけられたこの道開いた人の強さよ

人の道にして人の一生かくあるべきか

奥山に人の通える道ひらく思いの一念われ導かれたり

森深し大地のなかに抱かれて時空を越える道を歩くか

忽然と開ける原に池塘あり花咲き乱れわれを迎える

神開く庭園なるか奥山にわれ招かれて夢心地なり

奥山の白濁の湯に息つけば山ありがたし山愉快なり

黒部なる奥山にきて時流れ私の世界が広がっている

白い湯気透かして見える黒い空こぼれんばかりの星にあふれて

満天の星みて思うこの宇宙どこまででかいかひろいのか

星々の光地球に届くまでに人類滅亡あるやもしれず

明日の日は良い日ならむと窓からの月の光に包まれねむる

 

(水晶小屋へ)

二日前越中澤岳のガスの中その稜線をくっきりと知る

薬師岳やはりデカいな大きいな金作カールもみごとだわ

右左お花畑の中をゆく岩苔の道空気がうまい

岩苔の乗越来れば気は軽くま向う鷲羽よこんにちは

祖父岳の右手広がる雲の平庭に抱える薬師岳かな

 昨年に友と歩いた裏銀座槍を眺めて夏さかりなり

槍へ行く女学生の姿追いわが子なればと思いつ手を振る

去年きた水晶小屋の懐かしく一人休めば影法師が濃い

山に来て人の出会いの楽しさよ一合一会山青々し

(野口五郎)

槍ヶ岳まむかえば猛々しくも華麗にしてみあきぬ山よ

槍ヶ岳猛々しくも華麗なり野口五郎の位置さらによし

水晶岳の緑のカール間近にて野口五郎の頂き飽きず

雲間より野口五郎の小屋だけが陽に照らされている

 妻の声ただ聞くだけでそれでよし夕食前の山のひととき

様々な人生ありと思いいる山にそまりしなれそめ聞けば

お互いに老い行く先を乗り越える体が大事と笑いあう

五十五はまだ若き歳なり六十を過ぎたる歳でみな山登る

 

船窪小屋へ

稜線を覆える雲に雨なくて呑気に歩く高山の道

三ツ岳の雪渓の水冷た過ぎ陽のない朝に空気ひんやり

烏帽子岳ガス巻きついて姿なし一人になりて前に進む

晴れならば四十八池花畑楽かろ不安の文字を踏みつけていく

ようように不安な道を乗り越えて泊まる船窪ランプの灯

南沢不動船窪人気(け)なき稜線歩いた五十五の夏

ようように不安な道を乗り越えて泊まる船窪ランプの灯

南沢不動船窪人気(け)なき稜線歩いた五十五の夏

 

蓮華・針ノ木

思わずも手を合わせてる富士の山七倉岳の頂に居て

いくえにもなだれ落ちゆく雲の滝声なきままに只たちどまる

われ立てばモルゲンロートの輪の中に今日はいいことあるかもしれぬ

蓮華岳その岩肌に取りつかんクサリはしごの導くままに

難所越え蓮華の頂踏み立てばコマクサ咲いて雲うごきゆく

針ノ木の尖れる峰を目の前に思案しながら昼飯をくう

家恋し妻も恋しい帰るぞと針ノ木雪渓下るをきめる

靄かかる雪渓下る岳人の姿絵にしてわれは撮らえる

縦走を無事に終えれば何事も楽しいことのみ想い出となり

 2021.4.29

後日再編集・修正あり


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